概要
SNKの2D対戦格闘ゲーム。略称は『月華』。
『一幕』『二幕』の2作品と、ネオジオポケットで外伝『特別編』がリリースされている。
海外版のタイトルは『The Last Blade』。
『二幕』を以て完結しており、現時点では続編製作の予定は無い。
対戦格闘ブームがそろそろ過ぎ去ろうかという頃に登場した、『
サムライスピリッツ』に続くSNK第二の剣劇格闘。
歴代のタイトルで培った様々なシステムを融合させつつ、
格闘ゲーム全体のハードルが高くなり、新規プレイヤーの参入が難しくなっていたという時勢を考慮し、
初心者にも手軽に楽しめるようにするための工夫が随所に見られる。
特に「
弾き」の存在によって駆け引きがより直感的・攻撃的なものになっており、
この点が間合の取り合い、所謂「差し合い」をメインとする『サムスピ』シリーズとの明確な違いとなっている。
またSNKのドット技術の集大成と言える美しい2Dグラフィックも特徴。
格闘ゲームに限らず、2000年代以降はどのジャンルでもポリゴンやCG、アニメ調の絵が主流になっているため、
未だにこの作品や『
ストリートファイターIII』『
ウォーザード』『
餓狼MOW』などが
ドット絵の最高峰と言われ、高い評価を受けている。
旧SNK作品としては珍しく、
氷上恭子氏、
大塚明夫氏、
小西克幸氏、
麻績村まゆ子氏、
大友龍三郎氏といった本職の声優を多く起用しているのも特徴。
世界観や設定は当時人気絶頂だった和月伸宏氏の漫画『
るろうに剣心』の影響が色濃く見られ…というか中には
明らかにパ○リなものも多いのだが、
これは
先に『サムスピ』などから同レベルのパ○リをやらかしていた『るろ剣』に対するパロディ返しという側面もあるのでどっちもどっち。
両者の関係が取り沙汰されることもあったが、後に和月氏の念願が叶って『サムスピ』が2Dに復帰。
さらにメイン数キャラのデザインを任されたということで、最終的には丸く収まったようだ。
そもそも、和月氏は『るろ剣』単行本のフリートークを見る限り『月華の剣士』について最初から悪感情を持っておらず、むしろこの作品の発表後、
「幕末版サムスピを夢にまで見た」とのたまい、鷲塚の「最終・狼牙」の演出を「ひたすらカッコいい」と断言するほど気に入っている。
当のSNKの方もDC版のオマケモードのクイズゲームの選択肢内で「飛天御剣流」とまんま名前を借りてきている事からして、
両者の関係はほぼ持ちつ持たれつなものだと推測される。
韓国版でのみ
多くのキャラクターの名前が韓国風に改められており、
それらの名前だけ見てみると
日本ではなく韓国が舞台であるかのようにすら見える。
楓が
キムだったり、あかりが
チョイだったり、李烈火が
黄だったり、関連性があるのか……と考えられなくもない名前も。
鷲塚が柳生になってるのはかなりややこしい事になりそうである
なお韓国では日本と分かる要素が入っているのはアウトらしく、楓の勝利ポーズで手に持っている日本刀が両刃の直刀に変更されたり、
あかりステージから鳥居などの日本と分かる要素が全て削除、変更されている。
幕末浪漫 月華の剣士
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ストーリー |
太古の昔より存在する二つの世界…。
生者が世界「現世(うつしよ)」と、死者が在りし地「常世(とこよ)」。
…この二つを繋ぎし境界を「地獄門」と呼ぶ。
そして、遙か神話の時代より、此の境界を守りし存在「四神(ししん)」、
「東の青龍(仁)」、「西の白虎(義)」、
「南の朱雀(忠)」、「北の玄武(礼)」。
人の世の歴史の影で、彼らは代を重ね、その役をこなし続けていった。
…時は流れ、「幕末」。
二百年以上続いた徳川幕府。
長き平安の果てに武士は牙を無くし、
人々は平和という「箱庭」の中で新たな「混乱」の兆しを感じ始めていた。
そして突然の動乱…
日本全土を圧巻する未曾有の天災…
「魔人復活」の噂…かつて無いほどの「混乱」の中、
人はただ絶望しているかに見えた。
…しかし、そうでは無い者達が居た。
未だその牙を失わず、「混乱」に立ち向かう者達…
動乱の真の原因を確かめようとする者…
その原因を知り、止めようとする者…
又、図らずも原因の中枢を担ってしまった者…
此の機に乗じて、野望を巡らす者…
「魔人復活」に惹かれる者…
それぞれの思惑を胸に、大いなる運命に導かれし者達の闘いが始まる。
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1997年12月にMVS(業務用NEOGEO)で稼動。
ROM容量473Mbit(MbitはMBの8分の1の単位で、8Mbit=1MBとなる)。通称は『一幕』など。
3D路線に切り替えられた『サムスピ』に代わって2Dに投入された、幕末剣客格闘ゲーム。
主人公は
楓、
ラスボスは
嘉神慎之介。
美形揃いのキャラクターやスタイリッシュで綺麗な演出、大幅に簡略化された操作系統などを特徴としており、
見た目も中身も「濃い」印象があった『サムスピ』とは別のプレイヤー層を狙った作品だったと思われる。
キャラごとに覚えることが少なく操作が簡単、かつ連続技が次々に繋がることを「単調な作業ゲー」と受け取るか、
「初心者に優しい」と受け取るかで本作の評価は大きく分かれている。
当然ながら格闘ゲームに慣れた既存ユーザーは前者、新規やライトユーザーには後者の意見が多く見られるが、
「弾き」によるシンプルな読み合いを軸とするシステムそのものはよくまとまっており、
『サムスピ』とはまた違った方向の武器格闘として一定の評価を得ている。
- PS版のみのキャラクター(いずれも隠しキャラだった)
一条あか狸(正体は狸のポン太。あかり
コンパチ)、木偶の示源(示源コンパチ)、真田小次郎(二幕の小次郎の兄。鷲塚コンパチ)
- 操作系統
- 1レバー+4ボタン(A: 弱斬り、B: 強斬り、C: 蹴り、D: 弾き)
- 剣質
- キャラクターを決定した後、性能の異なる「力」か「技」のどちらかを選ぶ。
『サムスピ』の「修羅」「羅刹」を発展させたようなものだが、本作では人格や人物が変化することは無い。
キャラによってはそれぞれの剣質専用の技が存在することもある。
各剣質についての考察は該当項目を参照。- 「力」
- 攻撃力が高く、通常技をガードされても削ることができる。
ただし武器攻撃をガードされると『サムスピ』シリーズ同様、跳ね返りモーションを取る。
- 昇華
- 特定の必殺技から超奥義・潜在奥義にキャンセルがかかる。所謂スーパーキャンセル。
超奥義を出せる状態であれば、特に使用条件は無い。
- 潜在奥義
- 剣質ゲージが満タン、かつ体力ゲージが赤く点滅している時(1/4以下)にゲージを全て消費して出せる大技。
- 「技」
- 攻撃力が低い代わりに一部の動作が速くなり、キャンセル可能な通常技が多くなる。
強斬りに限ってこちらでもガード時の跳ね返りモーションが出る。
- 連殺斬
- 小技から繋がるチェーンコンボやコンビネーション攻撃のようなもの。
基本的に蹴りは組み込まれない。
- 乱舞奥義
- 剣質ゲージが満タン、かつ体力が赤く点滅している時に22+ABで発動。所謂オリコン。
キャラクターが青く光り、持続時間が画面下部にゲージで表示される。
殆どの動作が速くなり、攻撃を他の攻撃でキャンセルできる(必殺技は必殺技でのみ可能)。
攻撃を当てた際のヒットバックが少なくなり、相手の仰け反り時間が増加。
また全ての攻撃で自動的に短距離前進し、空中に吹き飛んだ相手にも連続ヒットするようになる。
- 剣質ゲージ
- 自分が攻撃を当てたり必殺技を出すことによって溜まるスタンダードなタイプのゲージ。
最大量はどちらの剣質でも1本。MAXになっても特別な効果は無く、ストックしておくことができる。- 超奥義
- 剣質ゲージを1本消費して出す、所謂超必殺技。
体力ゲージが点滅している状態であれば使い放題。
- ダッシュ、バックステップ
- レバー前or後ろを素早く2回入力。ダッシュは2回目のレバーを入れ続ける間走るラン型。
- ジャンプ
- レバー上要素を短く入力で低く短く跳ぶ「小ジャンプ」、ダッシュ中に上要素で「大ジャンプ」、
ダッシュ中に短く上要素で「中ジャンプ」、ダッシュ中に短く後方斜め上で「ダッシュ小ジャンプ」。
- 特殊技
- ほぼ全キャラ共通。
- ←+A…パンチ。短いが発生が一番早く、割り込みや目押しの始動に使う。
- →+B…リーチの長い強斬り
- →+C…ふっ飛ばし蹴り。当たると壁バウンド。
- ↘+C…ダウンを取る転ばせ蹴り。所謂足払い。
- 中段攻撃
- ダウン追撃
- 相手がダウンしている時にレバー前方斜め下+BorC、またはレバー上要素+BorC(キャラによって異なる)。
この他全キャラの立ちCと、一部の必殺技などでも追撃が可能。
- 通常投げ
- レバー前or後ろ+B。失敗時はスカりモーションが出る。投げ抜けは無い。
実は大半のキャラがレバー入力と逆方向に投げるので、知らないと戸惑いかねない。
- 弾き
- 残像を伴って身体を後方に引き、タイミング良く相手の攻撃に合わせると相手を一定時間無防備にする。
レバーニュートラルor後ろ+Dで「上段弾き」、下or後方斜め下+Dで「下段弾き」、
前+Dで「上段必殺技弾き」、前方斜め下+Dで「下段必殺技弾き」。
相手の攻撃の上下段によって使い分ける必要がある。
必殺技は各必殺技弾きでしか弾くことができないが、必殺技弾きは通常技も弾くことができるため、
通常の弾きを使う必要性は基本的に無い。詳しくは該当項目を参照。
- ガードクラッシュ
- ガードクラッシュすると武器を落としてしまい、一部の行動と弾きができなくなる。
ただし『サムスピ』とは違い、素手状態でも相手の剣質が「技」の場合は通常技の削りダメージを受けない。
素手時に落ちている武器の近くでAorBを押すと拾うことができる。ガード耐久値を示すゲージなどは無い。
一部自ら武器を手放したり、発動中に攻撃を受けると武器を落としてしまう技もある。
- 空中ガード
- 垂直or後方ジャンプ中のみ空中ガード可能。一部地上技は不可。
- 移動起き上がり
- 挑発
幕末浪漫第二幕 月華の剣士~月に咲く華、散りゆく花~
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ストーリー |
遙か神話の時代、人間の存在する遙か以前。
世界には「死」というものが無く「常世」は存在しなかった
しかし最初の「死」が世界に訪れたとき「常世」は生まれた。
時の秩序は「封印の儀」を執り行い「死」を「地獄門」の内へと封印したのである。
この時より「現世」と「常世」の二つの世界が誕生し「生と死」の歴史が始まった。
「朱雀」の暴走より半年。
「常世」に繋がる大穴は、嘉神の大罪を語るが如く未だ天空に座し、「現世」を伺っていた。
再び境界を閉ざし、二つの世界を分断するには、遥か神話の時代より伝えられる「封印の儀」を執り行い、
「常世」からの気の流れを遮断する必要があった。
しかし、「封印の儀」とは、「四神」の力と「封印の巫女」が揃って初めて成り立つ儀式である。
「封印の巫女」を探すため、「現世」では「玄武」を中心にそれぞれが動きはじめていた。
時を同じくして「常世」。
深い闇の底では「封印の儀」を阻止するべく、様々な意識が引き寄せあい蠢いていた。
それらはやがて一つの思念となり、ある者を「現世」へ蘇らせた。
四神の長「青龍」として目覚め始めた楓。
天空を仰ぎ、己の過去が清算されていないことを悟る守矢。
新たな運命の兆しを感じ始める雪。
そして、奇跡的に命をとりとめ、己の運命を受け入れる嘉神。
それぞれの思いが交錯する中、時代は再び彼らを闘いへと誘って行く。
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1998年11月にMVSで稼動。ROM容量544Mbit。通称は『二幕』など。
シリーズ第二作にして完結作となった。ラスボスは
黄龍。
前作で既に完成されていたシステムがさらに洗練された改良版。
より駆け引きがシンプルになったが、対戦バランスは前作より悪化しており、バグや
永久も多数見つかっている。
特にゲーメストが発見した、ガード
硬直中にガード状態の切り替え(立ガード→屈ガード、屈ガード→立ガード)を行うことにより、
全キャラのガード硬直を大幅に短縮できる「ガード硬直短縮バグ」は難易度こそ高いが対戦の必須技術の一つとされ、
弾きと共に『二幕』における対戦の核の一つとなっている。
読み合いがよりシビアになった一方、新規プレイヤー参入を妨げる結果も生んだ。
操作感覚も基本的に大きな変化は無いため、やはり好みが分かれる一作となった。
とはいえ新キャラクターの登場、秀逸な
BGMや演出、ストーリー完結作ということもあって人気はこちらの方が高い。
ゲームとしての質は非常に高く、迷走を続けていた旧SNKが最後に放った輝きが『餓狼MOW』とこの『二幕』だったと言われている。
変更点のみ下記に記す。
- 剣質
- 剣質ごとにキャラクターのカラーと勝利演出が変化するようになった。
- また一部通常技(「力」のみ→+Cがキャンセル可能など)や奥義の仕様変化も。
- 「極」(新)
- 「剣質選択画面で技に合わせてCを6回、力でBを3回、技でCを4回」を4秒以内に入力。
「力」と「技」を合わせたハイブリットな隠し剣質。- 攻撃力が高く、通常技に削りダメージが付く。
- 連殺斬が使用可能。またキャンセルがかかる通常技が多い。
- 乱舞奥義、潜在奥義、昇華が使用可能。
- 防御力が大幅に低下し、剣質ゲージが極端に溜まりにくくなる。
- 昇華
- 連殺斬
- ルートが大幅に増え、蹴り攻撃も組み込めるようになった。
ただし前作の様に対応技ならばどこからでも始動するという事は出来なくなった。
- 乱舞奥義
- 22+AorBに変更。残り体力に拘らずゲージ1本消費で出せるようになり、
発動した直後自動的に突進、初段ヒット後ボタンやレバーをルート通り入力していくという、
デッドリーレイブ形式の乱舞技になった。
Aで出した場合の初段はしゃがみガード不能、Bで出した場合は立ちガード不能。
また各キャラはスタンダード、パワー、テクニカルのいずれかのタイプが設定されており、
ルートはこのタイプごとに4種類ずつ用意されている。
- ダッシュ攻撃(新)
- 前方ダッシュ中に攻撃ボタンで上段ダッシュ攻撃、レバー下要素が入っていると下段ダッシュ攻撃。
- ジャンプ
- 中ジャンプが削除。ダッシュ小ジャンプが前作の中ジャンプの操作になった。
- 同時押し攻撃
- BC同時押しで出る攻撃が剣質「力」の場合は「ガード不能斬り」、
「技」「極」の場合は中段判定の「打ち上げ斬り」(名前が変わっただけで前作の中段攻撃とほぼ同じもの)に変化。
- 通常投げ
- CD同時押しにコマンド変更。相変わらず半分くらいはレバーと逆方向に投げる(ニュートラルは前入力と同じ)。
- 弾き
- 「上段弾き」「下段弾き」「空中弾き」の3種類に変更。
必殺技は各動作の出際にキャラが白く光るほんの一瞬のみ弾けるようになった。
空中弾きに失敗すると着地時の硬直が長くなる。- ガードキャンセル弾き(新)
- 剣質ゲージMAX時にガード中に412+D。ゲージは全て消費する。
剣質「力」の自動的に跳ね返りモーションが出る技はガードキャンセル不可。
「弾き」と付いてはいるが性質的には、
相手を空中弾かれ状態にする動作中完全無敵・ガード不能・鋼体術(アーマー)無効化の打撃必殺技(ダメージは0)である。
ガードキャンセル弾きのモーションはほぼ全ての動作でキャンセルでき、追撃が可能。
- 空中受け身、地上受け身(新)
- 空中吹き飛び中、もしくは着地した瞬間にD。それぞれ可能な技・不可能な技が決まっている。
- ガードクラッシュ削除。
武器を落とすことが無くなったため、素手状態も同時に無くなった。
- 限界ダメージ(新)
- 連続技により一定量以上のダメージを与えると、それ以上いくら攻撃を当ててもダメージは増えなくなる。
これにより永久連続技で即死することは無いが、体力でリードしたまま時間切れまで逃げ切ることは可能。
MUGENにおける月華の剣士
SNK末期を支えた作品であり、未だに根強いファンも多く、MUGENでもボスを含む全キャラクターが製作されている。
武器格闘でありながら、積極的に
コンボを繋げていくというシステムの構造上から、
他の格ゲーキャラ群と比べてもモーションの早さなどで遅れを取っていることは少ない。
また弾きを狙い、相手の攻撃に割り込む楽しさもMUGENで再現されている。
大本のストーリーの出来もあってか、ニコMUGEN動画でのストーリーでの重要設定を担う事も多く、
『
KOF』と同じようにストーリー動画に影響を与え続けている作品の一つと言えるだろう。
最終更新:2024年11月17日 10:14