スワンプスネイルにの奇襲を避けたレクトはすぐさまコトネを連れて下へ降りる。武器がない状態で戦える魔物など限られている。プレタビーストやダークエルフであれば『フルーレ』を発動した状態なら素手でも殺せはするがスワンプスネイルは素手では相性が悪い。軟体であるその体では打撃は効果が薄くともすれば押し倒されてゆっくりと削り殺される危険性がある。故に武器が必要だった。下に降りるのもそのためだ。スワンプスネイルはコトネを狙って鑢状の舌を伸ばしてくる。コトネを手を引っ張り抱き寄せた状態で階段を一気に飛び降りながら舌を躱す。躱されたことを受けスワンプスネイルはゆっくりと移動をはじめている。先の攻撃からコトネが狙いだと推測が付く。
下に降りたレクトはすぐさまアルムの鍛冶場に向かう。そろそろ武器の手入れが終わっている頃だと考えたから。果たしてその通りアルムはレクトの大剣の手入れを終えており、壁に鞘に収めた状態で立て掛けられていた。都合の良いタイミングだった。アルムへの感謝を内心で呟きつつ急いで立て掛けられた大剣に手を伸ばし――――――タイミングを計ったようにスワンプスネイルが突っ込んでくる。コトネを片手で背後に押しやりつつ、大剣を手に取り――――――同時に体に青白い線上の魔力痕を表面化させながら唱える。
下に降りたレクトはすぐさまアルムの鍛冶場に向かう。そろそろ武器の手入れが終わっている頃だと考えたから。果たしてその通りアルムはレクトの大剣の手入れを終えており、壁に鞘に収めた状態で立て掛けられていた。都合の良いタイミングだった。アルムへの感謝を内心で呟きつつ急いで立て掛けられた大剣に手を伸ばし――――――タイミングを計ったようにスワンプスネイルが突っ込んでくる。コトネを片手で背後に押しやりつつ、大剣を手に取り――――――同時に体に青白い線上の魔力痕を表面化させながら唱える。
「――――――《唸り上げろ》――――――!!!」
呪文――――――剣身に刻まれた呪字を発動させるための――――――に反応し唸り声のごとく空気を震わせながら剣身――――――呪字を中心に纏わりつく魔力が振動する。鑢状の舌を突き出しながら突撃してくるスワンプスネイル目がけて大剣を横薙ぎに振るう。
それで十分だった。スワンプスネイルはいともたやすくその状態を切り裂かれて絶命した。しかし、それで終わりとはならなかった。その直後に、胴体から蟻のような足を生やした人面の――――――口元はアリのような大顎の形状となっている――――――魔物が鍛冶屋の扉をけ破り侵入してきたからだ。
それで十分だった。スワンプスネイルはいともたやすくその状態を切り裂かれて絶命した。しかし、それで終わりとはならなかった。その直後に、胴体から蟻のような足を生やした人面の――――――口元はアリのような大顎の形状となっている――――――魔物が鍛冶屋の扉をけ破り侵入してきたからだ。
「ニクダ! ニクダ! ニクハドコダ!?」
片言ながら人語を発する魔物――――――否、知性を持っているため厳密には魔族なのだろう――――――は周囲を見回し、コトネの姿をその視界に収めた。コトネは自分に視線が向けられたことを感じ取り怯えている。
「ニクダ! ニクヲミツケタゾ! ツレカエラナキャ!!!」
そう言ってその魔族はコトネ目がけて突撃し――――――その間にいたレクトによって阻まれることとなった。レクトは突進してくる魔族に対し勢いよく大剣を突き出す。だが、それより早く魔族がアリの足のような腕でそれをはじく。
「ジャマダナオマエ!!!」
言うや否や腕を振るい突き飛ばす。レクトはそのまま壁際まで飛ばされその背中を強打する。その際の衝撃と痛みに思わず息を吐きだし思考が止まる。隙が生まれる。そして、その隙を見逃す魔族ではなかった。
「マズハニクダ!」
レクトを目がけて肩から生えている四本のアリの足に似た腕を振りかぶる。殺害目的であるのは明白だった。しかし、避ける隙も暇もない。大剣で防ごうにも向こうの動きの方が早い。死が目前に迫ってくるのをレクトは感じ取る。
一方、コトネはレクトの元へ向かおうとして――――――『行くな』――――――自身の内側から響く己の声に思わず足を止めてしまった。逡巡。しかし、その間にレクトは殺されそうになっている。コトネは己を制止する内なる声を無視して腕を伸ばし――――――その動きに合わせて自身の陰を宙に伸ばし、魔族の腕を全て絡め取り行動を止める。魔族がコトネの方を向く。邪魔されたことに腹を立てたのか、はたまたターゲットを変えたのかコトネには判別がつかない。しかし、レクトにとっては十分すぎるほどの隙であった。地面を蹴り飛ばす勢いで駆け出し勢いよく大剣を胴体めがけて突き出す。行動を封じられた魔族にそれを防ぐ暇などなく、あっけなく突き出された剣身に胴体を突き破られその命を奪われることとなった。
荒い息を吐きながら魔族の胴体から大剣を引き抜く。魔族は敢え無く倒れ込み床を血で汚していく。レクトはコトネの方に視線を向けると恐怖からか荒い息を吐いてへたり込んでいた。
一方、コトネはレクトの元へ向かおうとして――――――『行くな』――――――自身の内側から響く己の声に思わず足を止めてしまった。逡巡。しかし、その間にレクトは殺されそうになっている。コトネは己を制止する内なる声を無視して腕を伸ばし――――――その動きに合わせて自身の陰を宙に伸ばし、魔族の腕を全て絡め取り行動を止める。魔族がコトネの方を向く。邪魔されたことに腹を立てたのか、はたまたターゲットを変えたのかコトネには判別がつかない。しかし、レクトにとっては十分すぎるほどの隙であった。地面を蹴り飛ばす勢いで駆け出し勢いよく大剣を胴体めがけて突き出す。行動を封じられた魔族にそれを防ぐ暇などなく、あっけなく突き出された剣身に胴体を突き破られその命を奪われることとなった。
荒い息を吐きながら魔族の胴体から大剣を引き抜く。魔族は敢え無く倒れ込み床を血で汚していく。レクトはコトネの方に視線を向けると恐怖からか荒い息を吐いてへたり込んでいた。
「大丈夫かコトネ? 助かった」
色々聞きたいことはあるが今はコトネを気遣うことを優先する。半ば彼女自身も何が何だか分かってないだろうというのもあったが。コトネは頷きながらレクトの手を取りつつ魔族と魔物の死体を眺める。
「魔物って……、魔族って……街中に出ることもあるの?」
「小さな村とかなら割と。エスヴィアくらいの規模の街だと滅多にないことのはずだけど……」
「小さな村とかなら割と。エスヴィアくらいの規模の街だと滅多にないことのはずだけど……」
大抵、エスヴィア冒険者街のようなそれなりの規模の街以上になると門番や衛視、もしくは見張り役として雇われた冒険者が魔物の襲撃に備えている。それ故に魔物が襲ってきても街中に入る前に対処できることがほとんどだ。クリストロアダーのような一定以上の強さの魔物や魔族の場合はその限りではないが。それでも守りを突破された段階で危機を知らせるための鐘が鳴らされるはずだった。だがそんな音は聞こえてきた記憶がない。ならどこから来たのか。そんな思考に耽っている時だった。
ギィ…、と玄関の方から扉が開く音が聞こえてきた。意識をそちらに向けると先ほどのアリの足に似た手を生やした魔族が数体ほど屋内に侵入してきていた。怯えるコトネを庇うように大剣を構えながら前に出る。勝てるかは分からなかった。それでも引くわけにはいかない。そんな時だった。背後から風の魔法が魔族目がけて飛んできたのだ。刃状の魔法ではない。だが魔族達が吹き飛ぶには十分な威力であったらしい。奇襲を受け魔族達は瞬く間に屋外へ弾き飛ばされる。
ギィ…、と玄関の方から扉が開く音が聞こえてきた。意識をそちらに向けると先ほどのアリの足に似た手を生やした魔族が数体ほど屋内に侵入してきていた。怯えるコトネを庇うように大剣を構えながら前に出る。勝てるかは分からなかった。それでも引くわけにはいかない。そんな時だった。背後から風の魔法が魔族目がけて飛んできたのだ。刃状の魔法ではない。だが魔族達が吹き飛ぶには十分な威力であったらしい。奇襲を受け魔族達は瞬く間に屋外へ弾き飛ばされる。
「こんな遅い時間に招かれざる客……。営業時間外だから出て行ってもらわないとね」
背後からメルカの声が聞こえてくる。彼女は木製のワンドを前方に向けながら余裕を感じられる笑みを浮かべている。どうやらメルカが魔族達を吹き飛ばしたようだ。
「さて、当店に相応しくないお客様は出禁になってもらわないと。アルムもミリカも、ワタシもおちおち眠っていられないわ」
ワンドを振りかざし勢い良く地面を突く。その瞬間、メルカを中心に魔法陣が展開され、魔力が屋内に満ちていく。そして鍛冶屋全体を覆うように淡い輝きを放ちながら招かれざる存在を弾く結界が張られていく。魔族が再び屋内に侵入しようとして、しかし鍛冶屋に張られた結界によって弾かれてしまい侵入することは叶わなかった。
「まだ腕は鈍って無くて良かったわ。50年ぶりだから失敗するかと思ってたけどそうでもないよね。アルムとミリカには薬でしばらく寝てもらってるから大丈夫よ?」
そんなことを呟くメルカはいつも通り愉快気に笑っていた。いろいろ言いたいことや聞きたいことはあったがひとまず助かった。だからメルカに礼を言おうと口を開きかけた時だった。
「やっぱりコトネちゃんを狙ってきたのかしらね」
信じられないような言葉をつぶやきながらメルカはコトネに近づき膝をつく。そしてコトネの顔を優しく撫でながら言葉を紡ぐ。
「こうして厄介なことが起きるかもとは思っていたわ。厄介事を呼び寄せるお仲間。それがワタシ達、魔女なのよね」
「……どういうことだよ……? コトネを狙ってきた? 魔女だから?」
「……どういうことだよ……? コトネを狙ってきた? 魔女だから?」
レクトの疑問の声に反応したのかメルカは彼に視線を向ける。いつも通り愉快気な笑みを浮かべているがその瞳には真剣さが見て取れる。
「精霊獣って昔は魔女扱いされていたこともあるのよ。怖くておっかないデーモンと契約した女達のように力を振りかざしてとんでもないことをしでかしたりしたからね。この娘は精霊獣だけどデーモンに見初められた魔力を感じるわ」
そう言ってコトネの寝間着をめくりわき腹の辺りをレクトに見せる。コトネは可愛らしい悲鳴を上げるがメルカはそれを無視している。そこには何らかの紋章のような何かが刻まれていたのが見えた。
「それは……?」
「詳しくは分からないけど多分生贄の証。コトネちゃんは精霊獣にしてデーモンに捧げられる哀れな魔女でもあるということよ」
「……生贄? わたしが?」
「詳しくは分からないけど多分生贄の証。コトネちゃんは精霊獣にしてデーモンに捧げられる哀れな魔女でもあるということよ」
「……生贄? わたしが?」
メルカの言葉にコトネの口から疑問の声が零れる。どうも彼女は分かっていないようだった。メルカはそんなコトネに対し憐憫の視線を向ける。
「記憶喪失なのよね? きっと自分が何者かもわからないのでしょうね……。貴女はきっと怖い怖いデーモンにその命を捧げられるはずだった存在。恐らく、貴女は貴方の意思とは関係なしに捧げられる契約が結ばれている。その紋章が証拠よ」
「なんで……それが分かるんだ?」
「簡単よ。ワタシが魔女だから」
「なんで……それが分かるんだ?」
「簡単よ。ワタシが魔女だから」
レクトの疑問に答えるようにメルカは言葉を放つ。
「ワタシは『遺失の時代』から生きてきた、デーモンと契約して力を手に入れ、貴方のご先祖に救われた魔女だからよ。レクト=ギルノーツ」
唐突に衝撃的なことを告げられ、レクトの思考が疑問で埋め尽くされた。コトネが狙われ生贄であること、鍛冶屋が魔物に襲われたこと、メルカが自身の先祖に救われた魔女である事。それらが一度にないまぜとなり混乱する。そして何を言おうか分からないまま口を開こうとして――――――瞬間、ピシリと何かが軋みひび割れる音を聞いた気がした。
そしてそれは勘違いではなかったらしい。メルカが天井を見上げた直後だった。
天井を突き破り何かが鍛冶屋へ侵入してきたのだ。メルカが驚愕に表情を歪めている。
そしてそれは勘違いではなかったらしい。メルカが天井を見上げた直後だった。
天井を突き破り何かが鍛冶屋へ侵入してきたのだ。メルカが驚愕に表情を歪めている。
「結界を破った……? 魔法を使われた痕跡はない……。力づくで……?」
メルカの疑問を無視して侵入してきた何か――――――ローブを纏い、大きな一つ目を血走らせているデモゴルゴンと呼ばれる魔族は立ち上がり、レクト達を見下ろす。より正確に言えばコトネに血走った目を向けている。
ゴレーザスと名乗る魔族はコトネに語り掛ける。しかしコトネは何も分かっていないような表情であった。それを見てゴレーザスは深くため息をつく。
「全く何を呆けているのだ……。家出の時間は終わりだ。我らとともに帰還せよ。そしてその命を我らがゲルドバルク様へ捧げる時が来たのだ」
目の前の魔族の言動が何を意味しているのかレクトには分からなかった。だが、ろくでもないようなものである事だけは察せられた。故にレクトの思考はシンプルにまとまる。
目の前の魔族は敵であること、今はそれだけでよかった。
目の前の魔族は敵であること、今はそれだけでよかった。
「もう一度問います。コトネ=フィームはどこにいますか? すぐさま答えなければ殺しますよ?」
ボロボロの外套を纏った少女が大きな槍斧 をエレナ=レンホルム、カシャギ=フォメト、ユーイン・クラジフに突き付けながら問いかける。コトネ=フィームの居場所。コトネの知り合いと言うには物騒すぎる、むやみに答えるべきではないとエレナは考えた。
「……教えると思っているのかしら? そんな武器を突き付けて脅しにかかるような相手に。少し考えればわかることも分からないのかしら? おバカさんね」
「殺します」
「殺します」
その直後、少女は槍斧 を振りかぶりながら突撃してくる。エレナはすぐさまカシャギをユーインの方へ押しやりながら自身は横に飛ぶ。ユーインは唐突にカシャギを押し付けられたことでエレナとは反対方向に倒れ込む。その直後、少女の大きな槍斧 が地面に叩きつけられ石畳をいともたやすく砕いた。なんて馬鹿力だとエレナは驚愕する。
「警告はしたはずです。すぐさま答えなければ殺すと」
そう言って少女はエレナの方へ再び突進してくる。エレナはすぐさま魔力を右手に集め氷の剣を形成、少女が振り下ろしてきた得物を剣で受け流す。先ほどの馬鹿力を考えれば真正面から受け止めるのは愚策であった。次々に繰り出される斬撃を右手の剣で受け流しながら氷属性魔法による礫や槍で応戦するも、槍斧を振り回すことで防がれ、あるいは砕かれることで距離を離すことができずにいる。そして距離を詰められ槍斧 と剣が鍔競り合う。その瞬間、背後から強い殺気をエレナは感じ取った。視線を少しだけ後ろに向けるとそこには背の高い男が少女と同じような槍斧 を上段に構え振り下ろそうとしている。逃げようにも目の前は少女が槍斧 を力づくで押して自身へ切りかかろうとしている。死を覚悟したその時だった。
背後の男の攻撃をユーインとカシャギがそれぞれ剣と戦斧 を構え受け止めたのだ。二人とも武器は持っていなかったはずだった。しかし、ユーイン・クラジフは写象魔術 の担い手。武器を生成するのはお手の物だった。エレナは目の前の少女を、カシャギとユーインは男の方の武器を押しやりつつ武器を振るい相手を飛び退かせる。
背後の男の攻撃をユーインとカシャギがそれぞれ剣と
「危なかったね?! 僕のおかげで生き残れたよね?! お礼に今度デートしてくれない?!」
「……酔った状態で武器振るの気持ち悪い……吐きそう……」
「……ひとまず助かったわ! ありがとう! でもデートはお断りよ」
「……酔った状態で武器振るの気持ち悪い……吐きそう……」
「……ひとまず助かったわ! ありがとう! でもデートはお断りよ」
デートの誘いを断られガクリとうなだれるユーインと吐き気をこらえているのか口に手を当てているカシャギを余所に目の前の少女に視線を向ける。少女は変わらず槍斧 の穂先をこちらに向けて敵意をむき出しにしている。事情は分からないがどうやらこちらを本気で殺すつもりであるらしい。そしてコトネを狙っている危険人物であることも理解できた。
「全くコトネは……、厄介な連中を引き寄せる何かを漂わせているのかしら?」
独り言ちながらこの後の方針をどうするかエレナは悩む。コトネの元へ向かわせるわけにはいかない。確実にろくなことにならない予感しかしない。かと言って彼女らを逃がすわけにはいかない。それこそ禍根しか残さない。だがただ殺すべきか、捕らえるべきか、その二択がエレナを悩ませる。手加減できるような手合いではないことは先の打ち合いではっきりしている。かと言って彼女らが何なのか分からないまま殺すべきかもわからない。しかし自分たちだけで彼女らを捕らえられるかは不明だ。ユーインがどれほどの実力なのかも不明だし、カシャギは酔っぱらっているから碌な戦力として数えることなどできない。そうこう悩んでいる内に少女の元に槍斧 を携えた背の高い男が駆け寄っていく。
「すまないキルメア、仕留めそこなった」
男がキルメアと呼ぶ少女に声をかけた途端、脛を強く蹴られる。痛そうに脛を片手で庇いながら男は涙目で抗議の視線を向ける。
「何するんだキルメア」
「名前で呼ばないでくださいバルツァーさん。こちらの正体がばれてしまいます。それと遅いですよ。今まで何してたんですか?」
「ちょっと道に迷ってしまってね……。キルメアがガンガン先に進むから……」
「ついてこれないバルツァーさんが悪いです」
「名前で呼ばないでくださいバルツァーさん。こちらの正体がばれてしまいます。それと遅いですよ。今まで何してたんですか?」
「ちょっと道に迷ってしまってね……。キルメアがガンガン先に進むから……」
「ついてこれないバルツァーさんが悪いです」
何やら言い争っているようだった。しかし険悪な雰囲気は見受けられない当たり軽口かそんな辺りなのだろう。しかし隙らしきものは見当たらない。このまま攻撃を仕掛けてもいなされるだけであろう。
「……君たちは何なんだい? なんでコトネ君を狙う。そして何で僕たちを襲ってきた。理由が分からないのだけど……」
カシャギが吐き気をこらえながら二人に問いかける。どうやら状況判断ができる程度には酔いが醒めているらしい。二人は口論を止めてこちらに意識を向ける。
「まあ、彼女は僕らの同胞みたいなものだからね……。連れて帰らないといけないんだ。だからさ、先ほどの事は謝るから彼女の居場所を教えてほしいかな? お互い痛い目は見たくないだろ?」
「……なるほど、同胞か。それなら確かに居場所を教えてもいいかもしれない」
「……なるほど、同胞か。それなら確かに居場所を教えてもいいかもしれない」
バルツァーと呼ばれた男の言葉にユーインは同意するような言葉をつぶやく。エレナは無言で抗議するように睨みつける。だが、とユーインはさらに言葉を続ける。
「彼女は僕のハーレムメンバー候補なんだ。連れて帰られるのは僕にとっては都合が悪いな。だから居場所を教えることなんてできないし連れて帰らせる気もない。どうしても連れて帰りたいなら僕たちを倒していくことだな!」
「最後の方には同意だけど候補でもなんでもないわよ馬鹿。氷漬けにされたいのかしら?」
「最後の方には同意だけど候補でもなんでもないわよ馬鹿。氷漬けにされたいのかしら?」
ユーインの世迷言にエレナは冷たく切り捨てる。だが連れて帰らせる気はないことにだけは同意する。バルツァーは深くため息を吐き、キルメアは無言のまま戦闘態勢をとる。
「やっぱり殺すしかなくなるのかぁ……。嫌だなぁ……」
「それが私達の仕事ですバルツァーさん。文句を言ってないで働いてください」
「やっぱりそうよね……選択肢なんて最初からなかったわね。殺すわ、貴方達を」
「それが私達の仕事ですバルツァーさん。文句を言ってないで働いてください」
「やっぱりそうよね……選択肢なんて最初からなかったわね。殺すわ、貴方達を」
目の前の二人が構えを見せるのと同時にエレナ、ユーイン、カシャギの三人も同じく得物を構える。そして同時に地面を蹴り出し互いに接近しあう。どちらか一方の命を奪うために。月明かりのない夜のエスヴィア冒険者街で、殺し合いが始まった。