48.俺「ストライクウィッチーズじゃねえの?」 478~485
ミーナ「はい皆さん、注目!」
パンパン、とミーナさんが手を叩くと、何人かの視線が俺に集まる。
何人か、というのは大抵の人は席についているけど、机の上に寝そべっている人や殆ど眠り込んでいる人もいるからだ。
ミーナ「今日から新しく、皆さんと共にストライクウィッチーズとして戦うことになった俺さんです。
男性のウィッチだけど、皆さん仲良くね。階級は伍長になります」
そういうと、ミーナさんは俺に自己紹介を促した。
俺「どうも、俺って言います。趣味はのんびりすることかな・・・・よろしく」
ミーナ「・・・・俺さんに質問とかはありますか?」
ルッキーニ「はいは~い! ムシ好き!?」
元気良く質問してきたのは黒髪の、日焼けした少女だった。見た感じこのメンツだと一番小さいのかな。
最初の質問が「虫が好きか」ということで拍子抜けしたけど子供の言うことだしな・・・・
答えにくい質問ってわけでもなかったからいいか。
俺「虫? まあ、虫に限らず動物は好きかな」
ルッキーニ「じゃあ今度虫取り行こうよ!」
俺「ん、いいね」
ミーナ「他には?」
他に誰も質問がないか確認して、坂本さんが手を挙げた。
坂本「私からいいか? 昨日も気になっていたが、姓がないというのはどういうことだ?
何かやむを得ぬ事情があるのならば無理に言わなくてもいいが」
答えにくい質問だ。やっぱりそこを突かれたな。
無理強いされているわけではなさそうだし、簡単に説明するといいかな。
俺「・・・・俺の家系はあることを生業にしてるんだけど、それを継ぐ者は必ずその姓を名乗るんだ。
俺はその家業が嫌になって飛び出してきた、だから姓を名乗る資格がないってこと」
坂本「そうか・・・・嫌な質問をしてしまったかな」
俺「いつか聞かれるかなって思ってたし、気にしてないよ」
ミーナ「それじゃあ、質問はこれで終わりね。必要な物資・・・・認識票とかはここにあるから」
机の上に置いてある大きな箱。そして、その上には拳銃が置いてあった。
この世界ではどうかは知らないけど、俺の世界ではこんなものを持てる人は限られる。
そのため、生で拳銃を見るのは
初めてだった。
人殺しの道具・・・・
俺「これはいらないや」
初めて見ることもあり、暴発とかを過剰に意識しながら丁寧に渡す。
ミーナ「もしもの時のために持っておいたほうがいいと思うけど・・・・」
俺「俺には使えないよ」
そのやり取りを見て、坂本さんが大いに笑った。
坂本「あっはっはっは! 去年の宮藤を思い出すな!」
宮藤「さ、坂本さん・・・・」
ペリーヌ「全く! 宮藤さんといい、どうしてこう綺麗事を!」
綺麗事、か。
銃の扱い方がイマイチ分からないってのもあるんだけど、綺麗事とか関係なしに俺は自分の手が血に染まることが怖い。
だから、ミーナさんのいうもしもの時に遭ったとしても相手に害を及ばさずに逃げ切るつもりでいるし、
それができなければ死ぬだけだとさえ思っている。まあ、それでも傍から見れば綺麗事にしか見えないんだろうけど。
ミーナ「それじゃあ、これは預からせてもらうわ。あとは・・・・これで終わりかしら。
まだ紹介とかが済んでない人は早めにお願いね。それじゃあ、解散!」
全員が一斉に立ち上がり、ミーナさんが鋭い表情で辺りを見据える。そして、ちょっとしてから立ち去っていった。
これで終わったんだな。毎日こんな感じだと慣れるの大変そうだなァ。
俺も明日からは寝ながら受けようかな、でも新入りがいきなりそんなことすると顰蹙買うかな、とか考えていると
ルッキーニ「隙あり!」
と、後ろから手を差し込まれ、胸を触られた。
この声は、虫っ子だっけ(さっき「虫好き?」って質問してたから)。
ルッキーニ「うじゅじゅ・・・・超残念賞・・・・」
エイラ「当たり前ダロー、男なんだから」
俺「超残念賞かー、これでも鍛えてあるんだけどな」
ルッキーニ「そうじゃなくてー! やわらかさ!」
柔らかさ? こっちでは胸が柔らかい方が優れているのか?
シャーリー「あっはっはっは! 紹介がまだだったな。私はシャーロット・E・イェーガー。シャーリーって呼んでくれ」
俺「よろしく、シャーリー」
ルッキーニ「私はフランチェスカ・ルッキーニ!」
エイラ「私はエイラ・イルマタル・ユーティライネン。こっちはサーニャ・V・リトヴャク」
そのサーニャは、エイラに支えられて大きく首を振りながら立っている。
まだ眠っているのか・・・・器用だな。
俺「みんな、よろし――」
エイラ「サーニャに変なコトするんじゃネーゾー!」
握手しようと手を差し出したら、敵意剥き出しの表情で睨みながら警戒された。
俺「別に食ったりしないよ・・・・」
エイラ「ソンナこと言ってるんじゃないんだけどナ」
シャーリー「はっはっは! 面白いヤツだなー」
坂本「よし、この後は新しく俺を入れて宮藤とリーネ、三人で午後から訓練だ。
その前に、二人は基地を案内してやってくれ」
芳佳、リーネ「はいっ!」
◇ ◇ ◇
芳佳「俺さんって優しいんですね」
俺「ん、どゆこと?」
二人に基地を案内してもらいながら雑談をしている。
食堂と、ハンガー・・・・格納庫のことらしい。
色々と主立った場所を教えてもらって、あとは俺の個室だけだ。
芳佳「さっき拳銃を返してたじゃないですか。私、感心しちゃいました」
リーネ「私も、去年の芳佳ちゃんを思い出しちゃったな」
俺「俺のは優しい、ってのとは違うかな」
リーネ「え?」
俺「相手を傷つけたくない、って気持ちがあるんなら優しいのかもしれないな。
でも、俺は相手が傷つくことよりも単純に自分の手が血に染まることが嫌なだけ。
結局自己中心的な考え方なんだよ」
芳佳「それでも―」
俺「穢いことを他人にやらせて自分は高見の見物、とも言い換えれる。
芳佳は本当に心から相手が傷つくのが嫌だから銃を返したんだろ? そっちの方が何十倍も立派だと思うよ俺は」
芳佳「俺さん・・・・」
俺「まあ、俺のことは気にしないで。それより俺の部屋まだかな?」
リーネ「あっ、通り過ぎてた! すみません!」
それから少しだけ通った所を引き返した。
◇ ◇ ◇
俺に用意された部屋は、ベッド以外には何もないけど一人分には十分なスペースの部屋だった。
リーネ「空っぽ・・・・ですね」
芳佳「私の時と同じだね」
俺「部屋を与えてもらえるだけでもありがたいよ。
おまけにベッドが付いてくるなんて」
そう言ってベッドにごろんと寝転んだ。
俺「ふぅ~っ、ちょっと寝よっかな。飯の時間になったら起こしてくれ」
芳佳、リーネ「はーい! ごゆっくり」
二人がいなくなったのが分かると、俺は寝転んだまま右の手を握り締めて目の前にかざす。
ここにいる皆は、この世界を守るという大義を持って戦っている。
俺はまだこの世界に来て間もないし、この世界に対して義理だとかそういうものがない。
でも、ここの人たちは良い人たちだ。腹が減って死にかけていたところを助けてもらった恩がある。
その恩を返すために、この手で報いなければならない。
ただ、相手が誰であろうとやっぱりこの手を血に染めることが怖い。
俺が俺でなくなってしまう、そんな気がしてならない。
だから雑用係に落ち着いてそれで恩が返せればと思ったけど、なんか違うんだよなァ・・・・
じっちゃんから「恩は忘れるな」って教えられてきたし、雑用程度では恩返しにならないと思っている。
・・・・どうすればいいのかな。
最終更新:2013年02月02日 13:58