太公望


『週刊少年ジャンプ』で連載された藤崎竜氏の漫画作品『封神演義』(通称「フジリュー版」)の主人公。
原典である同名の中国古典文学における姜子牙がモデルとなっている
(本来、太公望とは後の周王朝の始祖、文王が「我が祖父(太公)の代から待ちんでいた逸材だ」と喜んで、
 釣りをしていた姜子牙を軍師に招いたという伝説から付いた称号のようなもの。転じて釣り人を指す事もある)。
担当声優は1999年のアニメ『仙界伝 封神演義』や同時期のドラマCD、ゲーム等では 優希比呂(放映当時は「結城比呂」名義) 氏、
2018年のアニメ『ふぁっきゅー覇穹 封神演義』では 小野賢章 氏。

+ 『封神演義』とは
古代中国の国家「殷」の腐敗と、それに対する反乱から誕生した新たな国家「周」、
その人間界の混乱に乗じて起こった神や仙道、妖怪達の戦争を描いた古典文学である。

原典である『封神演義』が物語として成立したのは中国明代と言われているが、その原型となったのは紀元前1000年における「殷周革命」とされている。
同作は中国の四大奇書として知られる『西遊記』『三国志演義』『水滸伝』、『金瓶梅』より1つ下位として扱われているが、
これは物語の舞台である殷・周が昔過ぎて記録が少なく、物語の内容もフィクション要素が他作品より圧倒的に多いためである。
一方で、中国の民間信仰に大きく影響を与え、同作の普及以降に既存の神々は、作中で使われた名前や格好の神像で普及した事が確認されている。

実際「殷」の存在は『史記』などに記されてこそいたものの、
19世紀末に『史記』と内容が一致する甲骨文字が発見されるまで単なる伝承扱いだった。
同時に姜子牙もその実在が疑われていたが、甲骨文字には彼の名前こそ確認されていないが、
統治していたとされる「斉」の記述がある事から、
仙人云々は後の世の脚色としても、姜子牙は実在の人間だったと考えるのが妥当とされている。

封神演義の「封神」とは「神に(ほう)ずる」という意味で、
道教においては仙人より格下の存在とされる「神」として取り立てる事を意味する。
殷周革命を題材にした元代の講談『武王伐紂平話』において、
天界から殷の将軍として現世にやってきた神を倒した後に廟を立てて祀るという場面があったのを拡張して、
「殷周革命に参加した者達が現在著名な神として祀られた」と設定し、
神の生前の姿としての登場人物を大量追加したもの。
「著名な神」の中に「インドから来た神」とか「唐代の人物」とかの殷周革命にいたらおかしい人達がいたり
そもそも道教が成立したのは殷周革命よりずっと後の三国時代だとか妙な事にもなっているが。

フジリュー版はこの原典を安能務氏が翻訳したものをベースとしているのだが、
この安納氏翻訳版は安能氏によるオリジナル設定や独自加筆に誤訳が混じって原典とは少々趣の異なるものとなっており
(ただし、原典のほうも設定や時系列の矛盾などが多く、日本人には理解しにくい当時の風習や価値観を前提としたものであったのは確か)、
これに更に藤崎竜氏による独自解釈やオマージュ、ギャグ、時代考証完全無視のデザインや演出、少年漫画的要素などが混入した結果、
古典怪奇小説からファンタジーSF歴史異能バトル少年漫画とでもいうべき内容になってしまった。
が、引き延ばし展開で顰蹙を買い易いジャンプ漫画としては珍しく、
大きな破綻なく物語を綺麗に畳んだ名作」と評される事が多い。崑崙山2の直径は3m?知らんなぁ
よく分かる「違い」

元始天尊からスカウトを受け仙界に上り、僅か30年の修行で仙人級の力を付けた崑崙山の道士。
本名は「呂望」、字名は「姜子牙」だが、本名で呼ばれる事はほぼ無く、太公望(親しい者からは「望(ぼう)ちゃん」)や、
後輩にあたる仙道達からは「師叔(スース)」等と呼ばれている。
妲己の悪行に業を煮やした元始天尊によって殷に巣食う妖怪仙人を腐敗した殷ごと抹殺し、
新たな国「周」を起こす「封神計画」の責任者に任命され、
宝貝(パオペエ)・打神鞭とカバ霊獣「四不象(スープーシャン)」を授かり、
妲己が率いる金鰲の妖怪仙人達や妲己に操られた殷の君主・紂王、殷に忠誠を尽くす最強の道士・聞仲、
そして妲己の背後に蠢く真の黒幕「女媧」を討伐するために戦う
(ちなみにこちらの「封神」は倒した仙道を封印するという意味)。

見た目は少年だが実年齢は80歳前後(開始時点で72歳)であり、一人称が「ワシ」だったり語尾に「~(だ)のう」とついたり言動がやや爺臭い。
約60年前、当時王氏と名乗っていた妲己によって殉死のために一族を皆攫われた過去がある。
好物は桃。他、甘党で酒なども好む。だが仙人の修行をしているだけに肉食はしない。逆に注射と苦い薬を嫌ってダダをこねるなど子供っぽい面も。
性格は一見するとぐーたらでやる気がなさそうな態度が目立つが、韜晦であり、実際には芯の強さと優しさを兼ね備えた人物。
仲間のために自ら率先して盾になる事もあり、仲間達からの信頼は厚い。
戦闘力も相応にあるのだが実力行使に出る事は少なく、主に頭脳戦・心理戦を用いて敵を巧みにペテンに掛け、自分のペースに持ち込む戦法を好む。
目的のために手段を択ばない事もあり、時には味方からもブーイングを受けるほどの卑怯な手を堂々と使っている。
ただし、味方に犠牲を強いる、周囲(民間人)の被害を出すなどの非道な策をとる事は少ない
(敵が使ってきた場合の対策やどうしようもなくなった時のために、そのような策を随時考えていたりはするし、
 怪我をしないよう気を付けていたとはいえ、策の一環として民間人を攻撃したり味方を人質にしたりした事もある)。
これらも汚れ役・憎まれ役を買って出ようとする自己犠牲精神と、あえて情けない姿を見せて仲間を奮起させる演技でもあるのだが、
四不象から「こんなことばかりしてちゃいいことしても人の恨みを買う」と指摘された通り、
太公望の本質を知らない黄天化等からは当初全く信頼されていなかった。

逆に作中最強の一角である申公豹からは(宝貝同士の相性もあって)かすり傷を付けた事で実力を評価され一方的に興味を持たれてしまう等、
実力者達からは「侮れない相手」と評価は高い

また、時折極端にデフォルメ・簡略化された顔や体型になる事がある。

+ 所持「宝貝(パオペエ)」
宝貝(パオペエ)とは、仙人達が作った武器や防具、道具であり、本作における主な戦闘手段である。
間違われやすいがではない。定義としては「宝具」とも言えるが。
使用者の精気を吸い取って様々な効果を発揮するため、生まれつき仙人の素質のあるものや修行を積んだ道士しか扱う事しかできず、
下手をすると精気を吸い取られて干からびてしまう。
また、基本的に強力な宝貝ほど必要な精気も莫大となるため、強大な宝貝や複数の宝貝を同時に使用するなどすると、
仙道であってもたちまち力尽きてしまうという欠点がある。

  • 打神鞭(だしんべん)
風を操る能力を持つ、指揮棒みたいな宝貝。最初から最後まで愛用。
風の刃「打風刃」以外にも、強風で敵の攻撃を逸らす、竜巻による防御など応用が効く。
作中で一度破壊されるが、パワーアップして復活、NEW打神鞭となった。

  • 火竜鏢(かりゅうひょう)
炎と高熱を発する、巨大なブーメラン状の宝貝。
元は陳桐という敵の妖怪仙人のものであったが、彼との戦闘の際に強奪。
後に黄天化に「おぬしのほうが上手く使えるだろう」と譲った(実際、天化は火竜鏢を用いて敵を撃破している)。

  • 杏黄旗(きょうこうき)
NEW打神鞭に内蔵された、黄色い小さな旗の宝貝。
崑崙山からエネルギー供給を受ける事で一時的に大出力を扱えるようになる。
ただし、反動でしばらく人間と変わらない状態になってしまう、らしい……。

  • 太極図(たいきょくず)
NEW打神鞭の先端にくっついた宝玉の宝貝。本来は太上老君のものであったが、試練を乗り越えた証として授けられた。
世界に七つしかない、スーパー宝貝の一つ。
使用すると巨大な文様として周囲に展開、効果範囲内の宝貝の効果を無効化し、更に宝貝で受けた傷も癒してしまう。
無効化効果は敵味方問わずであるため、宝貝人間である哪吒は機能を停止してしまうし、
敵はおろか味方も宝貝の使用が出来なくなる等、使いどころが難しい。
同じスーパー宝貝のような大出力ならば無効化フィールドを「押し返す」事が可能。
本来の能力は「宝貝を通して仙道の力を吸収・収束する事で持ち主を飛躍的にパワーアップさせる」というもので、
ラスボス戦にて切り札として使用された。要は元気玉

+ その「正体」及び「封神計画」の真相
王奕(おうえき)という魂を分割できる特異体質の人間がおり、その特異体質を見込んだ元始天尊は、王奕の魂を二つに分割。
一方を死んだばかりの赤子に吹き込む事で赤子は蘇生。
その赤子が育った結果が呂望、すなわち太公望である。
分割されたもう一方の魂は王奕の肉体と共に金鰲と崑崙の不可侵条約の際に
楊戩(金鰲のトップ、通天教主の息子)とトレード(要は人質交換)される。
妖怪達の中で抑圧されて育った王奕の人格は歪んでしまい、
更にそれに目を付けた妲己によって王奕の魂は三つに分割、妖怪をベースにした肉体へと移され、
妖怪仙人・王天君を名乗り、妲己の手駒として活動するようになる。
その為、王天君は太公望の「影」のような存在であり、太公望同様策士なのだが、
太公望とは真逆に「味方の犠牲を厭わない、非道な策」を躊躇なく実行に移す。
また、陰ながら「封神計画」の支援を行っており、
「聞仲を倒すために親友・黄飛虎をぶつけて心身共に弱らせる(黄飛虎は死亡)」「紂王討伐に際して黄天化を使う(結果、天化死亡)」等、
太公望は思い付きながらも非道なために実行に移さなかった(移せなかった)策も実行していた。

もっと言えば王奕自身、単なる「特異体質の人間」ではなく、その正体は「最初の人」の一人、伏羲(ふっき)。
本来の伏羲は中国神話の神にして女媧の兄弟あるいは夫とされる存在であるが、
本作においては女媧共々、地球外からやってきた異星人(リトルグレイ似)とされる。
「最初の人」らが築いた超文明は何らかの原因で(曰く「些細なミス」)滅び去ってしまい、
宇宙を放浪した果てに故郷の惑星と環境がよく似た地球にやってきた彼らは、
地球の環境と文明を操作して、故郷を再現しよう」という女媧と、
「地球は地球の生命体に任せるべき、無暗に介入するべきでない」という伏羲らで対立。
争いの末女媧は封印され、伏羲らは地球環境そのものと同化する。
「最初の人」らが同化したmで地球の生命は僅かながら「最初の人」のチカラを受け継ぎ、
彼らのチカラをより濃く受け継いだ者が、妖怪なり仙人となって、
元は彼らの道具であったスーパー宝貝を真似て宝貝を生み出していった。
が、永い年月の中で女媧は封印状態ながらも外部に介入する術を身に付け、人類史を意のままに操作し始める。
自身が望む「故郷の歴史」から外れた文明を滅ぼしては再び一から文明を築きあげるという暴挙を繰り返す女媧に対し、
女媧復活の可能性を考慮していた伏羲もまた復活。
伏羲は、流石の女媧も何度も文明を滅ぼす内に弱体化、逆に何度も滅ぼされた事で地球生命が強く逞しく進化するタイミングを見計らっていたのだ。
弱体化しても尚強大な女媧を倒すべく、元始天尊ら薄々「歴史の道標」女媧の存在に気付いていた者達の協力の元、
元始天尊の弟子・王奕として身を隠しながら女媧討伐のための封神計画を発案した。
この封神計画は表向きは女媧が望む「故郷の歴史」をなぞったものであるが、
女媧討伐のための戦力(魂)をかき集めるのが真の目的。

妲己もまた独力で「歴史の道標」たる女媧に辿りついており、自身の野望のために女媧の手足として協力しつつ、
裏では下剋上を企てており、王天君に封神計画の支援をさせていたのもこれが理由。

全ての真相を聞かされた太公望は、王天君から「融合して元の存在である王奕(伏羲)に戻ろう」と提案された際、
「黄飛虎や天化は自分が殺したようなものではないか」と一度は苦悩するも、融合を果たす。
が、何故か人格は王奕や伏羲、王天君ではなく太公望がベースとなっており(元の太公望より少々荒っぽくなってはいる)、
仲間達からも太公望として扱われていた。
最終的に女媧を打倒した事で、太公望達は「史実」とも「女媧が望んだ歴史」とも違う歴史を歩み始める事になる。


MUGENにおける太公望

This Boy氏の製作した、『JUS』のキャラが公開中。
打神鞭を用いた通常技や突進攻撃を用いた、近~中距離戦に強い性能をしている。
また、ストライカーを呼び出す技を複数持っている。
ゲージ技は通常技とは裏腹に、風を用いた遠距離攻撃が多い。
AIは未搭載。
DLは下記の動画から

出場大会



最終更新:2023年02月21日 17:58
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