『
ストリートファイターIII』シリーズの特殊システム。略称は「ブロ」「BL」。
相手の
上中段打撃に合わせて前、下段打撃に合わせて下にレバーを倒すと、
攻撃を受け流して即座に反撃に転じる事ができ、削りダメージも受けないというもの。
ガードが自分のキャラの後ろ方向に入力して防ぐのに対して、
「相手の攻撃を前に入力する事で攻撃を受け流す」という
逆転的発想が格闘ゲームにおいても革新的であり、
当時のプロデューサーが
「ブロッキングを超えるシステムが思いつかない」と思ったほど。
ブロッキングと同様に相手の打撃攻撃を受け流すものとしては所謂「
当身技」が格闘ゲーム界では古くから存在していたが、
全キャラ共通かつレバー入力一つで成立し、また作品の軸としてデザインされたのはこれが初と思われる。
「当身技」と違い、当身判定発生時のモーションが無いのも特徴的。
理論上は0F当身と同じらしいが、「当身投げ」のように成立した瞬間に相手を掴んでロックするシステムではないため、
成立させてから反撃しようとしてもタイミング次第でガードや反撃をされる場合もある。
また上記のように革新的な防御側のテクニックではあるが、「前方向にレバーを押す」という操作関係上、
「せっかくブロッキングで有利フレームを取ったのに、タメが解除されたため通常必殺技を絡めたコンボを入れられない」
というケースが多々起きる事から溜め必殺技を持つキャラとの相性が悪く、
『ストIII』においては溜めキャラとそうでないキャラのダメージチャンスの格差を生む要因となってしまっている。
原作ではあまり気にしなくていいが、MUGENだとキャラによっては、せっかくブロッキングから反撃しても無敵技で潰される事も
(Hitoverrideを利用しているブロッキングはヒット扱いになりキャンセルが利くため)。
なお、このシステムは一定時間経過しないと再入力を受け付けないのだが、初出の『1st』ではこの時間が短いため、
レバーを→↓→↓→↓…と交互で入力する事で相手側の殆どの技をブロッキング出来るというテクニック(通称「ファジィブロッキング」)も存在していたが、
『2nd』以降は受け付けない時間が長くなり事実上廃止されている。
ブロッキングの先駆け
名称 |
作品 |
効果 |
避け攻撃 |
餓狼伝説シリーズ |
『餓狼2』から採用。当身技の一種だが、実は当身投げが(システムとして)成立する前から存在。 現在確認出来るものの中で、総合的に見てブロッキングに最も近いのはこれだと思われる。 ガードポーズ中に前方向+攻撃ボタンで発動し、上半身無敵になりながら反撃する。 敵の攻撃がなければモーションが出ないのも同じ。 ガードキャンセルとは違い実際にガード中に発動するのは不可能、下半身に喰らい判定が残る、 など完璧な反撃手段ではないが、このシリーズにおける切り返しの役割を持っていた。 ゲームの軸になるシステムにはならなかったものの、狙って活用する事も十分に可能。 なお『KOF'95』以降の避け攻撃(カウンター攻撃)とは別物。 |
The King of Fighters '94 |
飛び道具反射 |
ワールドヒーローズシリーズ |
『2』から採用。直前ガードの一種。飛び道具が当たる瞬間にガードする事で相手に跳ね返す。 ジャストディフェンスの操作をシステムに組み込んだのは恐らくこれが初。 |
真剣白刃取り |
サムライスピリッツシリーズ |
初代から採用。当身技の一種だが、こちらも当身投げ以前に存在。 素手状態で相手の武器攻撃に拳の先端を当てると発生(後のシリーズではコマンド入力)し、 成功すると相手を投げ飛ばす。入力は非常にシビアだが、 武器の有無で有利不利が大きく変わるこのシリーズ独自の逆転要素。 |
カウンター |
シュマイザーロボ |
直前ガードの一種。自分の硬直が減少する。 ただしこのゲームはガードボタンが独立しているので、 どちらかと言うと3D格闘の感覚に近かったかもしれない。 ゲーム自体が殆ど出回っていないため詳細は不明。 |
受け返し(弾き返し) |
真サムライスピリッツ |
直前ガードの一種。相手に硬直を生むという点ではブロッキングと同じ。 ただしあくまで隠し技的な要素の一つにすぎず、狙って出すのはほぼ不可能。 |
ガードインパクト |
ソウルエッジ |
当身技の一種。前+ガードボタンの弾きと後+ガードボタンの捌きがある。 武器や盾で相手の攻撃を弾いたり受け流したりする事で体勢を崩す。 3D格闘だが、ブロッキングとほぼ同じ概念が完成したのはこの作品だと思われる。 ただし失敗すると隙が出来てしまい、 弾かれた側はひるみ中でもガードインパクトだけは出来るなど、 一方的に有利となるわけではない。 |
有利Fは下記の計算式で算出され、ボーナス値は技によって異なる。
(相手の硬直+ボーナス値)-ブロッキング自体の硬直
場合によっては(飛び道具など)「しない方が有利」な事や、
した方が不利な事もあればしても五分にしかならない事もある。※
熟練すれば、こんな芸当も可能らしい。
所謂ウメハラブロッキングである(もっとも「鳳翼扇」は
スーパーアーツの中でも比較的ブロッキングしやすい部類に属するが)。
※
飛び道具をブロッキングしても相手の硬直時間が増えないため。MUGENでは事情が異なるので後述する。
ちなみに「攻撃が当たる直前にレバーを入れてガードするシステム」自体カプコンのベルトスクロールアクションでは結構実装されていたりする。
最も古い物で『The King of Dragons』(1991年製=初代『
ストII』と同時期)である
(そもそもベルトスクロールアクションなので、直前入力でないとガードが発動しない(後ろに振り向いてしまう))。
MUGENにおけるブロッキング
HitOverRide、またはReversalDefを用いて処理される。
+
|
HitOverRide |
このステコンが有効なうちに相手の攻撃がヒットすると、通常の喰らいステートではなく事前に指定したステートへ移行する。
これによってMoveType=Iのステート(ブロッキング成功ステート)へ飛ぶとダメージやヒットバックなどの処理を回避出来る。
攻撃側にはMoveHit(MoveContact)の 判定が出るため、防がれた技をヒットキャンセルして反撃に対応するという事も出来る。
逆に言えば、ブロッキングが成立するには相手の攻撃がヒットしなくてはならないわけで、
ブロッキングのエフェクトとは別に、攻撃側のヒットスパークや効果音まで発生してしまう。
その他、MoveHitを条件に攻撃側の追加処理が発動する場合、意図せぬ挙動が起こる事も。
防御したのに攻撃側にメリットのある追加効果(北斗キャラの星取りなど)が発動したり、
防御されたのにヒット時専用の追撃を行うなど。
但しこちらは、攻撃側がMoveHitの他にNumTargetやP2stateNoなどを条件に加える事で回避出来る。
AIが攻撃をブロッキングで防がれた際、攻撃がヒットしたと誤認する現象も同様に解決する。
後述のReversalDefでは導入が複雑かつMoveHitの判定が発生しないためか、ブロッキングの処理としてはこちらが主流である。
記述例
[State XX]
Type = HitOverride
TriggerXX = XX
Attr = S, NA, SA, HA, NP, SP, HP
Stateno = XXXX
Time = XX
「Attr」で防御する攻撃の属性を指定する。
+
|
attrの種類の一覧表 |
ここでattrそのものについての説明もしておくと、attrはAttribute(特性や属性などといった意味)の略である。
例えば立ち打撃通常技なら記述は「S,NA」などといった形となるが、
この時コンマの前側に記述する部分をarg1と呼び、後側の部分をarg2と呼ぶ。
attrには以下の27種類がある。
|
打撃 (A) |
投げ (T) |
飛び道具 (P) |
立ち (S) |
通常技 (N) |
S,NA |
S,NT |
S,NP |
必殺技 (S) |
S,SA |
S,ST |
S,SP |
超必殺技 (H) |
S,HA |
S,HT |
S,HP |
しゃがみ (C) |
通常技 (N) |
C,NA |
C,NT |
C,NP |
必殺技 (S) |
C,SA |
C,ST |
C,SP |
超必殺技 (H) |
C,HA |
C,HT |
C,HP |
空中 (A) |
通常技 (N) |
A,NA |
A,NT |
A,NP |
必殺技 (S) |
A,SA |
A,ST |
A,SP |
超必殺技 (H) |
A,HA |
A,HT |
A,HP |
|
この表を参考にした例では立ち判定の打撃、飛び道具を防御する設定になっている。
上の例には無いが、NT(通常技投げ)、ST(必殺技投げ)、HT(超必殺技投げ)といった投げ属性に対してブロッキングを取る事は、
原作を逸脱した論外行為であるため注意が必要である。
|
+
|
ReversalDef |
ReversalDefの判定と相手Hitdefの判定が接触するとHitdefを無効化し、自分及び相手を指定したステートに飛ばす事が出来る。
ブロッキングの再現においてはHitdefを無効化する機能が用いられている。
Projectileに反応しないため、飛び道具に対応するHitOverRideを同時に用いる必要がある。
ReversalDefの判定枠は喰らい判定ではなく 攻撃判定のものを用いる。
ブロッキングを受け付けるステートの画像全てに攻撃判定枠を付けるのは煩雑なため、
ReversalDef判定を出す専用ヘルパーを用いる事が多い。
攻撃側にMoveHit、MoveContactどちらの判定も出ないためにヒットキャンセルが利かず、性能の再現には難がある。
一方、余計なヒットスパークや効果音が発生しないため、演出面は優れている。
記述例
[State XX]
Type = ReversalDef
TriggerXX = XX
Reversal.Attr = S,AA
P1stateno = XXX
Pausetime = 0,XX
Sparkno = -1
NumHits = 0
「Reversal.Attr」はHitOverRideでのAttrに相当する。
AAというのはA(全ての=ALL)とA(打撃)の組み合わせである。
ReversalDefが本体によるものならばP1statenoでブロッキング成功ステートを指定。
ヘルパーによる場合は、Helper(***),Stateno=XXXを条件として本体が成功ステートへ直接ChangeStateする。
|
いずれの処理も攻撃側の体勢(立ち・しゃがみ・空中)及び攻撃の種類(打撃・飛び道具・投げ)を示すパラメータAttrでのみブロッキングの可・不可を決定する。
ガードの中下段などを決定するGuardflagやヒットバックのアニメ(動作の大きさ)を示すAnimTypeなどは関与しない。
そのため「下段ブロッキングは弱攻撃のみ立ち・屈み両方の攻撃を取れる」などといった細かい対応が再現しづらい。
ブロッキング不可の攻撃も再現が難しいが、
本体では見せ掛けのHitdef(実際にヒットはしない)を出しながら、ブロッキングの対応しない投げ属性かつガード可能なProjectileで攻撃する
などして一応の再現が可能。
ヒットストップなどの調整が難しいので、
proj化カンフーマンなどを参考にされたい。
Projectileを用いる事で相手AIの判断を左右する可能性はあるが、
AIがProjectileに対して細かい情報・状況を感知するのは難しい事、本体が見せかけのhitdefを出している事もあり、そう大きな不都合にはならないと思われる。
またMUGENでは、
「有利時間が極端に長い」「反撃が確定出来る」「投げも防御出来る」「攻撃・喰らい中も入力可能」
というような性能を改変・強化されたものも散見される。
そうでなくとも細かい仕様・性能は再現の難しいシステムであるため、
ブロッキングを搭載したキャラクターとの対戦や動画使用の際には、その性能を把握しておくと良いだろう。
人操作においては相手が攻撃しそうなタイミングを読んで判定を置くのに対し、
AIではランダムか、相手の攻撃に反応する形で判定を出す事が殆どである。
また相手の攻撃が接触せずブロッキングが成立しなくても、当て身投げなどのように硬直が発生する事なく行動出来る。
とは言えそれは理論上の話で、人が読み違えれば攻撃を喰らってしまうし、投げにも無防備になる。
しかしAIなら状況に応じて対応を切り替える事も簡単に出来てしまう。
これらを考慮せず条件に合わせてブロッキング判定を出すというだけでは、AIにとってノーリスクのシステムとなってしまう。
ブロッキングに限らず類似の防御システムはAIの設定次第でバランスブレイカーに成り得るものだが、
ブロッキングはその柔軟性のため、より慎重なAIの調整・行動管理を要するシステムと言えよう。
付録:ブロッキングと類似システムの性能まとめ
名称 |
作品 |
効果 |
ブロッキング |
STREET FIGHTER III |
当身技の一種。ダメージは無し。 空立屈の三種類。大振り(=硬直が長い)攻撃が多いゲームなので 相対的に有利時間が長くなる。 ガード不能技でも可能。パワーゲージが少し増加する。 |
CVS2(P-GROOVE) |
当身技の一種。ダメージは無し。 空立屈の三種類。長めの有利時間がつく。 ガード不能技でも可能。パワーゲージが少し増加する。 |
QOH'99(梓、綾香etc) |
当身技の一種。ダメージは無し。 地上版のみで、コマンドの関係で立ち状態でしか取れない。 ストⅢ等と異なり、レバーを離した瞬間が発動タイミングとなる。 |
弾き |
月華の剣士 |
当身技の一種。ダメージは無し。 『一幕』では立屈&立必殺屈必殺の四種類。 『二幕』では空立屈の三種類。 相手の攻撃を弾き、一定時間無防備にする。 失敗時の隙は大きめで、後の先(カウンター)扱い。 飛び道具には無力。 『二幕』では専用の反撃技でキャンセル可。 |
ジャストディフェンス |
餓狼MOW |
直前ガードの一種。体力が少し回復する。 空立屈の三種類。ガード硬直を軽減する。 ガードクラッシュ値が少し減少する。 (超)必殺技・潜在能力でガードキャンセル可。 空中でも使用可能(通常の空中ガードは存在しない)。 |
CVS2(K-GROOVE) |
直前ガードの一種。体力が少し回復する。 空立屈の三種類。ガード硬直を軽減する。 ガードゲージが減少しない。 空中版のみガード不能技をガード出来る。パワーゲージが少し増加する。 |
ジャストシールド |
大乱闘スマッシュブラザーズ(DX以降) |
『DX』から『for』までは直前ガードの一種、『SP』では当身技の一種。 『DX』でのみ「ジャストディフェンス」とも書かれていたが、システム的には同一。 地上一種類のみ(空中は一瞬無敵状態の「緊急回避」になる)。ガード硬直を軽減。 シールド(ガードゲージのようなもの)が減少しない。 この状況で更にAを押す事で投げにすぐ繋がる。 『DX』のみ、飛び道具を当たる瞬間にガードする事で相手に跳ね返せる。 『X』からはガード時のノックバックが通常時よりも減少。 『SP』では
シールドを解除直後に攻撃を受ける事で発動するシステム
に変更。 ガードキャンセルがいかなる行動からでも可能。 ガードストップあるいはガード硬直の間でも喰らい判定無しの無敵状態になる。 ちなみに『for』から参戦したリュウはブロッキング、『SP』で参戦したテリーは帽子とジャケット姿だが上述の『餓狼MOW』でのジャストディフェンスと同じモーションをとる。 |
無想転生 |
北斗の拳(ケンシロウ、ラオウ) |
当身技の一種。ダメージは無し。 この手のシステムでは珍しくキャラ限定技。 パワーゲージを1本消費して7回まで使用可能。 相手の攻撃を回避し、画面停止中に一定距離進む。 結果的に相手の裏に回る事が多い。 地上(立屈不問)の一種類のみ。有利時間は相手の技硬直分。 |
シールド |
MELTY BLOOD |
当身技の一種。ダメージは無し。 空立屈の三種類。有利時間は無し。少量ゲージ消費。 方向キー入力ではなく専用ボタンで出す事ができ、 続編からは「出しっぱなし」にする事が出来るようになった。 通常シールドは一部必殺技でキャンセル可。 直前ガードに相当するEXシールドはいずれの技でもキャンセル可。 特定状況でのEXシールドの成立はラストアーク(特殊な超必殺技)の発生条件でもある。 |
リコイルガード |
Eternal Fighter Zero |
直前ガードの一種。ダメージは無し。 空立屈の三種類。リコイル後の硬直を通常ガードと通常投げ以外の攻撃でキャンセル可能。 ただし、攻撃側も次のモーションに移行するまでの間は、 攻撃をキャンセルしてリコイルガードを行う事が出来る。 地上では連続ガードになるような攻撃に対して連続して行う事は出来ない。 空中版は空中ガード不能の攻撃も取れる上、攻撃によるベクトル変化を受けない。 |
チャンスメイク |
ニトロ+ロワイヤル |
当身技の一種。ダメージは無し。 空立屈の三種類。有利時間が少し増加。 パワーゲージが少量増加する(MUGENでは増量修正されている事が多い)。 地上二種はダッシュ、通常技、必殺技等でキャンセル可。 空中版では真上に少し跳ねる。 |
攻性防禦 |
アカツキ電光戦記 |
当身技の一種。攻性範囲に攻撃が入れば成立する。 空立屈の三種類。 上段で上中段と空中攻撃、下段で上下段、空中で全て成立可能。 成立すると自動で反撃するが出が遅く無敵もない。 成功した場合、再度攻性防禦をキャンセルで出す事で多段技も攻性を取れる。 飛び道具にも対応でき、この場合は反撃動作が出ない。 上中段を立ち、下段を屈、空中攻撃を空中で成立させると 「要撃攻性防禦」となって自動反撃後の補正が緩和される(アケ版のみ)。 パワーゲージが少し増加する。 ただし攻性中に投げを喰らうと「要撃」になりダメージが増える。 |
ボタンロッキング |
ヤタガラス |
当身技の一種。ダメージは無し。 上下空の三種類。有利時間が少し増加(入力の仕方次第で有利時間が異なる)。 ボタン入力のため、ガードと同時に入力する事も可能。 ガード不能技でも可能。パワーゲージが少し増加する。 ただし地上BL入力中に非対応の攻撃を喰らうと「BLカウンター」となり、ダメージ等が増える。 また空中BLの受付時間終了後~着地までに攻撃を喰らうと「空中BLカウンター」となり、 追撃可能な浮かせ状態にされる。 |
関連項目
最終更新:2024年05月27日 01:32