「蒼穹の絆2-11」

―トラウマ― 


―シシリア島1943年7月24日―

 クソ。今日は不味いぞ!
 着陸した超大型母機2の上空を小型がびっしり取り囲んでいる。大型は相互距離はなし。ヤマアラシが
 二匹ファックしてやがる。その陣形で陸戦型を胴体から吐き出し続けている。母機も小型も全火力を
 俺たちにぶっ放してやがる。

 俺たちが残るだけ。
 連合軍のシシリー防衛に当たるウィッチ隊は、陽動に引っかかって四散している。クソネウロイめ。
 アフリカ勢力と連携しやがった。腐れ外道共!

 どうする?援護が来るまで待つか?それでは地上の敵兵力が均衡を破るまでに膨れ上がる。クソ!
 それ以上の問題。あれが『巣』になったら。ロマーニャはもう駄目だ。そしてアフリカ戦線も
 維持できなくなる。つまり、アフリカ大陸と欧州を喪うことになる。

 やらなきゃならん!二機とも破壊しなくては!でも無理だ!

俺「各機。第一と第二は大型狙いで突っ込む。3から5!小型を少しでもひきつけて欲しい。ただし、
 決して中に突っ込むな!周囲で一撃離脱を繰り返せ。そうすれば小型を誘き出せる。援護が来る
 筈だ。我々で大型を何が何でもぶち壊す。いいか!墜さなくていい!墜されるな!」

ブレンダン「ピンナップ1。了解。うぜぇ小娘共を引っ張る」
ジョージ「ブロンディ1。ほいよ」
ヨセフ「ニップル1。変態キング、でけえのは任せる」

俺「よし。ではヴィーク!右側からやる。右上方より突撃、背骨ど真ん中を狙う。最初は俺たちの
 背後に隠れろ。被弾の可能性を減らせ。その分、撃ち始めたらシールド全開で軸線をずらして
 撃ちまくれ!解ったな?」

トーマ「ヴィーク1。了解。キングのケツの穴にくっ付くわw」

俺「よし。ピンナップ、ブロンディ、ニップル!小娘に挨拶して来い!頼むぞ!」

 眼下の三分隊が左右バンクを振ってから一気に加速し高度を下げる。我々もそれに続いて下降。
 コルセア隊が突入を開始。我々もダイブして潜り込む。

俺「第一・第二!行くぞ!」

 コルセア隊が接触を開始した。小型が何機か爆発。周りの奴らは応射しながら生じた空隙を塞ぎ
 始めるが、コルセアの弾幕でまた爆発する。こちらにも母機からの太っといビームが飛んでくる。
 すこし、スライドさせながらつつ一度潜り込み気味にしてから低空飛行、もう一度上昇して撃つか!
 背後の三人の気配を感じながら機動する。しっかり付いてきてくれよ!
 乱射している小型の火線をかいくぐる。ビームが視界を覆う。シールド展開。クソ!もうちょっと!
 何度経験してもこのときが一番怖い。我慢しろ!

 今!ブローニングをコアがあるはずの場所に向けて撃ちまくる。四本の火線がほぼ一箇所に集中。
 こいつも撃って来るがシールドは小さくしか張れない。攻撃にとられて余裕がない。この野郎!!

 何とか破壊。横の奴が撃ち始めた。一端離脱するぞ!

ヴィーキング「ヴィーク2.1が戦死」

俺「ニック、それは確かか?」

 墜落じゃないのか?

ヴィ「ヴィーク2. 真横で消滅しちまった」

 トーマ! プラチナに近い金髪の大男の顔が一瞬浮かぶ。

俺「ヴィーク2!第一の3番に!ケッテだ!残りのゴキブリ野郎を叩く!残弾確認しろ!」

ヴィ「了解!」

俺「リードより。3,4,5!次に掛かる!同様に!」

ジョージ「ブロンディ1。了解。行くぞ」
ヨセフ「ニップル1。了解。ピンナップ隊が体当たり。脱出は無し」

俺「何?!」

ニップル「リード隊とヴィーク隊を後ろから襲おうとした奴らに。既に被弾していた」

 クソ!俺たちを守ろうとしたのか!馬鹿!....有難う。

俺「了解。行くぞ!」

 えらく手間取って、二匹目を撃破。
 この攻撃で2番のバートが戦死。ニップル隊も消えた。テスト運用中の地上連絡担当に
 問い合わせたが、パラシュート及び不時着は確認されないと。

 『巣』への転化は防いだけれど・・・。あいつらも・・・。クソ。

俺「小型を叩くぞ。ブロンディ!外縁のはぐれた奴だけ殺れ!決して中には入るな!深追い
 するな!解ったな!」

ジョージ「ああ!敵討ちだ!」

俺「冷静になれ!冷静にやるんだ!」

 返事は無し。ええ!くそ!生きて帰るんだ!

俺「ニック!行くぞ!てめえら!勝手に死んだらぶっ殺す!」

 4人だけになっちまったよ。ブロンディ、お前ら気をつけろ! 


 弾が尽きたブローニングを捨て、M3サブマシンガンで格闘戦を続ける。
 ニックとははぐれてしまった。ペアの癖がどうしてもな・・・。もっと、分隊間で交換演習
 をしておけば良かったのか。乱戦の中、どこか醒めた目で自問自答している俺がいた。
 こりゃ、今日は帰れねえかもな。ま、人は永遠は生きられねえ。だれが言ったんだっけ?
 ガーニーだったかな?

 ふと気付くと、敵がいなくなっていた。仲間も誰もいない。おい、ニック、ジョージ、ハッチ!
 お前ら何処にいった!!

 探しまくるが何処にもいない。無線にも応答はない。一体・・・

?「スタリオン こちらAGC。聞こえるか?応答してくれ!」

 うるせえな・・・AGC?何だっけ・・・どこかで聞いたような・・・・

?「スタリオン。空陸連絡担当だ!おい!聞こえないのか!」

 ああ。新設の空/陸連絡将校・・・。

俺「すまん。不時着または脱出したものがいるはずだ。至急、救援を願う。俺も探す」

AGC「スタリオン。確認はされていない。残念だ。リードだな?上空で待機せよ」

俺「・・・・弾薬に余裕あり。地上部隊を支援する」

 探す気がねえのか!馬鹿野郎!自分で探すわ!

AGC「一人では危険だ。まもなく504が到着する。上空待機せよ」

 うるせえ!

 怒鳴りつけ、一気に急降下する。まっていろ、今助けるからな!

 低速度で飛びながら、必死に探す。無線には女の声が入るが、情報はないらしい。
 ウィッチがこれだけいるんだ。誰か見ていないのか?!
 コルセアが潰れて燃えている。機体番号は・・・ヨセフか。
 撃たれるが怖さを感じない。感情が消えてしまった。機械的に撃ち返し、破壊する。

竹井「こちら504。スタリオンズ!応答せよ!どうしたの!」

 聞き覚えのある声がインカムから流れてきて、ハッとした。手にはスライドが開いたG.Iコルトを握って
 いる。ああ、M3は撃ちつくしたのか。持ってねえや。

俺「504。今行く・・・」

 上昇しながら、ゆっくりロールして戦場を見る。いないのか・・・。


竹井「俺大尉・・・」

 周りを504が取り囲んだ。目の前にはジュンコが。

俺「・・・」

 敬礼する気力もない。拳銃を戻す。もう弾もないしな。

竹井「他の隊員は?」

 見りゃ解るだろう?

俺「全滅した・・・らしい」

竹井「!ごめんなさい。もっと早く到着すれば、あな」
俺「違う!あんたらの責任じゃない!」

 遮って叫ぶ。あの時やらなきゃならなかったんだ!

竹井「・・・・・」

俺「すまん。地上部隊の支援を・・・。陸上型が、また増えちまったんだ。頼む」

竹井「はい。では、あなたは帰投してください。支援を一人つけます」

俺「いらん。一人で帰る。一人でも多く支援攻撃してやってくれ」

竹井「でも、あなた負傷しているわ。無茶です」

俺「怪我?生きていりゃ御の字だ。頼むから!」

 ジュンコの目を凝視する。今、何が一番大事だ?解るだろう!

竹井「・・・・了解しました。帰投して!」

俺「ああ。お前ら、絶対死ぬな!解ったか!」

 そのまま、囲みを肩で押して破る。基地に帰ろう。再出撃だ。ゴキブリ共・・!


 基地では、俺を病室送りにしようとする連中が騒いだが、拳銃を振り回して言うことを聞かせた。
 ふん。空の拳銃でも役に立つ。がたがた言わずに!装備しろ!俺の判断だ、と念を押して納得させる。
 拳銃は司令部のアホに出撃前にプレゼントしてやった。REMF!


俺「504。スタリオンだ。支援する」

竹井「大尉!何しに戻ってきたの!」

俺「復讐だ!」 

 インカムにはジュンコのほかにもギャァギャァ騒ぐ声がしたが無視。ほっとけ。

 フライパスして状況を確認。あそこがいいかね。効率よくやろう。
 次の航程で、突出した陸戦ストライカー隊を挟撃・分断しようとしていたゴキブリにロケット砲を全弾
 ぶち込む。残りをホバーしつつM2で掃射して破壊。

 ゆっくり移動しながら、陸戦ウィッチ達の邪魔をしている奴らを屠る。
 俺は今、冷静らしい。周囲が全てわかる。相手の動きは遅い。俺は早くて正確だ。上空を飛び交う
 のは504だろ?頑張ってくれよ。ぶっ潰せ。

俺「ヤバイと思う奴は、吊光弾を上空に撃て。火消しに行く」

 おや、ブローニングが弾切れ。捨てるべ。眼下のゴキブリに叩きつけて潰す。資源は有効に利用。
 M3で破壊して廻る。撃たれてる?ふん。アイツか。こう撃つんだよ、ゴキブリ。



 最後の弾倉か。ぼちぼちいいか、なあ、バート?あと何匹やれるかな。

 肩をつかまれた。だれだ?
 振り向いた瞬間、頬を殴られた。なんだ?痛ぇな?

竹井「馬鹿!正気になりなさい!もう十分!」

俺「お前には関係はない。あっちにいけよ。仲間が心配するぞ?」

竹井「あなたが死んで!あなたの仲間は喜ぶの!?」

 このアマ。また殴りやがった。いい加減にしろよ?

 ん?何で泣いている?お前がさ・・・。

 両脇を誰かが掴んだ。そのまま引き摺りあげられる。どっかで見た奴だな。誰だっけ。
 離せよ!フェル!ルチアナ!離せってば!

竹井「504の竹井です。AGC。残弾無し。帰投します。スタリオンも連れて行きます」

AGC「504。了解。ご苦労様。気をつけて」

?「504!有難う!スタリオン・・・・皆を救ってくれて有難う。お仲間は・・・残念でした」

竹井「聞いた?あなたを頼る人がまだ居るの!地上にも!空にも!今あなたが死んでも、あなたの仲間
 は喜ばない!今は耐えるの!」

 まだ泣いている。泣きたいのは俺だ。でも涙がでねえ。感情が体の中で膨らむ一方だ!



 息が出来なくなって目が覚めた。
 またか・・。

 叫び声あげなかったかな・・。くそ。

 脂汗まみれ。心臓が早鐘を打っている。あの時のやり方が・・・やっぱり間違えていたんじゃないか?
 別のやり方をすれば、皆死なずに済んだだろう。やっぱり、きっとそうだ。
 すまん・・・皆。


ミーナがそっとテントから離れる。早朝の見回りの際、叫び声を聞いてやってきた。
今は、忍び泣きの声だけ漏れている。

ミーナ「(辛い経験をしたのね・・・。私、彼の役に立てるかな・・・・・・・・・)」

***************************************************************************************************9+

執務室で、ミーナとバルクホルンが話をしている。ミーナの前には、リベリオン海兵隊の戦闘詳報が
置かれている。連合軍司令部を通じて入手した。

ミーナ「7月24日の戦闘で、彼の部隊は全滅。只一人の生き残りね」

バルクホルン「一日で、か。・・・その日、何があったんだ?」

ミ「陽動で現地の部隊が四散した隙に突入されて。彼の部隊だけで着地した2機の超大型母機に対応。
 応援が到着する前に全滅」

バ「スタリオンズはメールウィッチが4人、あとは通常戦闘機6で構成されていたんだろう?」

ミ「ええ。504も距離の問題で時間が掛かった様子ね。彼らが戦局を決めて。。。全滅」

 二人とも、501に着任する以前はカールスラントの戦闘機隊の指揮官だった。部下を喪うことの辛さは
 よく知っている。徐々に損耗するのは辛いものだ。それがラスカルの場合、一日で。

バ「よくやったものだ。ラスカルだけ生き残ってしまった・・・・か」

ミ「全くね・・・。彼は、後悔して生きているんだと思わない?トゥルーデ?」

バ「あれ、か?」

 自分が指揮の取り方を間違え、それが原因で部下を喪ったと責める。よくあること。しかし、対処の
 仕方は誰も教えてくれない。答がないからだ。軍では、それが悪化しないように、新たな任務に就ける
 ことしか出来ない。酒に溺れるものも多い。

バ「その後、ラスカルは後方へ?」

 引っ込ませて、カウンセリング等受けさせたのか、と暗に問うた。

ミ「いいえ。三日後から出撃しているわ。体の傷が癒えて、原隊から補充も来たんでしょう。主に対地
 攻撃、504と共に空戦も行っている。ヴェネチアの巣からシシリー島への侵攻が止んで、ネウロイが
 駆逐されるまで」

バ「意思が強固だな。で、ミーナはどうしようというんだ?指揮能力に疑問が?」

ミ「いいえ。無いわ。信頼しています。でも、怖いのは」

バ「普段の生活の中で、心が壊されていく ってことか」

 寝ているときが一番怖い。バルクホルンもそうだ。今も夢で・・。

ミ「ええ。私も夜が怖いときがある」

バ「私もだ。あれは辛い」

ミ「そうよね・・・」

 バルクホルンが頷く。今もそうだ。昔よりは少し・・・耐えられるようになったが。

ミ「シシリーでは毎日が戦闘で、ある意味救われていたのかも。でも、その後は間が開いている。だから
 思い出して悩むことも多くなっていると思うのよ」

バ「ああ。まあ、501に来たのは救いになっているのかもしれないな。ここなら仲間がいるし、忙しい」

ミ「ええ。今のあの人に、自殺願望は無いと思うの。この前だって必死に戻ってきたもの」
 「だから、その時の決断が間違っていたかを考えることは無為、そう納得させることが出来たら、楽に
 なってくれるかもしれない。そう私は考えるんだけど。トゥルーデ、あなたはどう思う?」

バ「うん。それは大事だと思う。うまく諭してやれよ、ミーナ」

ミ「ええ・・・やってみます。上手く出来るかしら・・・」

 ミーナを見つめながらバルクホルンは思う。ミーナのほうが上手くやれるよ。だって、ミーナが一番
 今、彼の気持ちが解るんじゃないか?重責に耐える指揮官なんだから・・・。

*

その晩の執務室。いつものように、二人が書類と格闘している。

ミ「ああ、やっと終わった!俺さん、ありがとう」

俺「今日は少し早く終わった。お疲れでした!さ、風呂でリラックスしてくださいよ」

ミ「そうねえ。それは後にして、余った時間お酒でも飲みましょうよ。付き合ってくださる?」

俺「ええ。ご相伴しましょ。弾のストックも規定以上あるしw」

 ラスカルが毎晩こつこつと装弾を作っていることは知れ渡っている。未使用のストックは常に
 3000以上。

ミ「なら長居しても大丈夫ねw。じゃあ、ブランディでのんびりしましょう」

 脇の棚からグラスを二つ用意。ラスカルも自分の椅子をミーナの机のほうに引っ張ってきた。

ミ「いつも有難う、乾杯♪」
俺「麗しの人に 乾杯♪」

 グラスを合わせる真似をする。ぶつけるような無粋なことはしない。
 芳醇な香りを二人で楽しむ。

ミ「俺さんがここに来てくれて本当に助かったわ。ありがとう」

俺「俺のような変態海兵でよかったんで?」

ミ「あらあら。戦闘の指揮も、書類仕事も。そのほか満遍なく優等ですw!」

俺「どうでしょうねえ・・・私より、上手にやるものが沢山居ますよ・・・」

ミ「そうかしら?謙遜は似合わないわよw」

 酒を勧める。自分のグラスにも足した。

俺「・・・・事実、部下を喪った」

ミ「私もよ。トゥルーデも。辛いわよね・・・」

俺「いつも、思い出しては悔やむんだ。もっといいやり方があったはずだって」

ミ「・・・・いいやり方が見つかって?」

俺「・・・・・・・・なかなか、ね・・・。頭の中でシミュレートしても、どこかで詰まる」

ミ「やっぱりそうなのね。私もそう。ずっと前の戦闘を思い出して、自分のミスを探すの」

 ラスカルは黙ってグラスを見ている。

ミ「でも。決定的な大きなミスが見つからない。それなのに考え続ける。俺さんも?」

俺「・・・・」

ミ「私ね、そんなときは考え方を変えるようにしているのよ」
 「戦闘中は咄嗟のことばかり。過ちを犯す。どこかで小さなミスが出る」

 ラスカルは黙って聞いている。ゆっくり、自分の思いを話すミーナ。

ミ 「立場上、もしかしたらそのミスで仲間を死なせたり、怪我を負わせたりしたかもしれない」
 「それは私の責任。でも、考えても解らないこともある。こうしたらこうなるかも、というのは、枝葉の
 多い樹みたいなもの。幹は一つだけど、選択肢が増えると末端の葉はとんでもない数になる・・・咄嗟の
 判断をしなくてはならない前線では、厳しすぎるの」

ミ「だから、私は・・・・努めて単純に考えて、臨機応変に作戦を立てるわ。そのほうが修正も簡単。決め付け
 で立案したら、それに囚われて単純なミスを犯すもの」

ミ 「その『結果』は。隊員が私をそれからも信頼してくれるかどうか、それで出ると思うのよ」

  ずっとグラスを見つめるラスカル。身動きもしない。

ミ「部下が信頼してくれなくなったら、私が決定的なミスをしたと・・・。その時は職を辞すわ」

俺「部下が全滅してしまって、誰も評価を下してくれなかったらどうします?」

ミ「神様に委ねます・・・」

俺「それまでは苦しむ?悩む?」

ミ「ええ。人間であるからには、逃げられない。でも、自分で裁決を下そうとするより、心が落ち着くと
 思うのよ。神様と会う日まで、やることもありますし」

俺「やること?・・・・懺悔ではないですね?」

ミ「ええ。懺悔は神様の御前で・・・。やることとは、死んだ仲間の分も自分がしっかり生きる、と。私はそう
 考えるの」

俺「・・・・・・・・・・」

ミ「誰も死にたかった筈は無いもの。でも、止むを得ない事なの。人間にどうにも出来ないこと」
 「誰も神様じゃないもの。自分を律することはできても、罰せはしない。そう思っています」

俺「・・・完全に理解できたとか、納得出来たわけではないけれど・・・・考えてみるよ」

ミ「あなたには、今も仲間がいるんです。それを忘れないで。お願い」

俺「ああ・・・・。そうだね」

ミ「そうです。私もあなたの仲間です。ね?俺さん」

*


 ドアの外で、ハルトマンが佇んでいた。ラスカルからハーシーのチョコでも分捕ろうとテントに行ったが
 不在だったので、執務室に寄ったのだ。ノックする前に、中の会話が聞こえた。

ハルトマン「(邪魔しなくてよかった・・・・。ミーナはやっぱり大人だね・・・・)」

 そっと立ち去る。ラスカルに考えてもらわなきゃ。そして私達のことを気付いてもらわなくちゃ・・・。
 一人で苦しまないで、ラスカル。

*


ミーナ「あなたの名誉勲章。最初にあなたが言った『私が貰ったものではない』というのは、仲間で
 それを獲得した、だから皆のために着けている。そういう意味ね?」

俺「ああ。そうだよ。常にそう思っている」

ミ「あなたのお仲間は、幸せよ・・・・」

 俺がやっと顔を上げた。目が真っ赤。ミーナの目にも涙が光っている。


-ウォーターメロン提督-

 1時間後、バルクホルンとハルトマンの二人が様子を伺いに来た。
 執務室からは、大きな笑い声が。二人で目を見合わせる。ミーナ、上手く話が出来たみたいだな?

バルクホルン「ミーナ、私だ。ハルトマンもいる。入るよ」

ミーナ「はーい。いらっしゃいよ!」

 机の上に、ブランディの瓶が2本。一本は転がっている。派手にやってるな。

ハルトマン「ミーナ!お菓子持って来たよ。これで呑も!」

ミーナ「ええ!あなたたちのグラスは、はい!どうぞ!」

 頬を染めて上機嫌。ラスカルも瓶を持って注いでくる。

俺「ささ!呑もうや!」

「「「「Zum Wohl!!」」」」

バルクホルン「ミーナ、ご機嫌だなw」

ミーナ「ええ!俺さんの海兵仲間のお話が面白くてw。もうお腹がよじれそう!」

俺「ミーナさんの笑顔が素敵でさ、頑張っちまったよw」

ハルトマン「おー。変態達の武勇談?どんなの?」

俺「エーと。んじゃ、次は空母ワスプの時!俺っち便乗したんだよ。で、アイスクリームで悪戯をした」

ハルトマン「え!!アイスクリーム!軍艦で食べるんだ?いいなあいいなあ!」

俺「うん。毎晩3オンス支給されるよ。で、2番のバートが、カラシをアイスクリームに練りこむ悪戯を思い
 ついたんだ!『新しいフレーバーのメロン味だぜっ!』これに皆飛びついた。普通のフレーバーに飽きてる
 からさw。で、一口頬張って悶絶する。『グガァァァァ!水!』ってな。なんせ真っ黄色なんだ!効くぜ!」

 一気にバルクホルンもハルトマンも引き込まれた。俺の脇ではミーナが腹を抱えて笑う。

俺「そしたらさ、提督がやってきた。バートが提督にそれ渡しちまって。『閣下!新フレーバーであります!
 どうぞ!』提督がまた好きらしくて『おお!すまんな!これは?』俺が周りを代表して『ハイ!海兵特製メロン
 風であります!』そしたら、食い始めてさ!直ぐに顔が赤くなってきて、回りはヤバイ!とか、サスガ!とか
 騒いでた。でも、悠々食っちまって、こういったんだ。『ふむ!なかなか悪くない!私の好物はスイカでな?
 どうだ?無いか?』 この負けず嫌いのタヌキオヤジが!目が真っ赤じゃねえか、我慢しながら無理言うな!」

 三人が大笑い。ブランディを一口やったラスカルが更に続ける。身振り付き。口調も真似をしているらしい。
 なかなかの独り舞台。

俺「ああ、そりゃ無理って俺が思ったら、2分隊のトーマが歩み出た。『閣下!ワイオミングで実家がスイカ
 栽培をしております!お任せください!10分待機で願います!』 おいおい?無理だろ?と周りが囃す中
 アイスクリームメーカーの影に飛び込んで。持って来たよ、8分位だったw。『閣下!特製スイカ風であります!
 どうぞ!』って差し出した。確かに赤い。種まで入ってる。提督がそれを一口。皆固唾を呑んで見ていた。
 中にヤバいものしか入っていないと思ってるからさ。種は何だよ!ネズミの糞か?ってな」

 爆笑。提督になに食わせてるんだ?リベリアン!

俺「そしたら、提督猛烈な勢いで食い始めた。あっという間に食っちまってな。ポケットからハンカチ出して
 口を拭きながらこういうんだ」

俺「『君!気に入った!これを毎日作ってくれないか!ちなみに何を入れたんだ?』トーマが直立不動で答えた。
 『はっ!色付けはカンパリであります!それだけでは味が弱いかとブランディ、テキーラ、景気づけにウォトカ
 をドババと投入!種はチョコチップであります!』 これを聞いたときは心臓縮み上がったよ。軍艦の中では
 アルコールはご法度だ。てめえ何処に隠していやがった?いやまて、それ以前にヤバイって!俺も廻りも、もう
 びびった。そうしたら、さ」

俺「提督が『ほお?変わった調味料だな。私の副官が持っていたかもしれん。あとで取りに来い。明日から
 頼むぞ?ああ、それと』俺の顔を見た。やばいよ!と覚悟して姿勢を正したら『余った調味料は呑んでしまえ。
 あの調味料は封を切るとすぐに駄目になるからな!』って」 

 三人が笑いながら身を捩る。リベリオン海軍!大丈夫か!

ハルトマン「く。。。。苦しい。そのあとお咎めなかったんだよね?」

俺「ああ!トーマは毎晩作っていたよ、提督専用のアイスクリーム。余った調味料は俺っちのもんだから
 気合が入っていた。かなり改良したらしい。で、俺たちの間でも新製品開発が急務になってさ。ワスプの
 皆に喜んでもらおうとね」

ハルトマン「えっ!どんなの?美味しかったの?」

俺「えーと。ビーフステーキ味、ピッツァ味、タバコ味、唐辛子味、ビール味、ヨードチンキ味、ハンバーグ味、
 あとなんだっけ、アイスバイン味、マヨネーズ味、サルミアッキ味、ソーセージ味にベーコン味とかさ。思いつく
 まま試したが駄目でサ」

ミーナ「あら・・・不味そうww」
バルクホルン「それはなんとも・・・」

 食物以外も入っている。アイスクリームとは言わないぞ?と苦笑いする三人。

俺「一番好評だったのはクーラント味!」

ミーナ「クーラント? クールラントとは違うのね?」(※昔のクールラント公国)
バルクホルン「冷却用不凍液か?それを食べたのか?」
ハルトマン「うぇー」

俺「うん!補給部からかっぱらってさ。見た目はブルーグリーンで綺麗だぜ!味は甘いんだ。普通に
 食える!見た目も味もいいんで、乗員全員大好評!うん!あれは絶賛された!」

ハルトマン「えー?食べちゃって大丈夫?」
ミーナ「そうよ、口に入れるものじゃないでしょう?」

俺「うんにゃ!全員猛烈な下痢をした。艦長から水兵までトイレのドアを叩いて一晩中大騒ぎ!俺っち
 が怒られてさ。艦の機能をまる一晩停止させたってね。一週間全艦のトイレ掃除したっけなー。当た
 り前かw」

 全員笑いに笑う。破壊工作じゃないか。

俺「でも、只掃除するだけじゃ面白くない。トイレの水を流すと、タンクの水がある程度無くなるよね。
 じゃあ、水の補給を少なくして、タンクをできるだけ密閉した状態で水を流したらどうなる?」

「「「タンクの中の気圧が下がり、水の流れは悪くなる」」」

俺「ご名答♪負圧ですなw。で、4分隊のジョージが閃いた。空気穴をつけて、其処に笛を取り付けようっ
 てさ。できるだけ他は気密を高める。その状態で水を流すと『ジャー!ピュウゥ~~』しけた音なんだけど。
 この仕掛けを全艦のトイレに出来るだけ取り付けて廻った」

 三人とも身を乗り出してオチを待ち構えている。

俺「『幽霊が出たぁ!』って大騒動ww。ズボンもあげずに飛び出したそうだ、艦長がw」

 悶え笑う三人。既に大声で笑う体力が無い。ハルトマンはあちこち掻き毟り、ミーナはバルクホルンに
 抱きつき、そしてバルクホルンは両手で体を抱きしめつつ涙を流して笑っている。

バルクホルン「はっ・・・ハッ・・・艦チョ・・苦し・・・。て、提督は? プッ゙・・」
ミーナ「ちょっ・・・・や、やめて!息が・・・息が・・・・」

俺「提督にはチョッカイ出さないよ。貴重なアルコールの提供者だものw。提督専用のトイレはゴールド
 にペイントしたんだ。お礼だよ♪」

ハルトマン「な・・・成程w。金ぴかってw。で、ばれなかった?クッ・・・クハハハハ」

俺「うん!ジョージが慌てて撤去。航海日誌には載ったらしいぜ?バンジーがどーのこーの」

ハルトマン「バンジーってwwwあの、は、は、ハイランド地方の女幽霊の?wwww」

俺「そそそ!それ!笛の音が女幽霊の『ヒャーッ』て声に聞こえたらしいw。ジョージは天才だよ」

 両手で頬を押さえて『ヒャーッ』と裏声で演じるラスカル。

ミーナ「もう!アハハハハ!(亡くなったお仲間の名前がすらすら出ている。大丈夫かな・・・)」
ハルトマン「ヒャヒャヒャ! あ!私もやってみよー!リーネやサーニャとか面白そう♪」
バルクホルン「ハハハハ!あとペリーヌとエイラも結構怖がると思うぞw」

俺「やるか!夜間に設置したほうが面白い!夜中トイレに行って『キャァーッ!』音速超えで飛び出すぜ」

バ・ハ「ギャハハハハハハ」

ミーナ「ぷっ・・・だめよ?俺さんw(いたずらっ子そのものの顔ねw)怖すぎるわよw(でも可愛い!)」
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最終更新:2013年02月02日 12:09