前話:第十六話


#17 因縁と戦塵の兆候

  ーー牢獄襲撃から三日前ーー

 アシュテの逮捕という報知が届き、行政庁へ向かった。
レーシュネは町の市民軍を結成させて、反乱を起こせというアドバイスをした。

 その案までは良かった。
しかし、俺の統治している領地は、その町とは異なる。
彼らにとって圧政の象徴であるだろう領主、しかも余所者の領主の話なんぞ聞くに及ばないだろう。
信頼してくれないのは重々承知だった。
甚だ困った,,,俺一人では何もできないのか...

 そんなときに街へ向かわせていた偵察の1人から情報が入ってきた。
小さな紙に走り書きで書かれた手紙は、早便の者が送ってきており、焦りをより一層強める。
そんな紙をめくって読んだ。
「この街では、教会が革命の中心的役割を担っているらしく、人々は信頼の意を置いています。これに付け込んで救うのも一手でしょう」

 これは、かなり重要な情報だ。
早速向かうしかない、そう思って支度をした。
領地から王都の郊外に位置するあの街まで、半日ほどかかってしまう。
その時間でアシュテがどんな仕打ちを受けているかは知る由もない。
無事であってくれ...

■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

 薄曇りの中、馬を走らせた。
広い平原を越え、丘を登ると木造の家々といくつかの石造りの建物が見えた。
街に近づくと、そこには門があり、軍の奴に止められた。
どうやら王都に入るための関所のような役割をこの町は果たしているらしく、
ここで検査をしているらしい。
俺は、そのために変装をして来た。

 気づかれずに街中に入ることができると、すぐに中央の教会へと向かった。
重厚な佇まいであるそのフィアンシャの木製の扉を開く。
中には礼拝にきた人はおらず、ただ1人、純白のフラニザを纏ったシャーツニア―が立っていた。

「やはり参りましたか。既にお話は聞いておりますよ」
微笑みながら、そう言った人は少し年の行った女性だった。だが、その裏には年相応と言っていいのだろうか、相手を圧倒するような覇気を纏っていた。
そのシャーツニア―は、既にこちらの情報を把握している様子で、より一層不気味さを感じさせる。

「私もこの国における革命を果たそうと企む者...その一手に私も協力いたしましょう」
「ああ、話が早くてありがたい。絶対に彼を助け出したいんだ」
「...明日、祈りの日なので、多くの人が訪れるでしょう。その時が好機です」

こうして、俺はアシュテを助けるため、明日に向けて準備をすることにした。



次話:第十八話
最終更新:2023年11月04日 00:12