ミッケリ臨時空軍基地 臨時医務室

「怪我は大した事では無いですが炎症しています2~3日安静にしてください」

俺「うぐぅ…」

エイラ「よかったナ、大丈夫だってサ」

俺「この状態が大丈夫な状態かよ…」

 元々は保健室であっただろう場所に設けられた医務室で俺の右腕はぐるぐる巻きにされている
 何故こうなったのか

 俺とエイラは初撃墜を記録した出撃から帰って早々、ラロス改を殴り飛ばして撃墜した右腕から血がダラダラと垂れていて
 急ぎ医務室に行って治療をしてもらった結果がこれだ…

俺「何で右腕だけじゃなくて左手も動かすと痛いんだよ…」

軍医「無理な射撃体勢で銃を撃った事は?」

キャサリン「オレー大丈夫かねー?」ガラガラ

俺「…あ」

 開けられた医務室の扉からキャサリンが入ってきた事で軍医の質問の答え、左手の炎症の答えが解った

俺「キャサリン少尉のリボルヴァーが原因じゃねぇか!」

キャサリン「ほ、ほわっつ!?いきなり何ねー?」

 ラロス改に咄嗟に放った銃は予想してた9mm拳銃ではなく、それより一回り大きい45口径のマグナム弾が装填された
リボルヴァーだった為に反動制御しきれず炎症を起こしたのだ

俺「どーして俺だけリボルヴァーだったんですか?」

キャサリン「それは簡単ねー、それはユーがメンズだからねー!」

俺「いやいやいや、答えになってないだろ」

キャサリン「そうかねー?メンズならリボルヴァーくらい扱えないとねー」

俺「実戦でいきなり使えろというのが難しいだろ!」

キャサリン「ユーも強情ねー、ソーリーソーリー」

俺「感情が篭ってるように見えないのが悔しい…」

エイラ「ほいっと」チョンチョン…

俺「いでででで、触るなエイラ!」

エイラ「コレは面白いかも…チョイチョイ」

キャサリン「面白そうねー、ミーにもやらせるねー」

俺「いででででで!やめ、やめてええええ!?」

軍医「やめなさい、とりあえず俺軍曹は2~3日安静に、いいですね」

エイラ「ハーイ」

キャサリン「りょうかいねー」

俺「りょーかい…」




ミッケリ臨時空軍基地 いらんこ中隊居室

ビューリング「戻ったか…なんだその右手は?」

俺「炎症と内出血と外傷の結果です…左手も炎症起こしてる状態ですハイ…」

智子「当たり前よ…防弾装甲のラロス改を殴ろうなんて何を考えてるのかしら」

俺「ごもっともデス…」

 居室に一人戻った俺は先に戻ってた智子に呆れられていた

ビューリング「ウィッチの中には拳にシールドを施して攻撃する者も居るらしいが、俺は違うのか?」

俺「いやー…無我夢中でそのまま殴っちゃいました」

エルマ「い、痛そうですねー…」

智子「ラロス改一機撃墜するごとに負傷されたら割にあわないわね…同じ事はしちゃダメよ?」

俺「了解です…」

ビューリング「今日は俺の初戦果でもあるんだ、小言はそれぐらいにしておけトモコ」

智子「わかってるわよ、あなたご飯は?」

俺「あー…両手使えないんでエイラに頼んで持ってきてもらってます」

 居室に戻ったキャサリンとエイラ以外のメンバーは食堂から夕飯の乗ったトレーを居室に持ってきて食べていた
 そろそろ腹が減ったなぁと俺が呟く頃に居室の扉が開き、エイラとキャサリンが入ってきた

エイラ「持ってきたゾー」

キャサリン「おまたせねー」

俺「悪いなエイラ」

エイラ「でもその両手で食べられるノカ?」

俺「右手は包帯ぐるぐる巻きで無理だけど左手なら何とかなるだろ、痛いけど…」

エイラ「そうか、んじゃこれ置いておくゾー」

 ベットの上に座っていた俺の膝に夕飯の乗ったトレーが置かれ、震える左手でスプーンを持とうとする

俺(んんー…いてぇ…)

キャサリン「オレー、こっち向くねー」

 必死に左手を動かしてスプーンを持とうとする所に声をかけられその方向に振り向く

俺「なんd…むぐぅ!?」

キャサリン「これならオレも夕飯食べれるねー」

エイラ「おお~」

 器用に俺の口にキャサリンのスプーンが入り、驚きはしたもののとりあえず何とか食事を喉に通す

俺「急にするなと…それに左手が動くからいいですよ」

キャサリン「元々ミーが何も言わずにリボルヴァーを渡したのも悪いねー だから気にする事ないねー」

俺「いや確かにそうだけどさ…」

キャサリン「次いくよー、口開けるねー」

俺「だからだいじょ…」

 否定を続けていたが屈託の無い笑顔を向けられたままスプーンを突き出され俺はキャサリンが原因だと
言った事を少し後悔し素直に口を開ける

キャサリン「素直な子は好きね~」

俺「…ムグムグ、そういうものかい」

キャサリン「そういう事、もう一個食べるね~」

俺「なんか楽しそうですね?」

キャサリン「そう見えるねー?」

 再び俺の口に運ぼうと右手にスプーンを持ち、左手でその下を添えるキャサリンの顔は笑顔なのだか
どこと無く楽しそうにはにかんでいる様に見える

俺「まあな」

キャサリン「グランドファザが小さい頃にミーに良くしてくれたね、きっとグランドファザもこんな気持ちで
 ミーに食べさせてくれたのかもネー」

俺「俺は子供か!?」

キャサリン「甘えても良いのヨ?」

俺「遠慮したい所だが腕が動かない…今日だけ、今日だけだからな!」

キャサリン「ハイハイ、手の掛かる大きな子供ねー あーん」

俺「あー…ムグムグ、キャサリン中尉は食べないのか?」

キャサリン「そうだったね~」

俺「あ、おい!?」

 キャサリンは思い出したかの様に自分のトレーから豆料理をすくい、自分の口へ運んだ
 俺に食事をさせていたスプーンで

キャサリン「ムグムグ、今日の豆料理はいつもと同じね~… ところで何かねー?」

俺「い、いや、気にしてなければいいんだ…」

キャサリン「ホワッツ?良く分からないねー…」

エイラ「お、オレ!こっちを向くんだナ!」

俺「ん…うおぁ!?」ベチャー

 キャサリンの真似をしたかったのかエイラは俺の口にスプーンを運ぼうとするが狙いがそれて俺の頬に食事が運ばれた

エイラ「あっ、しっかり口開けるンダナ!」

俺「それならそうとハッキリだな…ってごほっごほっ、喉に突っ込むなぁ!」

キャサリン「あっはっはっは、最初はゆっくりやるのがいいねー」

エイラ「わ、ワカッタ」

俺「なぜそんなに震えている…」

エイラ「う、うるさい、さっさと食べるンダナ!」

俺「はいはい…ムグムグ」

エイラ「ど、ドウダ?」

俺「どうだって…旨い…な?」

エイラ「どうして疑問系ナンダー!」

俺「食堂の味は変わらないだろ!」

キャサリン「ユー達もよく喧嘩するねー、そこが面白いけどねー」

エイラ「むうううゥゥ…」

俺「まあ、ありがとうなエイラ」

エイラ「うぐ…わ、わかれば良いんだナ」

 その後もけらけらと笑うキャサリンと真剣な表情のエイラから交互に食事を運ばれ、俺は何とか食事を完食することが出来た

 そこそこ量が多くて俺は若干寝苦しかったらしいが…





「おい余所者」

俺「…俺の事ですか少尉?」

「貴様以外に誰がいる、補充の品が足りないぞ?」

俺「足りない?MG34の弾丸ならそこの箱に…」

 バンッ!ズザァァァ…
 俺が弾丸の詰まった箱を指差そうとした所にカールスラントに所属するウィッチは
俺の顔を殴りつけ、俺の体が地面の土に転がる音が鳴る

「貴様の頭は空なのか?MG34本体が無ければただの持ち腐れだ!」

俺「っ!…MG34も2丁補充で持ってきただろう!ぐっ…」

 再び殴られる

「足りないのだよ、前線で戦うウィッチに丸腰で出撃しろというのか?」

俺(…前線で武器は何処も足りないのは知っているくせに)

「なんだ、何か言いたいのか余所者軍曹?」

俺「…いえ」

 倒れたからだを膝に手を付いて立ち上がりながら殴ったウィッチに目を向ける

「貴様に仕事があるだけでもありがたいと思え、ここに必要な機材を書いたメモがある。明日までにこれを補充して来い」

俺「…りょうか、がはっ!?」

 メモを左手で俺にさしだし、俺がそれを取ろうとしたところを三度殴られる

「次はしっかりと補給をこなせ余所者軍曹、出なければ次は鉛球が貴様の頬に飛ぶぞ?」

俺「…くそったれ」

「なんだと貴様ぁあああああ!」

「何をしている貴様ら!」

「が、ガランド大尉!?これはこの者が悪態を…」

ガランド「…そうか、ならば私が預かろう」

 アドルフィーネ・ガランドが俺とカールスラント少尉の間に割るように入り
俺に手を掴み強引に立ち上がらせる

ガランド「俺軍曹、私のテントまで来い。説教はそこでしてやる …歩けるか?」

俺「…問題ありません」





ミッケリ臨時空軍基地 昼 いらんこ中隊居室

俺「…だりぃ夢見たな」

 一人だけになったいらんこ中隊の居室で俺はベットから上半身を起き上がらせ
軽く伸びをしようとする

俺「いだだだだ、2日目だってのにまだ本調子じゃないなこの右手」

 初撃墜記録から2日目、その初撃墜をこなした右手は未だに包帯がぐるぐる巻きだ

俺「明日には治るかねぇ、安静にしてろって言っても寝る事意外特にする事ないしなぁ」

 ベットから足を出して立ち上がり辺りを見回す
 外はスオムスの白い景色が相変わらず佇み、訓練の為か他のいらんこ中隊のメンバーは
居室に誰もいない
 暇をどう持て余そうかと考えていると居室の扉が開いた

俺「ん?」

ウルスラ「…」

 居室に入ってきたのは本を片手に持ったウルスラ・ハルトマン
 彼女は扉をゆっくり閉める

俺(今日はあいつが休みか…)

 ウルスラは俺の姿を確認すると一定のテンポで歩き俺の前まで歩いてきた

俺「何か用か?」

ウルスラ「…手紙」スッ…

 ウルスラは無表情のまま右手で封筒に入った手紙を渡そうと俺に差し出す

      • 次はしっかりと補給をこなせ余所者軍曹、出なければ次は鉛球が貴様の頬に飛ぶぞ?---

俺「っ!?」

 バシッ!
 手紙を差し出された俺はその手を包帯に巻かれていた右手で全力で払いのけた

ウルスラ「ぁ…」

 手を払いのけられたウルスラは無表情から目を少しだけ見開き、驚いたような表情をする

俺「あ…その…」

 ハッと我に返った俺はその後の言葉が続かない
 ウルスラは何事も無かったように表情を戻し落ちた手紙を拾って、俺のベットの上に手紙を置いた

ウルスラ「…手紙置いて置く」

俺「ああ…」

 手紙を置いたウルスラは自分のベットへ足を向ける
 少しだけ目が悲しみを帯びているようにも見えた
 しかし俺はそんな彼女になんて声をかけてよいのか分からずベットに置かれた手紙を拾い
ウルスラと同じく自分のベットに座って読む事にした



 俺軍曹、スオムスでの休暇は楽しんでるかな?アドルフィーネ・ガランドだ。
 そろそろ実戦に参加する頃だと思ってそちらに送られる補給物資と一緒に君用にストライカーを送っておいた
 新人の君だからこそ使って欲しいものだ、大事に使ってくれ
 武器も送りたい所だがこちらも物資が足りなくてな、武器は補給班から送られた物で我慢してくれ
 初撃墜を期待するぞ。ではな



俺「クソ猫が…もう初撃墜はしたっての」

 俺は少しにやけながら手紙を二つに折りたたみポケットの中に無造作に突っ込み、ベットのシーツに丸まって二度寝を
決め込む事にした

俺「はぁ、右手がいてぇ…」

 先ほど思いっきり振るった右手は後からジンジンと痛みが激しくなっていった




ミッケリ臨時空軍基地 ハンガー内 スラッセン爆撃成功から一週間後

キャサリン「うっわー!このエンジン凄いねー!」

整備兵「少尉、このサイクロンの新型エンジンは凄いですぜ。魔力が実に三割り増しだ。上昇力も速度も
 前とは比べ物になりませんぜ」

キャサリン「それはすばらしいねー!これで、空で置いてけぼりになることもないねー!」

 スラッセン爆撃後から一週間、大型の飛行船で運ばれてきた新機材が、ハンガーに並べられ、
整備員たちによってストライカーに取り付けられたり、整備のために並べられたりされていた
 『いらんこ中隊』の面々はハンガーで自分のストライカーが置いてあった場所に立ち各々の装備を確認している

エイラ「おおおお!オレ、オレ!新しいストライカーダゾー!」

俺「これはメッサーシャルフのE型か?」

エルマ「ぴ、ぴかぴか…」

 エイラに用意されたのは第一中隊と同じカールスラント製のメッサーシャルフの新型
 エルマ中尉はそのストライカーをうらやまそうに見ている

俺「もう一つメッサーシャルフはエルマ中尉のではないですか?」

エルマ「ほ、本当ですか!?」

整備兵「本当ですぜエルマ中尉!これはエルマ中尉に当てられたやつですよ」

エルマ「わぁー!すごいです!ぴかぴかですー!」

 こちらもまた第一中隊と同じ装備を与えられ、ご満悦な表情のエルマ中尉を見て俺の頬まで緩む
 『いらんこ』中隊に送られた補給物資は武器でもありストライカーでもありと様々だ
がどれも今まで使っていた物を凌駕する物であった
 初撃墜からの右手の怪我も治り包帯の取れた俺の前にも機材が運ばれて一つの箱が開けられる

整備兵「俺軍曹には二つ届いてますぜ、一つは試作型ストライカーらしいんですけどね」

俺「試作型?」

整備兵「マニュアルにはFw-190A0って書いてますね、聞いたことねえや」

俺「Fw?ちょっとマニュアル借りるよ」

 俺は今まで使っていたメッサーシャルフD型よりずん胴なボディのストライカーの上に置いてあった
マニュアルを取り上げて見てみる

俺「フラックウルフ?」

整備兵「スペックはざっと見ましたけど凄いですぜ、軍曹が使っていたメルスのD型よりも出力が3割以上もあるんですぜ!」

俺「でも使い慣れたメッサーシャルフからまた違うストライカーってのもなぁ…」

 俺は両肩を落としてフラックウルフのチェックをしていた整備兵にマニュアルを返す
 もう一つの機材は木箱に囲われ未だに蓋は開いてない

俺「もう一個のは?」

整備兵「武器らしいですが私はまだ見てないですね、まずは新型のこいつの特徴を徹底的に頭に叩き込んでやるぜぇ~」

俺「ほ、ほどほどに頼みますよ…」

 俺は嬉々としてフラックウルフの整備をしている兵士の後ろを通って俺に当てられたもう一つのまだ開いてない木箱の前に立ち
それに手を掛ける

俺「これは…!」

 木箱の中には俺の身長以上に伸び2メートル近くあり横幅は俺の半身を隠せる程の剣というには余りにも大きな鉄塊が入っていた
その鉄塊の上には紙のマニュアルが乗っており、俺はそれを手にとってマニュアルを読んでみる

俺「はは…いつからMG34はこんな図太くなったんだよ…」

 俺は小さく乾いた笑みを浮かべながら木箱に入っていたMG34のマニュアルを眺める 
 その目の奥には憤りの光が鈍く輝いていた

エイラ「オレー!オレには何が送られてきたんだ!」

 新型のストライカーが来てご満悦だったエイラは手を振りながら離れた場所から俺の所へ駆け寄る

俺「っ!」

 エイラの声を聞いた俺はMG34のマニュアルを無造作に軍服のポケットに突っ込む

エイラ「おおおー!オレ!これすごいな!剣なのか?」

俺「…多分な」

ビューリング「これはまた大きいな」

ウルスラ「…ツヴァイハンダー」

俺「うおっ!?」

 エイラに気を取られ突然の背後から声に俺は驚いた

ビューリング「ツヴァイハンダー?この剣の事か?」

ウルスラ「そう」

ビューリング「これならネウロイも叩き切れそうではあるが…今は中世じゃないんだぞ」

エイラ「オレって剣使えるのか!」

 エイラはビューリングとウルスラの会話そっちのけで
カールスラントから俺に当てられた巨大な剣と俺を交互にみて目をキラキラ輝かせている

俺「ああ、そこそこ使える…と思う」

智子「本当に使えるのかしら?」

俺「穴吹少尉まで来たんですか…」

智子「私の補給物資はまだみたいだからね」

俺「はぁ…とりあえず…っと」

 俺は木箱から2メートルほどある巨大な剣を持ち上げようとするが重くて持ち上げられず
使い魔である狼の灰色の耳と尻尾を出し、魔力を開放して無理やり両手で自分の頭の上まで持ち上げる

俺「重い…なぁ!」

 ダァン!
 右足を地面に思いっきり踏み込み、俺自身の正面に構える。2メートル程離れた剣先は寸分狂わず真っ直ぐ縦に伸びていた

智子「…!、あなた!」

俺「ん?なんですか穴吹少尉?」

 智子は一瞬驚いたように俺に問いかけ、訂正するかのように首を左右に振って言い直す

智子「俺軍曹はその剣を使った事があるのかしら?」

俺「いえ、これが初めてですよ」

智子「そう…なら私と模擬戦をしましょう」

俺「えっ?」


続く
最終更新:2013年02月04日 14:52