アウロラ「……とまあ、こういうところです少佐」

ラル「了解。わかった」

報告を聞き終え、深くため息をつく。

ラル「ああ、もう夜も遅いし、下がっていいぞ。ご苦労様」

アウロラ「はっ、では失礼いたします」

敬礼をしてアウロラが執務室から退室する。

ラル「やれやれ……ストライカーが壊れるのも困るが、隊員に大怪我される方が困ったものだ」

ドアが音を立てて閉まると、ぼやく。
憂鬱そうに再びため息をつくと、ドアがノックされた。

ラル「入れ」

ロスマン「失礼します」

ラル「なにかあったか? 私としてはもう悪い情報は聞きたくないんだが」

ロスマン「ならよかった。今回ばかりはいい情報よ」

ラル「ほう、そりゃよかった。クルピンスキーが更生でもしたか?」

ロスマン「ふふっ、残念だけど違うわ。あのニセ伯爵が更生したらいい情報って程度じゃすまないもの」

ラル「それもそうか」

にやりと笑うラルと、手を口元に当ててくすりと笑うロスマン。

ロスマン「ドクターメンゲレから連絡が入ったわ。俺君が目を覚ましたらしいわ。それと、双子ウィッチの研究をしたいからハルトマン姉妹に会わせろって」

ラル「ほう!」

執務机から思わずラルは身を乗り出す。

ラル「それはよかった。あ、双子の件についてはスルーしろよ」

ロスマン「当たり前じゃない。私のかわいいハルトマンをあんな変態ドクターに渡す気なんて毛頭ないわ」

ラル「だろうな、お前は溺愛していたからなぁ」

ロスマン「で、溺愛って……そこまでじゃないわよ」

ラル「どうだか」

意地の悪い笑みを浮かべ、ラルはロスマンをじっと見つめる。

ラル「クルピンスキーの影響でハルトマンがぐーたらになった時に、涙目で私とバルクホルンに相談してきたのを忘れたとは言わせないぞ」

ロスマン「そ、それは……」

ラル「厳しい曹長が『私の、私のハルトマンがニセ伯爵のせいで……』って言ってたなぁ」

ロスマン「やめてよ、ラル。そんな昔のこと」

ラル「でも、クルピンスキーのおかげで固さも抜けたのか、ぐんぐん才能を発揮していったんだから、あいつは困ったもんだよなぁ」

ロスマン「まぁ、それは否定できないわ」

ラル「でも、保護者としては複雑な気持ちか?」

ロスマン「んもぅ……」

ほんのり顔を赤くして、顔を逸らすロスマン。
それを見て満足したラルは、うんうんと頷くと、ゆっくりと席を立った。

ラル「さて、それじゃあ俺のところへ行って少し話をするか」

ロスマン「……」

抗議の意思の籠った視線を向けられるが、ラルはどこふく風。
さっさと執務室を出て行ってしまう。






502の基地の医務室。俺は医師から話を聞いていた。

メンゲレ「あれだけ酷い怪我だったからね、当分は左腕を使えないよ」

俺「ま、しゃーないっすねぇそりゃ。左腕以外は大した怪我がないだけもうけもんっすよ」

メンゲレ「確かに、聞く限り相当無茶やったらしいしね。まあ一応念のために今晩は医務室に泊まっていきなさい」

俺「わかりました」

メンゲレ「あ、そうだ」

俺「なんすか?」

メンゲレ「扶桑には、双子のウィッチってのはいないのかい?」

俺「双子の、ウィッチ?」

メンゲレ「そう! 双子だよ、それもウィッチの!!」

ずいっと顔を寄せてくるメンゲレ。
なぜか目の輝きがおかしい気がして、俺は思いっきり引いていた。

俺「い、いや。俺の知る限りじゃ、いないっすね……」

メンゲレ「…………そうか」

心の底から残念そうに、メンゲレは身を引いて椅子に座り直した。

メンゲレ「あ、でももし見つけたら是非私に一報くれてくれたまえよ!」

俺「は、はぁ……」

ラル「そいつの双子談義は無視して構わないぞ、俺」

医務室のドアが開かれると同時に、ラルが呆れた声で言った。

俺「あ、隊長」

ラル「おう、俺。案外元気そうだな」

メンゲレ「こりゃこりゃグンドュラ君! 無視していいとはなんだね無視していいとは!」

にこやかに笑って、俺の方へ歩いてきたラルだったが、その直前でぷんすかと怒ったメンゲレに道をふさがれた。

ラル「言葉のまんまだが?」

メンゲレ「君はわかっていない! 私の医学へかけるこの熱き情熱と歴史的意義が!!」

大仰な身振り手振りを入れて説明するメンゲレだが、ラルは面倒くさそうに手のひらを下に向けてストップをかける。

ラル「あーはいはい。すまないね私は戦うことしか脳がない航空ウィッチだよ。あと、すまないけど俺に話があるんだ、いいか?」

メンゲレ「ふんっ、まあいいよ。私の話は終わったからね。では、私は資料整理があるから、なにかあったら呼んでくれ」

口をとがらせた不機嫌そうな表情で、メンゲレは執務室から出て行ってしまう。

ラル「やれやれ……」

メンゲレが見えなくなると、ラルは肩を竦めた。
そして先ほどまで彼が座っていた椅子を引く。

ラル「すまんな、変な医者で。腕は確かなんだが、ちょっと実験実験うるさくてなぁ」

俺「ははっ、まあ実害さえ出なければ」

ラル「まあ、な」

お互いに笑いあうと、ラルは足を組んで椅子に座った。
綺麗な足が強調するように目の前に出され、つい目線が向きそうになるが我慢する。

ラル「とりあえず、大事がなくてよかったよ。腕以外は」

俺「すいません。当分、俺は穀潰しです」

ラル「なぁに、気にするな。怪我に関しては負けない自信があるぞ、私は」

なんでもないことのように言うが、かつてラルは大怪我をして、生死の境を彷徨い、復帰は不可能だとも言われたのに大空へと舞い戻った伝説的な女性なのだ。
今も、魔力繊維で編まれたコルセットを付けて空を飛んでいる程で、腕の一本など比較にならない。

俺「俺はまだまだ下っ端中尉ですからね、隊長にはかないませんよ」

ラル「ふっ、隊長の凄さがわかっただろう。……とまぁ、そういうことは置いておいてだ、シフトの変更などはこっちでやっておくからお前は療養に専念しろ」

俺「了解」

ラル「あと、他に何か聞きたいことなどあるか? 隊員のスリーサイズとか以外なら答えてやるぞ」

俺「それは残念」

にやりと笑みを浮かべるが、すぐに普段に戻る。

俺「作戦はどうなりました?」

ラル「成功半分失敗半分だな。かなりネウロイの航空戦力を叩くことには成功して、こちらへの侵攻を激減させることはできるだろうが、制空権を奪える程ではなかった。
ガリアが陥落してカールスラント・ガリア国境方面に戦力が振られているだろうから戦力は大したことないと踏んでた上層部は、戦略の見直しらしい」

俺「なるほど、大変ですねぇ」

ラル「まあな。で、聞きたいことはそれだけか?」

俺「あ、そうだ伯爵はどうなりました?」

ラル「ふーん……気になるか?」

「伯爵」という単語を聞いて、ラルはにんまりと気味の悪い笑みを浮かべた。
こっちをいじってくる時の師匠赤松とよく似た表情に、俺の脳裏に嫌な予感がよぎる。

ラル「まあ、そりゃ確かに体張って助けた王子様にしてみたら気にならないわけがないよなぁ」

俺「なんすか、その気持ち悪い呼び方は……」

ラル「だってなぁ、翼を失ったお姫様を墜落の危機から救い、その上襲い掛かる魔の手を一人で撃退したんだろ? よっ、色男!」

なにかを期待するような視線を向けてくるラルに、俺は呆れた表情を返す。

俺「そんなロマンティックなもんじゃないっすよ。それに、伯爵がお姫様って柄ですか……」

ラル「性格はそりゃ癖が強いってもんじゃないけど、あれはあれで女って感じのとこあるだろ?」

俺「ありましたっけ?」

記憶を色々と掘り返していく。
――酒を一緒に飲んだクルピンスキー。
――502女性隊員にセクハラするクルピンスキー。
――正座をするもののあまり反省の色が見られないクルピンスキー。

俺(女性……らしさ?)

眉をひそめる俺。
その表情から内心がわかったのだろう、ラルが口に出す。

ラル「あれ? お前、いつだったか休暇にクルピンスキーと出かけた時、あいつを背負って帰ってこなかったっけ?」

俺「……」

言われると、勝手にその時のことが思い出されてしまう。
――酒臭いかと思ったら意外にも甘く感じた吐息。
――冬の寒さをも忘れる温かみと、柔らかさ。

ラル「お、なんか思い出してきたか?」

俺「ぐっ……」

否定できず、俺は逃げるようにラルから視線を逸らすだけしかできなかった。
くつくつと喉を鳴らしながら、ラルのにたにたとした笑みは消えることなく続いている。

ラル「はっはっは! ま、ほどほどにしろよ」

笑い飛ばすと、ラルは席を立つ。

ラル「ま、隊員が元気なのも確認できたことだし、私は帰るとするよ。しっかり養生しろよ」

俺「はいはい、了解しました」

ラル「ふっ」

やる気のあまりない俺の敬礼に、機嫌を悪くすることもなくラルは軽く手を振って、医務室から出て行った。
ドアが閉まり、足音も遠のいてしまうと、音はなにもなくなる。

俺「……寝るか」

特にやることもなく、怪我して気絶して目覚めてすぐのくせに出歩くわけにもいかず、仕方なく俺は寝ることにした。






俺「……ん?」

大して夜が更けぬうちに眠ったからだろうか、深夜の時刻に俺は廊下を歩く足音に目を覚ました。
カーテンを引き忘れていた窓からは満月の煌々とした明かりが部屋に差し込み、不便ない証明となっている。

俺「やれやれ、寝てばっかってのもあれなもんだなぁ」

それでも寝る以外に選択肢がないので、布団をかぶり直す。
しかし、外の足音が医務室の前で止まった。
なんだ、と思うと同時、ゆっくりと医務室の扉が開く。

クルピンスキー「……」

ゆっくりと部屋に侵入してきたのは、クルピンスキーだった。

俺「なに、やってんだ?」

クルピンスキー「わっ! なぁんだ、起きてたんだ、残念」

声をかけると、どうやらこちらが寝ていたと思ったらしく少し驚いていたが、すぐにいつも通りの表情になる。

クルピンスキー「寝てたなら、寝顔でも見てから起こそうと思ってたのに」

俺「そいつは起きててよかったぜ……」

やれやれと苦笑いを浮かべながら、俺は上半身を起こす。
クルピンスキーは椅子を見つけるなり、ベッド横へと移動させ座った。

クルピンスキー「もっと重傷かと思ったけど、君も結構丈夫だね」

俺「まあ、確かに目立つ怪我は左腕だけだからなぁ……それでも、カタヤイネンや、お前さん程じゃあないな」

クルピンスキー「ふふっ、私にはどうやら女神様がついてるらしいからね。いやぁ、モテる女は困っちゃうよ」

俺「はっ、他の女に手を出し過ぎて嫉妬されないように気を付けろよ、ただじゃすまないぜ」

クルピンスキー「そうだね、ご機嫌伺いはちゃんとしとくよ」

くすり、と笑みを零した。
月光に照らされたクルピンスキーの表情が、どこか神秘的に思えてしまう。

ラル『よっ、色男!』

突然、ラルの言葉が俺の脳裏で思い出され、なぜだかクルピンスキーから目をそらしてしまった。

クルピンスキー「どうかした?」

俺「いや、なんでもない。それより、こんな時間にどうしたんだ?」

とっさに話題を変える。
特にクルピンスキーは疑問にも思わなかったようで、俺は内心ほっと胸をなでおろした。

クルピンスキー「君の寝顔を見に来ただけ……ってのは?」

俺「その言い方はどう聞いても他の理由があるって言ってるようなもんじゃねぇか」

クルピンスキー「あはは、まぁその通りなんだよね。今日の用事はこれさ」

言って、クルピンスキーが俺の目の前に出したのは、一本の酒瓶だ。

クルピンスキー「スコッチだよ、しかもロイヤル・ブラックラのさ」

俺「おうおう、またいい酒が出てきたじゃねえか」

ロイヤル・ブラックラとは、1853年に蒸留所として初めてロイヤル(王室御用達の称号)を冠することが許された蒸留所だ。

俺「って、待て待て。そんないいのを飲めるのは嬉しいけど、こんな時間になんでわざわざ?」

クルピンスキー「え、だって約束したじゃない」

俺「約束?」

クルピンスキー「あれ、忘れちゃった?」

俺「ん~?」

顎に手を当て、いつそんな約束をしたかと頭を悩ます。
だが、すぐに思い出された。

俺「あぁ、今日の出撃前か」

クルピンスキー「ご名答。まぁ、本当はお酒の方は君が用意するって約束だったんだけどね。私、約束をちゃんと守れない男の人は嫌いだなぁ」

俺「はは……」

拗ねたような表情でじっと見つめられ、なんとなく苦笑いでごまかしつつ目線を逸らすことしかできなかった。
振る舞うと約束していた「北の誉」は未だに俺の部屋で眠っている。

俺「すまんすまん。今度ちゃんと埋め合わせするから許してくれ」

クルピンスキー「そう? なら、怪我もしちゃったし、情状酌量の余地ありってことにして今回はおおまけにまけて許してあげるよ」

俺「ありがとさん」

クルピンスキー「ふふっ、何をしてもらおうかなぁ」

俺「おいおい、お手柔らかに頼むぜ?」

クルピンスキー「それは、保証できないかな」

俺「やれやれ……」

なにを考えているのか、楽しそうに笑うクルピンスキーに、俺は肩を竦めてみせるが、表情は笑っている。

クルピンスキー「ま、それはいつかのお楽しみにとっておくよ。それよりもはやく飲もうよ」

俺「そうだな、まずは飲むか」

クルピンスキー「うんうん」

スコッチが開けられると、クルピンスキーの口元に瓶が傾けられ――

俺「待った!」

そこへ俺の静止が入った。

クルピンスキー「なんだい?」

俺「コップは?」

クルピンスキー「ないよ?」

それがどうしたんだい、とばかりに軽く首をかしげながら言い放つクルピンスキー。

俺「なんで?」

クルピンスキー「別に、回し飲みすればいいじゃない。私たち、仲間なんでしょ?」

俺「うーん、まぁ、そんなもん……なのか?」

クルピンスキー「そんなもんさ」

なんだか半分納得できないが、スコッチ片手ににこにことご機嫌そうなクルピンスキーを見ていると、なんだかそれでいい気になったので、俺は納得することにした。

クルピンスキー「ん……んく……」

瓶に直接口をつけ、クルピンスキーがスコッチを飲む。
上下に動く喉仏の白さがどこか色っぽかった。

クルピンスキー「ぷはっ……ふぅ、やっぱり美味しいね」

服の袖で口元をぬぐうと、瓶を俺へ向かって差し出す。

クルピンスキー「はい。次は君の番だよ」

俺「おぅ」

瓶を受け取り、飲もうとするのだが、瓶の口が目に入り、動きを止めてしまう。
そう、先ほどクルピンスキーが口を付けていた部分だ。

クルピンスキー「どうしたの?」

俺「ん、あ、いや……」

やばい、と思ったのだが、

クルピンスキー「あ、そっか。右手だけじゃ飲みづらいよね。私が支えようか?」

俺「ああ、いやそれは大丈夫だ」

なんとかクルピンスキーはいい具合に勘違いしてくれたので、またまたほっとする俺だった。

俺「つーか、お前に支えられたら、一気飲みさせられかねないだろうが」

クルピンスキー「あ、ばれた?」

俺「やっぱりか」

おどけて見せるクルピンスキーを横目に、もう色々深く考えるのはやめてスコッチを傾ける。

漂う香りは、フルーツやシロップなどのどこかあまそうであり、その中に混じるアルコールがいいアクセントと感じた。

俺「んっ……」

飲み口は結構クリーミーでなめらか。
青リンゴの味わいなどジューシーなフルーツ感が一気に押し寄せるが、スパイシーな刺激が舌を包み込んでいく。
重厚な味わいだ。

俺「はっ……」

流れるスコッチが、喉に熱を感じさせる。
飲み終われば、熟成された深い甘みが鼻を抜ける。

俺「うん……うまい」

クルピンスキー「でしょ?」

にこりとクルピンスキーが笑みを浮かべる。

クルピンスキー「じゃ、次はまた私だね」

俺「ああ、ほらよ」

クルピンスキー「ん、ありがと」

月明かりだけが照明の深夜、二人はスコッチの瓶が空になるまで順番に飲み続けた。
濃く甘い味わいは、スコッチのもともとの味だけではなかったが、それにはどちらも気づくことはない。






もう深夜も遠に過ぎ、明け方と呼ばれる時間帯。
窓から白む東の空の光が差し込んでいる。

クルピンスキー「……」

酒盛りを終えて部屋に帰ったはずなのに、再び医務室にクルピンスキーが現れる。

俺「……」

今回は、いい具合にアルコールが回っているのか、俺は気持ちよさそうに眠ったまま起きることはない。

クルピンスキー「ふふっ」

声を抑えた笑みを零す。

クルピンスキー「ぐっすり寝てるね」

俺の顔の上で手をひらひらと振ってもなにも反応は返ってこない。
深い眠りに俺がついていることを確認すると、置きっぱなしだった椅子に座り、寝顔をじっと見つめる。

クルピンスキー「今日は、いやもう昨日かな? とにかく、色々迷惑かけちゃったよね」

普段の飄々とした彼女からは想像がつかないほど、静かで弱々しい声だ。

クルピンスキー「だけど、本当にありがとう」

浮かべられた笑みは、優しいものだ。

クルピンスキー「でも、君も無茶するよね。私は墜落し慣れてるんだから、放っておけばいいのに」

静謐な医務室に、俺へと語りかける言葉だけが響く。

クルピンスキー「もしかしたら、私が君をかばったから?」

すっとクルピンスキーの右手が俺の頬に伸びる。

クルピンスキー「もし理由がそれだけだとしたら、それはそれでちょっと残念かもしれないな」

最も冷え込む、明け方に人肌の温かさは心地よい。

クルピンスキー「ねぇ、君は私のことをどう思ってる?」

返事はなく、彼女も期待していない。

クルピンスキー「嫌いってことはないと思うけど」

言葉は途切れることなく続く。

クルピンスキー「同僚? 戦友? 酒飲み仲間? それとも……」

そこで、クルピンスキーは口をつぐみ、黙り込んでしまう。
外で、せっかちな小鳥のさえずりが聞こえた。

クルピンスキー「……一緒だよね」

俺の頬に手を添えたまま、立ち上がる。

クルピンスキー「間接キスをやっちゃえば、もう一緒だよね」

もう片方の手も俺の頬にそえられる。

クルピンスキー「起きないよね?」

どこかむずがゆそうに一瞬身をよじる俺だったが、それだけだ。

クルピンスキー「ねえ、そのままで聞いてくれる?」

徐々に、ゆっくりと彼女の顔が下がっていく。

クルピンスキー「本当に正直に言うとさ」

吐息のかかる距離、もうお互いが触れ合うまで数ミリという距離で静止する。


クルピンスキー「私は、好きだよ……俺」


うっすらとした、二つの影が一つになった。





最終更新:2013年02月04日 14:23