家族がいるのが当たり前だと思っていた
毎日一緒に飯食って、喧嘩なんかしたりして
それが当たり前だって、思ってた
でも、両親は僕が小学生の時に死んでしまった
交通事故だった
僕の日常は壊れた
それからの毎日は酷かった
親戚をたらい回しにされた
自分の居場所だと胸を張れる場所はなかった
そんな僕が今まで生きてこられたのも姉さんが居たからだ
どんな時も一緒だった
姉さんは大学にはいかず、僕をつれて親戚の家を出た
そして姉さんは寝る間を惜しんで働いた
そうやって僕を学校に行かせてくれた
僕「お姉ちゃん、ごめんね・・・」
姉の自由を奪っていると言う意識から僕がそう言うと
姉「ボクが生きていてくれるだけでお姉ちゃんは幸せだよ」
必ずそう言ってくれた
今思っても御人よしにも程がある
姉さんはよくバイオリンを弾いてくれた
姉さんはバイオリンを弾くのが上手だった
姉さんの曲を聞くと心が安らいだ
思えばその時からだろうか?ボクが曲に合わせて歌を歌うようになったのは・・・
~5年後~
僕は高校生になった、姉さんに恩返しをしたかったからバイトを始めた
高校生が稼げる金なんて高が知れてるし、姉さんはバイトなんかしなくていいって言ったけど
僕は姉さんには音楽の道に進んで欲しかった
その足しに少しでもなればいいそう思った
なのに・・・
姉さんは死んだ
病気だった、なんだかよく解らない長い名前の病気
なにもかもがどうでもよくなった
なぜボクから全てを奪うのか何度空に向かって問いかけたかわからない
病室で喋ることもつらい筈の姉さんは
最後に意識を失う前にボクに言葉を残してくれた
姉「ゴメンね・・・」
謝ってなど欲しくなかった、ただ生きて欲しかった
僕「やだよ、姉さん・・・!」
心から願い事、一人なんて嫌だった・・・
姉「・・・大丈夫、ボクには声が、歌がある・・!」
歌なんて姉さん以外に歌った事なんてない、なにを言ってるのかわからない
僕「僕には姉さんしかいない!・・・もういないんだよ!」
姉さんしかいない姉さんが死んだらボクは世界に一人きりだ、他にはなにもない
姉「大丈夫、ずっと私が付いてるよ」
それにね、と姉は続けた
姉「音楽はね、人の心を結んでくれるの」
―――――ボクは一人じゃないよ、きっと仲間ができるから
それが姉さんの最後の言葉だった
高校二年生 春
~夕方~
その日はうんざりするほどのいい天気だった
ボクは高校二年生、姉さんが死んでから半年がたった
今日は始業式だったのだが
ボクは学校にはいかなかった
両親の残したお金のおかげで学校にはなんとか通えたけど
行く気になんかならなかった
心にポッカリと穴が空いた感じだろうか
今のボクは姉さんと過ごした小さなアパートの家賃を払うためにバイトをするそれだけだ
叔母がたまに様子を見に来る、かわいそう、そう言わんとする叔母の瞳をオレは見る事は出来ない
そんな叔母に一緒に暮らそう、そう言われたこともある
でもボクは誘いを断った
この小さなボロアパートの一室だけがオレの居場所だ、そう言った
僕「・・・・・・なにやってるんだろ、ボク」
ボクは姉さんの大事にしていたバイオリンを抱える
早くに死んだ両親が姉さんに買ってくれた物
音符マークの右横に小さな音符マークという不思議なマークがある
これは二人で書いた落書きだ、私たちはこれと一緒、二つの音符だよ
姉さんが言っていた・・・
僕「・・・・・一人ぼっち、か」
ボクの隣にもう音符はない、一つきりの音、それは誰にも聞こえない
頭の中では解っている、前に進むべきだと
父さんも母さんも姉さんもそう願ってる筈だと、解っているつもりなのに
ボクは歌を口ずさむ
姉さんが作ったこの世に一つの大事な歌
僕の大事な宝物
僕「♪~♪~・・・・」
僕「・・・あ」
しばらくして時計を見ると時間は六時を過ぎようとしていた
僕「そろそろバイトの時間、だな」
アパートを出て目的地のコンビニに向かう
うるさい人ごみの中を一人歩く
僕「・・・・・・」
毎日考える、僕は生きている意味はあるのだろうか?
一人ぼっちの人生に意味はあるのか?
僕「ごめんね、姉さん・・・ボクは」
姉さんみたいに強くない
強くなんかないんだよ・・・
わかってる、弱音を言い出したらきりが無いって
僕「・・・・・!?」
ウーーーーーーーーーー!!!
その音がクラクションだと気付いた時には
もう、遅かった
目の前が、真っ暗になった
あれ・・・・・・?
真っ暗だ、ここはどこだ?天国?地獄?
死んだのかな・・・
あっけなかったな、ボクの人生
――起きてください・・!
なんだ?もう寝かせてくれよ
――――起きて!!
誰だ?もう死んだんじゃないのか・・・?
サーニャ「起きてっ!!」
僕「・・・・」
うっすらと目を開けるとそこには少女がいた
綺麗な髪をしている日本人じゃなさそうだが
天使?だろうか・・・
サーニャ「よかった、今だれかを・・」
天使は急いでいる様子だ、でも聞かなくちゃ
僕「・・ボクは・・・・」
懸命に言葉を紡ぐ
僕「・・・ボクは・・・・生きてるの?」
サーニャ「はい、待っててください!」
そう言って天使?は去っていく
僕「あれ?どこだ、ここ・・・」
そこには知らない風景が広がっていた
~医務室~
宮藤「はい、これで大丈夫です」
坂本「そうか・・・よくやったな、宮藤」
宮藤「えへへ」
ミーナ「それにしても夜中のハンガーに寝てるなんて」
坂本「ああ、しかし話を聞くにも起きてからではないとな」
ミーナ「そうね・・・」
宮藤「大きな怪我はないんですけど、すごく疲れてるみたいです」
坂本「・・・・・そうか」
ミーナ「とにかく起きたら話を聞きましょう」
そう言って三人は部屋を出て行く
~医務室 外~
サーニャ「あ、芳佳ちゃん!あの人は」
宮藤「サーニャちゃん、うん、大丈夫だよ」
サーニャ「よかった・・・」
ミーナ「サーニャさん、あの人はハンガーで倒れてたそうね」
サーニャ「・・・はい、夜間哨戒に行こうと思ったら」
坂本「見つけた、という事か」
宮藤「何かあったんでしょうか?」
ミーナ「わからないわ、とにかく様子を見て話を聞くとしましょう」
~翌日 夕方~
-医務室-
僕「・・・・・・」
ここは、病院?
サーニャ「あ、起きたんですね」
目を覚ますとそこにはまた彼女がいた
僕「天使さん・・・?」
サーニャ「え?て、天使?」
僕「・・・・・」
サーニャ「え、と・・・天使じゃないですよ////」
そりゃそうだ天使なんているわけない
ボクは気になる事を聞いてみる
僕「ここは・・・どこですか?」
サーニャ「501統合航空戦闘団、ストライクウィッチーズ基地の医務室です」
僕「そうですか・・・」
長い名前の病院だな、聞いた事ないぞ?
サーニャ「・・・・・・」ジー
しばらくして注意を彼女に向けると彼女はこちらを見つめていた
僕「どうかしました?」
なにか失礼があっただろうか、不安になる
サーニャ「あ、いえ、綺麗な声だなって」
声?ボクの声が綺麗?
僕「・・・ありがとうございます」
サーニャ「あ、ごめんなさい、急にこんなこと・・・」
お互いに気まずい空気になると突然これまた綺麗な少女が入ってきた
エイラ「あ、見つけたゾ、サーニャ!」
サーニャ「ダメ、エイラ静かにしないと」
エイラ「ゴ、ゴメン・・・」
僕「・・・・・・」
サーニャとエイラ?名前かな・・・?
エイラ「コイツか?昨日ハンガーで寝てた変わり者って?」
サーニャ「エイラ、変わり者とか言っちゃダメ」
エイラ「ゴ、ゴメン・・」
気になる単語がいくつかある、ハンガー?寝てた?
僕「あれ、体が痛くない?」
なんでだ?たしかボクは・・・
サーニャ「はい、怪我はないって」
僕「そんなバカな!車に引かれて無傷?」
鉄人になった覚えは無いんだが・・・
エイラ「オマエ、ナニ言ってんダ?」
僕「・・・・」
なんだ?どういうことだ?
恐怖にも似た不安が、頭をよぎった
―――――
―――
――
―
ミーナ「・・・記憶がない?」
僕「はい」
坂本「・・・じゃあここに来た理由も解らないんだな?」
僕「はい」
ミーナ「ハンガーで寝てた理由は?」
僕「わかりません」
バルクホルン「貴様、うそを言ってもすぐ解るんだぞ?」
僕「うそじゃありません」
ミーナ「・・・・そう」
坂本「ふむ、どうしたものか」
僕「・・・・・」
しばらくしてこのいかにも強そうな三人が現れて
質問攻めが始まったのだがボクは知らぬ存ぜぬを突き通した
どうやらここはボクの知ってる場所じゃないらしい
それとなく聞いてみたのだが、日本なんてないらしいしな
やっぱり天国とかか?
バルクホルン「・・・しかし部外者をここに置くわけにもいかん」
坂本「・・・そうだな」
僕「・・・・・・」
やっぱり天国でも居場所はない・・・か
ちょっと寂しいな
サーニャ「・・・少しだけ、少しだけここに置いてあげる事は出来ませんか?」
僕「・・・・!」
空気が重くなる中、サーニャと呼ばれる少女が口を開いた
エイラ「な、おいサーニャ!」
ありがたいけど、世の中そんなにうまくいかない事は知っている
ミーナ「・・・そうね」
バルクホルン「な、ミーナ!」
ミーナ「いえ、違うの・・この子は魔法力があるみたいなの」
坂本「・・・!」
エイラ「男なのにカ?」
僕「・・・・魔法?」
話がどんどん進んでいくがそれよりなんだ魔法だって?
なんなんだ一体?夢でも見てるのか?
バルクホルン「・・・」
ミーナ「とにかく明日ユニットを履いて貰いましょう、いいかしら僕さん?」
ボクはその場の空気に呑まれて
僕「・・・・・・」コクッ
うなずいちゃったよ・・・
坂本「とにかく飯だな!!お前も来い!」
僕「いえ、ボクは」
ミーナ「遠慮しなくていいわ、行きましょう」ニコッ
僕「まぁいっか」ボソッ
にしてもつくづく流されやすいなボクは、あはは・・・
―食堂―
リーネ「男の人?」
ペリーヌ「女々しいですわね」
エーリカ「女の子みたい!」
僕「・・・・・・」モグモグ
気にならないかと言われたら気になるが、嫌ではない
ボクは昔から年の割には小柄だし
顔も女性に近いから言われるのには慣れている
ルッキーニ「記憶喪失・・・?だっけ?」
ああ、ボクのことか、嘘だから別にいいのだが
バルクホルン「・・・・・・もし」
僕「?」
バルクホルンと呼ばれる人はボクの方を見て言った
バルクホルン「もし魔法力が無ければこのここには居られないぞ?」
食堂の空気は重くなる
エーリカ「ちょっと、トゥルーデ!」
バルクホルン「ここは最前線だからな」
なんだ?・・・最前線?まぁ、なんにせよ
僕「いえ、もういいです」
ボクは食べかけのご飯を置いて席を立つ
僕「ボクはここに居るべき人間ではありませんからね」
もう十分だ
ミーナ「ちょっと・・・!」
僕「助けて頂いてありがとうございました」
ここまでしてもらったんだもう本当に十分だ
バルクホルン「な・・・そういうつもりじゃ・・!」
僕「さようなら」
ボクは作り笑顔でそう言って、食堂を後にする
サーニャ「・・・・・」ガタッ
エイラ「な、おいサーニャ!?」
~外 夜~
潮風が体に染みる
僕「ま、行く場所なんてないんだけどね・・・」
当たり前だ、解っていたことだが、やはりボクの知る世界じゃないようだ
それにしても、下手に敬語使って疲れた・・・
僕「ご飯、美味しかったな」
思わず愚痴がこぼれてしまう
姉さん、ボクはやっぱり生きてる意味なんて・・・
ないのかな?
僕「♪~~♪~♪~~~」
夜の静寂に一つの歌が響く
歌う、この世に一つの宝物、ボクに最後に残ったもの
僕「~~~♪~♪~~」
僕「♪~~・・・」
曲が終わる、再び訪れる静寂
僕「一人きりの音楽会はおしまい、だな」
そう言ってそこを立ち去ろうとした時だった
サーニャ「・・・素敵な歌ですね」
どうやら一人きりじゃなかったようだ
僕「・・・・・天使さん?」
サーニャ「サーニャですよ、僕さん」
まぁ、名前は知っていたのだが
僕「サーニャさん・・・どうしたんですか?」
サーニャ「僕さんの事が気になって」
ああ、あの抜け出し方はまずかったかな?
僕「あなたが助けてくれたんですよね、ありが・・・」
サーニャ「敬語、じゃなくていいですよ」
なんだエスパーか何かなのかな?この子は
僕「・・・・ありがとう」
ボクは素直にお礼を告げた
サーニャ「どういたしまして」
そう言ってサーニャさんはボクの横に座る、そして
サーニャ「あなたは笑ってても笑ってない、悲しい目をしてる」
そんなことを言う
僕「気のせいじゃないかな」
サーニャ「きっと違うと思います」
僕「・・・・そっか」
サーニャ「はい・・・」
笑ってても笑ってないか・・・その通りだな
しばらくの沈黙の後ボクは口を開く
僕「ボクはさ・・・記憶喪失じゃないんだよ、本当は」
サーニャ「・・・」
僕「こことは違う遠い所から来たんだ・・・」
サーニャ「遠く、ですか?」
僕「うん、凄く遠い所」
別世界なんてアホな話はしなかった
サーニャさんはしばらくボクの顔を見て言った
サーニャ「歌を、さっきの歌をもう一回歌ってくれませんか?」
歌なんか人前で意識して歌った事なんて無いし、なんか恥ずかしいな
僕「・・・いいよ、助けてくれたお礼ってことで」
でも悪い気は不思議としなかった
僕「じゃあ、いきますね」
ボクは呼吸を整えて息を大きく吸って声を出す
僕「♪~♪~~♪~~~♪~♪~~~~」
僕「♪~~~♪~♪~~~~♪~~」
サーニャ「♪~~~♪~~」
彼女は繰り返されるパートを口ずさむ
音が響いて伝わる
歌を歌うのが気持ちいい
心からそう思った
しばらくして曲は終わりを迎える
僕「お終いです」ニコッ
サーニャ「はい」ニコッ
歌が終わってみると二人とも笑っていた
不思議と笑顔になれた
そして、後ろから音が聞こえた
パチパチパチパチ
僕・サーニャ「!!」
宮藤「いい歌ですね」
リーネ「うん」
ペリーヌ「褒めてあげないこともないですわ」
シャーリー「ああ、なんかホットするな」
ルッキーニ「zzzzzz」
エーリカ「ほんとだねっ!」
坂本「ああ、いい曲だ」
ミーナ「私も歌えばよかったかしら」
エイラ「サーニャの声だけよかったんダナ!」
サーニャ「みんな・・・////////」
僕「・・・ありがとうございます」
なぜか今日知り合った人がみんな居た
でも、歌を褒められる・・・嬉しいな
これじゃ十分過ぎる位だよ
僕「うん・・・じゃあこれで、サーニャさん、ありがとう」
そう言ってボクはみんなに背中を見せる
サーニャ「あ・・・」
バルクホルン「待てっ!!」
僕「・・・?」
食堂でボクに喋りかけてきた女性が声を掛けてきた
なんだろう?また説教かな・・・
バルクホルン「その、さっきは悪かった!」
ああ、気にしてたのか
確かにきっかけはこの人だけど
僕「いいんですよ、あなたは間違ってない」
間違った事は言ってない、それは解る
バルクホルン「・・・力を貸せ!」
僕「・・・え?」
思いもよらない一言にボクの足は止まる
バルクホルン「整備兵でもなんでもいい、記憶が戻るまでここにいればいい!」
僕「・・・!!」
ミーナ「バルクホルン大尉!」
バルクホルン「う・・・」
ミーナという人の声で彼女は黙る
そりゃそうだ、どこの誰ともわからない奴に居場所なんて
ミーナ「・・・僕さん、どんな形でもいい、私達に力を貸してくれない?」
バルクホルン「ミーナ!」
嘘だろ?
ミーナ「でも僕さん、決めるのはあなたよ?」
彼女は笑顔で、でも真剣に問いかけてくる
ボクなんかが居ていいのかな・・・?
僕「・・・いいん・・・ですか?」
坂本「ああ、そのかわりビシビシ行くぞ?」
わからない、今の気持ちがわからない
僕「・・・・・・」コクッ
ボクはうなずいていた
星空の下で
ボクはその時泣いていたかもしれない
姉さん、ボクは居場所が出来たみたいです
続く
最終更新:2013年02月02日 13:31