D.H.N俺 第4話「謹慎処分明け」
前半部
―滑走路先
ここに来て日にちもそれほど経たないうちから問題を起こし、謹慎処分をくらってしまった。
ようやく謹慎が解けたので、早速滑走路の先でタバコを吸うとその解放感にずいぶんと美味しく感じた。
最後まで吸い、吸殻を指先でひねり潰す。
そういえばあのいつもの三人っ子はエイリアンババアのところに修行に行ってるんだったな、妙に静かだと思った。
俺「ふー……ここじゃ満足にタバコも吸えそうにないから大変だ」
ひとりごとを呟きつつハンガーへと戻ろうとすると、バルクホルンが俺の前にきて立ちふさがった。
少し複雑な顔をしているバルクホルンを一瞥して、俺は地面にぐねぐねになったたばこをこすりつける。
バルクホルン「久しぶりだな」
俺「三日ぶりだけどな。まぁそんな顔するなって」
バルクホルン「はぁ……少しは気にしろ。リベリアンはそういうところがだめだ」
俺「すまないな、リベリアン全員がこうやって気楽ってわけじゃないが、俺は性分でな」
バルクホルン「少しはなおしたほうがいい」
俺「善処するさ。それで、どうしたんだ?俺に何か用事があってきたんじゃないのか?」
バルクホルン「ああ、伝えようと思ったことがあってな。俺のストライカーユニットがハンガーに届いている」
俺「よし……これで俺もやっと訓練できるってわけか」
バルクホルン「ふむ……じゃあ肩慣らしついでに
模擬戦でもどうだ?」
俺「おいおい、現役のエースウィッチとやり合えって無理があるぞ、もう一週間はまともに飛んでいないから勘弁してくれ」
バルクホルン「ふふっ、ならまた今度だな。楽しみにしているぞ」
俺「ずいぶんと好戦的なウィッチだぜ。また、今度な」
バルクホルン「さて、ハンガーに戻るぞ。あとミーナに謝っておけ」
俺「ヴィルケ中佐に?」
バルクホルン「俺が来て早々に
シャーリーのせいもあるとはいえ、問題を起こしたんでな。頭を痛めていた」
俺「ああ……そりゃ悪いな。ちゃんと謝っておこう」
なんだかんだでバルクホルンは怒っていないらしい。
……おそらく誰かがバルクホルンを宥めたのだろう、そうでないと説明がつかない。
あと何かわびの品でももってヴィルケのところにいくか。
―ハンガー
それはさておき、ハンガーに脚を運びストライカーを確認し、整備兵へと話しかける。
油まみれの手に、黒ずんだ衣服、魂のスパナ。
こういうのにまみれて生活するのもいいな、と密かに思っているのだが、他のウィッチにはなかなか理解されない。
俺「ふむ、確かに合ってるな。整備兵、これの整備を頼めるか?」
整備兵「いえ、普通のP-51なら可能ですがこれはちょっと……」
俺「やっぱりか、まぁ仕方ないな」
整備兵「一応通常のことはできるのですが、特殊なモノがはいってますから」
俺「ちょっとこればっかりは外せなくてな。俺が使うにはこれが必要なわけだ」
整備兵「見たことないのでわかりませんが。でもそんなものを付けてどうするんですか?」
俺「それは秘密だ。だが、俺にとってはなくてはならない物だしな」
整備兵「これの構造とか整備方法とか理解すれば整備も可能なんですが……どうしますか?」
俺「一応機密事項だしな……。しょうがないこのストライカーの整備は俺自身がやるよ」
整備兵「わかりました。では、もし何かあればお申し付けください」
俺「おう、ありがとな」
整備兵「それと、よければ……」スッ
俺「(またか……)」
立ち去ろうとする俺が振り返ると同時に目の前に差し出される紙。
つい最近もこういうことがあったなと思い出し、若干うんざりしつつ、その紙へとさらさらとサインした。
これで一体何度目だ。
昔はこういうことがなくて意外と楽だったのに、と内心文句をたれつつ、執務室へと体を向けた。
―執務室
慣れていない基地のため少々迷ったが執務室の前へとなんとか辿りつけ、失礼のないよう一応ノックする。
あと飛行許可ももらわないと。
俺「失礼。ヴィルケ中佐、今大丈夫か?」
ミーナ「ええ、大丈夫よ、どうしたのかしら?」
俺「ああ、この前のことを謝りたいと思ってな。来て早々あのような問題を起こしてすまない。俺は許さなくてもいいからシャーリーは許してやってくれ」
ミーナ「まぁ……あれはシャーリーさんも色々悪気があったぽいしどっちが悪いとは言えないけれど。でも今後ないようにね」
俺「肝に命じておく」
ミーナ「ここでは整備班や設営班などの人たちとは極力接触は避けるようにいってるのよ。だから男性との接触も少ないの、控えてくれるとありがたいわ」
俺「ふむ、まぁ部隊での方針に首を突っ込む気はないさ」
ミーナ「ありがとう、俺さん」
俺「それより、結構な書類の量だな」
ミーナ「ここは再結成されたばかりだからどうも、ね……」
俺「ガランドも再結成させるとは粋なことをやるな」
ミーナ「ガランド将軍とはお知り合いなの?」
俺「ああ、昔からの戦友だ。今でも仲がいいといえばいい」
ミーナ「尻に敷かれている、なんてことはないのかしら?」
俺「ははっ、冗談言うなよ。あいつにそんな気はないし、俺もないさ。それに……」
ミーナ「?」
俺「それに俺はこんな体だからな、普通の人間とは世界が違うわけだ。そういうのはもうできないんでな」
ミーナ「あ……ご、ごめんなさい」
俺「いや、全然気にしなくていい。俺はこの運命とやらを受け入れてるし、文句を垂れる気もない」
ミーナ「……でも少しくらいは色々としてみたいと思わないの?」
俺「さぁ、どうだろうな。まぁまだ少し未練はあるかもしれない、といったところか」
ロマーニャの暖かな日差しが差し込む執務室で、ヴィルケの表情は少し堅かった。
未だに、俺がネウロイになったことの理由がわからないのだろう。
だが、理解できるわけがない。
「理解する」というより、それを「感じる」ということがほとんどない、のほうが言い方的には合ってるか。
俺「そういえば、ここはたばこすっていいのか?さっき滑走路で吸ってしまったんだが」
ミーナ「え、あ、うーん……他の子達はやっぱり苦手みたいだし……場所を考えてくれるならいいわ」
俺「了解。そういやバルクホルンはさっき近づいてきたのに何も言わなかったな」
ミーナ「トゥルーデは俺さんのこと結構気に入ってるんじゃないかしら?」
俺「そうか?ああいうカールスラント軍人は最初はつっかかってくるものだと思ってたからな」
ミーナ「俺さんが悪い人ならそうだったでしょうけど、トゥルーデは分別がつくわよ」
俺「"以前の俺"の逸話に救われたってわけか。複雑だな」ハハッ
ミーナ「まぁそういうことでしょうね」
俺「そりゃ、ありがたいな」
ミーナ「そういえば他に用事があってきたんじゃないのかしら?」
俺「ああ、そうだそうだ。ストライカーの整備が済み次第飛行訓練をしたい。許可をくれ」
ミーナ「ええ、いいわよ。でも無理はしないように」
俺「ラジャー。まぁ楽しくやってくるさ。それじゃあまた夕飯の時に」
ミーナ「ええ、がんばってらっしゃい」
俺「じゃあな」
―飛行訓練
ストライカーの整備が終わったので、先程の整備兵に話をつけて色々と準備をしてもらった。
まぁ空に上がるときにもっていったのは、ペイント弾が詰め込まれたBARとボール三個だけ。
俺『これから飛行訓練を行う。地上付近での風力はジェントル・ブリーズ、おそらく7ノット。風向きは海から陸。天候は快晴。ストライカーの感度は良好』
滑走路から準々に速度を上げ風を切り空へと飛ぶ。
柔らかな海風が頬を撫で、麗らかな日差しが体に力を与えてくれる感覚がした。
俺『で、なぜテラスにいる?』
飛行中、ふと基地の方を振り返るとテラスに見慣れた三人がいた。
シャーリー、バルクホルン、エーリカの三人だ。
暇なんだろうか。
シャーリー『ちょいと見学ってやつさ。どうだ、ここの風は気持ちいいだろ?』
俺『ああ、東部方面のあたりの風も悪くはなかったが、ここはいいな』
エーリカ『あれ、東部の方もいってたの?』
俺『任務で各地を飛び回っていたからな。少しのあいだだが503JFWにいたわけだ』
バルクホルン『タイフーンウィッチーズといえば、有名なウィッチは……』
俺『カールスラント軍なら……ヴァルトラウト・ノヴォトニー、フーベルタ・フォン・ボニン、アレクサンドラ・シェルバネスク、オティーリエ・キッテル、だな』
エーリカ『うわっ、私が訓練学校出たときの飛行指令がいるじゃん』
バルクホルン『何を驚いてるんだ……』
エーリカ『いや~、知らなかってさ~。連絡とかしてくれなかったし』
シャーリー『手紙くらいは届いてるんじゃないのか?』
エーリカ『そんなわけ~……いや、あるかも』
俺『おいおい、失礼な奴だな』
エーリカ『にゃはは~』
バルクホルン『何を笑っとるんだっ!今度探して、あったら返事でも書いておけ!』
エーリカ『わ、わかったよ~』
その間、基地の周りを旋回したり、高度を上げたり下げたり、ロールしたり、投擲したボールをペイント弾で撃ちぬいたりと色々なことをした。
一週間ほどストライカーを履いたことはなかったが、感覚は正常で、コアとストライカーとの同調率も悪くはないので楽に飛ぶことができた。
俺『ふむ、これなら今日からでも戦線に加われそうだ』
シャーリー『ちょっと勘だけど、それって改造してあるのか?』
俺『よくわかったな……。一応特殊なものを組込んでる。ネウロイ化に対応できるストライカーだ』
シャーリー『へ~……って!どんな構造だ……』
俺『俺にもあまりわからないが、俺を作った研究者と同一者が作ったものだ』
バルクホルン『ふむ、化物じみてるな、そいつの頭は』
俺『周りからクレイジーサイエンティストって言われてな、そういや』
エーリカ『これじゃあカールスラントの技術も負けそうだね~』
バルクホルン『なっ!そんなわけないぞ!!カールスラントの科学力は世界一、と誰かが言っていたからな!まだ負けていない!』
俺『……リベリオンの負けでもいいぞ』
バルクホルンの自画自賛ならぬ自国自賛に呆れながら、シールドを展開し右往左往・前方後方へと移動させたり、大きさを変えたりなどをしてみる。
飛行中におけるシールドは意外と集中力を持っていかれる。
だからこうやって訓練しておかないと、いざという時に後ろにネウロイがいた、なんてことになりかねない。
俺『よし、ストライカーも好調だ。飛行訓練を終了する』
バルクホルン『了解した。降下してこい』
俺『ああ。そういえば今日の晩飯って―――』
<ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!>
シャーリー『警報!?』
バルクホルン『チッ、ネウロイか!全員ハンガーに集合しろ!』
エーリカ『了解!』
俺『了解。俺も武器を換装して一度点検してからすぐに空へあがる』
一度降下しハンガーへ。
整備兵を炊きつけ一度点検してもらっている間に自分は武器をBARへと換装。
そんな時にヴィルケと坂本とルッキーニ、同時にユーティライネン、バルクホルン、ハルトマン、シャーリーがやってきた。
ミーナ「今陸と海の境をすれすれで飛んでいて、アンナ・フェラーラ氏の島の上空を通過する進路をとっているわ。そっちの敵は大型ネウロイ一機よ」
坂本「だがもう1機ネウロイが出現した。この基地へとまっすぐに向かってきている。我々はそれを撃墜しにいくぞ」
俺「ちょっとまて!宮藤たちのところに大型がいってるんだろう、あの三人だけで大丈夫なのか!?」
坂本「我々が今からストライカーで飛ばしていってもネウロイが島上空を通過するまでには間に合わない」
俺「くっ!探知が遅れたのか……」
ミーナ「俺さん、心配でしょうけど、あの子たちは大丈夫よ」
俺「何が?つい最近まで戦線を離れていたんだろう!?」
ミーナ「あの子たちは仮にもストライクウィッチーズの一員よ、それに生半可な鍛え方はもとよりされていないわ。心配しなくても大丈夫よ」
坂本「あの三人は強い、大丈夫だ俺。それより心配しないといけないのは私たちのほうだ」
エイラ「んぇ?どういうことなんだ、少佐」
坂本「現在こちらへ向かってきている大型ネウロイは高速型らしい。しかし高速型についていけるのは……」
シャーリー「私ぐらい、か」
坂本「そうだ。シャーリー、この先で撃墜できるか?」
シャーリー「ちょっと私だけじゃ難しいって、少佐」
ミーナ「高速型の足を絡めとるだけでもいいわ。進路を妨害してから一気にたたみかけるつもりよ」
俺「じゃあ、俺が行こう。ネウロイ化すれば高速型に引けはとらない」
エーリカ「じゃあ俺もつれていけば大丈夫じゃない?」
俺「だがもしものときのために何人かを空中待機させておいてくれ」
坂本「わかっている。では、シャーリー、俺の両名は今すぐ準備し発進しろ」
俺「了解!」グッ
シャーリー「了解!」
坂本「よし、あとは……宮藤、ペリ―――…。ああ、まだ修行中だったな……」
ミーナ「あらあら、寂しいのかしら?」
坂本「な、なんてことはない!全機、二人のあとに順次空へあがるぞ」
バルクホルン「了解した」
エーリカ「了解~♪」ニヤニヤ
坂本「……なんだ、ハルトマン」
エーリカ「別に~♪」
他の皆が色々と話しているうちに俺たちは準備を済ませる。
俺は黒いジャケットを着用し発進ユニットの上から高くジャンプ。
淡い光と共に基地の中を埋める魔方陣を発動させ、ストライカーに魔法力を注ぎ込む。
シャーリーの方に目を傾けると、こちらを見て歯を軽くちらつかせ笑い、合図をうったえる。
シャーリー「イェーガー機、出る!」
俺「同じく、俺、出る」
ハンガー内の空気をかき乱し、一気に加速。
憎っくき敵を撃つために空へと高く高くあがった。
第4話前半終わり
最終更新:2013年02月06日 23:03