俺「ふぅ……」
ビール瓶一本を一気飲みして、ため息をつく。
ちなみに、出撃直前である。
クルピンスキー「うーん、ボクも一杯欲しいところだねぇ」
サーシャ「中尉?」
クルピンスキー「おおっと、冗談だよ熊さん! お酒はやっぱり一仕事終わった後が一番だからね!」
ちょっと低い声音のサーシャに、笑顔で手を振る。
俺「そんじゃ、帰ったら一献やるか? ちょうど、いい扶桑酒が届いたんだ。オラーシャに来たってことで『北の誉』だ」
クルピンスキー「そりゃいいね、約束だよ?」
俺「おう!」
突き出した拳と拳をこつんとぶつけ合う。
ラル「さて、準備は出来たようだな?」
隊員全員を見まわし、ラルが口を開く。
すると、わずかなざわめきまでも消え、視線がラルに集中する。
ラル「今日の任務は、リガ方面に進出する連合軍のために制空権を取ることだ。
諸君らの戦い如何によって地上の友軍の働きは大きく左右される。
一機薄汚いネウロイを潰せば、それだけ人類が取り返す大地は増えると心得ろ!」
ラルが肩越しに手を軽く振る。
それを合図に、タルトゥに設置された臨時基地のハンガーが開き、滑走路への道が開かれる。
ラル「さあ、行くぞ諸君! 空に少し早い勝利を祝う花火をあげてやろうじゃないか!!」
滑走路へと向き直り、手を高く掲げる。
ラル「第502統合戦闘航空団出撃する!!」
腕を振りおろし、合図をする。
9人が一斉に空へ上がった。
リガの北東約110kmに位置するヴァルミエラ近郊。
ガリアが解放されて以来、領土奪回を期して攻勢をかける人類と、ネウロイが激戦を繰り広げていた。
直枝「落ちろ!」
ニパ「これで三つ!」
その上空。502の魔女達を筆頭にウィッチ隊が完全にネウロイの頭を押さえていた。
力強いその姿に、陸上の友軍は力づけられ、負けじと奮闘する。
俺「うっしゃぁ!」
白刃が舞い、小型ネウロイが一刀両断される。
クルピンスキー「おっと、そっちは地獄だよ? まあ、逆もそうなんだけど」
MG42が吼えれば、コアが砕け散る。
人類からの襲撃だからか、大型を繰り出せないのか、空に上がってくるネウロイの殆どが小型で、中型がぼちぼちといった具合。百戦錬磨の彼女らの敵ではなかった。
ラル「順調だな」
ロスマン「『今のところは』って注が付くけれどね……」
サーシャ「そろそろ、頃合いでは?」
ラル「うむ……」
502のトップ3が、戦闘の合間で言葉を交わす。
戦闘では遅れを取ることはないブレイブウィッチーズだが、無尽蔵なスタミナを誇るネウロイと違い、弾薬残量やストライカーの航続距離問題がある。
特に、BF109という足の短いストライカーの愛用者が多いこともあり、タルトゥに臨時基地があるとはいえ、そろそろ戻らなくてはいけない。
ラル「私たちが抜けている間は、他の部隊に任せるしかないか」
少々残念そうに息を吐くが、すぐに表情を引き締めてインカムを通して通達する。
ラル『502統合戦闘航空団一時退却する!』
直枝「ちっ、しゃあねぇか……」
声には出さないものの、直枝と同じような感想を持ったものは多かった。
だが、そこは軍隊である。よどみなく退く準備を始める。
伯爵「殿は任せてもらおうと思うけど、いいよね?」
俺「全然構わないぜ? どんとこいだ」
伯爵「なら、決まりだね」
502の中で一番前線に位置していた、二人はにやりと笑みを交わしあった。
伯爵『さて、退却ついでに私たちが殿をもらっちゃうね』
ラル『わかった、任せる』
伯爵『了解。女の子のお尻はちゃんと守ってみせるよ』
サーシャ『くれぐれも「真面目」にお願いしますよ、中尉』
軽口を叩く伯爵に、サーシャが一言はさむ。
俺『まあまあ、俺が近くで見てっから安心してくれよ』
サーシャ『それはそれで心配なんですが……まぁ、そういうことにしておきます』
インカム越しにもサーシャのため息が聞こえた。
伯爵「やれやれ、熊さんも素直じゃないねぇ」
俺「あれはあれであの人なりの激励だろ?」
伯爵「まあね。私としたらかわいいからなんでもいいけど」
退却体勢に入った味方とネウロイ達の間に入り、弾幕を張ってネウロイが近寄らないよう牽制する。
俺「ははっ、ならさっさとお仕事終わらせてご褒美もらいにでも行ったらどうだ?」
伯爵「そりゃあいいね……っと、お邪魔虫も多いみたいだけど」
俺「なら、さっさと潰しちまえ……ってな」
また時折飛んでくるネウロイのビームをシールドで受け止め、後方へ絶対に流さないようにする。
だが、当初は順調に行えていた殿の仕事だが、こちらが攻勢に出る様子がないと気づいたか、ネウロイからの攻撃に厚みが増していく。
伯爵「やれやれ、シールド張りっぱなしだよ」
俺「軍隊は退却時の損失が激しいからなぁ……」
ほとんどシールドを張っての防衛が主任務となっていた二人。
表情は真剣そのものなのだが、口は余裕を崩さないところは、似たもの同士なのかもしれない。
ラル『こちらの安全圏までの後退は間もなく完了する。二人共離脱準備を開始してくれ』
伯爵&俺『了解』
ようやくラルから離脱命令が下った。
俺「さてはて、ようやくとんずらこけるってわけか」
クルピンスキー「そうみたいだね……っ!」
言った瞬間だった。
クルピンスキーの視界の端には、木の陰に巧妙に隠されていた高射砲台。
そして、それを操作する人型ネウロイ。
既にこちらを狙って撃つ瞬間。
クルピンスキー(回避は……間に合わない!)
狙いが彼女であれば回避行動でどうにかなったかもしれない。
だが、砲の先が向いていたのは、僚機の俺。
なんとかシールドを張ったとしても、砲の口径からして突破されるだろう。
クルピンスキー「やれやれ……」
俺「えっ?」
自分の身を斜線に滑り込ませる。
驚きこちらを見る俺に、優しく微笑みを見せてやりながら、後背にシールドを展開する。
俺「おいっ!」
同時に赤い閃光がきらめき、シールドに衝突する。
反射的に展開したため硬度が十分でなく、さらに高射砲台の大口径によりシールドはすぐさま脆くも崩れていく。
クルピンスキー「……うあっ!」
そして、シールドは音もなく、薄氷のように割れ消えていく。
だいぶ勢いは削ぎ落とされたとはいえ、その一撃を受ければ、もう飛び続けることはできない。
クルピンスキー「……ふふっ」
だけど、激痛に歪んでいるのに、無理やり失敗した笑みを維持しようとする。
安心させようとしているのだろうが、その表情は儚さだけを思わせた。
俺「伯爵!!」
気づいた時には体が勝手に動いていた。
零れた水滴にように力なく落ちていくクルピンスキーを負って急降下する。
先ほど撃ったネウロイの第二射だろうかが、すぐ頭上を掠めたが気にしない。
俺「バカやろおおおおおおお!!」
その言葉は一体、どちらへ向けられたものなのか。それとも両方か。
徐々に彼女との距離が縮む。
同時に地上との距離も縮む。
俺「捕まえ……たっ!!」
なんとかクルピンスキーに追いつき、銃を放り投げ、その身を大切に抱える。
だがすぐには降下の速度を消すことはできない。
魔力を惜しむことなくエンジンに流し込み、焼け付くことも厭わず回転させる。
俺「ふざけんなよ!!」
それでも、勢いを完全を抑えられない。
大地が、それも冬の寒さで硬度の増した固い大地が迫る。
俺「止まり……やがれ!!」
衝突の瞬間、シールドを展開。
俺「がっ……!!」
背筋が破壊されるかと思う程の衝撃が襲い掛かった。
押し出されるように声が出そうになるのを、歯を思いっきり食いしばり耐える。
俺「はっ……はあっ……」
なんとか大地に不時着することに成功し、俺は肩で思いっきり息をする。
クルピンスキー「あんまり……この格好は私のイメージに……合わない、んだけどな……」
俺「伯爵、大丈夫か!?」
腕の中から、膝の裏と背に手を回されて、いわゆるお姫様抱っこの形で抱きかかえられていた伯爵の苦しそうな息と同時に漏れる声が聞こえてきた。
クルピンスキー「まぁ、死にはしないよ……たぶん、外傷より、一時的な内臓ダメージ……だと思うし……それに、私って……いつだって怪我はそんなひどくならなかったし、ね……」
俺「わかった。わかったからもう黙ってろ」
ゆっくりと地面に横たえてやる。
すぐに海軍士官服の上着を地面に敷いて、そちらへ移してやる気配りも忘れない。
クルピンスキー「やれやれ……助けようと思ったのに、助けられてるんじゃ、どうしようも……ないね……」
余裕を見せるためか、それとも本当に余裕があるのかはわからないが、軽口を叩いてからクルピンスキーは深く息を吐き、そっと口を閉じた。
ラル『クルピンスキー! 俺! どうした応答しろ!!』
異常に気付いたラルからインカム越しに呼び掛けてきた。
休ませようと、クルピンスキーの耳からインカムを外してやってから、返答する。
俺『こちら俺。クルピンスキーが被弾して負傷。俺も空中で中尉を救出し現在不時着中』
ラル『生きているんだな? クルピンスキーの負傷の程度は?』
俺『戦闘も飛行も不可能っすけど、おそらくそこっまでひどくはないかと。悪かったとしても命に支障が出るほどではありませんよ』
ラル『そうか……俺、お前は飛べるか?』
俺『あー……』
足元を見ると、外部装甲が歪み、中の部品が見えて、エンジンがうんともすんとも言わなくなっている雷電が見えた。
シールド越しとは言え、地面と衝突した衝撃で雷電は壊れてしまったらしい。
俺『不時着の影響で、おしゃかっすね。飛行は無理っす』
ラル『そうか……』
インカム越しにラルの深いため息が聞こえた。
ラル『なら、ストライカー回収班を向かわせる。それまで身の安全を第一に考え待機しろ』
俺『了解』
ラル『では無事を祈る。ポクルイーシキンが説教をしたがってるからな』
俺『……ははっ。それはそれは逃げたいけど逃げられないっすねぇ』
ラル『ああ、必ず帰ってこい、命令だ。それでは』
ここで通信が切れた。
軽く息をつくと、もう使い物にならないストライカーを脱ぎ捨て、クルピンスキーのすぐ側に座り込む。
クルピンスキー「ラルは、なんだって?」
まだ体はほとんど動かせないようだが、だいぶ楽になってきたらしく、流暢に言葉が出るようになったクルピンスキーが話しかけてきた。
俺「ん? ああ……ストライカー回収班をよこしてくれるってさ」
クルピンスキー「やっぱりね。またアウロラちゃんに呆れられちゃうよ」
俺「それも命あってのものだろうさ」
クルピンスキー「それも、そうだね」
こんな状況なのに、普段と変わらない様子で言葉を交わす二人。
地面に胡坐を組むと、持ってきていた酒を取り出し、一口傾ける。
俺「ま、じっくり待つしかないか」
クルピンスキー「場所的に、味方がくるのが先か、ネウロイが来るのが先かってとこだけどね。ところで、私にもお酒分けてくれないのかな?」
俺「ん? しゃあねぇなぁ……」
地面に横たわっているクルピンスキーの背を腕で起こしてやり、酒瓶を口元に寄せてやる。
俺「ほらよ」
クルピンスキー「ふふっ、ありがとう」
こくりと、喉が動く。こんな時でもどこか色っぽい。
俺「さて、時間を潰さないといけないわけだが……」
クルピンスキー「私としてもらこのまま平穏無事に過ぎて欲しいところだけど……」
俺「ああ……どうもそうは問屋が卸さんらしい」
二人の意識が不時着した森の中のある方向へ向かう。
聞こえるのは足音。だが、おそらくそれは人のものではない。
俺「やれやれ……もう一仕事かよ」
言葉ではそういいながら、口元には凄惨な笑みを浮かべる。
クルピンスキー「私もお手伝い、といきたいところだけど今回は譲ってあげるよ」
俺「おう……任せとけ」
二人の銃はもうどこかに行った、あるのは俺が背負っている扶桑刀雷切のみ。
俺「じゃ、行ってくる」
クルピンスキー「うん、待ってるよ」
どこか、クルピンスキーの声が寂しそうに思えたが、怪我で弱っているからだろうと理由を付けると、対ネウロイ戦闘用に意識を切り替える。
俺「さぁ、まだまだ戦争のお時間だ」
森の中。
聞こえるのはせいぜい遠方で響く戦闘の音。そして、人型ネウロイが地を踏む音。
耳を閉じ、俺はなにやら地面に耳をつける。
俺「……あっちか」
地面を伝って聞こえる集団の足音からネウロイのいるであろう方角に見当をつけると、足音を消して歩む。
俺「足音を消して歩けるようになれ、か。姉御の教えも役に立つもんだな」
かつて師匠である赤松明美に扱かれた日々を思い出し、自然と苦笑が浮かんだ。
俺「ま、今だってそのおかげでこいつ一本でも戦えるわけだけど、な」
背に負った、頼りになる相棒である雷切の場所を細かく確認した。
滑るように森を移動していく。
俺「……敵、発見」
暫くすると、森の中の小道を進む10体弱の人型ネウロイを発見した。
すぐさま近くにあった太い木を遮蔽物にし、身を隠す。
俺「だいたい一個分隊ってとこか……いけるな」
自分に言い聞かせるように言い切ると、二度三度深く息を吸う。
そして、瓶に残った酒を全て流し込む。
刀を鞘から抜き放つと、にやりと犬歯を見せての獰猛な笑みを浮かべた。
俺「姉御から伝授された赤松流……とくと照覧あれ」
空の酒瓶を自分のいる方と逆方向に放り投げる。
俺「まぁ、赤松流って言っても姉御の我流だけどな」
大地に叩きつけられた酒瓶が音を立てて割れると同時に、木の陰から小道へと一気に躍り出る。
ネウロイ達は音に注意を向けてしまっていて、見事に俺に背を向ける格好になっている。
俺「……ふっ!」
走りながら、踏み込む。
一閃。
袈裟がけに白刃が煌き、一体がその身を散らす。
俺「はぁっ!」
さらに振り返る隙を与えずに、もう一体を返しの刃で真っ二つに割る。
俺「やはり名刀は……切れ味が違う!」
ネウロイ達は奇襲を仕掛けてきた俺に慌てて対処し始めた。
危険度が高まるものの、心を乱すことなく、俺はただ動き続ける。
全力の魔力での身体強化を、アルコールを魔力に変えることで持続させる。
俺「よっ!」
蹴りで直ぐ脇にいたネウロイを蹴り飛ばし、その後ろにいたもう一体のネウロイと衝突させる。
俺「……っと!」
そのまま足を回転させ、背後からの他のネウロイが放った攻撃を回避しつつ振り向く。
身を深く沈めたかと思えば、刀を切り上げさらに一体を切り裂いた。
俺「ちっ!」
だが、まだ相手は6体も数がいて、ついには追われる側になる。
低い前傾姿勢で走り出すと、正面のネウロイにタックルをしかけるように突っ込み刀を突き刺し、これまた撃破。
残りは5体。
俺「あぶねっ!」
首の後ろがちりちりとする嫌な感じに従い、刀から手を離し、横へとローリング。
飛び退いた場所に攻撃が通った。
俺「頃合いだな!」
蹴り飛ばして転ばせていた2体も立ち上がり、状況は悪くなるばかり。
途中、突き刺したネウロイが消滅したことで、地面に転がっていた刀を拾いつつ走り、小道から再び森の中へと入る。
当然、ネウロイらも追ってくるが、木の多さと、移動する目標に照準はうまく合わない。
俺「おらよっ!」
逆に、足並みが崩れたとみると、うまく木々を遮蔽物にして近寄ってきた俺に各個撃破されてしまう。
残りは3体。
俺「さんざ姉御に森の中は走らされたんだ、負けるか!」
動きが制限され鈍るネウロイとは違い、俺の機動力は鈍らない。
俺「ネウロイはいいな、血とかが出ないから刀の切れ味が鈍りにくい」
残り2体。
俺「これで最後だ!」
左右のステップで攻撃をかわすと、居合の形で刀を構える。
俺「その首……置いてきやがれえええ!」
目にもとまらぬ居合の剣筋が、見事に人型ネウロイ2体の首の部分を翔け抜けた。
俺「おっと、いかんいかん」
背の鞘に刀を仕舞うと、ぱんぱんと手をはたく。
俺「ネウロイは消えやがるから、首なんか残らなかったな」
森の中でのゲリラ戦。
勝利の女神は俺へと微笑んだ。
俺「よっ」
クルピンスキー「やぁ、お帰り。どうだった?」
俺「この通り、余裕だな」
墜落現場に戻ってみると、大分調子が戻ったのか、クルピンスキーは近くにあった木にもたれかかる形で座っていた。
クルピンスキー「そのわりには、大分どろんこみたいだけど?」
俺「はっ、ネウロイどもと遊んでやっただけだ。ガキの相手は疲れる」
クルピンスキー「ふふっ、それはよかった」
俺「何回もやりたくはないけどな、っと」
どっかりとクルピンスキーの横に俺も座り込む。
クルピンスキー「でも、これで待ってればいいんだろう?」
俺「もちろん、そのはず……」
だが、言いかけたところで森の木々がなぎ倒される音が聞こえてきた。
どこに隠れていたのかという数の鳥が空へ飛びあがる。
俺「……だったんだけどなぁ」
森を蹂躙し、一気に姿を見せたのは、四本の脚を持って大地を這いまわる戦車型ネウロイ。
その砲塔がこちらへ向く。
クルピンスキー「やれやれ、大ピンチって奴じゃないか。どうする?」
俺「わかってんだろ? いくらなんでもこりゃ逃げられねぇよ」
クルピンスキー「じゃあ、二人そろってあの世行き……かい?」
俺「そうも、行かねえんだよな……」
ゆっくりと立ち上がると、俺は再び刀を抜き、正眼に構える。
俺「戦車が出てきたからって、そうほいほいと負けましたと言ってられるかぁ!!」
一気に走り出す。
もはや破れかぶれとしか思えないその動き。
戦車型ネウロイは、ウィッチとはいえ重火器を持たずたった一人でなにが出来るのかとばかりに俺の出方を見ていた。
俺「だいたい、上から見下すんじゃねえ!」
向かう先はネウロイの右足。
俺「ネウロイの分際で、人間様をよおおおおおお!」
刀を振りかぶると思い切りそれを振るう。
俺「さっさと……地面に這いつくばりやがれえええええ!!」
木の幹程もあろうかという太いネウロイの足。
先ほどまでの人型ネウロイとは違い、固い。刀が途中で止まりそうになる。
だが、かつて雷神を切ったために千鳥から改名された名刀雷切は、ここにきて鋭さを増すかのように持ち主の意思をくみ取る。
俺「でりゃあああああ!!」
刀が振りぬかれると、ネウロイの右足は切断されていた。
これにはたまらずネウロイも体勢を崩して大地に伏してしまう。
俺「へっ、ざまぁ」
片手の中指を立てて見下してやる。
こうなってはネウロイも先ほどまでの余裕を見せていられず、砲塔を俺のいる方向へと向ける。
俺「おっと、こりゃ失礼」
もちろんそれに俺は気付き、余裕をもって逃げだす。
体全体で旋回できないので、後ろの方へ回れば、前方についている砲では俺を狙えないからだ。
俺「残念だが当たらない……っ!?」
ネウロイが放った一撃は、俺から離れた方向へ飛ぶ。
思惑通りの展開に、俺は余裕の笑みを浮かべていたのだが、着弾の瞬間驚きに目を見開いた。
俺「ぐぅああっ!?」
爆風と飛び散る破片に体が煽られ、吹き飛ばされた。
俺「榴弾……かよ…………」
全身に傷を負い、地面に放り出された格好のまま、うめく。
なんとか右手に握った刀は手放さずにすんでいたが、体は殆ど言うことを聞かない。
そしてなにより、
俺「左腕が……くたばり、やがった……」
どうやら骨がやられたらしく、左腕はぴくりとも動かなくなっていた。
足を一本失ったものの、なんとか残った三本の足で立ち上がったネウロイが、ゆっくりと体を回転させ、俺の方へ向く。
俺「くそ……」
刀を杖にして、無理やり体を起こすが、立ち上がるまでにはいかない。
ネウロイの砲塔が逃すことなく、俺を捉えた。
俺「もう……ダメか…………」
そう思い、目を閉じようとした瞬間だった。
インカムから、涼やかな声が聞こえてきた。
アウロラ『よくやったわサムライ。後は任せなさい』
同時に、大きな銃声が響いた。
戦車型ネウロイがアウロラのラハティL-39に撃ち抜かれる。
俺「……遅ぇよ」
白い破片となって消えるネウロイを眺めながらそう呟き、ふっと力が抜けて地面にどさりと倒れ伏した。
そのまま俺の意識は深く沈んでいった。
最終更新:2013年02月04日 14:23