ビショップ家の俺執事




バトラー……

それは不屈の精神を持つ者



バトラー……

それは真の忠義を持つ者



バトラー……

それは主のために命を賭け戦い守りぬく者



真の執事たる者、事務仕事だけでは終わらない

主の願いをすべて叶える者が強き真の執事となるのだ……




世界にはそれは一握り……いや一摘みの種の人間……





それが……ビショップ家の執事だ……




ビショップ家






??「ふむ、頼んだことはすべてしておいてくれたかね?」

俺「はい、もちろんでございます。ほかに何かございますか?」

??「うむ。頼むことはすべて終わりだ。君には引き続きリーネの面倒をみてもらいたい」

俺「はっ、わかりました。リネットお嬢様のもとにいき、仕えましょう」

??「君はもともとリーネの専属の付き人、いや執事だからな。当然といえば当然だ」

俺「リネットお嬢様を小さい頃からお仕えしておりましたが、これほどの幸せはございません。喜んでいきましょう」

??「リーネに長いこと会っていないと思うが、あれでも年頃だ。すこしばかりわがままになっておるかもしれんぞ、はっはっは!」

俺「それも成長なされた証拠です。私には微笑ましい。旦那様、ありがとうございます」


リーネパパ「うむ、では行け。娘をたのんだぞ。あと501航空団にはできるだけ力を貸してやってくれ。俺くんなら大抵のことはできよう?」

俺「はい、やりとげてみせます」

リーネパパ「なるべく迷惑をかけんように。リーネだけをお世話するなんてことはしないようにな。」



俺「承知しました。リネットお嬢様にお伝えなさることはありますか?」

リーネパパ「いや、特にない。元気にしていてくればな。あとお金は執事長から受け取っておきたまえ」

俺「御意」

リーネパパ「俺くんの経歴書はもうすでに向こうのほうに送らせてある。心配せずにいきなさい」

俺「はっ!ありがとうございます!では、失礼いたします」



ガチャ パタン……



リーネパパ「ふぅ、これでリーネの方も安泰だな。いっぱいティーでも飲んで仕事でもするか」







501基地―…





リーネ「ふっふ~ん♪ふふんふ~ん♪」

芳佳「あれ、どうしたのリーネちゃん。ものすごくうれしそうだけど、なにかあったの?」

リーネ「うん!お父様から手紙が来てて、いいことが書いてあったの!」

芳佳「へぇ~どんなことが書いてあったの?」

リーネ「昔から私を世話してくれていた俺さんていう執事さんがくるの!さっきまでミーナ中佐に許可をもらいに行ってて」

芳佳「えぇっ!?執事さん……すごいや……。そんな人に会えるなら心も弾むね~」

リーネ「ずっと会ってなかって……。本当に久しぶりなんだ~」

芳佳「ふふっ、私にも紹介してね。お話ししてみたいな」


リーネ「うん!あ、そうだ、訓練の時間だから芳佳ちゃんを誘いに行こうと思ってたんだった!」

芳佳「あはは、それじゃいこっか!」

リーネ「うん!」








正門―…





俺「ふむ、ここですか。一応基地に入る許可はとってあるみたいですし……」スタスタ




ギィィィ……ガチャン……




俺「まずはこの基地の司令官に挨拶をしないといけませんね」






執務室―…



コンコン


ミーナ「はい、どうぞ?」

俺「失礼いたします。お初目にかかります。私、ビショップ家の執事の俺といいます」

ミーナ「あら、あなたが俺さんね。話はリーネさんから聞いてるわ」

俺「はい、今日からまたリネットお嬢様に仕え、みなさまも含め身の回りのお世話をさせていただきます」

ミーナ「なにができるのかしら?なにか得意なほうの仕事でも回せるわよ?」

俺「いえ、ご心配には及びません。なんでもできますので」



ミーナ「なんでも?」

俺「はい、なんでも。すべてのことはひと通り可能です」

ミーナ「はぁ……それじゃあおまかせしましょうか……。なにか疑問があるならいつでも聞いてちょうだい」

俺「この基地におけることはだいたい把握してきましたので大丈夫です」





その男は優しく微笑んだ

だが、目は鋭い

言うならば……なにかを見据える目……少しだけひやっとするような……



もしかするとこの男はただものではないかもしれない





ミーナ「ふふっ、リーネさんがるんるんとして嬉しがっていたわよ。早く会いに行ってあげなさい。ずっと会ってないのでしょう」

俺「ええ、以前ここが解散となった時もガリアの復興に尽力されておりましたし、私も別のところに飛んでいたものですので」

ミーナ「俺さんにはここで一緒に暮らしてもらいますので、いろいろと身分証明や身体検査をしておきたいのだけれど、いいかしら?」

俺「ええ、かまいません」

ミーナ「一応経歴書をもらったわ。歳が書かれていないのだけれど……」

俺「申し訳ありません。私自身自分がいつ生まれたのか知らないものですので」



ミーナ「それなら仕方ないわね……。あと魔法力を持ってるみたいだけれど、戦闘に参戦できるかしら?」

俺「ええ、リネットお嬢様の許しがあればいつでも大丈夫です」

ミーナ「一応身体検査や魔法力検査を受けておいてね。後でみんなにあなたを紹介するわ」

俺「ありがたき幸せ。ぜひよろしくお願い致します」


ミーナ「ふふっ、リーネさんに早く会いに行ってあげなさい」

俺「感謝いたします、ヴィルケ様。では、失礼いたします」





あの男、従順そうだと思いきやリーネさんに対してだけはかなり忠実そうね……。

そういえば初めてバトラーを見たわ……。誰でもあんなふうなのかしら。

意外とさわやかだったし、衣装もきっちりしてたし、物腰も柔らかで落ち着いている。それにかっこよかった気もする。


あれじゃあリーネさんが懐くのもわかるわね。もしかしたらここの皆もなついてしまうかも……。











食堂―…




リーネ「そろそろ着いてるかな……。おれさーん!いますかー?」

ヒュッ スタッ

俺「リネットお嬢様!お久しぶりでございます!」

リーネ「俺さん!お久しぶりです!元気にしていましたか?」



その男はリーネの前に跪き、手をとって、頭を深々と下げた。当のリーネは慣れているのか至って普通だ。

宮藤芳佳なら確実に赤面していただろうに。






芳佳「(どこから現れたんだろう……全然見えなかった……空から降ってきたような?)」

俺「私は毎日元気にしております。お嬢様こそお体を崩されたりはしませんでしたか?」

リーネ「うん、全然平気だよ」

俺「それにしても……少し見ない間に成長なされましたね……」

リーネ「えっとそうかな、自分じゃあ全然わからないけど……」

俺「そしてまた一段とお美しくなられて……この私、目を奪われるほどです」

リーネ「そ、そんなことないです///あ、俺さんこちらは宮藤芳佳ちゃんっていって私の親友なんです」



芳佳「えへへ、俺さんっていうんですか?宮藤芳佳と言います!はじめまして!」

俺「ご丁寧にどうもありがとうございます。私は俺と申します。私はお嬢様から宮藤様のことを多く伺っておりますよ」


芳佳「え、えぇっ!い、いえ私のことは様付けなんてしなくてもいいですよ!芳佳でいいです!」

俺「私めがリネットお嬢様のご友人を呼び捨てなど……身が凍てつくほどの無礼でありますから」

芳佳「そ、そんな~」

俺「どうかお許しを、宮藤様」

芳佳「ああ!いえ、そんな!」



リーネ「ふふっ、俺さんてここらへん融通きかないから。芳佳ちゃん、ごめんね」

芳佳「ううん、謝ることなんてないよ!わ、私が慣れてないだけだし……。というか呼ばれたことすらないし……」




ん、足音が廊下からする……、誰かくるようだ。このままではいけない。お茶の用意でもしなければ。




俺「少々お茶の準備をいたしますね。ごゆっくりしてください」

リーネ「そういえば俺さんはここで一緒に暮らすんですか?」

俺「ええ、ヴィルケ様の寛大な心によりここで受け入れてくれることになりました。」カチャカチャ

リーネ「よかった~。あ、あとでみんな紹介するね!」

俺「ありがたき幸せでございます」




先程の声が大きくなってくる。おそらくこの部屋を目指しているのだろう。ふむ、ちょうどいい。

もうすぐティーも出来上がる頃だ。




ガヤガヤ……



シャーリー「あー、やっぱ飛んだあとはお腹がへるな~。なにかないかな~」

バルクホルン「さすがにあれだけ飛べばな……。私もなにか少しだけ食べるか……」

エーリカ「あ、いいにおい~。リーネ、ティータイムなの?」

リーネ「あ、はい。みなさんもどうでしょうか?」

ルッキーニ「やったー!お茶菓子お茶菓子!」

芳佳「慌てなくても大丈夫だよ~」




俺「皆様、お疲れ様でございます。ティーを入れましたのでいかがですか?クッキーもありますのでぜひご一緒にどうぞ」

芳佳「(いつのまに作ったんだろう……)」

シャーリー「おう、ありがとな!はぁ~、もう少し早く飛べないものか」

バルクホルン「感謝する。まだ速く飛ぶつもりか。リベリアンの頭のなかはそれだけだな」




エーリカ「えっと……誰?」


俺「お初目にかかります、リネットお嬢様の執事、俺といいます。今日からここでお世話になります」

エーリカ「へぇ~……ってリーネの執事?うわ~、お嬢様じゃん!」

バルクホルン「む、自然に空気に合っていたために気づかなかった。なにをしにきたんだ?」



俺「リーネお嬢様の身の回りのお世話をさせていただきます。それとみなさんにも微力ながらお力になれればよいかと思いまして」

バルクホルン「微力、とはなにするつもりだ?」

俺「なんでもさせていただきます。命じられれば炊事洗濯掃除、訓練のお付き合い、整備、勉強、衣装、抹殺なんでもどうぞ」



バルクホルン「ふーむ……戦闘にはでられないのか?」

リーネ「できますよ!俺さんはなんでもできますから!」

バルクホルン「う、うむ、そうか。強いのか?」

リーネ「はい!ものすごく!」

俺「執事たる者戦闘の一つや二つできないといけない故」

バルクホルン「そんなに厳しい世界なのか……」

シャーリー「なんか気合入ってるな……ん、このティーうまい!」

バルクホルン「本当だな……ふぅ……訓練の疲れがとれそうだ」

俺「光栄に存じます」ニコ






ルッキーニ「私は、フランチェスカ・ルッキーニっていうんだよ!階級は少尉!よろしくね、俺!」

俺「よろしくお願いします。ルッキーニ様もなにかあれば私にお申し付けください」


バルクホルン「私はゲルトルート・バルクホルン、大尉だ。よろしくな。なにかあればすぐに私に聞くといい」

俺「スーパーエースにお会いでき、感動の限りでございます。バルクホルン様、よろしくお願い致します」


シャーリー「ばるくほるん様って……あははははっ!似合わねー!」

バルクホルン「くっ!からかうな、リベリアン!俺も似合わないからやめろ!」

俺「そんなことありませんよ。バルクホルン様はリネットお嬢様の上官でもある方。それに凛々しくお美しい方ですのでそう呼ばせていただいたまでです」

バルクホルン「な、なっ、なにを言ってるんだ!」

シャーリー「あはははははっ!」





エーリカ「ほらほら、ふたりとも落ち着いてってば。私はエーリカ・ハルトマン中尉だよ。よろしくね~」

俺「もう一人のスーパーエースに会えて幸運な日でありますね。よろしくお願い致します、ハルトマン様」

エーリカ「おお~、なんかむずがゆいね~」

俺「明日にはきっと慣れますよ」

バルクホルン「ハルトマン、おまえはそういうのとはほど遠いからな……」




シャーリー「はぁ~くるしぃ~。あ、私はシャーロット・E・イェーガー。階級は大尉だよ。まぁ気楽にシャーリーって呼んでくれ」

俺「イェーガー様、と呼呼ばせていただきます」ニコ

シャーリー「かぁ~、がんこだね~」


バルクホルン「ふっ、おまえだって似合わないじゃないか」


俺「どちらも美しい方ですから私はそう呼んだまでです。だからそう呼ばせてもらえないでしょうか?」

バルクホルン「えっ、いや、よ、呼ぶなら好きにしろ!///」

シャーリー「私はまぁ……なれないけど、そう呼ぶならいいぞー」




リーネ「……」ニコニコ

芳佳「どうしたの、リーネちゃん?」

リーネ「なんでもないよ、芳佳ちゃん」ニコ

俺「リネットお嬢様、ティーのおかわりはいかがでしょうか?」ニコ




リーネ「結  構  で  す  」ニコ




俺「も、申し訳ありません、なにか私めが粗相をいたしたならなんなりとおっしゃってください」

リーネ「え、いえ、そんなことはないです……。ふぅ、おかわりやっぱりもらえますか?(むぅ、いつもこんなんだから仕方ないか……)」

俺「はっ、ミルクティーでよろしいでしょうか?」

リーネ「ええ、お願いします(深呼吸深呼吸……。せっかく久しぶりに会えたんだから)」スーハー

俺「リネットお嬢様、旦那様から伝言を預かっております」

リーネ「お父様から?」

俺「はい、元気でいてくれたらそれでいい、と。旦那様もお嬢様を応援してらっしゃいますね」

リーネ「お父様が……。ふふっ、お父様は心配性ですから」

俺「親心、というものですよ。どうぞ、お嬢様」

リーネ「ありがとう、俺さん」ニコ









ブリーフィングルーム―…




さて、漸く皆様のお顔をみることができました。これがリネットお嬢様の仲間……。

一目見ても素晴らしい人たちです。やはりお嬢様は外に出て大きくなってらっしゃたんですね……。





ミーナ「みんな集まったわね?今日から、えっとなんて言えばいいのかしら。仲間になる方を紹介するわ」

ミーナ「もうすでに紹介を済ませた方もいるのですが、改めて紹介してもらうわね。俺さん?」




俺「はい、ご紹介に上がりました、俺と申します。私はビショップ家で執事を務めており、元々はリネットお嬢様専属の者です」


俺「しかしこの501航空団でリネットお嬢様がお世話になっていることを聞いたものですから、なにかできることはないかと考えておりました」


俺「そこで私は執事なものなので、本分から外れないように今日から皆様の身の回りのお世話をさせて頂くことにさせてもらいます」


俺「私はあまり出来のよい者ではありませんが、なにか力になれればと思った次第であります」


俺「もしなにかあれば、なんでもお申し付けください。私が骨を粉にして全うさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します」


俺「よろしければご質問などがあるならぜひなんなりとおっしゃってください」






……失敗したか?もしかして色々と口に出しすぎたのだろうか。




坂本「うむ、素晴らしい執事だと聞いているぞ。私は坂本美緒少佐だ。よろしくな、俺」

俺「はい、よろしくお願いします。坂本様のご武勇は轟いておりますので、今日は会えて本当に光栄です」

坂本「はっはっは!そんなお世辞ばかりいうものじゃないぞ!」

俺「いえ、お世辞ではありませんよ」


ミーナ「私はミーナ・ヴィルケ中佐よ。さっきも会ったけど基地司令官をしているわ。よろしくね、俺さん」

俺「ヴィルケ様も素晴らしい方とお聞きしています。フュルスティンの通称以上のものを感じ得ません」

ミーナ「ふふっ、ありがとう」




豪胆快活な方に、物腰柔らかな洗練なお方だ。お嬢様のいい手本となってくれていることだろう……。

自己紹介も成功のようだ。




シャーリー「私はさっきも言ったが、シャーロット・E・イェーガーだ。シャーリーって呼んでくれよな、俺」

俺「よろしくお願いします、イェーガー様」ニコ

シャーリー「やっぱりだめか!」



ルッキーニ「フランチェスカ・ルッキーニ、よろしくね、俺!俺は一緒に遊んでくれたりするの?」

俺「ええ、なんでもさせていただきますよ。よろしくおねがいします」



ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ。よろしくお願いしますわ」

俺「これはこれは、クロステルマン家の御令嬢。至らぬ点が多いと思いますが、よろしくお願い致します」

ペリーヌ「あら、知っていたんですのね……」

俺「クロステルマン家の名は未だ健在のようで私もうれしゅうございます」

ペリーヌ「なぜあなたが?」

俺「知りえないことかもしれませんが、以前クロステルマン家に尋ねたことがあったものですから」

ペリーヌ「そうですの……。でももうクロステルマン家はありませんわ……」

俺「そんなことありません。クロステルマンの名を継いでいらっしゃるのはあなた様です、ブループルミエ。あなたがいる限り何も心配ないようです」

ペリーヌ「ふふっ、面白い方ですわね。ありがとう、よろしくですわ」




エーリカ「なにこの内輪話……。私はエーリカ・ハルトマン、中尉だよ。今度またお菓子つくってね~」

俺「ええ、いつでもつくらせていただきますよ。ハルトマン様」ニコ

エーリカ「あと明日私の部屋の掃除もお願いね!」

俺「かしこまりました」

ミーナ「フラウ?」ニコニコ

エーリカ「み、ミーナ、ちょっとくらいいいじゃ~ん」

バルクホルン「自分でせんか。俺、別にしなくていいぞ」

俺「いえ、そういうわけにはいきません。皆様自身日頃から忙しい身なり。そのようなことは私がやりましょう」

バルクホルン「退き下がらんか……」

俺「ふふっ、執事ですので」




バルクホルン「ゲルトルート・バルクホルン大尉だ。いろいろしてもらえるのはありがたいんだが……最低限のことは自分でやるからな?」

俺「承知しております。迷惑にならない程度に、いつもの生活リズムが狂わぬようにさせていただくつもりです」

バルクホルン「それならありがたい。よろしくな俺」

俺「よろしくお願いします、バルクホルン様」




エイラ「私はエイラ・イルマタル・ユーティライネン。中尉ダゾ。よろしくナ」

俺「はい、よろしくお願いします、ユーティライネン様」


サーニャ「サーニャ・V・リトヴャクです。同じく中尉。よろしくお願いします」

俺「気高きリーリヤ、リトヴャク様よろしくお願いします」ニコ

サーニャ「え、えっと、お願いします///」

エイラ「ムッ!」




芳佳「私は宮藤芳佳軍曹です!えっとなにかあったらすぐになんでも聞いてくださいね、俺さん」

俺「はい、よろしくお願いします。宮藤様もなにかあれば尋ねてくださいね」






リーネ「俺さん。改めて。私はリネット・ビショップ曹長です。色々と不出来な部分もありますが、どうぞよろしくお願い致します」


俺「ふふっ、よろしくお願いいたします、リネットお嬢様。わたくしでよければいつでも力になりましょう」



リーネ「頼りにしていますね」




俺「イエス……マイ、ミストレス」






ミーナ「これでひと通り紹介は済んだわね。俺さん、他になにかあるからどうぞ?」



俺「リネットお嬢様の上官であり、ご友人であり、師でもあるみなさま、本当にありがとうございます。この私、誠に幸せでございます」

俺「これからお世話になりますね」


最後にすっと静かに美しく礼をして、にこりと笑って場を収めた。礼ひとつとってもたらないものはない。

本来ならば執事は事務仕事のみの場合が多いのだが、この男はそれ以上のものを持っているのでなんでもしているに過ぎない。

ビショップ家の執事、只者ではない。







ブリーフィングルームでの自己紹介が終わってから、基地内を案内され、最後に医務室に足を運んだ。

そこにいた女医がくまなく身体検査をして、わずかに血液を取られて終了した。ぺたぺたと深く触ってきていた気がするが……。

今は談話室で、みなさんの生活時間を聞いて、すべての案内は完了だ。



あまり時間はかからなかったが、この短い間でさえリネットお嬢様のことが気になってしまう。


坂本「俺、リーネのことが気になるのか?」

俺「はい、長い間目を合わせることもありませんでしたから。色々経験してきたのでしょう。一目でわかります。
  長年仕えてきた私としてはできればお話を聞きたいのです」

坂本「ほう……親心、みたいなものか?」

俺「ふふっ、少し違いますね。ですが、大きく外れてもいません」


坂本「長年見てきたと言ったが、いつからリーネの元に?」

俺「そうですね……。リネットお嬢様が生まれてすぐからでしょうか……」

坂本「そんなにもなるのか……。では、愛情もまた一段と深いだろう」

俺「成長していく姿にとても喜びを感じますよ。ですが、同時に寂しさも感じ得ません」

坂本「はっはっは!そうだな、私も少しばかりわかるぞ」

俺「ふふっ、お互い後ろから見守る立場のようですね」


坂本「ああ、そうだな。さて、そろそろ夜も深まる頃だ。俺もお風呂に入って寝る準備に移れよ」

俺「いえ、坂本様がお先にどうぞ。私はまだやらねばならないことがあるので」


坂本「む、そうか。では先に失礼させていただこう。そういえば、俺は訓練にも付き合ってくれるのか?」

俺「ええ、もちろんです」

坂本「そうか。できればまた今度付き合ってくれ。時間があるときでいいぞ」

俺「いつでもおっしゃってください。いつでもさせていただきますよ」

坂本「ああ、頼むぞ。じゃあ後で声をかけるからな」

俺「ごゆっくりとどうぞ、坂本様」











宮藤&リーネ共同部屋―…




もうとっくに夜が深まって、星がまたたく時間になってしまった。お嬢様もそろそろ就寝なさるころだろう。



コンコン



リーネ「はい?どうぞー」

俺「こんばんわ、お嬢様。就寝の準備はもう済まされましたか?」

リーネ「はい!俺さんは……えっと……どうするんですか?」

俺「私は部屋を用意されておりますので、そこで休息を取らせていただくことになりました」

リーネ「俺さん、ちゃんと寝てくださいね。俺さんてば無理ばかりしますから」

俺「これも性分な故。それにお嬢様になにかあったときにすぐに対応できなければいけませんから」




リーネ「でもここって基地だからなにも起こらないと思います……」

俺「わかりませんよ?隕石が降ってくるやもしれません。津波がくるやもしれんません」

リーネ「それはいきすぎだよ~……」



俺「ふふっ、なんにせよ、私はリネットお嬢様を守るためにここに来ましたから」

リーネ「ありがとう……ございます///(なんでこうやって普通に言えるんだろう……)」

俺「では、私はそろそろ失礼致しますね。リネットお嬢様、いい夢を」ナデナデ

リーネ「は、はい……///お、俺さんも、しっかり休んでくださいね」



俺「ええ、では、おやすみなさいませ」ニコ

リーネ「おやすみなさい」ニコ




恥ずかしい……。守るため、って……いつもああやってからかうんだから。

芳佳ちゃんが今お手洗いに行っててよかった~。多分、顔真っ赤だ……。

あ~、もう!久しぶりに会ったから前みたいにお話できないよ……。

別に俺さんとそういう仲ってわけじゃないんだけども……。でも正面からああ言われるのは恥ずかしい。




……もうねよっと。




おやすみ、俺さん……







ハンガー―…



夜が深まり、皆が寝静まるころ銀髪の美少女だけが起きていた。

誰もいないが、明かりのついた寒々としたこのハンガーには慣れたものだが、それでも誰かと一緒に哨戒にいけたらな、と思う。

まぁ人員的に難しいことなのだが……。





サーニャ「……あれ?俺さん?」

俺「夜間哨戒おつかれさまです、リトヴャク様」


サーニャ「俺さんこんなじかんにどうしました?もうみんな寝ていますけど……。」

俺「いえリトヴャク様が夜間哨戒だと存じておりましたものですから、少々ココアでもと思いまして。いかがですか?」

サーニャ「あ、ありがとうございます。」



なにやら気をつかわせたみたい……。優しそうな人だけど、大丈夫かな……。

だけど、こうやって誰かがいるのはやっぱり安心するな。




サーニャ「おいしい……」

俺「それはよかったです。そういえばリトヴャク様はオラーシャの出身でいらっしゃいましたね」

サーニャ「はい。きれいなところですよ」


俺「確かに雪のよく降るきれいなところが多いです。昔に尋ねたことがありましたが……」

俺「素晴らしいところです。寒さを跳ね返すような人々の暖かさや面白い軍人、風景。どれも今でも鮮明に覚えているほどです」


サーニャ「ありがとうございます。私も早くオラーシャに戻れるといいんですが……」

俺「……詮索はいたしません。しかし大丈夫です。なにか願いでもあるのだと思いますが、きっと叶うと信じております。

サーニャ「ふふっ、無根拠ですね」

俺「そういうのもたまにはいいかと。いや今日ここにきたばっかりですが……」


サーニャ「ネウロイは私たちがきっと倒してみせます。そしたら俺さん、またオラーシャを見に来てくださいね」

俺「もちろんです。その時はお嬢様と一緒に上等のワインかウォッカでも持って訪ねさせていただきます」



サーニャ「ふふっ、楽しみに待っていますね。そろそろ夜間哨戒に行かなければなりませんので……」

俺「はい、では、いってらっしゃいませ。どうかお気をつけを」

サーニャ「ありがとうございます。ココア美味しかったです。……いってきます」




サーニャ「あ、俺さんは夜間哨戒もできるんですか?」

俺「はい、リトヴャク様ほどとは言えませんが、私も訓練はしておりますのでできますよ」

サーニャ「よかった……。また今度一緒に飛んでくれませんか?」


俺「かまいませんよ。夜は暗いですから私が迷わないよう、空へとお連れいたしましょう」ニコ

サーニャ「ふふ、また今度お願いしますね。では、いってきます」

俺「いってらっしゃいませ」





あ、久しぶりにいってきますって言ったような……。私のことを見送りにきてくれたのかな……。

変な人だな。でも、話してて楽しかったし、結構冷たい人かと思ったけど温かい人だった。

なにか仲良くなれそうで安心したかも……。





サーニャはストライカーユニットを装着し、滑走路から夜の空へと飛び立った。

いつもとは違うちょっとばかり緊張がほぐれたような心境で。

しかしできれば誰かと一緒に飛びたいものだが、夜間ウィッチの宿命かとでも思い気合を入れて闇へと羽ばたいた。

知らず知らずのうちに、ちょっとだけ寂しさは薄まっていたことに気づかずに。






第1話 終







最終更新:2013年02月02日 14:42