―――翌日


花火「1523…1524…1525…」

坂本「はっはっは! 朝から訓練とは精が出るな! 花火!」

花火「1526…1527…1528…」ブン ブン ブン

坂本「聞く耳持たずか、まぁそれも良いだろう」

花火「1529…1530…1531…1532…」ブン ブン ブン

坂本「1! 2! 3!…」ブンッブンッブン

花火「1533…1534…15…」ブン ブン ブ…

坂本「4! 5! 6!…」

花火「…」

花火「何のつもりだ、坂本」

坂本「ん? 私が何かしたか?」

花火「…何と言うかお前からは敵意とか殺意とか、とにかくなんかすげえ嫌なモン感じるんだが」

坂本「…具体的には?」

花火「この俺を確実に一発で殺すための距離、いつでも死角に回り込める立ち位置、急所に叩き込める振り方とかか?
   まぁ、真横でモノホンの刀素振りしてる時点で十分おっかねえっつの」

坂本「…ふふふ、はっはっは! お前なら分かると思ってたぞ」

花火「…物騒な挨拶かましやがって、当然、何か目的があんだろうな?」

坂本「ああ、貴様の腕を見込んでな、この私とぜひ手合わせ願いたい」

花火「…ハッ、そいつぁ良いじゃねえの」

坂本「ほう、随分飲み込みが早いな」

花火「これでも扶桑の武士だ、理由なんざいらねえよ、やりたいなら来い」

坂本「はっはっは! そうだ、それでこそ武士だな。理由など必要ない」

花火「それじゃあ」

坂本「待て」

花火「んだよ、さっさと始めようぜ」

坂本「お前…その鉄パイプでやり合う気か?」

花火「この鉄パイプは宇宙一の職人の作った鉄パイプであり、俺の唯一の相棒だ」

花火「だから曲がる心配は皆無、折れる心配に関しちゃ絶無だ。刀に劣る事なんざ断じてありねえ」

坂本「そうか、それなら良い」

花火「じゃあ…」

坂本「最後に一つ、言わせてくれ」

花火「…あんだよ」

坂本「もし貴様が負けたら、ミーナとバルクホルンに謝れ」

花火「…ハッハッハ! こいつぁ上手く嵌められちまったなぁおい
   いいぜ、もし負けたら隊長さんにでも大尉殿にでも何回でも謝ってやんよ」

坂本「男に?」

花火「二言はねえ」

坂本「よし! では始めようか」

花火「ああ、言っとくが…こっちは本気で行くつもりなんでな、容赦しねえぞ」

坂本「一向に構わん」

花火「それでは」

坂本「尋常に」

花火「…」

坂本「…」

花火「ッ!」

坂本「ッ!」

勝負は一瞬で終わった。
その一瞬が花火と坂本にとってどれほどの時間だったのかは、その二人にしか分からない。
だが、どちらが勝ったのかは誰が見ても一目瞭然だった。
坂本の烈風丸は花火の鉄パイプによって弾かれ、遠く離れた木に突き刺さっている。
やるな、と坂本。
おまえもな、と花火。

坂本「…その大きさの鉄パイプでよく受けきれたな」

花火「…悪りいが生涯負ける気はねえんでな、本気で行かせてもらった」

坂本「はっはっは! 私の負けだ」

花火「…」

坂本「良い鉄パイプを持ったな花火」

花火「はん」

坂本「それでは、私は訓練に戻る。お前はどうする?」

花火「ストライカーユニットの整備でもしに行く」

坂本「そうか、ではな」





坂本「…見かけによらず冷静な奴だ」

坂本「まさかあの場で突っ込まず一歩退いて来るとはな…鉄パイプのリーチを使った一撃、見事だったぞ」

坂本「………この私も、まさか鉄パイプに負けるとはな、はっはっは!」


―――ハンガー

シャーリー「お、花火じゃないか!」

花火「…んああ、いたのか」

シャーリー「ストライカ-ユニットの整備か? 私にも見せてくれよ!」

花火「嫌だ」

シャーリー「ちぇー、相変わらず酷い奴だなぁ」

花火「うるせえ、俺の私物に触れていいのは俺だけだ。壊されると困る」

「スーパールッキーニキック!!!」ダダ シャ

花火「ガハァ!」ドサ

シャーリー「わわわわわわ! 何やってんだルッキーニ!」

ルッキーニ「だってね! こいつシャーリーに酷い事言ったんだよ!?」

シャーリー「それでも一応大佐なんだぞ! ほら、謝れ」

ルッキーニ「うえぇー、やだよ」

花火「…久々に良い蹴り貰ったのが…こんな糞餓鬼だとはなぁ」メラメラ

シャーリー「(うわ、めっちゃ怒ってる上に体がリアルに燃えてる!)ごめんごめん! ほらルッキーニ、な?」

ルッキーニ「絶対ヤダー!」

シャーリー「ううう…困ったなぁ」

花火「おい、ルッキーニっつたか」

ルッキーニ「うじゅ?」

花火「ミディアムかウェルダンか選べ」

ルッキーニ「ステーキ!? じゃあね!じゃあね! あたしはミディアムレアくらいが良いかな!」

花火「オッケイ分かった、ついでにフランベもしてやる。夕飯が豪華になっちまうなぁ」

シャーリー「ま、まぁまぁそのくらいで良いだろ! ルッキーニも悪気があった訳じゃないんだ!」

花火「……さっきからてめえは何だ、そいつの保護者か?」

シャーリー「え? まぁ保護者っていうか…」

ルッキーニ「家族だよ!」

花火「…家族?」

ルッキーニ「うん! シャーリーだけじゃなくて、この501皆家族なんだよ!」

花火「ハッハッハ! 面白えなそりゃあ、皆家族か、じゃあ俺もその家族ってもんの一員かよ?」

ルッキーニ「うん!」

花火「な…」

シャーリー「花火、ルッキーニはこういう奴なんだよ、お前がどう思ってるかは知らないけどさ…」

花火「ああ! もういい、俺は部屋に戻る!」

花火「あーあ…その餓鬼のせいで整備する気も失せちまった」

花火「……一時間。一時間はここに戻ってこねえ、ストライカーユニットには絶対触れんな」



シャーリー「」ポカーン

ルッキーニ「何だよあいつー!」プンスカ

シャーリー「ルッキーニ、ありがとうな」ナデナデ

ルッキーニ「うじゅ?」

シャーリー「さて、あいつには悪いけど見させてもらうかな」チャキン


―――花火部屋

花火(…家族、か)

花火(今頃俺の両親は何やってんだか、横須賀においてったきりだけど…)

花火(やっぱ、心配してんのか?)

花火(それに、あの糞艦長は今頃何やってんのかな…俺がいなくて清々してんのか…?)

花火(畜生、感傷に浸るなんて俺らしくもねえな)

ウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

花火「ネウロイか!?」


―――空

サーニャ「南方に大型が1機、小型機が15機ほどネウロイを取り囲むように浮遊しています」

坂本「ふむ…こちらも確認できた。でかいな、300M級か…」

ミーナ「でもこちらに向かってくる気配は無いわね、ここは様子見に…」

花火「んなこたぁ5、6発殴ってからすれば良いだろ」

ミーナ「花火大佐?」

花火「行くぜ、突抜忍冬」

花火「―――――龍勢」

ミーナ「待ちな…キャア!」

坂本「何て加速だ!」

ペリーヌ「ま、また煤が…」

シャーリー「左右に付いたブーストはあれだったのか…」

ミーナ「早く追いかけて! 大佐を止めるわよ!」



花火「突貫―――――――閃光花火」

花火は相棒の鉄パイプを前に構え、ロケットのように大型機に突っ込んだ。
何ともいえない金属音を発しながら装甲を削り、一本の閃光はネウロイを貫通してみせた。

花火「結構再生早えじゃねえかよ、そうでこなきゃ面白くねえ」

大型のネウロイはぽっかりとトンネルのように奇麗に抉られた穴を再生していく。
ネウロイを見据える花火に小型機から何本ものビームが放たれたが、百戦錬磨、天災のウィッチである花火にとって
それは攻撃に値する物では無かった。

花火「適当に解体してから、うぜえ蝿はじっくり殺ってやんよ」

花火「―――車花火」

手に握られた鉄パイプの先端に、チェーンソーを模った火炎が高速で回転する。
それをネウロイに押し付けるように殴打。鉄パイプは折れもせず、1センチもしならない。
だが、ネウロイの装甲は着実に花火が言った様に、次々と火花を散らしながら解体されていった。

花火「ハッハァ! 何分割にされてんだぁ!?」

最早そこは花火の独壇場だった。
まるでネウロイを本当に料理をするかのように、出来るだけ細かく、小さく解体していく。

一方的なインファイト。
傍から見たものはそう口にする。そして花火自身もそう言い張るだろう。
花火の攻撃は止む事無く、花火自身も距離を取るという事はしない。
言い換えれば、攻撃を一切休めず、ネウロイに距離を取らせない。
攻めて攻めて相手に攻撃させる暇を与えない。まさに花火の戦闘スタイルは『攻めは最大の防御』を形にした物だった。

しかしアフリカの星、或いは黒い悪魔と言った経験を積んだベテランウィッチ達もそう答えるだろうか?
たしかに敵機に攻撃をさせないほどの手数で押せば何とかなるかも知れない。
だが敵は今回のように一機とは限らない。いくらごり押しでも、小型と言えど十五機ものネウロイを休まずに攻撃し続けるのは不可能だ。
それなのに花火は、あれだけ接近して何故ビームに当たらないのか?

んなもん、攻めながら避ければ良いだけの話だろ。

そう、花火に言わせて見れば回避行動なんてモノは、生まれた時から身についた常識である。
呼吸をするように攻撃を読み、瞬きするようにビームをかわし、指を動かすように反撃する。
スオムスのダイヤのエースでさえ凌ぐ敵弾回避。
それこそが、花火が天災であり天才のウィッチである所以だ。

花火(…?)

そんな花火も、今この戦闘中では一つの疑問が浮かんでいた。
コアが見当たらない。
普通のネウロイならもう十回は殺してるだろう。だが今相手にしてるこの大型にはコアの姿さえも掴めない。
花火にとってはそれはそれで楽しかった。ただ、自分がネウロイの戦略に嵌っていると思うと、どうも気に食わない。

花火(コアは別の場所にあんのか? だとしたら…小型機か)

花火(どうせこいつじゃ役者不足だし、さっさと片付けっか)

花火はそう思うとすぐさま標的を変えた。

花火「狙いは小型機数は十五機撃墜出切る最低限の火力で」

花火「―――スターマイン」

ヒュインヒュインッ! と空気を裂く音が十五回空に響いた。
その後、キッカリ十五回の爆発音に加え、大型のネウロイが砕け散った音が響いたのは言うまでも無い。



坂本「こ、これは…!」

花火「ああ、遅かったじゃねえか。倒しといたぞ、ネウロイ」

サーニャ「ネウロイの反応…完全に消滅」

バルクホルン「…全部お前一人でやったのか」

花火「俺以外に誰がいんだよ」

リーネ「大型を一人で片付けるなんて…」

ミーナ「…ハァ…ホント頭が痛いわ…」

ミーナ「独断専行作戦無視、花火大佐、あなたには無期限の出撃禁止を命じます」

花火「…ハッ、ネウロイを倒してやったっつうのにそれか」

ミーナ「意義は?」

花火「ねえよ」
最終更新:2013年02月02日 14:53