エーリカ「ふっふっふふっふーん♪」

花火「…」

ピンクのフリフリがついた可愛らしいエプロンに身を包み鼻歌を交えながらチョコをかき混ぜるその少女の姿には、この俺も時々心を奪われそうになる。

今日は二月十四日。つまりバレンタインデーだった。
甘い思いをチョコに練りこみつつ黄色い妄想に花を咲かせる人も、淡い期待を胸に膨らませ思わず笑みがこぼれてしまうようないたいけな人も
チョコに興味の無い人も、世間のリアルが充実した男性女性共々に妬ましい視線を注ぐ人にも
それは無差別に、無慈悲にやってくる、そんな日。
俺はこの小さな悪魔と共にチョコを作る羽目になった。
正確にはチョコを、いや、『食べられる物』を作らせるようにと隊長直々に命令されて、仕方なく付き添う形な訳だが…

エーリカ「ねぇねぇ、砂糖ってこれかな?」

花火「そいつぁ重曹だ」

こんな質問がもう何回も飛んでくるわけで、正直チョコは諦めてる。
一度止めようとしたのだが…楽しそうに食堂にあるものを容赦なくボウルに突っ込んでいく少女の姿を見ると
どうもその気になれないでいる。

エーリカ「でーっきた!」

花火「…なんだこの物体は」

緑色。形は…ハートに見えなくもない。
少しだけ鼻を近づけて匂いをかいでみると何故か目が染みた。
何をどうしたらこんなもんが出来るのだろうか…あれ、おかしいな、チョコのはずなのに今ちょっと動いたぞ。

エーリカ「見た目は微妙だね」

花火「っつうか食べられんのか?」

エーリカ「味見してみて~」

花火「そんぐらい自分でしろよ…」

と、言いつつも俺はソレをつまんで口の中へと運んだ。

エーリカ「どう?」

花火「モグモグ…あん? 意外といけんじゃ………ヴぇえ゙え゙え゙え゙ぇぇぁぁぁぁぁあ゙あ゙゙あ゙あ゙!!!」

エーリカ「ど、どうしたの!?」

花火「がああああぁぁぁぁぁぅぅぅぅううおおおおお…おおおおおお!!!」

何だ…これは舌が殺られる…! サルミアッキとか肝油そんなチャチなもんじゃねえぞこれぇ…!!
この世の全ての不味いを凝縮したような…ゴェフ

とりあえず、俺の意識はここで途絶えた。



+ 開くなよ? 絶対開くなよ?どうなっても知らないからな?


花火「…っはぁ…っはぁ…」

エーリカ「は、花火、大丈夫? そんなに不味かったかな…」

花火「をッほぉい!!」

エーリカ「え? ちょ…ひゃあ!」

花火「エーリカ!エーリカ!エーリカ!エーリカぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああん!!!
   あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!エーリカエーリカエーリカぁぁぁぁぁぁぁぁわぁああああ!!!
   あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
   んはぁっ!エーリカ・ハルトマンたんの金色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
   間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
   俺を心配してくれるエーリカたんかわいいよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
   あのチョコみたいなのは不味かったけどエーリカたんが可愛いから許しちゃう!あぁあああああ!かわいい!エーリカたん!かわいい!あっああぁああ!
   キミと二人で未来に向かってVTOL(キリッ にゃああああああああああ!!!ちゅっちゅしたいおおおおおおおおお!!!!
   もしおれがウィッチじゃなかったら今頃こんな…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
   ぐあああああああああああ!!!男のウィッチなんて現実じゃない!!!!あ…しかも天災だとか階級が大佐だとかありえない厨二設定もよく考えたら…
   エ ー リ カ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
   そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ロマーニャぁああああ!!
   この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?目の前のエーリカちゃんが僕を見てる?
   何か絶望したような目でエーリカちゃんが僕を見てるぞ!エーリカちゃんが僕を見てるぞ!手の中のエーリカちゃんが僕を見てるぞ!!
   なんだか苦しそうにに手が動いてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
   いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはエーリカちゃんがいる!!やったよトゥルーデ!!ひとりでできるもん!!!
   あ、目の前のエーリカちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
   あっあんああっああんああサーニャぁあ!!エ、エイラ!!ウルスラぁああああああ!!!トゥルーデぇえええ!!
   ううっうぅうう!!俺の想いよエーリカへ届け!!目の前ののエーリカへ届け!」


エーリカ「」

花火「ヒャッハアアアァァァァァ!!!」ダダダダダ




エーリカ「は、花火が…おかしくなっちゃった」

―――ハンガー

花火「イヤッフウウウゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥウウウゥゥ!!!」ブーン

花火『は、花火、大丈夫? そんなに不味かったかな…』(裏声)

花火「だってさ!だってさ! ぴゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁかわいんすぎんだろちくしょおおおおおおお!!!」

花火「ふおおおおおこのまま月までノンストップバレルロオオオオオオルウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!」

シャーリー「おお、花火じゃん。どうしたんだ? 随分機嫌が良い…ていうか何かテンションがおかしな事になってるけど」

花火「いやいやいやいや!! 俺は常にれいせッ…あふうぅぅん…」

シャーリー「ん? どうしたんだ?」

花火「ね…燃料切れだ…」

シャーリー「ね、燃料?」

花火「ああ、そこでちっとばっか頼みがあるんだが、いいか?」

シャーリー「何だ?」

花火「燃料を補給させてくれ」

シャーリー「…よく分かんないけど私で役に立てるのなら…っておわぁ!」

花火「ふおおおおおおおお!! マイヘッドフォオリングランドキャニオンンンンン!!」スリスリスリスリ

シャーリー「わわわわわわ!!」

花火「スンスンスンスン!! これは…石鹸の香り!! ヒャッホオオオオォォォオオオオ!!
   クンカクンカクンカ!!!トゥヒヒヒヒヒヒ!!!スゥゥゥゥハァァァァァァ!!!!
   さわやかクリイイイィィィィィィィィィィィィィィィミィィィィィィィィィイイイイイイィん!!!」

シャーリー「どどどどうしたんだよ花火!?」

花火「それは知りません」キリッ

シャーリー「」

花火「うっぴゃあああああああああああァァァッァァァッァァァモフモフモミモミモフモフモミモミ…」

花火「充電かんりょおおおおお!!!!地球に優しい花火さんがお送りしましたああああああぁぁぁぁ!!!」ダダダダダダ



―――風呂

花火「み!な!ぎ!って!き!たッッッッ!!!このまま地上で音速突破も夢じゃなかとよおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

ガララ

花火「未知の境地へおっっっじゃまっっっしまああああぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁス!!!!」ダダダダダ

宮藤「ひゃあああああ!! 何ですか!?」

リーネ「は、花火大佐…!?」

花火「ぶるあああああぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁ!!!ここは天国かッッッ!?」

花火「必殺☆打ち落とし花火ダイィィィィィィィッィヴ!!!」ザッパーン

花火「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク…」

宮藤「」

リーネ「」

花火「ぷはぁ!!!喉越しさわやか!!流石ウィッチのスープは伊達じゃねえぇなああああああ!!!」

花火「気になる評価は…ほしみッッッつ!!!!イタダキマシタァッァァァッァァアァァ!!!!」

花火「ウィッチーズの!!みなさんのおかげでしたあああぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!」ダダダダダダ


―――廊下

花火「ズ!ズ!ダン!! ズ!ズ!ダン!! ズ!ズ!ダン!! ズ!ズ!ダン!!
   バディユラボイメイカビッノイズプレイギンザスツリーッゴナビアビッマンサンデイ! ユガッマドォンニョフェイス! ユビッディスグレイスキキンニョーキェーノーロバダプレイス…」

ルッキーニ「スィギッ!!」

花火「ウィーアーウィーアーロッキュ!!!」

「「ズ!ズ!ダン!!」」

ルッキーニ「ウィーアーウィーアーロッキュ!!!」

バルクホルン「騒がしいぞ!! 何をしている!?」

花火「おおおおねえええちゃアアあああんんんんんんん!!!!!」

バルクホルン「!?」

花火「こんな所で出会うなんて…まさに運命じゃね!?これ運命だろ!?
   うっぴゃああああああああこんな!幸せが!日常に潜んでるなんて!!まさに!!」

花火「暇をもてあました」

ルッキーニ「神々の」

花火「遊び」

花火「チョッキプリrrrrrrrrrrrrトゥルーデええええええええ!!!」

バルクホルン「ぎゃあああああ!!!!!」ブン

花火「へぶぅ!ありがとうございます!!!」

花火「よーしこの調子でパパ10光年ほど旅しちゃうぞおおおおおおおおおお…おおおおお…お」バタリ

バルクホルン「な…こいつ死んでるぞ!」

ルッキーニ「これが全ての始まりだった…」

花火「だが断る」


酔った勢いでやった。後悔はしてる。まぁ夢の中だし問題ないよね…?


花火「んはぁッ!!」ガバ

エーリカ「花火ー大丈夫?」

とても呑気なその声の主はもっさもっさと、おいしそうにマフィンを頬張るエーリカ・ハルトマンだった。

花火「あ、あれ? 俺は?」

場所は食堂のソファーの上。イマイチ状況が飲み込めない。
ただ、何だかとてつもない悪夢を見ていたような気がする。

エーリカ「いやー私のチョコ食べたと思ったら気を失っちゃってさ、ホントびっくりしたよ」

エーリカ「まぁ宮藤に一回治癒魔法かけてもらったから身体の方は大丈夫だと思うよ」

花火「…ああ、そう」

エーリカ「あ、そうだ。これ」

花火「ん、何だこれ」

エーリカ「宮藤と一緒に作ったチョコレートだよ!」

花火「…宮藤と?」

エーリカ「うん! 花火が倒れた後に作り直したんだ、だから味には自慢あるよ!」

花火「はは…そうか」

エーリカ「…」

花火「…何だ」

エーリカ「今食べてよ!」

花火「へいへい…」

ラッピングのリボンを解いて箱を開けた。
うん、ちゃんとしたチョコの色だ。それに少々歪だがハートの形をしてる。
それを摘み、口に運んだ。

エーリカ「…どう?」

花火「うん…まぁ、美味いんじゃねえの」

エーリカ「えへへ…良かった」

花火「…」

吟味。
考えてみればチョコなんてもう何年も食べていなかった。だからこんなに甘く感じるのだろうか…

エーリカ「へくち!」

花火「…風邪か?」

エーリカ「う~最近寒いからね、もしかしたら風邪引いちゃったかも」

花火「…もっと、こっちよれ」

エーリカ「ん?」

使い魔を開放。身体に魔力を集中させる。

花火「…」

エーリカ「……うわ、暖かい!」

花火「いつやってもこの絶妙な魔力加減は難しいな…」

エーリカ「おおお…花火にこんな使い方があったなんて…」

花火「俺はストーブじゃねえんだぞ」

エーリカ「もう少し、このままでいいかな?」

花火「…別に構わん」

エーリカ「あったか~」スリスリ

花火「…」

――――
――

エーリカ「zzz…」

花火「…ん、寝ちまったか」

花火「…」

そっと、ハルトマンの髪を撫でてみる。
まるで清流のような、触れ心地だった。

花火「ま、もうちょいこのままでも良いか…」

そう俺は独り言を呟いてから、続きのチョコを口に運んだ。
さっきよりも、少しだけ甘く感じた。
最終更新:2013年02月02日 14:54