目の前にいる男は一体誰だろう。
後ずさりしながら、俺はベッドで仁王立ちする人物を凝視する。筋骨隆々の全身には生える剛毛からは何だか獣臭さが漂っていた。
嗅いでいて不快感しか感じない匂いに俺の頬も自然と歪に引き攣っていく。

???「久しぶりだなぁ! 少年!!!」

男が顎に蓄えるそれは立派な髭を撫でながらダンディズムに満ち溢れた笑みを浮かべると、並びの良い白い歯がキラリと輝きを放った。
この手の男がタイプな女性なら一撃で堕ちるであろうスマイルなのだが、生憎と男に興味を持つような性癖は持ち合わせていない。
自分には命を懸けても守り切らねば成らない最愛の女性がいるのだ。
それにしても人の布団に入り込んだ、このマッチョマンの口ぶりから察するにどうやら自分は彼と前にも会っているらしい。

俺「誰だ……アンタ……」

掠れた声しか出せなかった。
そりゃそうだ。筋肉モリモリのマッチョマンがブーメランパンツ一丁で自分の前に立ちはだかっているんだから、誰だって恐れおののくというものだ。
特に股座から激しく自己主張するバズーカ砲並みのナニは正直男として劣等感に苦しんでしまうほどにご立派です。

???「この顔を見忘れたか!?」

ビクンビクン!

男の激情に呼応するかのように彼のバズーカ砲が激しく上下に振られる光景に俺は吐き気を覚え反射的に手を口元へとやった。
ごめんなさい。
とりあえず、立派な大魔王になっている貴方の魔ジュニアをさっさと隠してください。お願いします。

俺「いや知らねぇよ!! アンタ誰ぇ!?」

記憶の倉庫に検索をかけてみるも該当するものはない。完全に初対面のマッチョマンは酷く心外だとでも言わんばかりにこれまたダンディな容貌を歪めた。
自分が誰だか分からないと言われ心底悲しんでいるようにも見えるが、正直俺にとってはどうでも良い話である。
むしろ、いきなり暑苦しいマッチョマンが布団の中に入り込んできて睡眠の邪魔をしてきて迷惑している。

???「あの日のことまで忘れたのか!?」

そんなことを言われましても・・・・・・
面倒臭そうに頭を掻き毟った俺は無言で廊下へと続くドアを開けた。

???「なんだね?」

俺「か・え・れ!!」

???「なんと!?」

俺「なんとじゃねぇ! さっさと帰んねぇと人を呼ぶぞ!」

???「やれやれ・・・・・・本当に忘れてしまったのか・・・・・・」

肩をすくめるマッチョメンの態度に俺は本能的に後ずさりする。片足を廊下へと出し、いつでも逃げ出せる体勢を整えた。
空気がやたらと冷たい。まるで部屋全体が氷結しているかのようだ。

???「これを見ても、そのようなことが言えるのか!?」

男の背中から翼が生えた。茶、白、黒といった配色のそれに俺は心臓を鷲掴みにされた感覚を味わう。
嫌というほど見覚えがある、それは間違いなく自分が契約する使い魔の翼であった。

俺「ま・・・・・・まさか!!」

使い魔が人間の姿をとるといった話をどこかで聞いたことがある。だが、その時は単なる御伽噺だと思って軽く受け流していた。
信じたくはないが。一連のマッチョマンの言動から察するに……

???「そうだよ。私は君の使い魔だよ!」

嫌な予感が的中すると共にマッチョマンの背中から生える翼が“バサッ”という音を立て広がったのと同時に目の前の景色が崩れた。



俺「ぬはっ!?」

目を覚ます。
ベッドに横たわっているのは自分一人である現実に、先ほどまで見ていた光景が夢であったのだと気が付いた俺は胸を撫で下ろした。
嫌な夢だ。
あれこそ悪夢と呼ぶべきものなのだろう。全身の毛穴から脂汗が吹き出て、シャツが張り付いていて気味が悪い。

俺「最近はまったく出てこなかったっていうのに」

一言で言うならば、彼の使い魔は生粋の変態だった。
幼少時の自分の尻に心奪われた、そいつは発情でもしたのか高高度からの急降下突撃を敢行し鋭利な嘴をよりにもよって自分の尻に突き刺しやがったのだ。
その際に使い魔の契約を結んでしまったために俺は幼い頃から今に至るまで変態と一緒に戦ってきた。たいへん遺憾で認めがたいが事実である。

俺「あの変態が」

???「変態とは失礼だな」

俺「……ッ!?」

俺の言葉に反応し、暗がりの中から滲み出るかのように声の主が姿を見せる。臀部まで伸びる長い茶髪。
白く端正な顔立ち。切れ長の瞳。スレンダーな裸体の上にボロ布一枚という官能的な姿。
思わず息を呑んでしまうほどの氷の美貌を前に俺はベッドの下に隠していた愛刀に手を伸ばし、抜刀の体勢を整えた。

俺「……どうやってここに入った?」

日ごろの彼を知る者が聞けば身震いしてしまうほどのドスが利いた声。
路地裏のチンピラなら、泣き叫びながら財布を放って逃げ出す迫力に女性は口角を吊り上げるだけだ。

???「入るも何も私はずっといたさ」

俺「傍にいた?」

???「それにしてもヒトの姿というのは慣れないな。見よう見真似でやってみたが」

俺「何の話だ? 何しにこの部屋へ入った?」

???「だから最初からいたと……まぁ良い。私の目的はたった一つだからな……しょうねん」

俺「!?」

少年―――目の前の女は自分のことを確かにそう呼んだ。
24年間生きてきた中で彼のことをそう呼び続ける存在は一つしかない。
そのことに気が付いたとき、既に女性がベッドまで上がり、自分の顎下に白魚のような指を這わせていた。

俺「離せっ!」

たった一瞬の動揺を突かれベッドの上への侵入を許してしまった俺は細い腕が放つ膂力により組み伏せられた。
よりにもよって変態に尻を差し出すドギースタイルで。

使い魔「何だぁ? 使い魔の顔を忘れたのか?」

俺「生憎と初めて見る顔だね!」

使い魔「まぁ、いいさ単刀直入に言おうか」

俺「ごくり」




使い魔「掘らせろ。君の尻穴を」




俺「……あ?」

使い魔「だから!」

肩を掴み、

使い魔「私は!!」

目を見開き、

使い魔「君の!!!」

声を荒げ、

使い魔「尻穴を!!!!」

翼を広げ、

使い魔「掘りたいんだよ!!!!!」

あらん限りの感情を込めて使い魔が叫んだ。

俺「(く、狂ってやがる)」

初めて言葉を交わしたときから、どこか頭のネジがぶっ飛んでいるとは思っていたが、まさかこれほどまでに重症とは。それともこれが獣の本能というものか。

俺「鷹は動物らしく同属に欲情してろ! あっ! こら、やめろ! ズボンを脱がすな!!」

使い魔「はぁはぁ! 少年の尻! はぁはぁ! ケツ! ケツマン!」

あっという間にズボンと下着を脱がされ、尻を使い魔の視線に晒されてしまう。後ろからは荒く熱の篭った吐息と理性を失った言葉が飛んでくる。

俺「やめろって! ばかっ……あっ……なでるなぁ!!」

使い魔「くくくっ! 無礼なケツよのぉ!」

俺「大体……んっ……お前はぁ……メス……だろうがぁぁ!?」

のの字になぞられ俺の唇から裏返った声が迸った。

使い魔「あぁ。そのことか、ちゃんと用意してあるぞ」

指摘された使い魔がベッドから降り、解放されてズボンを上げる俺に背を向けた。何やら股座の辺りに何かを装着しているようだが……

使い魔「これを見るがいい!」

俺「な、なんだ……それは……!?」

使い魔の股座から天を衝くが勢いでそそり立つ、それを見た瞬間に俺の口が一気に渇いた。
俗に言うペニスバンドと呼ばれるものを身に着けた使い魔は自信たっぷりに胸(Bカップ程度)を張り、

使い魔「少年を貫く我が新たなる嘴だ!!!」

俺「……」

使い魔「ほうほう。どうやら見惚れてしまっているようだな。どれ、痛むだろうがすぐに悦楽に変わるさ」

呆けたような表情を浮かべる俺の両腰を掴み、菊座に嘴(という名のペニスバンド)をあてがう。

俺「って離せ! 離せぇぇぇ!!!」

もがいてみるも馬鹿力で固定されているせいか、まった身動きが取れない。このまま成す術もなく後ろの純潔を奪われてしまうのかと悲嘆に暮れていると、

ガランド「俺くん! その後ろの女は……まさか、浮気か……!?」

ドアを蹴破り救世主が光臨した。

俺「そんなわけないだろう!? どう見たって俺の尻穴が狙われてるじゃないか!!」

俺の瞳に浮かぶ切羽詰った感情。
そして、その彼を押さえつける女の背中から鳥の翼のようなものが生えていることから女が人外の存在だと気付き、歩み寄る。

ガランド「た、確かに……貴様! 何者だ!?」

使い魔「おはようからおやすみまで暮らしを見続ける少年の使い魔だ!」

使い魔が人の姿を取るなど聞いたことがない。だが、彼女の背から生える翼は確かに俺が使い魔とする鷹のそれだ。

ガランド「き、貴様! 自分の主を何だと思っている……!」

使い魔「ただの肉便器じゃ……不服かね?」

俺「ひでぇよ。人間として見られてねぇよ……」

自分に対する使い魔の容赦ない一言に自然と俺の瞳から涙が零れ落ちた。別に大した仲ではなかったが、よりにもよって肉便器として思われていたなんて。
どうやら、こいつにとって自分は性欲処理の対象でしかないらしい。
誠に遺憾だ。

ガランド「やめろ! 頼む! 私に出来ることなら……何だってする! だから!」

両目から涙を流しながら嘆願するガランドに使い魔は冷徹な眼差しで、

使い魔「黙れ小娘! 自惚れるなよ……人間の娘に用などないわ! そこで黙って見ているが良い! ここで私と少年が合体するところをな!」

俺「やめてぇ!」

使い魔「レェェェェェェッッッッッツ!!! インサァァァァァァァァァト!!!」

一気に俺を貫かんと、盛大な雄たけびとともに使い魔が腰を後ろに引いた。
無慈悲なる槍が門を破壊し内部へと突き進むと思われたそのとき、異変は起こった。
自分の腰をがっちりとホールドする圧力が消えうせた俺が後ろを振り向くと、使い魔の身体が透け始めていたのだ。

使い魔「まだ封印が解けていなかったというのか……おのれ! あの忌わしい子狐めぇぇぇぇ!」

封印?
子狐?
何のことかは知らないが、どうやら自分の純潔は助かったらしい。

使い魔「少年! 私は必ず戻ってくるぞ! 必ず戻り君のぉぉぉぉぉぉ!!!!」

断末魔にも似た叫び声をあげ、変態はいずこかへと消え去った。
試しに魔法力を使ってみると頭と尾骶骨の辺りから使い魔の羽と尾が出てくることから、どうやら自分の中へと強制送還されたらしい。
少し気味悪いが。

俺「終わったのか……嵐は去ったんだな」

ガランド「あぁ、そうだ。嵐は去ったんだ……」

ただ、ベッドに残されたぺ二バンだけがカーテンから差し込む朝日を浴びて、僅かな光を放っていた。


おわり


※なぜこんなものを書いてしまったのだろうか……



タカさん(仮称)

俺の使い魔。
幼少時の俺の尻に心奪われ、幼い彼にトラウマを植え付けた張本人。
俺にとってはラスボス的存在。

その比類無き鋭さを誇る嘴を上空からの急降下突撃によって幼い俺の尻穴に容赦無く突き立てた際に彼と使い魔の契約を結んだ。
というよりも結んでしまった。
別に使い魔の契約とかは全く考えておらず、ただ純粋に彼を掘りたかっただけらしい。
使い魔として契約を結んだというより、むしろ質の悪い悪霊に取り付かれてしまったといったほうが正しい。
男の尻ではなく俺の尻のみに尋常ならざる妄執を抱いている上に主である俺をよりにもよって肉便器呼ばわりするのだから、まったくもって動物の本能とは恐ろしいものよ。

ちなみに本人曰くまだ女性でいう処女膜の手前までしか到達しておらず、彼の肛門処女(アナルヴァージン)を完全に散らす機会を虎視耽々と伺い、来たるべき日に備えてスパンキングスキルの修練だけは怠らない。
しかし、残念ながら“ある狐“に封印を施されてしまい滅多に出て来れない。
その狐というのは俺の人間関係を調べれば簡単に突き当たる。

こいつのせいで俺は切れ痔に悩んだり、掘るという言葉に過剰反応(主に恐怖の感情が発動)するようになった。
ロリ智子が塗り薬を指につけて、切れ痔に苦しむ幼少期の俺のために頬を赤く染めながら頑張ってお薬を患部にぬりぬりするシチュエーションを思いついてしまったが・・・・・・えぇい! やめだ! やめだ!! 一体誰が得をするというのだ!!


人間形態
端正な容貌で切れ長の目。
スレンダーな体つきをしており、ボロ布一枚というエロティックな格好で現れる。
クールビューティという言葉が似合う美人だが装着しているペニスバンドがそんな言葉を見事なまでに粉砕している。要はがっかり美人なのである。
なお、いくら名前が同じだからといって間違っても土方のマッシヴな姉ちゃんを想像してはいけない。
絶対にいけない。

別にこいつが鷹だからといって衛星とリンクして長距離狙撃ができるサイボーグ並みの狙撃が出来るなんてことはない。

つまり使い魔としてあまり役には立っていない。
最終更新:2013年02月04日 14:30