1936年 ヒスパニア




185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/09(水) 16:56:15.68 ID:BZ0PkLUv0

~プロローグ~

― 1936年 7月 ヒスパニア とある田舎町

「ふざけんな!!」

町に少年の声が響いた。その少年は老婆に押さえつけられながらも、前に進もうともがいていた。その視線は目の前の少女とその子の腕をつかんでいる男性にそそがれている。

「そいつはまだ10歳だぞ!軍人になんてさせられる訳ねーだろ!
なあ、お前も行きたくないだろ、アンジー!」

「…」

咬みつかんばかりに叫ぶ少年の声に、アンジーと呼ばれた少女は少年から目をそらして何も答えない。

代わりに、少女の腕をつかんでいた男性が口を開いた。

「彼女は祖国のために戦うのだよ。ウィッチが怪異に対して有利に戦えるのを君も知っているだろう?この子は英雄になれるんだぞ?
役人でいらっしゃるご両親もきっとお喜びになるだろう。」

その言葉を聞いて、少女は悲しげにうつむいた。

それを見て少年はさらに逆上する。

「何言ってんだてめー!!アンジーは…アンジーはなぁ…!」

まだ幼い少年には、その思いを言葉にするのは難しかった。



186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/09(水) 16:58:41.75 ID:BZ0PkLUv0

少年と少女は物心つく前からたくさんの時をいっしょに過ごしていた。

少女の家は厳格な役人一家で、両親は多忙で、祖母の家に預けられることがよくあり、近所に住んでいた少年といつも遊んでいたのだ。

そして、少年にとって、厳格な両親によりつらそうにしていたおとなしい性格の少女は、妹のような守るべき大切な存在だった。

そんな彼女が自分の許を離れ、危険な目に会うのがどうしても許せないのだ。



「ググ…離せバアちゃん!アイツを一発殴らせろ!」

少年は必死で男性に掴みかかろうとするが、10歳の彼では老婆の腕すら振りほどけない。



少女に魔法力があることが判明したのは、つい三日前だった。

崖から落ちそうになっていた少年を助ける時に、彼女の華奢な体躯では信じられないような力を発揮したのだ。

それを嗅ぎつけた軍は、最近頻発していた怪異の出現の始末に困っていたので、これ幸いとさっそく彼女を徴兵するために町にやってきて、今に至るのである。



188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/09(水) 17:00:17.36 ID:BZ0PkLUv0

「ふむ、そろそろ時間だな。」

男性が腕時計を見ながらつぶやいた。

「ではな、少年。君にもいつか救国の英雄と友人だったことを誇りに思う時が来るよ。」

そう言って男性は、少女の手を引いて町の出口へ向かって歩き出した。

少女は少しだけ振り向き、寂しげな表情で、

「じゃあね、俺」

と、だけつぶやいた。

「ッ…!アンジー!!」

そのつぶやきはとても小さなものだったが、その声は確かに少年に届いていた。

そのことが彼の少女に駆け寄りたいという衝動をより強めたが、それでも老婆の制止を振り切ることはできなかった。

彼女の背中は彼からどんどん遠ざかっていく。

そして、いつしかその姿は完全に見えなくなった。



その日、その町には少年が少女の名前を叫ぶ声が夜遅くになっても響き渡っていた。



189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/09(水) 17:02:06.76 ID:BZ0PkLUv0

―1945年 3月 ロマーニャ 504JFW基地 ハンガー

俺「ンッ…まぶしい…もう朝か…?」

しまった、昨日の夜ストライカーの整備を終えて、そのままハンガーで寝てしまったらしい。

暖かくなってきたとはいえ、3月の朝はまだ寒い。うう…体が冷えた…。熱いコーヒーでも飲んで温まろう。

しかし、懐かしい夢を見たな。

あれからもう8年か…。

俺「俺もアイツも変っちまったな…。」

8年前のあの時から俺達の関係は変わっていった。

アンジーはヒスパニアでの戦闘の後、メキメキとウィッチとしての実力をつけ、ヒスパニアを代表するエースになった。

そして、ヒスパニアがカールスラントに派遣した精鋭部隊「青中隊」の隊員に選出され、後にその戦闘指揮官にもなった。

今は、青中隊はヒスパニアに引き上げてしまったが、彼女だけは504JFWの参加要請を受け欧州に残り、504JFWのエースの一人として活躍している。

俺は整備兵になっており、504JFW創設時のロマーニャへの出向者に志願し、504整備中隊の配属になった。



190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2011/02/09(水) 17:03:02.30 ID:BZ0PkLUv0

ガキの頃は俺の後ろに隠れてオドオドしていたアンジーが、今では、俺を含む504JFW全員の命を守る、アンジェラ・サラス・ララサーバル中尉だ。

あ~あ、完全に立場が逆転しちまってるじゃねーか。

もう俺がアイツを守ってやる機会なんてないのかね~。

ってそんなことを考えるだけでもおこがましいか。

異例の他国軍としての「赤ズボン隊」の隊員だからな。

俺なんかじゃ守るどころか足手まといになるだけだ。

俺「うっし、気合いいれていくか。」

今日は大事な作戦の日なんだ。

ネウロイとのコミュニケーション実験。作戦名は―


最終更新:2013年02月03日 16:15