俺(うぅ・・・ここは・・・)
気を失ってどれぐらい経ったのか。少なくともシャトルの中にはいるようだ。
キャノピーからは星空と共に地球が見える。かなり遠い位置だろう。頭痛が残るものの特に異常は無い。
俺「友チーフ!大丈夫か!」
友「ん・・・ここは・・・」
俺「どうやら地球に戻ってきたようだが・・・亜空間通信が無いし周りに船も無い。
時間軸が異なるのか並行宇宙に迷い込んだのかのどっちかだろう」
艦隊の艦長にはタイムトラベルや、我々のいた世界とは異なる並行世界に迷い込んだ者がいる。
友「それにしても頭痛がしますね・・・トリコーダーで調べましょう」
友チーフはそう言って船室から医療用トリコーダーを持ってきた。
俺の体をスキャンした後に自分の体もスキャンする。
友「あの粒子が体の内部に残留しているようです。それもかなりの高濃度です
「ですがこの粒子が頭痛の原因では無いと思います。おそらく脳の活動が活発化しているためでしょう」
俺「仕方ないな。粒子を取り除く方法も見つからない以上対症療法を行っておこう」
船室からハイポスプレーを取って来ると自分と友チーフに鎮静剤を打っておいた。
だいぶ痛みが引いてきた。何となく頭が冴えている気がする。
俺「量子測定は出来るのか?」
艦隊では我々の世界を構築する量子と別世界を構成する量子が僅かに異なる事を利用して判断する方法を行っていた。
友「やってみます。」
彼が測定を行う間、俺はシャトル全体と俺達がこの世界にやってきたと思われる空間のスキャンを行う。
俺(転送機は使用不能。修理には時間が掛かりそうだ・・・)
(インパルスドライブ、ワープコア、反物質タンクに異常なし。とりあえず危機が来る事は無い)
俺(このあたりの空間全体にあの粒子が満ちている。粒子濃度はかなり低いが)
(空間異常があの粒子で発生したとしても我々にはこの粒子を扱う方法が無い)
友「量子測定の結果が出ました。やはり別の世界です」
俺「そうだとは思っていたが・・・後このセンサー記録を見てくれ、どう思う?」
友「・・・このシャトルには重力子やタキオン粒子を専門に扱えるディフレクター盤は有りません。はっきり言って
元の世界に戻る事は出来ないでしょう」
友「もし出来るのであれば、空間異常時に発生したこの粒子を使って戻れるかもしれません」
俺「そのためにはこの粒子を扱う技術がいる。そう言いたいのだな?」
友「はい、そうです」
俺「なら選択肢は一つだ」
俺は遠くに見える地球に視線を向ける。
友「どうするんです?」
俺「この世界の地球は我々と違う技術をもっているはずだ。彼らならこの粒子を扱えるかも知れない」
友「もしワープ技術を持ってないなら接触出来ませんよ?」
艦隊規則ではワープ技術を持たない種族への接触は禁じられている。これは艦隊の中でも最も重要な規則だった。
友「この辺りのセンサー記録からは亜空間通信、ワープシグナルのどちらも探知出来てません
「彼らがワープ技術を持っている可能性は低いと・・・
俺「分かってる。その時は彼らに見つからないようにスキャンを行おう」
友「了解。コースを地球にセット、推力2分の1」
友「地球軌道上に到着しました」
俺「よし、今から全地表のスキャンを始める」
スキャンしたデータをコンピュータに纏めさせる。時間がかなり掛かるだろう。
俺「軌道上に何も無い事を考えればこっちを発見される事は無いだろう。望遠鏡で空を観察する人以外にはね」
「その間に食事をしないか?友チーフは朝から何も食べてなさそうだし」
友「分かりましたか・・・朝からずっとこのシャトルの整備と荷物の運び入れを行っていました。すぐに食べましょう」
友チーフはコンピュータに軌道を維持させるように命令をすると船室に向かった。
どうやらかなり腹が減っていたようだ。俺も後ろの船室に向かう。
レプリケーターが命令道理に複製を行う。友チーフは出来た品を取ると箱に腰掛けて食べ始めた。
俺「ライスボールとグリーンティー」
出てきた品を取ると一つだけ空いていた座席に座る。友チーフは既に平らげたのかココアで一息ついていた。
俺「そういえば友チーフの身の上話を聞いておきたいんだが・・・」
友「私の話ですか?良いですよ」
空のコップを箱の上に置くとゆっくりと話し始めた。
友「私の出身はフランスのディジョン郊外にある農家です。両親は私に農家を継いでもらう気のようでした。
でも私は小さい時から私は宇宙に憧れていたのですぐに艦隊アカデミーに入りました。
私本人は土いじりがそこまで好きでは無かったのもあるんです。
最初は両親に反対されました。でも私が卒業して職務に就くようになった時は喜んでくれましたよ」
俺「下士官を目指した理由は?」
友「機械を弄るのが好きだったからでしょうか。後は表に立つのがそこまで好きでは無かった事もあります
今はこれで良いと思っていますが・・・俺少佐はどういった経歴をお持ちに?」
俺「俺は・・・生まれは宇宙艦の上だった。あの船はミランダ級だったっけ。
父が艦長を務める船で母も一緒に乗っていたんだ。俺はいつも同年代の子供と遊んだりしていた。
母には手製の料理を作ってもらったり伝記を読み聞かせしてもらっていた。
父も暇な時を見つけては色々な星について教えてもらったりしたよ。艦長席に乗せてくれた事もあった」
俺「でも2366年、父の船はとある防衛戦の為ウォルフ359に召集される。
あの時は船のクルーの家族や民間人を降ろす時間も無いほど切羽詰まっていた」
友「ウォルフ359の大虐殺ですね・・・」
俺「敵のボーグは艦隊から一人の艦長を拉致し同化する事で我々の戦術情報を入手していた。
その情報を元に奴らは地球を同化する気だった。そこで艦隊はボーグキューブの針路上のウォルフ359に防衛線を敷く」
俺「・・・あの戦いで39隻の連邦艦が破壊されるか同化された。
犠牲者は11000名に及んだ。父の船はどうなったのかは記録に残って無いんだ。
俺が最後に覚えているのは俺と一緒に子供達を脱出ポッドに避難させる母の姿だけだ・・・」
友「聞いてしまってすみませんでした・・・」
俺「あの戦いは仕方なかったさ。当時の連邦には戦闘能力の高い艦船は無いし対ボーグ戦術も無かった。
その後ボーグキューブは地球軌道上で、救助された艦長とその部下の活躍で破壊される。
俺達は漂流していた所を、当時少佐だった彼大佐が乗っていた救助船に救助された。
俺は里親に預けられる事になったけどその頃から艦隊士官を目指すようになったんだ」
俺「最初は両親の仇を取ろうと思っていたけど、多くの人と共に艦隊アカデミーで訓練して
船で働くようになってから、戦うよりも平和を維持する事が難しい事を知ったんだ」
俺「ずっと永久に平和って事は出来ないだろうし、理想に過ぎないと思っているよ。
でも少しでも平和な時間が長引けば・・・と思ってこの職務に就いたんだ。
周辺国が団結すればボーグのような強敵でも打ち破る事が出来るからね」
友「・・・色々俺少佐への印象が変わったと思います。聞かせてもらってありがとうございました」
話を続けようと思ったが急にコンピュータが警報を発し始める。
慌てて友と共にコックピットに戻ると、キャノピーには地球と共に大きな黒い影が映っていた。
おそらく成層圏を突破しているだろう。
俺「何なんだあれは・・・コンピュータ、あの物体をスキャンしろ!」
解析結果では多くのエネルギー反応と生命体が観測出来た。生命体の巣らしい。
我々の世界ではベネチアに位置する地域の上空に陣取っているようだ。
俺「金属が主体の生命体なのか?連邦のデータベースには乗って無いな・・・
とりあえず高度を上げよう。あまり刺激する必要は無い」
友「分かりました」
今までの軌道から地表にセンサーが届くギリギリの高度まで上げる。
もう一度生命体の巣をスキャンして安全だと確認し、友と共にコンソールに映る地表のスキャン記録を纏める。
俺「この地球は我々の地球とほとんど同じだ。だが一部の大陸の形が違っていたり、存在しない地形すらある。
人間の人口は約20億人。工場や建物、乗り物の発達推測から20世紀前半の地球だと思われる。
地上にはあの粒子を動力源にしていると思われる飛行物体も発見出来たんだが・・・」
友「何ですかコレ・・・」
そこには女の子(少なくとも10代)が両足に金属筒を装着して空を飛ぶ姿が映っていた。下はパンツ一枚だ。
俺「・・・おそらく体の内部にある粒子をこの飛行装置に流して飛んでいると思う。
パンツで飛ぶのは筒に足を入れる時に邪魔になるからとも言えるし、そういった文化なのかも知れないな」
友「そういった文化・・・」
俺「問題は別にあるんだが・・・コレを見てくれ。地球におけるあの生命体の分布図だ。
彼らは地球のいたる所に生息し、未だに勢力を大きくしていると思われる」
友「我々が人同士で争った時代にここでは別生命体と争ってるって事ですか・・・」
俺「この生命体は金属をエネルギーとして増殖し、周囲に有毒なガスを放出している。このままでは・・・
友「この世界は奴らに飲み込まれるでしょうね」
俺(今俺達が介入すれば・・・)
無論そんな事をすれば連邦に戻って来た時に規則違反として問われるだろう。
友「センサーが巣に新たな変化を発見したようです!」
俺「そ、そうか・・・最大倍率で表示してくれ」
どうやら巣から生命体が出ていくようだ。
俺「小型の生命体が20体、大型の生命体が4体。見事な編隊飛行だが・・・針路はどこだ?」
友「針路は・・・おそらく我々の世界のローマと同位置の場所と思われます」
俺「この大型の生命体は・・・コンピュータ、20世紀の軍用機の資料を出してくれ」
モニターに映る様々な資料を見て自分なりの仮説が出てきた。
俺「大型の生命体はおそらく爆撃機、小型のは戦闘機で護衛する立場と解釈出来るな」
友「という事は・・・ローマを爆撃する気って事ですね」
俺「・・・向こうの空軍は動いていないのか?」
友「たとえ今動いても到着する頃には・・・」
この時代でもローマには数十万人が住んでいるはずだ。大惨事は避けられないだろう・・・
俺「・・・大気圏降下用意、イタリア上空の飛行編隊を撃破する」
友「軍法会議物って事は分かってますか?」
俺「・・・たとえ世界が違っても人の命は変わらない。黙って見ているのは艦隊士官として失格だ」
友「彼らも生命体ですよ?」
俺「分かっている。この命令は私が考えた事だ。もし友が関わりたくないならこの事を日誌に書いておこう。
君に処罰が下る事が無いように約束する」
友は俺の顔をずっと真顔で睨んでいたが
友「・・・強情な方ですね。負けましたよ」
そう言って楽しそうに操縦席に座ると船の針路を調節する。
友「ここまで一緒に来た腐れ縁です。もし元の世界に帰ったら一緒に楽しく強制労働をしましょう。
この後で何か美味しい料理をお願いしますよ?」ニコッ
俺「フッ・・・フェイザー準備完了。防御シールド100パーセント」
友「了解、大気圏降下シークエンス開始」
最終更新:2013年02月03日 16:22