――――1939年 スオムス カウハバ基地
輸送用飛行船からカウハバ基地に降り立った俺は、この地のとてつもない寒さに辟易しながら倉庫を再利用した司令部へと向かう。
俺がこの基地に来たのは他でもなく、ここに転属になったのだ。
俺「しかし、本当に寒いな……。」
そう呟いてスオムス義勇独立飛行中隊についての資料歩いていると、鋭い眼光の女性がこちらに向かってきている。
あれは、この基地の管制士官「雪女」ことハッキネン大尉だろう。
俺は荷物を降ろして直立不動でカールスラント式の敬礼し、彼女に挨拶をする。
俺「本日よりスオムス義勇独立飛行中隊に配属になった俺少尉です。」
ハッキネン大尉は軽く答礼する。
ハッキネン「楽にしてください。話は聞いています、荷物を部屋においたら中隊の隊員と顔合わせをしてもらいます。」
俺「了解しました。」
敬礼の姿勢を解き、荷物を持って宿舎へと向かう。
……しかし、本当に寒い。
宿舎に入り、案内された部屋に荷物を置いてブリーフィングルームに向かう。、
その途中、何度かウィッチであろう少女達とすれ違ったが、なぜウィッチの宿舎に男性がいるのかというような奇異の目で見られていた。
カールスラントでもこういう事は何度かあったから慣れているつもりではあったが、そうでもなかったらしい。
この基地でうまくやっていけるかな…そう思いながら歩いていると、資料を抱えたスオムス人らしき少女を見かけた。
その娘は中尉の階級章をつけており、俺を見るとこちらへと向かってきた…と、思っていると何もないのに躓き転びそうになる。
俺「おっと!」
俺は倒れそうになったその少女が倒れないように咄嗟に彼女を抱えるが、書類はバラバラと辺りに散らばった。
エルマ「あ…すいません…!あ、ありがとうございます!……って、もしかして、俺少尉?」
俺「えぇ、そうです。……って、なんで俺の名前を?」
エルマ「わぁ、本当に男の人のウィッチなんですねぇー…」
俺「あの?」
エルマ「は、ご、ごめんなさい!私はエルマ・レイヴォネン中尉です!」
資料を拾うのを手伝いながら、エルマの顔を見る。
スオムス空軍中尉、エルマ・レイヴォネン。
スオムスいらん子中隊の中隊長であり、今日から俺の隊長になる少女である。
エルマ「良かったぁ、優しそうな人で……。」
俺「ああ、じゃあ君が俺の隊長だね?」
エルマ「は、はぃ!」
俺「今日からここで世話になる俺少尉だ、よろしくエルマ中尉。」
エルマ「こ、こちらこそよろしくお願いします、俺少尉。」
俺「とりあえずブリーフィングルームに行こう」
エルマ「そ、そうですね……」
その後、俺はエルマ中尉に案内されて他の隊員が待つブリーフィングルームへと向かった。
ブリーフィングルームには既に他の隊員達とハッキネン大尉がいた。
俺とエルマが急いで部屋に入ると、長い金髪の女の子が「二人はもうお知り合いなのねー!」とからかってきた。
俺はそれを無視してハッキネン大尉の横に立つ。
最後にエルマが急いで席に座ると、ハッキネン大尉が話し始めた。
ハッキネン「今日からこの中隊に配属される俺少尉です。俺少尉、自己紹介をどうぞ。」
俺「えー…本日から、義勇独立飛行中隊に配属になりました俺少尉です。
原隊はカールスラント空軍第1訓練航空団第Ⅳ飛行隊第12中隊の所属でした。
至らない点もあると思いますけどよろしくお願いします。」
ハッキネン「俺少尉はカールスラントで航空ネウロイと陸上ネウロイ合わせて24機を撃破した戦績がある。」
キャサリン「OH!男の人のウィッチって珍しいね!リベリオン海軍じゃ見たこと無かったねー。」
智子「……。」
ビューリング「……。」
ハルカ「わぁ、エースさんなんですね!」
ウルスラ「……。」ペラッ
しばし流れる沈黙。
…創設されてまだ1週間しか経ってないと聞いていたが、仲悪いのだろうか。
その沈黙を破るようにエルマが声を張り上げる。
エルマ「え、えーっと…遠路はるばるスオムスへようこそ!まずは自己紹介しないと、いけませんよね!」
俺が着席したのを確認すると、エルマが自己紹介を始める。
エルマ「さっきも言いましたけど…エルマ・レイヴォネン中尉です。その、一応この義勇独立飛行中隊の、中隊長をやらせてもらってます…。
よろしくお願いしますね、俺少尉っ!」ニコッ
俺「うん、よろしくね。」
エルマ「じ、じゃあ次は……。」
キャサリン「リベリオンのテキサス生まれのキャサリン・オヘアね!階級は少尉ね!」
調子良く立ち上がったのは巨乳の女の子だった。
資料では確か新鋭機を全損させたとかなんとか…。
俺「リベリオンかぁ…。よろしくオヘア少尉。」
キャサリン「よろしくね、俺!俺とエルマはお知り合い?」
俺「いや、さっきそこでぶつかったんだ。」
キャサリン「もしかしたら運命の出会いかもねー!」
エルマ「そ、そ、そんなことないです///」
と、盛り上がるキャサリンとエルマの横でキャサリンの隣の少女が立ち上がる。
ビューリング「ブリタニア空軍、エリザベス・ビューリング。階級は少尉。」
こっちの少女は、単調に自分の所属、名前、階級を述べただけで着席してしまった。
無愛想だな……。
俺「よろしく、ビューリング少尉。」
ビューリング「……。」
無視かい……
ウルスラ「わたしはカールスラント空軍、ウルスラ・ハルトマン曹長です。」
そしてその次に立ち上がったのは、同じカールスラント空軍出身の少女だった。
……この子もビューリング少尉のように官姓名だけ言うと、座って読書を始めてしまった。
俺「よろしく、ハルトマン曹長……。」
読書を始めた彼女はもう俺に興味はないとばかりに読書に没頭している。
すごい集中力だ。
ハルカ「あの、私は扶桑皇国海軍の迫水ハルカ一等飛行兵曹です!趣味はお菓子作りで、お団子作りが得意です!」
ハルカ兵曹は、独特なメンバーの中で唯一普通に見える。
俺「よろしくな、ハルカ兵曹。」
智子「扶桑皇国陸軍、穴拭智子少尉です。」
そして最後に立ち上がったのは、なんだか不機嫌そうな扶桑の少女だった。
この人、確かどこかで……あ!
俺「もしかして、扶桑海の巴御前の穴拭智子少尉?」
智子「知ってるの?」
俺「新聞で読んだことがある。いやー、こんな所で有名人にあえるなんて感激だなぁ!」
智子「あ、ありがとう…」
俺「よろしくたのむよ、穴拭少尉。」
智子「ええ、よろしく。」
自分を知っている俺に驚いたのか、少々間の抜けた顔になった後、席についた。
エルマ「それで、俺く、俺少尉のために歓迎会の準備をしてあるんですけど……。」
智子「中隊長殿。この前も言ったはずですけど、ネウロイはいつ来るか分からないんです。
だから歓迎会なんて呑気なことはやらずに、訓練をするべきでしょう?」
エルマ「で、でも……」
智子「訓練は私に一任する、そうおっしゃいましたよね?」
エルマ「は、はいぃ……」
智子「では今から飛行訓練を行います。俺少尉も、いいわね?」
俺「は、はぁ……」
どうやらここは中尉よりも少尉の方が位が高いらしい。そう思えるほどにエルマは弱気だった。
俺は俺で、智子の熱血さに気圧され、着任早々であるが、訓練飛行を行うために格納庫へ向かった。
整備兵「俺少尉殿、貴官のストライカーはこちらですよ。」
と、格納庫でウロウロしていた俺に整備兵が声をかけてくれた。
整備兵「いやぁ私も各国のストライカーユニットと武装を見てきましたが、まさか爆撃脚が来るなんて思ってませんでしたよ。」
案内された先にはカールスラントで愛用したJu88ストライカーユニットが鎮座していた。
Ju88は戦闘用ストライカーユニットよりも速い爆撃用ストライカーユニットをコンセプトに作られたストライカーユニットなのだ。
そのため、爆撃脚でありながら時速500km/hを超える速度を出すことができ、武装も重量は増すものの、普通のストライカーユニットより多く持つことができる。
整備兵「…そして武装が機関銃のMG17と対戦車砲の7.5cm PaK40……。とんだゲテモノ装備ですな。
これだけ大口径の対戦車砲を運用する航空ウィッチなんて聞いたことがありませんよ。」
そう、俺が「フライングアーティラリー」のあだ名で呼ばれたた最大の理由は、本来は陸軍が運用する75mm対戦車砲を主武装として使っているからなのである。
俺「はは、よく言われますよ。武装がデカけりゃいいってもんじゃない、お前は砲台かって。でもこいつで一撃離脱すれば、大概のネウロイはイチコロですよ。…最近は使ってないんですけどね。」
整備兵「そりゃまたどうして?」
俺「昔、ちょっとした事故を起こしちゃいましてね……。まぁお守りみたいなもんですよ。」
整備兵「随分とデカいお守りですな!ガハハ!」
俺「確かに…。じゃあこれから、俺の機体の整備よろしくお願いしますね。」
整備兵「俺たちを泣かせるような使い方しないでくださいよ?」
俺と整備兵は握手を交わす。
俺「気をつけます。…それで、もう使えますか?」
整備兵「いつでも飛行可能な状態ですよ。これから訓練ですか?」
俺「えぇ、穴拭少尉と飛行訓練をやるそうで。」
整備兵「扶桑海の巴御前とですかい?へぇ、俺たちも見学させてもらいやすぜ少尉殿。」
俺「ははっ…まぁ、頑張りますよ。」
ここの整備兵は良い人のようだ。
珍しい男性ウィッチとして奇異の目で見られていた俺は、彼らの人当たりのよさに感激しながら、愛機のJu88へと足を突っ込んだ。
魔法陣を展開し、使い魔であるジャーマンシェパードドッグの耳と尻尾を発現させる。
ストライカーに魔力が供給され、BMW801魔導エンジンが回転しはじめ、エーテル体がプロペラの形となって風を巻き起こす。
俺「調子いいな……俺少尉、出撃します。」
MG17機関銃と75mm対戦車砲を持ち、滑走路までタキシングしながら向かう。
滑走路には智子、ハルカ、エルマが既に待機しており、中央にいた智子こちらを睨んでいた。
智子「一体何やってたの?遅すぎるわ!」
俺「すまん…整備兵とストライカーユニットについて話してたからな…。」
智子「そんなのは後にしてちょうだい。それで、あなたのストライカーユニットはなに?」
俺の脚には、角ばった形のストライカーが装着されていた。
俺「Ju88戦闘爆撃用ストライカーユニットだ。」
智子は俺が背中に背負っているPaK40に気づいたのか、そちらを見ながら聞いてくる。
俺「7.5cm対戦車砲だよ。ネウロイなんて一発……。」
智子「それ…当たるの?」
智子に話を遮られ少しイラついた俺だが、話を続けた。
俺「……まぁ、それなりに。っていっても
模擬戦で使うのはこっちのMG17になるだろうけどね。」
智子「ふぅん…ま、いいわ。これで全員揃ったわね。それじゃあ私の後についてきて。」
そう言って智子は、膝を曲げ滑走を始める。十分な速度を得たところで魔力を解放して姿勢を伸ばし、離陸する。
智子の使用する九七式戦闘脚のエンジン出力は大きいものではないが、機体重量が軽いためグングンと上昇していく。
それに続くのは十二試艦上戦闘脚を履いたハルカであった。十二試艦戦は最新鋭機のため、上昇力は一番あるのだろう。
その次にG50を履いたエルマと続く。
そして最後はJu88を履いた俺だ。やはり武装と機体の重さがネックなのか、他のストライカーユニットに比べて幾分か長めの滑走距離を必要としていた。
高度3000mに達した時点で中隊は水平飛行に移り、先頭の智子が喉頭式通信機のスイッチを入れる。
智子「あー、こちら扶桑一番、全員上がった?」
ハルカ「扶桑二番、大丈夫です!」
エルマ「スオムス一番、だ、だいじょうぶでーす!」
俺「え、えーっと……。」
エルマ「俺少尉、えっと、国名がコールサインになってるんです。」
俺「あー、なるほど、了解した。ってことはカールスラント二番か…。
カールスラント二番、大丈夫だ。エルマ、ありがとう。」
エルマ「い、いえ、とんでもないです!」
エルマは顔を真っ赤にしながら、手をわたわたと振っていた。
俺「……穴拭少尉。エルマとハルカ兵曹以外の3人は?」
智子「…さぁね、どこかを散歩でもしてるんじゃないかしら?」
俺「散歩?そうか……」
後で聞いた話なのだが、ビューリング、ウルスラ、キャサリンの3人は俺達が訓練をしている間、
基地から30分ほどのスラッセンという街の酒場にいたらしい。
智子達4人は上がった順番に編隊を組み、しばらく巡航速度で進む。
すると、智子が通信機を発信の合図のために二度叩き、3人に伝える。
智子「では散開、この前みたいに私一人で相手するわ。」
エルマ「あ、あの…穴拭中尉、今日もやるんですかぁ?」
智子「当たり前です。あなた達が上達するまで、やりますから。」
ハルカ「智子少尉、怪我しちゃいますよぉ!…智子少尉が怪我したら私、私…!」
智子「はいはい、私より自分の心配をしてね。」
俺「あの、一体何が始まるんだ?」
智子「あなた達3人で私1人の相手をするの。お分かり?」
俺「な、なるほど……。」
俺は内心、そんな無茶な、と思っていた。
彼女がいくら扶桑海の巴御前と呼ばれていても、
大多数のネウロイと違って複雑な動きをするウィッチ3人を相手にするのはいささか無理がありすぎる。
そんな事を考えている内に、ハルカの元気な声が通信機を通して聞こえてきた。
ハルカ「扶桑二番、行きまーす!」
ハルカは滞空している智子に向けて一直線に突っ込んでいく。
目をつむりながら突進するので、もちろん攻撃が当たるわけもない。
智子はひらりとハルカを避け、刀の鞘でぽんと頭を叩く。
ハルカ「あいたっ!」
智子「はい、撃墜。」
あっさりと撃墜判定をもらってしまったハルカは、すごすごと安全空域へと退避した。
…そういえばさっきからエルマの姿が見えないのだが…見つけた。安全空域をぐるぐると旋回している。
なるほど、これでは穴拭少尉が一人で相手しても勝てるわけだ。
智子「中隊長!またそんなところにいるんですか!?」
そういって智子が一睨みすると、エルマはひっ、と小さく悲鳴をあげる。
エルマ「き、今日も撃墜でいいでーす!」
智子「だから!それじゃあ訓練にならないと言っているでしょうが!」
エルマ「ご、ごめんなさーい!」
臆病なエルマは、智子に謝罪しながら遠くへと逃げてしまった。
…全く、中隊長の癖になんて臆病虫なのかしら…そう考えたところで智子は気づく。
智子「俺少尉は一体どこ?」
俺少尉の姿が見当たらずに辺りを見回していると、はるか頭上に彼の姿を認めることができた。
智子「あんなところに…!」」
智子はキ27の軽快さを駆使して俺を追うように上昇していく。
俺は、Pak40を背負いなおしMG17を手にして智子とヘッドオンするように急降下を始める。
智子「私と格闘戦をするつもり?面白いわね…!」
智子は軽く下唇をなめ、扶桑刀を抜き取り、俺との距離を縮めていく。
100メートル、70メートル、50メートル……。
俺との距離がぐんぐんと近づき、25メートルまで来たとき、智子は体を沈め、軸線をずらす。
そしてそのまま沈み込んで俺の下へと潜り込み、ループをする。そうすれば、俺の後ろを取れるはずだったが、その予想は外れた。
智子がループし終わった瞬間に、俺のMG17が智子の顔に突きつけられていた。
俺は、智子とすれ違った瞬間に右足のダイブブレーキだけを展開させたまま、
右足の推力をあげて右足を軸にするように無理やり横回転をしてループしてきた智子と正対したのだ。
こうする事によって、すれ違った瞬間に方向転換し、敵の後ろを取れるのだ。
無理矢理ではあるが、ストライカーユニットだからこそできる機動であった。
俺「これは、俺の勝ちでいいのかな……?」
俺はニヤリと口角をあげ、智子に尋ねる。
智子は呆気に取られたような顔をしていた。
智子「え、えぇ…そうね。俺少尉の勝ちだわ。……完全にやられたわ…。」
智子は悔しそうに刀を納めながら、通信機のスイッチを入れる。
智子「二人共、訓練は終わりよ。基地に帰りましょう。」
ハルカ「はーい。」
エルマ「うぅ、二人共、大丈夫なんですかぁ~?」
俺「あぁ、大丈夫だよエルマ中尉。」
エルマ「良かったー…早く帰ってサウナに行きたいです。」
俺「サウナなんてあるのか?」
エルマ「えぇ、えっと、スオムスじゃお風呂じゃなくてサウナに入るのが常識で……。」
智子「俺少尉、あの時どうやってあんなに早くターンしたの?」
俺「あぁ、この機体にはダイブブレーキっていうのが付いてて、そいつを使ったんだ。
かなり無茶苦茶なターンの仕方で、よく整備班の連中に怒られてたんだけどね。」
そんな会話をしながら、訓練を終えた俺たちはカウハバ基地へと着陸した。
ストライカーを格納庫に戻し、整備兵と少しだけ調整の話をした。
その後、食事をとろうと食堂に向かう途中に、突然背後から高らかに笑い声が聞こえてきた。
アホネン「おほほほほほほほ!」
その笑い声がした瞬間、智子はめんどくさそうにため息を吐き、エルマはびくっと肩を震わせ、ハルカは顔を赤らめつつ笑いを我慢していた。
俺が何事かと思って振り返ると、お揃いのボアがついた革のジャケットを着て、腕にはスオムス空軍のマークをつけた十人ほどの少女が並んで俺たちを見つめていた。
エルマ曰く、スオムス空軍の正式なウィッチらしい。
エルマ「アホネン大尉!」
そう叫んだとき、ハルカが「ブフォ」と吹き出した気がするが、気にしないでおこう。
アホネン「はぁーん?この殿方がエルマ中尉の部隊に配属されたっていう新しいウィッチね?
スオムス一の落ちこぼれ部隊はどこの馬の骨とも知れない殿方でも入れてしまうのね。
部隊としてのプライドは無いのかしら。さすが"いらん子中隊"ね。」
彼女がそう言うと、後ろにいた十人ほどの少女が大声で笑う。
アホネン「先ほどの訓練、見せてもらったわ。穴拭智子少尉、あなた、『私は格闘戦でサイキョー』なんて思ってたみたいでしたけど、
そんなこと無かったわね!」
智子「なっ!そ、そんなこと言ってないわよ!」
アホネン「でも、格闘戦に随分と自信をお持ちになっていたじゃない。」
智子「ぐぅっ……」
智子は図星を突かれたのか、押し黙ってしまった。
アホネン「それも今日まででしたわね。それから、エルマ中尉。」
エルマ「は、はいぃ……。」
アホネン「今日もあなたは逃げてばかりでしたわね。あなたは逃げるしか能がないのかしら?」
エルマ「すいません……。」
ハルカ「は、はぃ、すいません!私は今日もがむしゃらに突撃してしまいました!すいません!」
アホネン「あなた、いつも素直なのね。わたくし、すきよ。」
それからアホネンはハルカに近寄り、彼女のあごを持ち上げる。
ハルカ「ひぇ…や、やめっ…んー…!」
アホネンはハルカの唇に自らのそれを押し付けた。
ハルカ「ぷはっ…!」
智子「ちょ、ちょ、ちょっと!またあんたはぁ!」
アホネン「あら、この間も言ったでしょ?挨拶してさしあげただけよ。」
智子「やっぱりあんたおかしいわ!」
アホネン「それは人の自由でしょ?」
智子とアホネンが言い争っているところに、俺が声をかける
俺「アホネン大尉、でしたっけ?一体何なんです?黙って聞いていれば偉そうに……。」
アホネン「あーら、俺少尉でしたかしら?あなたの資料読ませてもらいましたわ。
戦績はそこそこのようですけど、カールスラントで戦ってた割には少ないんじゃなくて?」
俺「それは、カールスラントに制空権がなく、爆撃隊だった我々は中々出撃できなかったものですから…。」
アホネン「そうでしたのー。でもあなたはカールスラント空軍で重営倉に入っていたそうじゃない!
確か…当時の上官を後ろから撃ったんだったかしら?」
アホネンがそう言うと、後ろの少女たちがヒソヒソと声を潜め喋りはじめる。
「聞きました?上官を撃ったですって…。」「まぁ、怖いですわね……。」
「どうしてカールスラントはこんな犯罪者を寄越したのかしら…。」
エルマ、智子、ハルカは驚いて俺の顔を見つめる。
特にエルマは顔を真っ青にして涙目になっていた。
俺「アホネン大尉。何か勘違いしているようですが、あれは事故です。」
アホネン「ふん、どうかしら?ま、せいぜい私たち正規軍の足を引っ張らないよう訓練に励みなさいな!おほほほほほ!」
そう言って、アホネン達は去っていった。
智子「なによあいつ、なによあいつ、なによあいつ!覚えてらっしゃい!絶対に見返してやるわ!」
アホネンが立ち去った後、智子の叫びが日の落ちたカウハバ基地にこだました。
最終更新:2013年02月02日 13:52