D.H.N俺 第6話「苦い休息」











着任当時に着ていた青黒いロングコートを羽織って滑走路の先でごろりと寝転がっていた。
何するわけでもなく、タバコを軽くふかしているだけだ。


今日も快晴。
三日前のロマーニャに南下してきたネウロイの巣からまだ次の刺客は来ない。

その間にネウロイ襲来の予測を改訂し、予報がすでにでていた。
なぜか退屈に感じる、こういう平和が一番であるというのに。



俺「ふぅー……今日もたばこがうまい」



うまいと思われねばやってられない。
何かしらないが背後から視線を感じる、距離はわからない。
一体誰だ、こんな日につけ回すとは。



俺「くそっ、落ち着けない」

シャーリー「おれー。なにしてるんだ?」

俺「お、シャーリー。聞いてくれ、さっきからストーカーがいるんだ」

シャーリー「さっき中佐と少佐が俺のことを後ろで見張ってたぞ」

俺「あの二人か。ちょっと説教でもしないとな。よっと」

シャーリー「あ、待てよー。コーヒーいれてきたからもう少しゆっくりしようじゃないか」

俺「……それなら仕方ない、ありがたくいただこう」



タバコを地面に押し付け携帯灰皿に強引に押し入れる。
シャーリーはコーヒーが入ったカップを渡してきたあと俺の隣に何のためらいもなく座った。

軽く一口含んで飲み込む、心地の良い少々苦い味が口の中にひろがり口の渇きが潤ったので話しかけてみる。



俺「そういえば最近シャーリーと話す機会が多いよな」

シャーリー「そうだっけ?」

俺「いやまぁ気のせいかもしれんが……」

シャーリー「そうだと嬉しいもんだなー」

俺「ん?嬉しい?」

シャーリー「最初俺がここにはいったときはどうなるかと思ったし、私ですら仲良く出来るかわかんなかったからな」

俺「なんだ、そんなことか」

シャーリー「そんなことってなんだよー。俺は最初暗かったし……」

俺「こんな体になってから色々と経験してきたからな、もう慣れてるもんさ」

シャーリー「そうかぁ……」


俺「でもシャーリーが話し相手になってくれてよかったぜ。一人でもいるとだいぶ楽だな」

シャーリー「それはありがたいな。でもそれって私でよかったのか~?」

俺「もちろん。シャーリーのこと好きだしな」

シャーリー「え、えっと、何だ突然」

俺「いや、なんとなくな。シャーリーでよかったよ」

シャーリー「あ……ありがとぅ……」

俺「なんで赤くなってるんだ?」

シャーリー「な、なんでもない!あ、そういや今日は人が来るらしいぞ!」

俺「……人?」

シャーリー「私も詳しくは聞いてないんだ。……そういえば次の敵の来襲予報は三日後だっけ?」

俺「そうみたいだな。当たることに賭けるか」




時々外れる少々頼りない予報に賭けるというのは俺なりの皮肉だ。

カップを傾けてコーヒーを飲み干した後にシャーリーの顔をちらりと見る、何か落ち着かなさそうだ。
視線がかすかに泳いでいるし、指を何度も交錯させたりしているからだ。



俺「どうした?」

シャーリー「あ!いや、えっと……俺はその三日後の戦闘の翌日……その、空いてるか?」

俺「……その翌日に用事があるが、それを終わらせれば暇だ」

シャーリー「じゃあさ、一緒に買物にいかないか?バイクのある部品が買いたくてさ!」

俺「ああ、全然構わないが……朝のうちにブラッチャーノという街に寄っていってもいいか?」

シャーリー「もちろん。でも、何やるんだ?」

俺「その時に話すさ。そのあとはデートでもなんでもやってやるさ」

シャーリー「あははっ、デートか。楽しみにしとくよ」

俺「それじゃあそろそろ戻るか。暑いし」

シャーリー「そうだな!あたしはストライカーの整備があるからちょっと見ていくよ」

俺「じゃあ俺は談話室にでもいってるよ。それじゃあな」


シャーリー「うん、また後でな。ふっふっふふ~ん♪」タッタッタ

俺「……えらく上機嫌だな」



一方、ミーナと坂本は……壁にかくれて二人の動向を確認していた。
上官らしくはない行動を取りながらもミーナは続ける。



ミーナ「最近あの二人怪しいわね……ちょっと危険かもしれないわ」

坂本「……気のせいだろう」

ミーナ「いえ、これは……調査が必要よ」

坂本「むむっ……」

ミーナ「それと今日は誰がくるかは私いったかしら?」

坂本「ああ、あれだろう。確か―――」







―談話室




シャーリーと色々と話した後、シャーリーは用事があるとのことなので別れた。
また建物に戻ってきて広間に入る。


並んだソファには宮藤とリーネ、リトヴャクとユーティライネンが座って雑談していたが、俺が入ると同時にユーティライネンが警戒し始めた。
俺は苦笑いしながら宮藤に視線で助けを求める。



宮藤「もうっ、エイラさん、俺さんをそんなににらんじゃだめですよ」

エイラ「こいつは男なんダゾー!」

俺「男だからどうだと言うんだ、まったく」


リーネ「俺さん、何か飲みますか?」

俺「ああ、ミルクティーをもらおう。で、なにを話していたんだ?」

サーニャ「ちょっと最近のペリーヌさんについて話していたんです」

俺「クロステルマンのことを?何故に?」

宮藤「ペリーヌさんの故郷はガリアなんです。ですからガリア解放後に支援をしていて……」

リーネ「あまり手持ちのお金がないので何も買えないようなので皆でなにかプレゼントでもしようかなーと思って」

俺「ほう、そりゃいいな。花でもプレゼントするのか?」

サーニャ「それでもいいんですけど……私たちはあまりそういう知識がなくて何がいいのか……」

エイラ「ツンツンメガネには何でもいいってー」

俺「なんでも喜んでくれると思うが……。他のものだと服とかか?」

宮藤「そうなりますね。俺さん、何かいい案ないですか?」

俺「ないな。そこまでクロステルマンと仲がいいわけでもない。ただ……」

リーネ「何かあるんですか?」

俺「写真たてでも買って……写真でも撮ればいいんじゃないか?」

エイラ「あいつのかー?」

俺「いやみんなで写真撮って飾ればいい絵になるだろう。それか花の苗とか種だな、さっき言った通り」

サーニャ「それもいいですね。喜んでくれそうです」


エイラ「じゃあこんど買いに行くか?」

宮藤「あ、それいいです!」

リーネ「それだとサーニャちゃんがいけないんじゃないですか?」

サーニャ「えっと、夜間哨戒がない日なら……そんな日ないけれど」

エイラ「それなんだよなー。それが問題なんだヨ」

俺「最近ネウロイの出現頻度も高まって夜間哨戒の日が増えてるから難しいな……」

宮藤「でもサーニャちゃん以外夜間専門のウィッチはいないです、俺さん」



俺「ふむ……短期間なら代わってやってもいいんだが……それでどうだ?」

リーネ「俺さんって夜間もいけるんですか!?」

俺「経験は何度もある。だがスーパーエース級の働きは期待するなよ?」

サーニャ「でも、悪いですし……それに私の仕事が」

俺「いいって。夜間専従の人は他の隊員と仲良くなりにくい。たまには皆と交流してこい」

サーニャ「本当に、いいんですか?」オズオズ

俺「いってこい。リトヴャクも息抜きしろ。楽しんでこい!」

サーニャ「ありがとうございます……俺さん」

宮藤「やったね、サーニャちゃん!今度行こうね」

俺「とりあえずヴィルケと話し合わないとな」


エイラ「お、おれ。俺ってばいいヤツだったんダナ……」

俺「リトヴャクへの配慮だ。エイラも一緒についていくんだな」

エイラ「もちろん!サーニャ、一緒に行こうな!」

サーニャ「うん……ありがとうエイラ」

エイラ「うぉぉぉおおお!」

リーネ「それじゃあどこに行きますか?!」

俺「おいおい、気が早いな。まだリトヴャクのかわりができると決まってはいないだろう」

リーネ「あ、すみません……」

サーニャ「ふふっ。あ、俺さん……私のことはサーニャでいいです……皆そう呼んでますから」

俺「そうか?まぁそれならいいか。じゃあちょっとヴィルケに頼んでくる」

エイラ「感謝するぞ、俺。私のこともエイラでいいからな!」

俺「おう。まぁはしゃぎすぎないようにな」




なんとなくで引き受けてしまったがよかったのだろうか。
まぁミーナと坂本にちゃんと話せば認めてくれるだろうし、理解してくれるだろう。


でも1つ問題があるな。

夜間哨戒に一人で出るのはさすがに危険だと言われそうであるから、もう一人誰かに頼まないといけないな。
短い期間だからそれぐらいならやってくれるやつも多そうだが……。

ミーナ、坂本は無理……ハルトマン、起きてられない……ペリーヌ、絶対無理だ……ルッキーニ、起きてない。
ってことは、頼んで聞いてくれそうなのは、シャーリーかバルクホルンだけか。


どっちかが引き受けてくれるといいんだが……。






―執務室



コンコン


ミーナ「どうぞ。入っていいわよ」

俺「失礼。ちょっと頼みごとがあってきたんだが、今、時間は空いてるか?」

ミーナ「ええ、まぁ少しなら全然大丈夫よ。どうしたの?」

俺「短期間だけ夜間哨戒をサーニャと変わって欲しい。それだけだ」

ミーナ「突然ね、一体どういう事情かしら?」

俺「サーニャにも休みを与えたい。俺はこの前ロマーニャに言ったから十分だ」

ミーナ「でも夜間戦闘のエキスパートはサーニャさんしかいないのだけれど……」

俺「俺も夜間戦闘は幾度となく経験した。ネウロイ化もあるし、敵に引けはとらない」


ミーナ「でも夜間にネウロイ化して飛んでいたら……他のウィッチに狙われるわよ?」

俺「……索敵にひっかかるということか」

ミーナ「そうよ。それに夜間に俺さんだけでは難しいわ」

俺「ならば人間の姿のままで大丈夫だ。ネウロイ化しなくても判別はつくしな」

ミーナ「どうやって判別を?」

俺「本能、というやつか。俺のコアが活性化状態でなくとも近くに同種のものが存在すればわかるんだ」

ミーナ「つまりコアとコアが共鳴……というかんじ?」

俺「離れているが、そういう感じでもかまわない」

ミーナ「本当かしら?」

俺「そこらへんは信じてくれても構わない。それともう一人、夜間哨戒任務に連れていきたい」


ミーナ「それには一体誰を推薦するつもり?」

俺「シャーリーかバルクホルンを頼みたい。何日かだけだ」

ミーナ「うーん、トゥルー……バルクホルン大尉は困るわ。こちらの火力が足りなくなる」

俺「なら、シャーリーか」

ミーナ「シャーリーさんがいないとルッキーニさんがちょっとね……」

俺「ふむ……仕方ない。それなら俺は日中も戦闘に参加しよう。それなら問題あるまい?」

ミーナ「それだと俺さんの体が心配だわ。それに戦闘で集中していなくても困るし」


俺「問題はない。もともとコアのおかげで何日か寝なくても活動は可能だ。ただ……」

ミーナ「ただ?」

俺「恐ろしく腹が空く。食事を多めにしてほしい」

ミーナ「それぐらいなら……いいけど。本当に大丈夫なの?」

俺「ああ、大丈夫だ。……随分と疑ってるが、もしかしてヴィルケは俺が過信してると思っているのか?」

ミーナ「少し、ね。それにあなたのこともあまり知らないし心配なのは確かよ」

俺「妙に優しいな。心配しなくても、俺は過信なんかしない」


ミーナ「この部隊にあなたが入ったからには私に監督責任があるわ。無茶はしないでちょうだい」

俺「申し受けた。何かあったらヴィルケの言うことを何でも聞こう」

ミーナ「あら、それならこの膨大な書類を一人で整理してもらうわ」

俺「……何かあったらな」

ミーナ「ふふ、それじゃあわかったわ。サーニャさんの申し出もあるだろうし、それを聞いて考えるわ」

俺「感謝する、ヴィルケ!」



ミーナ「あ、それと私のことはミーナと呼んでも構わないわ。あなたは軍属じゃないしからそこまで気にしなくてもいいわ」

俺「ほう、じゃあミーナ、頼んだ。融通がきく上官で助かったよ」

ミーナ「ふふっ、仲間思いの人で助かるわ」

俺「……まさか。きまぐれさ」



まったく、バカな話だ。
ミーナや坂本が面倒見切れない部分を勝手に俺が背負っているのだから、バカでしかない。
ちょっと気恥ずかしい雰囲気の中で、俺はミーナの机の側まで歩き卓上を見る。



俺「こんな膨大な書類を処理してるなんてな。有能だ」パサッ

ミーナ「あら、そんなことないわ。……それより話は変わるけどシャーリーさんとはどうなのかしら?」

俺「どうなのって……別になんともないが。普通に親しいだけだ」

ミーナ「私的にはそうは思えないの。一度注意してると思うけど……」

俺「わかっているって。注意するならシャーリーにするんだな。……それじゃ俺はこれでおいとまするか」

ミーナ「俺さん、少し待って!」

俺「……なんだ?」

ミーナ「えっと、言いにくいことなんだけど……」

俺「シャーリーとあまり接触しすぎるな、か?」


ミーナ「……そうよ。ごめんなさい、何度も言って」

俺「いいさ、別に。だが俺は至って自然に接しているつもりだ。それでもシャーリーが接触してくるなら俺は拒まない」

ミーナ「それは……」

俺「逆に聞きたいが、なぜそこまで血眼になって注意しているんだ?」








纏う雰囲気がぐらりと傾くように変わったミーナは、言葉を一回つまらせて飲み込む。
だが言葉を発しようとする、自分の中の迷いと正義とともに。
時間にして30秒ほどだろうか、日が雲に隠れていく部屋の中で、俺は黙ってミーナの次の言葉を待つ。




ミーナ「あの子たちに……私と同じ思いをしてほしくないの。大切な人がいなくなるなんてこと……」

俺(私と、同じ思い?)

ミーナ「あなたならわかるでしょう?突然大切な人が隣にいなくなる寂しさと怖さが」

俺「……なんのことだ?」

ミーナ「あなたは、各地を転々として戦ったはずよ。その中で親しくなった人もいたでしょう?得たものもあるけれど……失った時も、あるでしょう?」

俺「……さぁ、どうだったかな」

ミーナ「あなたのことを探ったわ。あなたが軍人だった時の最後の戦闘記録を」カサッ

俺「これは……俺の記録か。ということは、知ったのか、全部」

ミーナ「全部ではないけど……俺さんの最後の戦闘記録は、あなたのカールスラントでの故郷で終わっている。その故郷は―――」


俺「―――壊滅した」


ミーナ「……え?で、でもデータには死亡者は数名だって……記載されているわ」

俺「くくっ、見栄だよ、上層部のな。俺が死んだと同時に街の人を守ったという事実を創り上げたのさ」

ミーナ「そんな……」

俺「ありえないだろ?馬鹿げたつくり話さ」



実にふざけた嘘の事実だ。
あの時の上層部は民衆の支持を得るのにとにかく必死だった、口から涎が垂れるほどに欲しがっていたのだ。
そこでちょうど邪魔だった俺の戦死報告が入る―――その事実が好都合だったのだ。



俺「実際は……ネウロイの攻撃によって何もかも消えた。俺と、俺の街、家族、友人たちと共にな」

ミーナ「そんな隠蔽が……。でも、だからこそ、いろんな場所で大切なものを失ったあなたなら……失う怖さはわかるでしょう?」

俺「それならつながりがなければいいってか?極論だな」

ミーナ「あの子たちには、あんな思いさせたくないの……!」

俺「ミーナにどんなことがあったかは知らない。だが人が選択した道の邪魔はやめておけ」

ミーナ「邪魔なんて……していないわ」

俺「俺はこの道を選んだ。他の隊員も様々な道を選ぶ。その道の前に立ちふさがるな。それが、どんなことだろうと」



ミーナ「でも……このままだと、シャーリーさんが同じ目に合うかもしれないのよ?」

俺「俺は、いつかあいつにすべて話す。それでも俺を選んでくれるなら俺は―――その業を背負おう」

ミーナ「……自重する気はないのね?」

俺「無論。ミーナ、あの子たちはミーナじゃない。それだけはわかってやってくれ」

ミーナ「……私はあの子たちの幸せを、選ぶわ」

俺「そうか、なら、それでいいさ。……しかし止めるならシャーリーに注意することだ。失礼する」



くるりと背を向けて去ろうとする俺の背中にミーナが言葉を投げ捨てる。
あなたは私と違うのね、と。
それと同時にカチャリと後ろで金属の音がなる、聞きなれた銃器物の音。



俺「撃ちたかったら撃て。だが、何も解決しないぞ」

ミーナ「約束して」

俺「なんだ?」

ミーナ「あの子たちを不幸にしないと」

俺「……」

ミーナ「私は本気よ。今ここであなたの心臓を撃つこともできる」

俺「……いっそ根源を絶つか?」

ミーナ「答えて」

俺「俺は―――」




本気のミーナに俺はどんな言葉を紡ごうとしたのだろう。
この先の誓いは言うこともなく、発せられることもなく、生まれることもなく打ち切られた。


沈黙を大きく引き裂き、舌打ちしたくなるほどうるさく唐突に開かれた執務室の扉に。
厳粛な雰囲気の中、テンション高め・キー少々高めの声が執務室に響き渡る。



ドガッシャァァァァァァァン……ギシギシギシ……



その発生から数秒後、どかどかと白衣の男が新しいスニーカーを履いて勢い良く入り込んできた。
後ろでツインテールに髪を結んだバルクホルンがそいつを追いかけてくる。





「やぁ!俺くん。元気かい?僕はね、最近風邪が治って元気になったよ」

バルクホルン「おい!失礼だろう!」

「まぁいいじゃないか。ツインテの君」ポンポン

バルクホルン「貴様!いいかげん無礼だ!ええい!触るな!」ベシッ

「あてて……ん?あれ?大丈夫かい、俺くん。お取り込み中だったかい?」

俺「……ある意味グッドタイミングだが、なぜお前がここに?」

「いや何、僕の大切な研究の結晶を見に来たんだよ。調子はどうだい?」


俺「ミーナが呼んだのか?」

ミーナ「……ええ、色々と俺さんも大変だと思ったから」

「無視かい、俺君。まぁいいけど」

俺「ということは……」

バルクホルン「ああ、俺の体を調整するために今日からここにいてもらうことになる」

「そういうことだよ。よろしくね、俺くん、ミーナ君」

ミーナ「長旅ご苦労様です。ようこそお越しくださいました」





……何か今日は目まぐるしい。
久しぶりに面倒くさくなって、ため息を大きく付いた。



俺のことを創った、生みの親というべき人間。
いつもどおりの通気性のよさそうなダークブラウンのズボンに、黒色のカッターシャツ。
そしてトレードマークのような白衣を羽織った姿。

それを一度手で大きく払ってなびかせる。



俺「……まったく」

研究者「どうやら、僕が言うまでもなく楽しんでいるようだね」

俺「貴様の気遣い通り、楽しんでいるさ」

研究者「色々とめんどそうなことになってたけどね?」ボソッ

俺「ふん、うるさい」

研究者「君の不器用が祟ったんだろうから何も言わないけど」

俺「……バルクホルンやミーナも知っていると思うが、一度俺から紹介しよう」

研究者「リベリオン国防高等研究計画局先進技術研究室、所属。天才にして、狂気のマッドサイエンティスト!そして、この世界の支配構造を―――俺「それ
以上はいけない」


研究者「邪魔をしてくれるな、俺くん」

俺「……俺を創った天才だ。だが人格に少々問題がある、気をつけるように伝えておいてくれ」

研究者「まぁよろしく頼むよ。機械や道具はすでにここに輸送させてあるから今日から調整にはいるよ」

バルクホルン「それはどのくらいかかりますか?」

研究者「まぁ半日ほどかな。色々とあるし」

俺「今日はネウロイも来ないしちょうどいいだろう」

ミーナ「わかったわ。でもどこでやるのかしら?建物内は無理ですが……」

研究者「いや外でテント張ってやるから心配無用だよ、電気も引くし。さて、早速俺君を借りていくよ」グイグイ



俺「……そういうことだ。さて、続きは次のその機会に持ち越しだ、ミーナ」

ミーナ「……わかったわ」

バルクホルン「?」



俺「……俺の最後の戦闘記録については、ある男がよく知っている。ネウロイ研究をしていた元空軍大将だ」ボソッ

ミーナ「それって……まさか……」



ガチャ……バタン




研究者にせかされるように部屋を出る。

俺はヤツに近寄り、少しだけ疲れた表情と共に、感謝するとだけつぶやいた。
それを聞いた研究者は言い飽きたように、大変そうだねと返す。



研究者「さて、俺君。なんであの時調子を答えなかったのかい?」

俺「……少々調子がおかしい部分がある」

研究者「どうせ、君のことだ。"大技"ばかり使ってたんじゃないかい?ここのウィッチたちに負担がいかないようにさ」

俺「……」

研究者「君の身体はネウロイ化に対応しているとはいえ、所詮は人間ベース。限界があるんだよ」




そう、俺の身体は結局のところ人間の身体をベースにし強化、ネウロイ化に耐えられる強化人体を創り上げただけにすぎない。

そこに大型ネウロイさえも落とせる"大技"を使用する。

誰もが想像できる通り、それだけの代物を使うのであれば負担はつきものだ。

つまり……各部ネウロイ装甲で高エネルギーを使用・解放するたびに、俺の身体はボロボロになっていくということ。




ただし、普通のビームや、多少の近接戦なら何も問題もなく、これだけでも十分に大型ネウロイと渡り合えるのだが。




俺「知っているさ。それでも、俺はこれ以上誰も死なせやしない」

研究者「誰も死なせたくないのに、自分は死ぬつもりかい?」

俺「そうだ」

研究者「その矛盾は、いつか君を殺すかもよ?……さて、僕としてはまだ生きてもらわないと困るから」

俺「今すぐ調整に入るぞ。そして結果を残さないとな」

研究者「成果を残せば、ネウロイ化人間の量産が可能になるね~」

俺「ああ……その要が俺だからな。やらないと」

研究者「そして……僕がここに来たもう一つの理由もわかるかい?」

俺「任務……か。もしかして解析もろもろが済んだか?」


研究者「厄介だったけどね。色々とマロニーの研究記録を漁ってなんとか解析を済ませたよ」

俺「ということは、いつぞやの人型ネウロイは……?」

研究者「あれは純粋なネウロイだね、それも単純に人間の真似をしたものだ」

俺「501の報告と合わせると本当にネウロイは人の真似をしていたことになるな……不気味だが」

研究者「そして、巣が変わったけれど、ネウロイの興味対象は依然として人にあるはずだ」

俺「……つまり、人の真似をすることも。正確には、人型ネウロイの存在が……推測されるということか?」

研究者「向こうにもデータあるだろうし。まぁ確証はないけれど、たぶんね」


俺「そいつが……俺の撃破対象……俺の任務、か」

研究者「君の……いや僕達の真の目的は―――」

俺「わかっているさ。だから俺は……今、ここにいる」




研究者が俺の肩を軽くポンと叩く、励ましのつもりだろうか。
そんなことしなくても俺はやるつもりだ、何もかも、未来のために。




俺の任務は―――新しいネウロイの巣に予測されている人型ネウロイを完全に撃破し、さらに巣のコアを破壊することだ。


そして、最後に得たい"勲章"は『ネウロイ強化人間の増産』。




以前に人型ネウロイの報告があったが、恐らくその個体に近いものを大幅に進化させた人型が存在すると、と研究者は言う。
人型は巣に存在するネウロイの上位種であろう。


そしてそれを破壊したときにこそ……ネウロイの巣のコアを本格的に叩く。
それがいつかあるであろうネウロイの巣への全面攻撃作戦……最後の戦いだ。





その戦いが終わった時、俺は果たして―――。








何を思い、消えて行くのだろうか。
最終更新:2013年02月06日 23:04