D.H.N俺 第7話「空の上事情」
後半部
―夜間哨戒
俺「そういえばそろそろネウロイ襲来の予報があったな」
シャーリー「そうだなぁ。もしかして今夜でるんじゃないか?」
俺「出ると、退屈しなくてすむんだがな」
シャーリー「話は変わるけどさ、この夜間哨戒になんであたしを誘ったんだ?」
俺「何故だと思う?」
シャーリー「逆に聞き返すなよー」
俺「まぁどんな理由があろうと、正直シャーリーになってホッとしてるよ。一緒にいてとても落ち着く」
シャーリー「あははっ、ルッキーニにも同じことを言われるよ。だけど夜間戦闘なんてあまりしたことないし不安だなぁ」
俺「……大丈夫だ」
シャーリー「ん?」
俺「俺が指一本触れさせやしない、シャーリーにはな」
シャーリー「あ、え、きっ!急に真面目になるなよっ!」
俺「……俺の前じゃ、もう誰もな」ボソッ
シャーリー「え……?」
俺「いや、なんでもない。……なぁ、シャーリー、俺がもしシャーリーが思うような人間じゃなかったらどうする?」
シャーリー「どういう意味だ?私は別に……」
俺「ん、待て」
シャーリー「へ?」
俺『さて、盗み聞きは良くないな、坂本少佐』
坂本『ぬ、盗み聞きなど人聞きが悪い。勝手にはいってくるんだから仕方ないだろう』
シャーリー『し、少佐、ネウロイはいるか?』
坂本『いや、まだ影は写っていない。だが今日は、出る確率も高そうだ』
俺『じゃあそれまで美女とのデートでも楽しむかな』
坂本『はぁ、お前は夜間哨戒をなんだと思ってるんだ』
俺『リベリアンは何事も楽しむからな』
シャーリー『あははっ、違いない』
インカムからため息が聞こえてきた、今日何度目だろうか。
最近坂本とよく朝に訓練をするようになったが、その時もため息をつかれたりする、特段無茶な訓練をしているわけでもないのに。
だから、最近聞き慣れていたが、今日はいつにも増して面倒くささが漂っていた。
坂本『お前たちは仲いいな』
シャーリー『そうかな?』
坂本『だが、最近お前たちはよくべったりしているから……』
シャーリー『から、何なんだ、少佐?』
坂本『親友かと思うときもある!』
シャーリー『はぁ……そっか』
坂本『何を落ち込んでるんだ、シャーリー?』
シャーリー『なんでもないよ、少佐』
俺『……』
坂本『さっきから黙りこくっているがどうしたんだ、俺』
俺『……先程からこちらをみているものがいる。かなり遠いな』
坂本『報告は明瞭にしろ。ネウロイか?』
俺『方位30、距離30000……ネウロイだな。シャーリー、戦闘態勢を取れ、こちらから仕掛ける!』
シャーリー『どうするんだ?』
俺『やつより高い高度から一気に攻撃をする。それで倒せないなら一撃離脱し―――』
ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン―…!
……突如、俺とシャーリーの間をとてつもないエネルギーのビームが過ぎていった。
冷や汗がどばりと出て、口の中が一気に乾いた。
どくどくと心臓が脈を打つのが耳から聞こえてきて、緊張が急激に高まる。
俺『おいおい、冗談だろ?この距離からほぼ的確な攻撃だと……』
坂本『シャーリー!俺!大丈夫か?』
俺『いや、今のは外れたが、これ以降の攻撃は危ないな……』
シャーリー『……どうする?こっちの攻撃範囲内に入るまで近づくには危険だ』
坂本『俺、こちらも出る。それまでしばらく耐えろ!!』
俺『了解!』
そこで通信が一旦切られインカムから通して聞こえる雑音ありの音がなくなり、ただ張り詰めた空気の音が耳を触る。
最初の一発目以降、少しこちらの様子をみているのだろうか、次弾が来ない。
坂本たちが来るまでの間、こちらでもなんとか手を打つしかない。
このままではネウロイから見れば、ただの的だ。
俺「シャーリー、一度敵に接近を試みる」
シャーリー「でもどうやって?この距離なら攻撃が来ても回避することもできるぞ」
俺「それじゃ木偶人形だ。坂本たちがくるまでの間に策を打つ。そしてできれば倒す」
シャーリー「それじゃ、手はあるのか?」
俺「3つある。1つは高高度からの強襲、2つめは二手に分かれて攻撃を分けながら接近」
シャーリー「3つめは?」
俺「単独による急速接近からの攻撃で時間稼ぎ。で、どれがいい?」
シャーリー「3つめはリスクが大きいぞ」
俺「でも好みなのは、3つめだ。……さて、行くか」
シャーリー「おいおい、本気か?間違いなく反撃が来る。ビームの相対速度は……かなり速くなるぞ」
俺「虎穴に入らずんば虎子を得ずってな。俺はこういう方法がスリルがあるから大好きだぜ」
シャーリー「……よし、俺がそういうならノッた!何か策もあるみたいだし」
俺「策なんてねぇな……あるのは、力だ!」
……人体拡張反応コア……アクセス……アクセス完了。
エーリカ、すまないな。
やっぱり俺はウィッチとして、戦うことなんてもうできないんだろうな。
……ネウロイ、遠くから狙い撃ちなんてせせこましいことしてないで、俺と張り合おうじゃないか。
俺の前では、俺とだけ戦ってもらおうか。
T R A N S F O R M N E U R O I !!!
暗黒なる夜空、煌く星々、満ちる月光、なでる風……その中に1つ馴染まぬ異質な黒装束。
心臓から湧き出る黒の水が身体を覆い尽くし、身体の所々に点々とした赤点を帯びる。
雲の上、人間はネウロイへと新たに変身を遂げる、化物の力とともに。
眼前を覆う赤いシールドの裏側に身体情報をモニタリング、それを読取り各部の状態を確認する。
モニタリング後、手に持ったボーイズと背中に背負ったBARをネウロイ化させた。
俺「調整は、完璧だな。さて、やるぞ、シャーリー」
シャーリー「敵の場所はわかるか?」
俺「アルクトゥルースとカストルを結ぶ直線上、距離26000ほど、高度は7000だ」
シャーリー「嫌な位置にいるな~」
俺「さて、向こうも様子見は終了かもしれんな。……攻撃、来るぞ!!」
ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン―…
シャーリーへと攻撃予告を通知した2秒後、俺の左腕を微かにかするように図太いビームが通りすぎる。
左腕がわずかに橙に染まり熱を帯びるが、すぐに夜の風に冷やされ元に戻った。
俺「この距離で、この威力、か。今回のは少し苦労しそうだな……」
シャーリー「俺、私の固有魔法も使って加速する。合図の5秒後に同時にネウロイに向かっていくぞ!」
俺「その後、シャーリーに引っ張ってもらった後、ぶっとばしてもらう」
シャーリー「俺がネウロイと接触次第、私も高速で接近する。それでいいか?」
俺「ああ、もちろんだ。次の攻撃直後合図を送る」
シャーリー「敵の攻撃と攻撃の間は長いから十分に準備をとれるな」
俺「接近中が……勝負、か」
ザザッ―…
坂本『シャーリー、俺、まだ大丈夫か?』
シャーリー『大丈夫だ。少佐、あとどれぐらいで来れる?』
坂本『恐らく20分ほどかかるだろうな……持つか?』
俺『それじゃあ遅いな。獲物を先にいただいちまうか?』
シャーリー『じゃあ作戦通りに』
坂本『ま、待て、お前たち。無理をするなよ!』
ブツッ―…
俺『む……高エネルギー反応がある。次の攻撃が来るぞ!』
シャーリー『了解!!準備万端だ』
俺『3……2……1……回避!!』
ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン―…
俺「回避成功……よし」
シャーリー「くっ!いくぞ、俺!」
俺「おう!」
ビームが通り過ぎると同時に敵がいるであろう方向に急加速し始めるシャーリーと俺。
一気に空圧がひっかかり、そこから生まれる風が金属音を鳴らす。
シャーリーに目で合図を送る。
加速しつつ俺はシャーリーへと右腕を精一杯伸ばし、シャーリーの左手を捕まえた。
そしてぐいと引き寄せた俺の身体を背後からつかみ、さらに加速、最後に……渾身の力をもって俺を敵へと振りなげた。
シャーリー「とんでけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」キィィン…ブンッ!
ネウロイ化されたストライカーの加速+シャーリーに投げられた加速で一気にネウロイへの距離詰めを図る。
なるべく身体を直線軌道からずらさないように速度を徐々に上げていく。
前に構えた黒色のボーイズの照準から敵を見据えた。
俺「距離24000……21000……17000……14000……10000ッ!」
さらに加速を加え敵へと急速接近。
敵の次弾に備えてシールドを前面展開、同時に詳しい敵の索敵を始める。
相対的に速くなったビームを避けたり、直前でシールドを張ったりするのは困難だ。
ならば多少の接近速度低下を伴おうとも、先に張って防ぐのが常套であると言える。
そして可視できたビームが予測通り飛来。
高エネルギーのビームがシールドと衝撃を残し衝突、あまりの高熱に周りの水蒸気が一気に凝縮し湯気を舞い散らせる。
そして今の身体に水蒸気は意外と辛い、そう、息ができない感覚と似ている。
俺『ぐッ!』
シャーリー『俺!減速してるぞ!!』
俺『攻撃を防いだからな!その反動だ』
シャーリー『とりあえず突っ切ってくれ!』
俺『任せろ!』
シャーリーから継いだ分の加速度は失い、さらに減速。
しかしもうこの距離まで詰めた、後はこのP-51でも十分すぎるほどに速く接触できる。
距離はすでに8000……敵の位置が絞られ、俺は再度ネウロイ式になったボーイズをかまえた。
察知したネウロイの気配に向けて銃口を向け、高速接近する中でのさらに相対的な銃弾の行方を想定。
俺「反撃させてもらうぜ……む、雲に隠れていやがるのか。だが、甘いな」ガシャッ ドンッ!!
一発放った真っ赤な閃光の弾丸の行方は雲の中へと吸い込まれる。
赤い光の筋と共に雲を切り裂くと、一遍にその隙間から白き粉塵を巻き上げた。
それを見逃す俺ではない。
魔法力をストライカーへとぐんと詰め込み瞬間的に加速度を上昇、敵との距離を貪るように近づける。
俺「はっ、見つけたぜ……遠くから狙撃とはネウロイにしては随分と賢いじゃないか」ガシャッ…ドンッ!
シャーリー『俺!こちらもすでに接近中だ。残り距離13000』
俺『速くこいよ、獲物をもらっちまうぞ』
裂けた雲の合間から姿を現したネウロイは、金切り声をあげながら俺への敵意をむき出しにした。
ネウロイ同士だからこそわかるような感覚―――殺意。
俺「……こいつ……まさかさっきの攻撃が効いていないのか?」
着弾したにもかかわらず既に再生は済まされており、このネウロイの強靭さに内心驚いていた。
普通のネウロイなら、着弾したところだけでなく周りの装甲ですら剥がされるぐらいの威力のはずだ。
シャーリー「よしっ!到着!早かっただろ?」
俺「ああ、早かったな。すでにネウロイは準備万端だが」
シャーリー「うぇっ、攻撃喰らったのにか?」
俺「ボーイズくらいのブツをネウロイ化させたら、すぐに再生できるほどの傷にはならないんだがな」
シャーリー「再生力が高いか……それとも堅いか、かな」
俺「どちらにせよ、そんなものは全ての男性が欲す下卑た能力だな」
シャーリー「へ?」
俺「いや、なんでもない」
俺『坂本、あと何分だ?』
坂本『あと5分で着く、大丈夫か?』
俺『このネウロイ、苦労しそうだ』
坂本『む、そうか。なら急ぐ』
……今夜の月は明るいな、視界がだいぶ楽だ。
このぐらいのやつはいると思っていたがまさか夜にでるとはな。
リトヴャクと交代してからいきなり出るとは、幸運か不運か、どちらであろう。
シャーリー「さて、いっちょやるか」
俺「……とりあえずもう何発か当ててこの違和感を確かめる。いいか?」
シャーリー「じゃああたしは援護に回るよ」
俺「頼んだぜ、シャーリー」
ネウロイの全身が真っ赤に染め上がり各部ビーム門から、紅の雨が噴出する。
それに対し俺は、数えきれない程の閃光に向かって右肩と左肩のビーム門から、対抗し迎撃する。
俺「一発、二発、三発!」ガシャドンッ!ガシャドンッ!ガシャッドンッ!
シャーリー「よっと」タタタタタタッ
攻撃の隙間を縫って間髪を入れずに三発とBARを何発かネウロイに向けて撃つ。
弾丸は赤い閃光を残しながらまっすぐに直撃。
そこをダメ押しするように7.62mmがそこを堅く差し取る―――はずだった。
シャーリー「……今、直撃したよな?」
俺「もちろん。だが……どうやらあまり効いていないみたいだな」
シャーリー「そんなのってありかよー。こんなに堅いネウロイなんて
初めてだぞ」
俺「さて、ボーイズの残弾数は零。予備弾もないしな」
シャーリー「なんで持って来なかったんだよ!」
俺「仕方が無いだろっ、本来はリーネの分ぐらいしかないんだからよ!」
シャーリー「そうはいってもやっぱり持って来るべきだろ!」
俺「最低限しか調達できないって言われたんだよ……って攻撃されるぞ!避けろ!」
シャーリー「わかってる!」
すぐに再生したネウロイがビームを俺達へと向けて拡散させる、それはまるで雨のように。
一発避けたところで攻撃が止むわけでもない、すぐに目の中へと新たなビームが飛び込んでくる。
それを身体ですばやくさばきながら、ストライカーに被弾しないように、しかし紙一重に機敏にかわしていく。
シャーリー「くっ!攻撃が、激しい」
俺「シャーリー!少し距離を取れ!近づきすぎだ!」」
警告。
しかし言うが遅いか。
俺「ッ!!後ろだッ!避けろッ!!!」
シャーリー「―――え?」
激しい攻撃に気づかずネウロイに近づきすぎたせいか、ネウロイから発されたビームはシャーリーの真上で屈折。
速度と行動を予測したネウロイの攻撃が、背後から獅子のごとく兎を襲った。
ピシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……ビシュンッ……
シャーリー「くうっ!!!!?」ボンッ
俺「シャーリー!!!」ヒュン
すぐさまシャーリーに飛び寄る、攻撃を被弾しようがしまいが無視に。
重力に従って落ちようとするシャーリーに手がなんとか届き、ぐいと力強く引き寄せた。
俺「おい!おい!シャーリーッ!!」
シャーリー「あくっ……だ、大丈夫だ」
俺「どこを被弾した!?」
シャーリー「大丈夫だって……直前で回避した。ストライカーを片足やられたけど……」
俺「本当にそれだけか!?」
シャーリー「本当だって。そんなに驚くなよ。本当に大丈夫だからさ」
俺「……よ、よかった」
シャーリー「さすがに心配しすぎだぞ~?」
俺「当たり前だろ!心配しない奴がどこにいる!」
シャーリー「ご、ごめん」
俺「あ、いや、すまない。……で、どうするか。シャーリーは戦闘続行不可。坂本たちはあと少しだけかかるか」
シャーリー「少佐たちはまだあと5分ほどかかるぞ?」
俺「……さて、どうしたもんか」
ザザッ―
坂本『シャーリー、俺、戦況を報告しろ!』
俺『シャーリーが被弾した。ストライカー片足損壊、シャーリーは戦闘続行不可能だ』
坂本『負傷はしていないのか?』
シャーリー『大丈夫だよ、少佐。あと何分でこれる?』
坂本『急いではいるが……』
俺『推測通りか。こちらは敵の進路を止めつつ、時間を稼ぐ』
坂本『了解だ。あまり無理はしてくれるなよ?』
俺『シャーリーを抱えてるんでな。無理だろう』
ブツッ
通信中もネウロイの攻撃が豪雨のように襲ってきていたが、いずれもシールドを強力に展開し全て防ぎ通していた。
敵の進路は以前変わらず都市部へ向けて進行中だった。
押され気味の現状態に、少しだけ不安を覚えてしまう。
シャーリー「で、本当のところ、どうするんだ?」
俺「……シャーリー、少しだけでも飛んでいられるか?」
シャーリー「えっと、片足があるけど……ってこれも壊れてるじゃないか!」
俺「おいおい、報告されてないぞ、それは。これじゃあ飛ぶこともできないか」
シャーリー「ごめん、俺……あたし足手まといだったかな」シュン
俺「……ふっ、そんなことないさ。心配するな」
シャーリー「いや、でもさ……この状態はさすがに危険だ」
俺「……言っただろ。俺が絶対守ってやるってな、だから安心しておけ」
不安気味のシャーリーに微笑み返す俺。
まったく、俺が不安を覚えてはいけないな、大事な女の手前しっかりしないとな。
シャーリーには俺の顔は黒仮面でおおわれていて見えない。
だがシャーリーは……なぜかわずかに安心するような表情を見せる。
俺「シャーリー、今から見ることは秘密だ」
シャーリー「え?」
俺「シャーリーを上空へとぶん投げる。その一瞬間に、俺が奴を消す」
シャーリー「あれを一瞬でか!?だってボーイズでも少ししか傷を付けれなかったんだぞ?」
俺「切り札その1解放【エーミッタム】に続き、切り札
その2を見せてやる。少々ネタバレされるのもかなわんので秘密だ」
シャーリー「……うそ臭いな~」
俺「大丈夫だ、信じろ。この身体がどれほどの潜在能力を秘めているか、披露してやる。シャーリーだけに特別にな」
シャーリーを抱きかかえたまま、ネウロイの攻撃を一切のムダもなく回避。
ネウロイの全身が溢れ出すビームが放出されてわずかな時間の隙間、そこを見逃さず急上昇をする。
眼下のにネウロイの全身を見下ろせるくらいまであがった後、敵の攻撃を待つ。
俺「ああ、あと一応銃口を敵に向けておいてくれ。破壊しそこねるかもしれないからな」
シャーリー「投げたら絶対にとりにこいよ~」
俺「任せろ。ちゃんと受け止めてやる」
シャーリー「ゆっくり受け止めてくれよ。衝撃が痛そうだから」
俺「レディーを優しく扱うくらい、そんなの生前から慣れてる、さッ!」
ビシュゥゥゥゥン……ビシュゥゥゥゥン……ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
俺「さて、敵の攻撃を……避けるッ!!」ヒュン
俺「シャーリー、投げるぞ!!」
シャーリー「こ、こい!」
俺「うおらぁっ!」ブン
ネウロイの攻撃が俺へと向かって放たれた瞬間すぐさま回避運動をし、さらにシャーリーを空高くへと投げ上げた。
強化された腕力から投げ出される力は、1tトラックでもさえも投げ切るほどだ、シャーリーをなげるなど造作もない。
さらに。
俺「左腕解放【シニストラー・エーミッタム】……出力60%」
左腕の装甲を解放し、高エネルギーを一気に収縮……加えて煌々と滾る腕をバックナックルの型で力を溜めた。
そして時を待つ……そう、敵の隙の一瞬、回避されないであろう絶対的瞬間を。
左腕を右肩上まで回し身体を捻り、右手は脇の下へと構え、打つ側の手をぴんとまっすぐ張り伸ばす。
剛力を蓄えた漆黒と赤光の右腕、背部から巻き起こる高熱、身体を渦巻く大気のエーテル……すべてを最高の状態へと導いた。
俺「切り札その2……魔法力充填開始……」キキキキ
シャーリー「俺!攻撃がっ……!」
俺「魔法力充填完了……魔法力圧縮、完了……」ジジジッ…キィィィン
高エネルギーの充填による高熱の排出、及び攻撃時の反動を想定……その対反動システムを稼働。
身体の左腕強化を確認、魔法力形成確認、エーテル奔流収束……すべての工程完了。
ネウロイの身体が宝石のごとく真紅を帯びた直後、終極なる光の束を俺へと全弾解放放出―――殺人ライナーなるビームの旋律だ。
シャーリーの警告がインカムからしみるように耳に入る、それに応じ俺はその左腕に託した切り札を解放。
ビームが俺を貫くわずか前、左手を振り切り全てを解放―――その次い成る技は―――。
俺「―――両断波」
―――何者をも切り裂く赤き悪の刃。
ふと遠目から観ていた坂本は驚愕していた。
確かにネウロイの攻撃は普通にいけば俺の攻撃さえも押し込んで、俺を貫いていただろう。
だが……だがしかし、それにもかかわらず……押し負けたのはネウロイだった。
しかしながら、坂本が驚いたのはただそれではない。
真に目を開くような思いがしたのは……その結果だ。
結果―――ネウロイの真っ二つ―――俺から出た秋水な刃の如き斬撃の波が、ネウロイを見事に2つに切り裂いた。
そして、コアさえもその断面の中に含み一刀両断だった。
坂本『あ……ありえない……。私以外に……』
エイラ『少佐~、どうしたんだ?』
坂本『……全機に告ぐ。戦闘は終了したようだ』
エイラ『シャーリーと俺の勝利か?』
坂本『……圧勝だ。信じられんが、ネウロイの攻撃を押し切った上での、破壊だ』
サーニャ『こちらでもネウロイの消滅を確認しました。よかった』
宮藤『なんか通信じゃあ物凄く強いネウロイかと思ったけど、何事もなくてよかったー』
ペリーヌ『それでいいならいいですが、シャーリーさんはストライカーに被弾したのでは?』
リーネ『怪我はないんでしょうか……?』
エイラ『でも結構苦戦してたんダロー?どうしていきなり勝てたんだ?』
坂本『俺が……ネウロイ化した俺が私の烈風斬と同じような技を使用した。威力もほぼ同等だ』
宮藤『俺さんって烈風斬使えたんですか?!』
坂本『いや、使えない。私が話をした時に全く知らない感じだった。だが……それほどの物を使用したとなると……』
ペリーヌ『……何事もないといいんですけれど』
俺の放った紅き斬撃がネウロイのビーム・金属体・コアをまるごと切断し、消滅させた。
解放された左腕に普段なら衝撃を拳全体へと分けるものを、できるかぎり超高圧縮にし、さらにそれを魔法力にて形成させてから、斬撃の波を作り出すものだ。
先日見た坂本のレップウザンを見た時に、まさかこの技と似たようなものがあるとは思いもしなく、とても興味が湧いたものだ。
俺「高熱排出、身体損傷の修理、残留エネルギーの放出、解放左腕装甲の閉口、全体バランスの調整……完了」フシュゥー
俺(……くっ、やはり左腕の感覚はすぐには戻らないか)
シャーリー「わわわっ、お、おれー!!」
俺「ネウロイ化……解除」パキィン
シャーリーの予測落下地点に入り込み、ぐいと両腕を伸ばす。
そしてシャーリーを捕まえる瞬間に下へと少しだけ身体を落とし、なるべく衝撃を少なくさせてから受け取った。
仕方なくではあるが、お姫様抱っこというやつで。
俺「……ふぅ、で、大丈夫か?」
シャーリー「何が大丈夫だー!あんなに投げられると思わなかったぞ!」ポカポカ
俺「すまない。ネウロイ化するとどうも腕力も補助されるんでかなり力が強くなる」
シャーリー「はぁ……で、俺は怪我はないのか?」
俺「いや、何もない。でも、少し"生命力"を使いすぎたな……」
シャーリー「生命力?」
俺「あー、また今度話す」
シャーリー「またそれかー」
シャーリーは月下の光を顔に浴びながら少し無邪気に微笑む。
俺はその笑顔につられて笑う、何ヶ月ぶりかの、いや何年ぶりかに緊張が解けたように笑う。
シャーリー「俺、安心はできなかったけどさ、ちゃんと守ってくれてありがとな」
俺「スリルがあったか?」
シャーリー「ちょっと不安になるようなスリルだったぞ、エキサイティングな感じじゃなくてな」
俺「アトラクションはそうでないとな」
シャーリー「一時はどうなるかと思ったけど……足手まといになったな~」
俺「……そんなことないさ。こんな状況にならなかったら、あの技は使っていなかった」
シャーリー「こんな状況って……あたしが戦闘中飛べなくなることか」
俺「そうだな。しかしあんな状況になってしまって悪かった、俺の責任だ」
シャーリー「大丈夫だって、もうネウロイは俺がやっつけてくれたしな……」
微かに、震えが伝わってくる……俺ではない、シャーリーの震えが。
落ち込み怖がり気味のシャーリーを俺は空で横になって落とさないように抱きしめる。
そして緊張したシャーリーの頭を撫でてやると、顔を静かに俺の肩へと埋めた。
たぶん自分の被弾した瞬間をわずかに思い出して怖がっているのもあるのだろう。
なにせ俺より一回り下の少女だ……戦闘経験はあるとしても、やはり怖いものなのだ。
自分がもしかしたら死んでいたかもしれない瞬間の恐怖……それは安堵した時にこそ襲ってくる。
―――身体や頭脳は随分とませていると思ったが、違う。
シャーリーは……少女なのだ。
よく会って、よく話して、笑い合って、こんなことになってようやく気づく。
豪胆であるが繊細で、活力があるが気品があって、気丈だが弱いことに。
俺は、遅いものであるが、今をもって実感した。
俺「あんな目にあわせてすまなかった。シャーリーを守ると言っておいてこの体たらくは……悪いな」
シャーリー「ううん、十分さ」ギュゥ
俺「1つ……言っておきたかったことがある」
シャーリー「?」
俺「シャーリーがどんな理由で俺と親しくしてくれているのかはわからないが……」
シャーリー「……俺」
俺「もしこんな俺でも近くにいてくれるなら、いつだって俺はシャーリーを―――」
ザザッ―
坂本『俺、シャーリー』
シャーリー『うわひゃっ!?』
坂本『どうした、シャーリー?』
シャーリー『あ、いや!ななな、何でもないぞ、少佐!!』
坂本『変なヤツだな。こちらでもネウロイの消滅を確認した。帰還する』
俺『了解した。シャーリーも俺も帰還する。今夜はもうネウロイの出現は無いだろう』
坂本『そうだな。あー、そちらに何人か向かわせてもいいが……どうする?』
俺『ふっ……結構だ。シャーリーは俺が連れて帰る』
坂本『そうか。ならしっかり連れて帰ってきてくれ。どこかに駆け落ちでもしないようにな』
エイラ『駆け落ちぃ?なんダ、それ』
宮藤『恋人関係の男女が―――シャーリー『うぉっほん!!!』
俺『……さて、通信を切るぞ』
宮藤『あ、待ってくだ―――ブチッ
俺「おせっかいな奴らだな、ここの連中は」
シャーリー「あはは……」
俺「さて、帰るか」
シャーリー「そ、そうだな」
俺「帰ったら一杯飲んで寝るとするか……そういえばワイルドターキーがあったな……」
シャーリー「あ、あのさ、さっきの台詞の続きは……何て言おうとしたんだ?」
俺「……いつか、また機会があれば、な」
シャーリー「お、おう!待ってる」
―――今宵の空の上での事情は、俺とシャーリーの秘密である。
しかし、俺はあの時シャーリーに何を言おうとしたのだろうか。
ふと考える。
久しく誰とも話したことがなかった時に、笑ったことがなかった時に、屈託もなく接されたら落ちてしまう思春期当たりの心象だろうか。
そうではないだろう、というかそんな軽いものではない。
俺は……寛容なシャーリーに、自身のこと認めてもらおうと思っていたのか。
それとも俺は自身の一なる力をもって、シャーリーを守ろうと思ったのか。
あの言葉は空の中で打ち消され、真相を失ったままだが……。
必ず答えが出る時が来る。
今からその時まで動く心情は、果たして友の心か、興味の心か、はたまた好気の心かわからない。
俺は……その時にシャーリーに……。
受け入れてもらえるのだろうか。
第7話終了
最終更新:2013年02月06日 23:10