空の上に私はポツンと一人で飛んでいる。足にはずっと前に壊れた私のストライカーユニット。

私「……血?」

 胸のあたりを触るとべったりと血が手に触れた。ああこれは夢だ、いつも見る夢。
 裏切られて、裏切って。
 撃たれて捨てられて苦しんで壊して殺して、いつもその繰り返し
 夢を見るネウロイなんて私だけなのだろう。これだから元人間は困るものだ。

私「あれは……」

 ふと横を見ると小さな子どもたちの前に立っている自慢げな私がいた。
 全く、これは私にとっての黒歴史だな。今すぐにでも枕に顔を埋めて足をバタバタしたい気分だ。

子供(お姉ちゃん達が居れば僕達大丈夫なの?)

私(ああ、私たちはネウロイから世界を守るために戦っているんだ。大丈夫さ)

 我ながら若かったなと思う。あんなセリフはただの幻だったというのに。




 目を覚ますとコアのある部屋にいた。そうだ昨日はここで寝たんだった。
 私が起きたのに気付いたのか、ネウ子がどこからともなく現れる。

ネウ子(おはヨー)

 ネウ子の手には機械部品が入った箱がある。

ネウ子(はいどうぞ)

 その機械部品が入った小箱をネウ子は私に渡す。
 中身はネジにギアに何かの鉄塊だったり、恐らくは航空機の部品だろう。

私「……」

ネウ子(食べないの?)

 何度も言うが私はある程度は人間だ。消化器官もコアとほぼ融合しているとはいえ、流石に金属を消化できるほどネウロイにはなっていない。

私「気持ちは嬉しいが私は金属は食べれないんだ」



ネウ子(へー、デマだったんだ)

私「デマ?」

 ネウ子はコクリと頷く。

ネウ子(うん。知り合いの巣のネウロイがあいつは金属が大好物だって言ってたから)

 誰だそんなこと言った馬鹿は。そのうち聞き出して巣を破壊してやろう。

ネウ子(で、それはともかく本題なんだけど)

私「どうやって基地に入るか、だな」

 いくら私がある程度人間とはいえ一般人が基地に入ることは難しい。
 だからといって軍人として基地へ向かうと所属する基地を調べられてばれることになる。

私「どうしたものか……」

ネウ子(うーん……)

 時計がないので正確な時間はわからないが、30分ほどしたところでネウ子が手をたたいた。

ネウ子(いい方法があるヨ)

 私はその時のネウ子の表情(見えないけど)を二度と忘れることはないだろう。






 拝啓、私がぶっ殺した妹様、地獄ではお元気でしょうか。
 現在私は噂の基地の近くの海を漂っています。
 何故こんなふうに漂っているかというと――

ネウ子(足を滑らせて海に落ちて漂流してるところを救助されればいいヨ!)

 とのことで私は現在仰向けで海を漂っています。
 時折波で目に海水がはいってしまいますが、私は泣いていません。ええ、泣いていませんとも。

私(あー……)


 一時間ほどぼーっと海を漂っていると、空からウィッチがやってきた。ようやく気付いてくれたようだ。

宮藤「大丈夫ですか!?」

私「大丈夫だ、問題ない」

 この子は確か宮藤芳佳だったな。あの宮藤博士の娘だそうだが、似ている様な似ていないような。
 宮藤は私を持ちあげると背中に背負ってくれた。

宮藤「しっかりつかまっててくださいね! すぐに基地へと運びますから!」

 なんとか私は基地へと入ることができそうだ、後はうまくごまかせるかだな。




 現在私は医務室のベットの上で横になっている。ふわふわとした布団の感覚が気持ちいい。
 宮藤は私のことを上のほうへと知らせに行ったようで、今ここにいるのは私一人だ。

私「ふむ、中々に綺麗なところだ」

 私は起き上がると周りを見渡す。
 この間壊した基地の医務室も綺麗だったが、ここはそれ以上に清潔感を感じる。

私「……む」

 廊下から足音が聞える。数は二人、いや三人だな。
 一人はあの宮藤という子だとして、恐らくもう一人はここの隊長であるミーナ・ディートリンデ・ヴィルケだろう。

 ガチャリ

 後の一人を昨日見た資料の中から予想しているうちに扉が開かれた。
 黒髪に右目に青と白の眼帯、坂本美緒か。



 よく考えればここで2番目に階級が高かったはずだし、私が暴れても取り押さえられるという点では最適な人材だろう。
 もっともここまで近づいたんじゃ、既に私の不意打ち範囲内で意味はないが。

宮藤「もう大丈夫なんですか?」

私「ああ、海に落ちただけだったからな」

坂本「ならよかった」

私「心配をかけて申し訳ない」

 私は三人に頭を下げる。気に入らないが印象を良くするためには仕方がない。
 頭を上げたところで本題を切りだす。

私「突然で悪いんだが私をこの基地に置いてもらえないだろうか」

 三人が驚いた顔をする。
 これは実に正しい反応だと思う、私が同じ状況だったら目を丸くする自信がある。


ミーナ「ダメです。一般人である貴女をここに置くわけにはいきません」

坂本「その通りだ」

 まあ、当然と言ったら当然の反応だろう。
 宮藤が困った顔をしているのは恐らく自分も似た様なものだからだろう。

私「一般人という訳でもない。私は元ウィッチだ」

 その言葉にまたも三人は驚く。

私「階級は軍曹、戦っている最中にネウロイにやられてな。撤退中海に落下して数日彷徨い基地に戻ったら死んだことにされていた」

 階級の詐称は重罪だが、大佐が軍曹を詐称するのはどうなのだろうと苦笑いを心の中で浮かべる。

私「すぐに複隊しようと思ったんだが既に死んだということでデータが消されていて、結局戻ることができなかったんだ」

 半分以上嘘だが本当なのもいくつか混じっている。
 実際、私が存在していたという記録は軍のデータからは抹殺されている。
 巣で見た資料はどうやら昔に保存していたもののようだ。


私「雑用として置いてくれるだけでもいいし、万が一ネウロイが急襲してきたとき戦うこともできる。帰る国はネウロイに占領されてるから帰ることもできない」

 坂本とミーナの二人が顔を見合わせる。
 ダメなら基地を破壊すればいいだけで、いいなら絶好のタイミングで横あいから思いっきり殴りつけてやればいい。
 どちらにせよ私に不利に働くことはなくなる。

宮藤「私からもお願いします!ミーナさん坂本さんこの人を置いてあげてください!」

 二人に宮藤が頭を下げる。
 なるほど資料通りに優しい子だ。この場合優しすぎる、と言ったほうが正しいが。

ミーナ「……まあ、確かに人手は多いほうがいいでしょうし」

坂本「そうだな」

私「感謝する」

 心の中で歪んだ笑みを浮かべながら、私は再び頭を下げた。




 宮藤に案内された部屋でごろりと横になる。
 今は紹介しようにも人が少ないのでまた今度、ということになったらしい。

私「む?」

 布団の上でゴロゴロしていると廊下の方から誰かが走ってくる音が聞えてきた。

 ガチャ

ルッキーニ「私ー!」

私「うわぁ!?」

 扉が開くと同時にルッキーニが私の居るベッドに向かってダイブしてきた。
 いやちょっとまてベットから扉って相当離れている、どれだけ身体能力いいんだこの小娘。

ルッキーニ「久しぶりー!」

 胸に顔を埋めてすりすりと頬ずりしてくるルッキーニ。久しぶりと言っても昨日以来なんだが。
 ともかく引き離すことにする。

私「落ち着けルッキーニ」

ルッキーニ「うじゅー……」

私「それにしても私がいるってよくわかったな」

ルッキーニ「芳佳から聞いたんだー!」

 ニコリと笑うと再び私の胸に頬ずりする。
 もう引き離すのも面倒なのでこのままにしておこう。

?「ルッキーニのやつずっと心配してたんだぞ?」

 扉の方を見るとえらくナイスバディな女性が立っている。私も負けてないつもりなんだが、今一歩及ばない。

シャーリー「おっと自己紹介しないとな、あたしはシャーロット・E・イェーガー。シャーリーでいい」

私「私は、私だ。……よろしくシャーリー」

 ここで衝突しても苦労が無駄になるだけなので自己紹介をしておく。
 この間もルッキーニは胸に顔を埋めるのをやめない。

ルッキーニ「えへへー私の胸おっきーい。合った時からやってみたかったんだー」

私「っ!?」

 思わず私はルッキーニにデコピンをしてしまった。
 ペチンといういい音が部屋に響く。

ルッキーニ「う、うじゅー……」

 涙目になるルッキーニ、ああもうこれだから子供は!

私「……すまなかった」

 泣かれても困るのでルッキーニの頭を撫でながら抱きしめてやる。
 そういえば、私が人を抱きしめるなんて何年ぶりだろう。ルッキーニの心臓の音が私の体に響く。

シャーリー「よかったなールッキーニ。これで胸触り放題だぞー」

私「!?」

 シャーリーの言葉に反応したルッキーニが私の胸をもみしだき始めた。
 だまされた、と心の中で叫ぶ。

私「ちょ、やめっ」

ルッキーニ「にひひーひっかかったなー!」

 この二人には絶対に心を許さないようにしようと決めた私だった。
最終更新:2013年02月02日 14:22