ミッケリ臨時空軍基地
俺「届いたメルスE型届けにきましたー」ゴロゴロゴロ…
エイラ「来たぞー」ゴロゴロゴロ…
「おうありがとうよ、俺軍曹にチビの嬢ちゃん!」
エイラ「ち、チビって言うナー!」
俺とエイラの初陣から3日後、俺たちはあれから3日間の飛行停止処分と整備兵の手伝いが言い渡された
原因は俺の命令違反による独断出撃が原因だそうだ…
ノイズが入ってよく聞き取れなかったけどハッキネン大尉は出撃は中止と言っていたらしい
俺「簡易ハンガーとはいえ、体育でも出来そうな施設だよなぁ…」
エイラ「ここ(ミッケリ臨時空軍基地)は元々廃校になった学校らしいからナ」
俺「通りで寝る場所も教室っぽいと思った」
後で聞かされた話によると、第一中隊といらんこ中隊が迎撃に出たネウロイ達は囮で本命は低空飛行で侵入したあの爆撃型ネウロイ
基地を破壊した後にカウハバ基地周辺の街スラッセンにネウロイ地上軍が攻めるという3重罠だったらしい
基地を失い、大量の地上勢力を前に俺達は西に80キロ離れたここミッケリまで撤退したのが3日前の夕方
幸いネウロイはスラッセンの街を占拠するとその足を止めた為にスラッセンの住民はなんとかここに避難できたらしい
俺「しかし整備長、このメルスボロボロですよ?」
エイラ「ボロボロっていうか、ほぼ大破だろコレ…」
「いいんだよ、こいつは解体して使える部品をこの第一中隊のメルスの整備に当てるからな!」
俺「たくましいですねぇ…」
「スオムスはストライカーを作ってないから他の国から買ってる
だから新しい機材が来るまで時間が掛かる、けどストライカーの整備はそれより短い間隔で発生する」
俺「こうしないといずれ部品か資金が無くなる、そういう事ですか…」
「そうだ、だから俺達は大破しようがストライカーを回収して治すか部品にするんだ」
エイラ「ほぇー…」
エイラがヒゲを生やしたごっつい整備長の言葉に関心しながら呆ける
そんな様子を見て笑いながら整備長は手際よく俺とエイラが持ってきた2機のメルスE型を解体していく
15分とかからない内にそのメルスは本体とエンジンが別々になっていた
エイラ「すげぇ!オジサンスゲー!」
「これくらいなんて事無いって!ガハハハハ!」
俺「カールスラントでもここまで手際よく解体する人も見た事無いですよ」
「解体は人の命を乗せないからな!修理する時は時間は掛けるし改造する時もそうだ」
エイラ「改造…!」
少年がよく惹かれる言葉にもれなく10歳のエイラは反応し目をキラキラさせている
俺(こう見ると女の子っていうより、男の子だよなぁ…エイラ)
「ああ、うちの整備員達もたまに型遅れのストライカーに新しいエンジンを無理やり乗せたりするな!たまーにやり過ぎてウィッチから文句が来るんだけどな、ガッハッハッハ…」
俺「それっていわゆる魔改造っていうんじゃ…」
整備長の自慢話を半信半疑で聞いていると基地連絡員がハンガーにしている体育館らしき倉庫に入ってくる
連絡員「俺軍曹、ユーティライネン軍曹 ハッキネン少佐により伝令です」
俺「ハッキネン…少佐?」
連絡員「はい、至急臨時司令室に出頭せよとの事です」
俺「了解、エイラ行くぞ」
エイラ「ワタシのバッファローも改造できるノカ!?」
俺「…少しは聞け、ほら行くぞ 整備長それでは失礼します」ガッシリ
「りょーかい、ありがとうよ俺軍曹と嬢ちゃん、楽しかったぜ!」
エイラ「はーなーせーオレー!」ズルズルズル…
俺は話を聞かないエイラの襟を掴んで手足をバタバタと振り抵抗する彼女を無視して引っ張るように司令室に向かった
ミッケリ臨時空軍基地 臨時司令室
俺「俺軍曹およびユーティライネン軍曹、ただいま出頭しました」ビッ
司令室のドアを開けて俺とエイラは上官であるハッキネンに敬礼をすると彼女もまた敬礼を返す
俺「えーっと、ハッキネン少佐、でよろしいんですよね」
ハッキネン「ええ今日正式に辞令が降りました ミッケリ臨時空軍指令ハッキネン少佐です」
俺「御昇進おめでとうございます…しかし基地指令はどうしたんですか?」
たしかハッキネン少尉は管制士官ではあったが基地指令では無いはず…
ハッキネン「この前の空襲で基地指令とその指令部員が負傷して前線を引いたので私が最先任になってしまったのです」
エイラ「…」
ハッキネン「あなた達が責任を感じる事はありません、元々出撃せずに退避してもらう予定でしたからね
新人といえど貴重な機械化歩兵、失わずに済んだのは幸いです命令違反も償ってもらいましたからね」
俺「うぐ…」
ハッキネン「あなた達に任務があります」
俺「任務…ですか?」
ハッキネン「明日10 00時に第一中隊と独立飛行中隊のウィッチ達によるスラッセンを占領したネウロイの地上部隊
への爆撃任務があります」
俺「その任務に参加ですか?」
ハッキネン「いえ、あなた達はウィッチ達が飛び立った後に飛行訓練をしてもらいます」
俺「…新人だから、ですか作戦に参加できないのは」
ハッキネン「そうです、基礎訓練が終わったといえどここはスオムス
寒冷地飛行に慣れる為の補修訓練は今だ終わってないのですから作戦参加は許可できません」
エイラ「わ、私は飛べるゾ!」
ハッキネン「いくら飛べても補修訓練を終えなければ作戦参加は容認できません」
エイラ「そんなぁ…」
俺とエイラは初陣の時、ただ背中を見せて飛んだだけの爆撃機型ネウロイを1機も撃墜できなかった己の無力を思い出し落胆しかけるが
ハッキネン「しかし…明日の訓練以降、貴方達にはスオムス義勇軍独立飛行中隊の作戦に参加してもらいます」
俺「!、それって!」
ハッキネン「明日の訓練を持って補修訓練は終了予定です気を引き締めて訓練に掛かる様に」
ハッキネン少佐の言葉に俺の胸にはネウロイに借りを返せる嬉しさと戦場へ本格的に赴くという緊張が混ざり合い
高揚したような気分になりながらも、少佐に敬礼をする
エイラも同じような気分だったようで俺に続き敬礼し
俺・エイラ「了解!」
俺達は少しだけ上ずった声でハッキネン少佐に答えた
ミッケリ臨時空軍基地 ある教室の一室 夜
智子「俺軍曹、変な事をすればどうなるか復唱しなさい」
俺「はっ!私の首が体から離れ胴体を湖に捨てられるであります!」
エルマ「し、信じてますからね…!」
智子「よろしい」ニッコリ
ハッキネン少佐から翌日の補習教育を指示された夜、浮かれた気分で寝室に戻った俺は
ミッケリ臨時空軍基地に来て初日から智子少尉に念を押して教育された言葉を復唱する
俺(物騒だけど冗談にならないから笑えないんだよなぁ…)
俺の復唱に満足した智子は鞘に納まった刀を左手に持ったまま簡易ベットへ横になる
なぜこんな事を言わなければならないのか、それは…
エイラ「おい俺、早くこっ来イヨー」
キャサリン「ミーはもう寝るネー、今日も上空援護でくたくたネー」
ビューリング「ふぅー」スパー…
エルマ「昨日も一昨日も何もしなかったから大丈夫ですよね…突然起き上がったりしないですよね…」
ウルスラ「…」
俺(場所が無いってのは分かるけど中隊単位で俺までこの独立飛行中隊の部屋に押し込まれたんだよなぁ…)
男女比率は1:7のこの部屋で俺はエイラに促されるように窓際の彼女の隣である簡易ベットに転がる
俺(こういう時はエイラ様々だなぁ…正直最初は居場所すら決められなかったもの)
エルマ「では明かりを消します~おやすみなさい~」
エイラ「オヤスミー」
エルマ中尉の掛け声の下、教室の明かりが消える
この日は白夜で外が明るく、夜なのに窓から明かりが差し込んでくるようだ
俺(確かに普通なら何かしないか心配だけどさ)
寝返りをうつついでに隣のエイラの顔を見る
明かりが消えて間もないというのに既にエイラは寝息を立てて眠っていた
俺(寝るのが早いな、確か10~11歳だった気がするから当然といえば当然か)
幼いエイラの顔を見て邪な心は全く出ず、自分でも驚くほど落ち着いている
俺(大体こんな子供の前で変な事する訳ないだろ、普通の人間はなぁ…)
しみじみとそう思って天井に目を向ける
「少尉お慰めいたします」
俺(普通はなぁ…)
「この胸、完璧です…なんでこんなに微妙な曲線を描くですか?」
俺(ふつう…)
「だって、抱くって言ったくせに…」
俺(迫水ハルカ一等飛行兵曹おおおぉぉぉぉぉ…)
こんな子供の前でもお構いなしかオイ!
「智子少尉はどんな娘が好みなんですか?」
「娘ってなによ、わたしはその、ノーマルなの!」
聞きたくもないが静まり返った教室に嫌でも響く声
まあでも一応常識人っぽくこの中隊のエースらしい穴吹智子少尉がノーマルでよかった気がする…
俺(スオムスどころかウィッチ全員がアレなんじゃないかと思うしなぁ、というか…げ…)
普通ではないであろうやり取りにエイラのベットからもそもそと音が聞こえる
やばい、起きるかも…
「どんな娘が好きか言ってください!私努力しますから!」
俺「そろそろ寝てくれハルカ一等飛行兵曹、そういうのは二人きりでやってください…」
キャサリン「そうねーピロートークは廊下でやるねー」
ビューリング「静かにしろ、眠れないだろう」
エルマ「明日出撃なんですよ」
ウルスラ「…本が読めない」
流石に全員起きていたのか、一人本が読めないと言うが流石に目が悪くなるぞ
全員にそう言われ声の原因である方向から物音が聞こえたかと思うと俺の身体に何か振ってきた
俺「ぎゃふっ!?」
智子「あら…?ハルカのベットは反対だったかしら…ごめんね俺軍曹」
謝罪の誠意は伝わる言葉を投げかけられたが、俺の上に乗ったものはどかさないのね…
とりあえず何が振ってきたか確認をする為にベットに寝ていた体を起こすと
ハルカ「うう、うぐ、ぅぅぅぅ…!」
俺「…退けてくれないですか迫水一等飛行へい、って痛っ!ちょっとまってさこみz、あだだだだ!」
おかっぱに切りそろえられた前髪から覗く瞳に大粒の涙を貯めていたハルカは俺と視線が合う
ちびっと俺の上半身に乗ったその姿に可愛いなどと邪な心を少し覗かせた為だろうか両手両足をバタバタさせ始めた
ハルカ「ともこしょーい…智子しょぉぉぉぃぃぃぃ…」バタバタバタ
俺「そういうのは自分のベットで、痛い、痛いです許してくださ、あばばばばばば…」
邪な心が原因というか、ただの彼女の勝手な八つ当たりだった
ほんとある意味マイペースだよな、このウィッチは…
翌日11時 ミッケリ臨時空軍基地 上空
俺「昨日は酷い目にあった…えーっと、高度1500 異常なし エイラ、そっちはどうだ?」
エイラ「こっちも異常なしダ」
俺「了解、しかしエルマ中尉達…悲鳴上げてたな」
これより少し前、10時にスラッセン進行部隊を爆撃する為に出撃したいらんこ中隊の
面々を思い出す
エイラ「そうだナ…とっても重そうな爆弾だったシナー」
俺「60キロの爆弾らしいぞ?」
エイラ「私だったらムリダナ」
俺「次の作戦も爆撃任務なら俺達も持つ事になるんだぞ?」
エイラ「ムーリーダーナー!」
ミッケリ臨時空軍基地上空で最後の補修訓練をする為にストライカーを履いた俺とエイラは
上昇して高度を稼ぐ
そのため湖に囲まれた基地がとても小さく見える
俺「駄々をこねるな、そろそろ俺は自主訓練をするぞ」
エイラ「リョーカイ…私も続くぞ」
左ロール(左回転)をして地上に向けていた腹を90度傾け、機首を上げて横の旋回行動に移る
エイラも同じように旋回行動をして俺の後ろに続く
俺「スオムスの寒空にも慣れてきたな…行き成りあさっての方角までロールする事は無くなったな」
エイラ「それで何度俺に撃墜された事か…体当たりで敵を撃墜するなんてカンベンダゾ?」
俺「俺だってそんなのヤダよ…ところでエイラ」
エイラ「ナンダ?」
旋回行動を終えた俺は戦闘機型ネウロイとの戦闘を想定してか水平飛行が安定したと同時に
今度は右ロール90度で回り機首を上げて横旋回する
エイラもまた俺と同じように旋回して後ろを付いていく
俺「なんで俺の後ろにぴったりくっついてるんだ?」
エイラ「敵を落とすなら後ろについてたほうがやりやすいダロ」
俺「俺が敵の代わりかよ!」
エイラ「ジョーダンだって、ニッシッシッシ」
俺「一応上空警戒も兼ねて銃に実弾が入ってるんだからこっちに向けるなよ…」
エイラ「分かってるッテ、一番機を援護するのが私の役割だからナ」
俺「一番機って…お前のほうが空戦は上だろ」
エイラ「アレー?任期が長いから前に出るって言ったのは誰だったっけカナー?」
俺「ぐ…」
初陣で俺が言った事を根に持っているのかエイラは悪戯そうな笑みで幼い顔をこちらに
向けている
俺「わーったよ…どーせエルマ中尉達と合流したら誰かの後ろに付くんだ
それまでは長機をやってやるよ」
エイラ「それもソウカ、ちょっと残念だけどナ…」
俺「何か言ったか?」
エイラ「な、何でも無い!何でもナイゾ!」
俺「…?まあいい、一戦離脱の練習だ急降下と急上昇をするぞ」
最前線とは思えない平和的な会話をしながら、水平飛行から二人とも機首を下げて急降下を行う
エイラ「そういえばダナ、俺って何でウィッチになったんだ?」
俺「何でって…う~ん…」
急降下で得た速度をそのまま機首を上げて上昇に使用して速度と位置エネルギーの消耗を出来るだけ最小限にして
再び水平飛行に戻った所でエイラは俺に告げる
エイラ「男のウィッチって聞いた事無いからナー」
俺「そういうお前は殆ど最年少じゃねーか」
エイラ「ワタシか?ワタシは元々魔力があって予備兵扱いで簡単な訓練だけ受けてたんだケド去年の11月の終わりだったかなぁ
急に通達が来てインモラ基地で本格的な訓練を受けることになったンダヨ」
俺「それは知ってる、俺と同じ時期にインモラ基地に来たんだからな」
エイラ「じゃあ聞くなよナ!」
俺「いや聞いてないし…しかし一ヶ月で実戦配備って早すぎる気もするがなぁ…」
エイラ「詳しくはワタシも知らないナ…って俺の事聞いてたんダロー!」
俺「あ…う~ん、何でウィッチになったかぁ…」
俺は悩みながら左ロールでクルクルと3回ほど旋回しながら思い出していると
ある人物を思い出した
俺「んー…クソ猫大尉が原因かなぁ」
エイラ「く、クソ猫…?猫嫌いなのか俺?」
俺「いや、猫は正直言って大好きだ!」
エイラ「こっちを向いて目を輝かせるナ…じゃあ俺の言うクソ猫って誰ナンダ?」
俺「名前で言っても分からないと思うが」
エイラ「クソ猫大尉って言われるよりはよっぽど良いと思うゾ…」
俺「アドルフィーネ・ガランド大尉、そいつが俺を拾ってこのストライカーを履かせた張本人さ」
エイラ「ガランド大尉?…うーん、ワカラン!」
俺「カールスラントでは有名みたいだけどここではそうでも無いのか」
エイラ「軍に入ってまだ1ヶ月だしナー」
俺「それもそうか、よっと…」
次は少し難易度の高いバレルロールに挑戦しようとする俺だったが下手な円を描いて
さらには高度まで下げてしまった
俺の後ろに続いていたエイラは綺麗に樽の内側をなぞるような飛行をして元の高度に
戻っている
エイラ「ヘタクソー」
俺「ほっとけ!」
エイラ「でもカールスラントでウィッチになって飛行訓練とか受けなかったノカ?」
俺「ん~、簡単な飛行訓練は受けさせてもらえるって言ってたんだけどあのクソ猫大尉が
その訓練の途中で俺を引っ張って無理やり第27戦闘航空団に連れて行かれたんだ」
エイラ「うぇ…」
俺「そしてもれなく最前線送りだ、飛行訓練終わってなかったから補給関係と
あのクソ猫のストライカーの整備をやらされてたんだよ」
エイラ「いきなり最前線送りは酷ダナ」
俺「…お前も似たようなもんだけどな」ボソッ…
エイラ「なんか言ったカ?」
俺「いや、まあ最前線で戦わずに過ごしてたんだけど今度はスオムスに行けっていきなり
命令書を突きつけてきやがった…しかも正式なヤツ…」
今でもはっきり覚えてる
俺よりも長身でその背丈に合う長髪、厳しい眼差しだが丸みを帯びて凛々しくも優しくある瞳で
アドルフィーネ・ガランドは俺を見て含み笑いに見える笑みでこう言ったのだ
『明日から北国でゆっくりして来い』ってな
俺「ゆっくりして来いって休暇じゃなくて訓練して来いって…そんな意味合いで取れるかあのクソ猫!」
エイラ「あ、おい俺落ち着ケ!そんなに体を暴れさせるトダナ…」
俺「ん…うおおおお!?」
自身をウィッチに仕立て上げたガランドの顔を思い出し腹を立てぐりぐりと左ロールを
繰り返してると
目を回してバランスを失い、俺は地上へ急降下を行っていた
俺「機体を水平に…水平に…」
高度をずいぶん落としたところで何とか水平飛行に移る事が出来て俺とエイラは一安心する
エイラ「驚かすなヨ、マッタクー」
俺「わ、悪い…もうこの話はナシな!」
エイラ「エー…」
俺「えーも何もない、却下」
エイラ「また急降下されたら今度こそ雪にダイブしそうだしナ、この辺でカンベンしてヤルヨ」
何故か勝ち誇った顔をするエイラに俺はそれで納得するならと諦め
俺「…そういう事にしておいてくれよ」
そう言って寒冷地の飛行訓練の慣熟の為に再び機首を上げて訓練を再開した
続く
最終更新:2013年02月04日 14:51