俺の部屋

 バレンタイン当日、特に変わることも無く俺はベットに座り、ハルトマンはソファ(袖から出した)でゴロゴロとしていた。
 廊下からは宮藤とリーネの声と台所から流れるチョコレートの匂いが流れ込む。
 一応バレンタインということで、ハルトマンの居るソファ横の、四角い木製テーブルには何の変哲もない赤い紙で包まれた板チョコが置いてある。
 これは俺が袖から出して置いたもので、別にハルトマンが買ってきたものではない。

俺「……甘ったるい匂いがしますね」

 窓を開けて換気をしようにも、現在この基地はチョコレート工場と間違われても仕方がないほどチョコの匂いを辺りにまき散らしていた。

エーリカ「俺がチョコを台所に大量に置くのが悪いんじゃない?」

俺「ごもっともです」

 前日、宮藤に頼まれて板チョコを袖から大量に出して台所に置いておいた。宮藤が言うには整備兵や他の501のメンバーにもあげるらしい。



エーリカ「俺ってさ、チョコ貰ったことある?」

俺「……」

 無言。
 こういう話での無言は回答のようなもので、納得したのかハルトマンは「そっか」と無言に返事を返す。

エーリカ「俺ーこれ貰うねー」

俺「どうぞ」

 包みを開けてハルトマンが大体の扶桑人が想像するような、四角くて長方形で茶色のチョコレートを取り出す。
 ハルトマンはそれを半分に割ると、ポリポリと音を立ててチョコを食べる。
 嬉しそうに食べるので俺はハルトマンに尋ねる。

俺「美味しいですか?」

 コクリ、とチョコを食べながら頷くハルトマン。
 それだけで俺には十分だったようで俺も笑う。



 チョコを食べ終わると、ハルトマンは俺の横へ座る。

エーリカ「ね、わたし今どんな匂い?」

 そう言ってハルトマンは俺に寄りかかる。
 ハルトマンの食べたチョコの甘い匂いと髪の匂いが嗅覚を刺激する。

俺「……いい匂いですよ、凄く」

 もっと嗅ぎたい。その欲望に流されるまま、俺はハルトマンを抱きしめくんくんと匂いを嗅ぐ。
 ハルトマンは抵抗せず俺の欲望を受け入れる。
 髪の毛、首筋、頬、あらかた匂いを堪能すると、今度は触りたいという欲望が現れる。
 そっと俺はハルトマンの背筋を指でなぞった。

エーリカ「んっ……」

俺「……大丈夫ですか?」

エーリカ「あんまり触られたことなかったからさ、案外くすぐったいね」

 えへへと笑うハルトマン、その笑顔に加速する欲望。



 片手で色々触りつつ、もう片手で器用にハルトマンの軍服を外す俺。ハルトマンは何も言わず、ただ俺を見つめている。

俺「……」

 ぴたり、とボタンをはずす手が止まる。

俺「……いいんですか?」

エーリカ「何が?」

 ハルトマンは首をかしげる。

俺「脱がしていいんですか、と言っているんです」

エーリカ「うん」

 即答。

エーリカ「トゥルーデから聞いたと思うけど、俺になら何されてもいい、っていうのは本心だからね」

 またハルトマンはニコリと笑う。

エーリカ「わたし、俺のこと大好きだし」


俺「……面と向かって言わないでくださいよ」

エーリカ「あ、照れてる? 照れてるよねー」

 ハルトマンが俺の頬を指先でつつく。

俺「ああもう脱がしちゃいますね!」

 最後のボタンに手をかけ、下着があらわになろうとした瞬間――

バルクホルン「おいお前達宮藤がチョコを……」

 その声と共に、俺の部屋は世界で最も気まずい空間になった。


 結局顔を赤くしたバルクホルンから色々といわれてあやふやになったバレンタイン。
 しかし当事者二人は特に何も言わない。

俺「まあ、このくらいの距離が丁度いいです」

エーリカ「だね」

 宮藤から渡されたチョコを食べながら、ベットでゴロゴロする二人だった。
最終更新:2013年02月02日 13:12