司令官室
ミーナ「…双方の報告を纏めると、異常な出力比率に気づいた僕
技術中尉が
イェーガー大尉に警告したところ、イェーガー大尉と口論になったと。これで良いですか?」
僕「はい」
長い長い尋問が終わりそうだ。
大尉はすでに営倉入りしているらしい。今日から2日間と聞いた。
ミーナ「坂本少佐、罰則はどの程度になるかしら?」
坂本「うーむ、そうだな。上官への不服従は本来は軍法会議ものだが
シャーリー自身が、かなり危なっかしい設定をしていたこともあるしなぁ…」
ミーナ「それを考慮して、今日から3日間の禁錮刑で良いかしら」
坂本「初犯だしな。それでいいんじゃないか?」
3日か。
以前の『事故』の時よりもかなり短いな。あれは年数の単位が違ったか。
ミーナ「僕中尉に命じます。あなたは本日より3日間の禁錮刑に処します。
その間は一切の外出を禁じます。また食事等の行動の際には監視員として
マリオ・ビスレッリ技術中尉を配置させます。何か質問は?」
僕「いいえ、ありません」
マリオが監視員か。階級を訊いていなかったけど、あいつ中尉だったのか。
顔に出さずに考える。
ミーナ「これにて尋問を終了します。解散」
僕「了解」
回れ右をして退室しようとすると坂本少佐が僕を呼び止めた。
坂本「僕技術中尉」
僕「…何でしょうか」
坂本「以前の『事故』は仕方が無かったが、今回のお前はそれを未然に防いだんだ。
あまり気にするな」
思わず目を見開いた。またあの『事故』の記憶が鎌首をもたげる。
あの『事故』仕方がなかった?僕が原因で起こしてしまったような物なのに。
湧き起こる吐き気を我慢しつつ一礼をして部屋を去った。
僕中尉が退室した後、しばらくして中佐が口を開いた。
ミーナ「少佐、彼は以前どこの部隊にいたの?」
坂本「ああ、僕技術中尉はここに来る前は、『扶桑海軍航空隊実験航空団』という部隊にいてな…」
「私は死んでもいい。記録を超えられるならどんなこともする」
「バカ言うな!魔導エンジンがお前の魔力に耐えられない!」
「いいから出力側の比率を上げて!私の一世一代の大舞台なのよ!」
「死んだら故郷の母さんが悲しむぞ!それでもいいのかよ!」
「いいから上げてっ!」
「………僕には出来ない。そんなに飛びたければ、僕ではない他の誰かに頼め…」
あの時、張り倒すぐらいの勢いで止めることが出来たら。
エー、タダイマヨリ「研三」ソクドジッケンヲカイシシマス……
「……絶対に、無事で戻ってこい。死んだら許さないからな」
「もちろんよ。じゃあね」
『彼女』の人生はどうなっていたのだろう?
<<こちら研三。ただ今より全開飛行を開始する>>
<<こちら本部、了解した。健闘を祈る>>
<<こちら研三、ただいま全開飛行中。速度はいくつか?>>
<<こちら本部、670km/h付近で頭打ちになっている>>
だけど僕は目を閉じて、耳を塞いで、口を閉じて。
<<うそでしょう!?こっちは全力よ!>>
<<研三、無理はするな。すぐに引き返せ>>
<<嫌よ!これが最後の試験飛行なんですよ!?>>
<<こちら本部。研三、試験飛行を中止。即刻基地へ帰投せよ。
繰り返す。即刻基地へ帰投せよ。これは命令だ>>
<<……こちら研三。ただ今より基地へ帰投する>>
目の前の問題から逃げ出して。
<<…ザザッ…ザーッ……>>
<<研三、どうした?>>
<<…ザーッ、こ……いじょう…ね…あつい…>>
<<こちら本部、研三、応答せよ>>
<<……我…ザザッ…うじゅうふの……>>
<<通信不明瞭!こちら本部!研三、応答せよ!>>
<<ご…なさい……私…ザーッ…れません…>>
「…総員、研三の捜索要請を出せ。救命用具も準備もしろ」
「部長…!」
「残念だが彼女はもう助からないだろう。無駄だと分かっていてもやれ。
…この罪は我々が一生背負うんだ」
<<……じ…なさん……さようなら…ザーッ…>>
<<おい、研三、応答せよ!応答せよ!>>
大切な人を殺しました。
「観測員より入電です。研三は…空中で爆散、消滅しました…」
僕「あぁぁっ!!」
ベットから飛び起きる。
心臓が僕を早鐘のように波打つ。息苦しい。
じっとりとした感触で、寝汗が背中を濡らしているのがわかった。
僕「うっ…気持ち悪…」
よろめきながら立ち上がり、部屋の流し台に胃の中モノのを吐き出した。
僕「今回は全部じゃなかったのか…」
吐瀉物で汚れた口元を拭って呟く。
夢の中で拾い集められた「研三だった何か」を見るのは、かなりくるものがある。
壁に手をつきながら窓に歩みより外を見ると、もうすでに太陽がかなり高いところに上っていた。
あの夢の後ではひどく虚しい空だった。
最終更新:2013年02月07日 13:25