――1945年、8月上旬、オペレーション・マルス後、ロマーニャ北部にて――
エイラ「そろそろ、お別れ…ダナ。」
サーニャ「……うん。」
北部に移動するに連れて刻々と迫ってくる別れの時。二人は自然と肩を寄せ合っていた。
エイラとサーニャが荷台に乗り、整地を走っていくトラックが間もなく森を抜ける。
そこから先はスオムスとオラーシャへの道に分かれ、二人とも別々の地方へ向かわなければならない。
ネウロイの巣が消滅したオペレーション・マルス後、ロマーニャ防衛は504JFWが引継ぎ、
ヴェネツィア陥落によって麻痺していた指揮系統は回復の目処を辿り始める。
よって
ガリア解放時とは異なり、エイラとサーニャの二名は正式な配属先を指令本部より告げられた。
エイラ「本当に大丈夫カ?オラーシャには…今までヨリもっと強いネウロイが…」
サーニャ「…心配しないで。ネウロイの勢力も下がってきてるみたいだし…向こうにも強いウィッチは沢山いるから。」
エイラ「ソ…ソウカ…。」
サーニャ「エイラこそ、大丈夫なの?」
エイラ「ウン……スオムスにも頼れる仲間は沢山いるよ…。」
サーニャ「……そう。」
エイラ「…………サーニャ。私…サーニャに手紙書くよ。」
サーニャ「…私も。」
エイラ「ソンでさ、オラーシャから今より少しでもネウロイがいなくなったら……また一緒にサーニャの両親を探しに行こう。」
サーニャ「……うん…ありがとう、エイラ。」
光を遮る木々が殆ど見えなくなってきた。もう二人が話せる時間は限られている。
それに気が付いたエイラは、長い間胸に秘めていたものを明かそうとする。
エイラ「……サーニャ!!」
サーニャ「…?」
エイラ「私ッ…わたし、サーニャのコト…!」///
サーニャ「……」
エイラ「あ…ぃ…」///
サーニャ「……」
エイラ「あ…ア…ぁ」///
サーニャ「……?」
エイラ「アァ!そういえば!宮藤達は今何してんのカナァー!?」
サーニャ「??」
「ココデモシキラワレタラ…」という不安と、「デモマタキットアエルカンナー」という安心感。
しかしそれ以前に、エイラはまたしても肝心なところでヘタってしまった。
サーニャ「芳佳ちゃん達?」
エイラ「…ア……アァ。」
サーニャ「坂本少佐と芳佳ちゃんと彼さんは…今頃扶桑に着いてると思う。」
エイラ「ソ…ソウカァ……。」
サーニャ「あと…」
エイラ「ン?扶桑ッテ…ソウいえば。ナァ、サーニャは『俺』ってヤツのコト知ってたカ?」
サーニャ「…?…ううん…知らない。」
エイラ「やっぱりサーニャも知らないよナー。どんなヤツだったんだろうナ。」
――この約2年後、エイラはサーニャと再開し、そして「IF」の展開通りにサーニャは両親とも再開を果たす。
俺は悔やんでいる。あの時、規則も制限も破って、せめて一度だけでも話しておくべきだった、と。
――2013年、1月、日本、川沿いの土手にて――
俺「あああっ…ちくしょぉお。痛てぇよ…」ズルズル
初日の出を見終え、インカムを投げ、事を済ませた俺は脚を引きずりながら自宅への道を目指していた。
後先考えず約50kmも離れた目的地に走って行けたことに達成感はあったが、段々と後悔が増していた。
足の痛みだけでなく、ランニングパンツに股が擦れて発し始めたヒリヒリとした痛みに気付き、「止まりたい」という衝動に駆られる。
そして何より、上着は二枚で、下はそれしか履いていないので寒い。
友「おっ、ここにいたか。初日の出最高だっただろ?明けましておめでとう。」
声がした方向を見るとそこにはこの場所に俺を呼び込んだ友人がいた。
俺「明けましておめでとう……まぁ確かに最高だったよ…。」
友「でも本当に走ってくるとは驚いた。車で送ろうか?」
俺「……いや、ここは俺の意地を優先させてよ。歩いてでも帰る。」
友「馬鹿だなぁ。そんでさ、投げたのアレ、ストパンの世界に行ったっていう証拠。」
「友」とは俺が極限の勇気を振り絞ってまで参加した忘年会、所謂「飲み会」で出会った。
そしてその席にて、酔わされた勢いで「ストライクウィッチーズの世界に行った」と話してしまったのだった。
俺「だからお前に言ったのは全部妄想だって…」
友「興味深いんだよそれ。俺もストパン好きだからさ。」
俺「…あぁ…そうですか。投げたよ、インカム。もうどっかいっちゃった。」
友「ぇえ?じゃぁ探し」
俺「見つかんないよ。着てた軍服も消滅しちゃったし、インカムもスト魔女の世界の物だから在るべきところへ戻ったんじゃないかな?」
後に、俺は「731な俺」というSSの存在、そして作者が「友」であることを知ることとなる。
――1945年、8月上旬、ロマーニャ、元501基地にて――
エイラとサーニャがロマーニャを発った後、ここ元501基地でも4人のウィッチが別れを告げようとしている。
車の助席に座っているペリーヌに、外からリーネは話しかけていた。
リーネ「ペリーヌさんはこの後どうするんですか?」
ペリーヌ「わたくしは勿論、クロステルマン家の名に恥じぬようガリア復興に全力を注ぐつもりですわ!」
リーネ「そ、そうですよね…。あ…あの…私、本当はちょっと寂しいんです。せっかくみんなに再会できたのに…また解散なんて…。」
ペリーヌ「……それは…わたくしも同じでしてよ。」
リーネ「それにブリタニア空軍からの急な召集もあって…ベテランのウィッチ達が居る場所で、ちゃんとやっていけるか不安で…。」
ペリーヌ「フフッ…それ程貴女の実力は信頼を受けてるってコトじゃないかしら?ミーナ中佐も言っていましたわよ、リーネさんは素質があるって。」
リーネ「…は…はい…。」
ペリーヌ「しっかりなさい!…大丈夫よリーネさん。どんなに離れた場所に居たって…わたくし達はいつだって繋がってる、仲間なんですもの。」
リーネ「…!!…はいっ。ありがとうペリーヌさん!」
シャーリー「――ほほおぅ…まさかペリーヌの口からそんなコトが聞けるとはなぁ~。」
ペリーヌ「ヒぃっ!?しゃ、シャーリーさん!!あ、あなた、いつの間に!?」
声に驚いたペリーヌが振り返ると、シャーリーが運転席側の窓から覗いていた。
リーネ「シャーリーさん!」
シャーリー「せっかく見送ってやろうとしてたのに先に行っちゃったと思って焦ったよー。まぁ、いいものが見れたから別に良いけどなぁ♪」
ペリーヌ「もう貴女って人は本当にぃぃぃ!!」
ルッキーニ「――…びえええええん!!シャーリぃー!!」ダダダダダ!ガバッ
シャーリー「のわーーーー!?」バタンッ
すると今度はルッキーニが泣きながら物凄い勢いで突進し、シャーリーに抱きついた。その反動で二人は倒れこむ。
ルッキーニ「ヤダヤダヤダー!お別れなんてヤダー!わたしもシャーリーといっしょにいくぅぅぅ…!!」ジタバタ
シャーリー「おー泣くなルッキーニ!仕方ないだろ命令なんだから!休暇に会えるからさ、おーよしよしよし。」ナデナデ
リーネ「そういえば、二人も別々の転属先へ…」
ペリーヌ「全く…この様子じゃ、お二人はいつまで経っても変わりませんことね。」
――その後、リーネはブリタニアを代表するウィッチとして活躍し、引退後に念願であった自らの「夢」を叶えることとなる。
約2年後には、ガリア復興事業が軌道に乗り、ペリーヌは周囲の声に答え506JSFの司令官として再び空を駆け巡る。
そしてその空には、かつて気まぐれな天才少女だったルッキーニが部下を引き、勇敢な眼差しを持つ指揮官として成長した姿もあった。
本国勤務となったシャーリーも彼女達の活躍を願い、空に思いを馳せながら気まぐれな休日を送っている。
月日が流れたとしても、彼女達501の繋がりが薄れることは無かった。
――2013年、2月、日本、俺の自宅にて――
俺「おいおい、おまえコレどういうことだよ!!?」
俺は携帯電話を使って友に抗議の声を聞かせる。
友から送られてきたメール、「おれも何度か俺ストSS書いてたんだ。これがそのURL↓」という内容を読んで、
その幾つかあったURLを検索してみると、1つだけとても不可解なSSを発見した。
タイトルは「731な俺」。そしてその展開と設定は俺が体験したストライクウィッチーズの世界に酷似している。
しかし「このSSの本質」や「ネウロイに再現されていた」こと、そして「共通」ということは未来が変わったため俺は当然知る芳が無い。
「自分自身とのコアとの共鳴」によって、ほんの微かな記憶が残っているだけだ。
だが「俺はスト魔女の世界じゃなくてこのSSの世界に入ってたのか!?」と思う以前に、俺には先ず思うことがあった。
友が書いた幾つかのSSの中で、最後に書いたこの「731な俺」だけがバットエンドだったということ。
俺「お前ストパンが好きじゃねーのかよ、最後にあんなの書いて。」
友『おれはストパン大好きだよ。』
俺「でも、ひでぇ終わり方じゃんか…。」
友『ストパンに影響されているといっても過言ではない。』
俺「は?」
友『話すと長くなるけど、おれは最後の最後で自分の書いているSSが許せなくなった。宮藤は「みんなを守りたい」って言ってたのに…』
俺「言ってる意味が良く分からないんだけど…?」
友『俺ストSSを書いている時、おれは表現上の演出のために「兵士E」のような脇役が主人公に嫉妬したり、「ネウロイ」が引き立て役になるシーンを描いてきた。』
俺「…………」
友『それは全て、ウィッチや自己投影した「俺」を含めた主要キャラを引き立てるため、よりイチャイチャするためだった。』
俺「………はぁ。」
友『でも、それは違うと感じたんだ。本当は「731な俺」だってハッピーエンドにするつもりだった。でも、宮藤が魔法力を失うシーンを見返して思った…』
俺「…………」
友『SS内では「守りたい」だなんて綺麗ごとを並べてても、おれの様な筆者は脇役の人生や命を考えていない…ましてや利用してるってな。』
俺「…………ま…まぁ誰だって自分より『弱い人』は本能的に作りたくなるもんだよ…。第一そうしなくちゃ話が盛り上がらない。」
友『その認識こそ変えたかったんだ。原作だってそうだ、ネウロイ、脇役を利用してるシーンがあるし、それを読んでる人は「他の犠牲」があるから楽しめてる。』
俺「…………人間だから仕方ないよ。」
俺は自分がいじめを受けていた時のことを思い出す。
友『意図的な「脇役の犠牲」を認めれば、ストライクウィッチーズの彼女達が叶えようとする「みんなを守りたい」ということにはならないと思ったんだ。』
俺「…彼女達だって…脇役であるネウロイを倒してるじゃんか。」
友『そうだな…そういう意味でも、このSSはバッドエンドにした。……アニメのキャラクターかも知れないけど、お前にもウィッチ達への愛はあるよな?」
以前の俺なら「アニメに対して熱く語るなよアホか」と思っただろう。しかしストライクウィッチーズの世界での実体験が在る為に渋々と友の質問に答える。
俺「(愛ねぇ……まぁ彼を殺さなかったことも…一応……)………あるよ。SS内でウィッチを殺したお前よりかはね。」
友『なら、アニメ内で彼女達が戦う姿を見て「大勢の人間が死んでいる戦争世界で、これ以上戦わせたくない」とは思わなかったか?』
俺「………そりゃね。でも戦ってるウィッチの活躍をもっと見たいとも思ってた…。って、だからってあのSSをあんな終わり方にしたのか!?『死ねば戦えないから』って!?」
友『違う、SSを読んでいる人に訴えたかった。彼女達を無理矢理戦わせているのは侵略者の「ネウロイ」や、ましてやマロニーのような反逆者でもない…」
俺「え?いやだって先に侵略してきたのは敵であるネウ」
友『戦争が舞台であるスト魔女を好きな「おれ達」だということを。自分達の欲で、武器を持つ彼女達の活躍が見たいからって理由で命懸けの戦いをさせてしまっているということを。』
俺「…………」
友『そして、ウィッチへの愛だと称して、彼女達を無理矢理操作出来てしまうということを。』
俺「…だけど」
友『活躍や日常を見たいがためにおれ達がSSを書いたり話題で盛り上がったりするように、公式や原作もウィッチ達へ更に戦いを強いるだろう。ネウロイや脇役をも犠牲にし。』
俺「…だけど!あれは妄…」
「妄想だから良いじゃないか」と言おうとした。しかし、俺が体験したスト魔女の世界は本物の戦争世界だった。
…そうだ…「妄想だから」「演出だから」という訳では済まされない…。
友『――……現実世界のおれ達が、触れられない戦争世界にいる彼女達へ出来ることは…本当の愛ってのは…「他の犠牲」を生まないこと、そしてこれ以上「戦わせないこと」なんじゃないのか…?』
友のその言葉を聞いた時、俺はアニメにてウィッチ達がネウロイと戦闘しているシーンを観て楽しんでいた時の自分に対して罪悪感を覚えた。
「可愛いのに戦っている姿にギャップを覚える」などと過去に思っていた自分を恥じた。
本物のストライクウィッチーズの世界に訪れて体感した、血の気が凍るような命懸けの戦い、戦争。
そう、彼女達は常に、いつ死ぬかも分からない状況下にいた。それは決してアニメーションの映像だけでは伝わらない。
俺「で、もうSSを書くのを止めたのか…。」
友『あぁ、オナニー以上のことを求めて、今はくだらない意地を張っちゃってる。娯楽だし、相手は現実じゃなくて二次元の女の子なのにな。』
俺「(本当のスト魔女の世界を体験して)…俺も何となくはお前の意見に賛成できるけど、でもやっぱり501を崩壊させるエンドはやり過ぎだろ…。」
友『そんぐらいの例えを挙げなきゃ伝わらないと思ってなぁ。お前の言う通り、バッドエンドの後に理由と解説を入れたけどコメント欄は批評ばっかりだ。』
俺「ははっ。……本当の愛…………お前なりの愛…ねぇ。」
友『妄想だけどな…さて、熱く語りすぎたぜ。さっきから近くにいる妹にドン引きされてる。気持ち悪い兄貴だろ?』
俺「……………………なぁ、ちょっと頼みを聞いてくれてもいい?もうお前がSSを書かないならさ…」
友『ん、なに?』
俺「…『731な俺』を再編集させてくれないか?」
――1945年、8月上旬、カールスラント、基地前の海岸にて――
ミーナ「…そろそろ美緒達も扶桑に着いている頃かしら…。」
バルクホルン「どうしたんだミーナ?そんな思い詰めたような顔をして。」
ミーナ「いえ、少し想うことがあって……ガリアが解放されて501が解散した時も、みんなの別れた後が不安でね…。」
バルクホルン「それで、今回も不安だと言うわけか。ふっ…強い彼女達なら大抵のことではくたばらんさ。」
ミーナ「でも…軍上層部が隠していた『731部隊』の存在…私達の摘発で彼さんを救うことは出来たけど問題は完全に解決した訳ではないわ。」
バルクホルン「……………。」
ミーナ「ネウロイと人類の間には、まだ裏あるかもしれない…。もしこの先、ネウロイを倒した後…人類同士の戦いが起こるとしたら……」
バルクホルン「悩む暇など無い。今の私達は戦うまでだ。故郷を奪ったネウロイからカールスラントを奪回し、世界を救うために。」
ミーナ「……そうね。」
バルクホルン「…それに私達には尊敬すべき仲間がいる。誰一人とも歪んだ平和など望まないはずだ。」
ミーナ「トゥルーデ…。」
バルクホルン「ミーナらしくないぞ。彼女達を、そして今は人類を信じよう。あの日から姿を消した俺上等兵や、亡くなった者達のためにも。」
ミーナ「……えぇ。」
エーリカ「おーい二人ともぉー!次の作戦会議の時間が迫ってるよ~。普段は私が注意される側なのに、何やってんのさー?」
遠く離れた場所から、エーリカがとても珍しく二人を注意した。
バルクホルン「あぁ、すまない。直ぐ行く!」
ミーナ「ふふっ、フラウも成長したんじゃないかしら?」
バルクホルン「どうだかな…相変わらず、あいつの部屋は汚いままだ。」
――元501所属、カールスラントを代表する3人のウィッチは祖国を奪還するために新たな戦いに身を投じる。
月日は流れ、1447年。ミーナは軍に籍を置き続け、多忙な日々を送る。彼女を支えるのは他でもなく戦友とのやり取りであった。
その戦友の一人であるバルクホルンは、ウィッチを引退する直前まで前線で戦い続けた。引退後の彼女を迎えたのは戦友、そして妹のクリス。
「黒い悪魔」と称されたエーリカは大尉として中隊長の責務を担ったが、その笑顔が変わることは無かった。
現在の平和、戦後の平和を願う彼女達の活躍は、希望の実現へと未来を誘い始める。
最終更新:2013年02月03日 16:02