前回までのあらすじ
シャーリー&宮藤「ルッキーニ(ちゃん)が、いない(いません)!」



トラック近辺

シャーリー「あれ~、車にもいないぞー?」

トラックの運転席から中を覗き込んでみるがルッキーニの姿が見えない。どこ行ったんだ?

宮藤「さっきまでお店の椅子に座ってましたよね?」
シャーリー「ん~ルッキーニに残りのお金、全部渡しちゃったしなー」
宮藤「えぇえぇ!?まだ食料買ってないですよ!?」
シャーリー「まぁ、そのうち帰ってくると思うけど…」

宮藤が心配そうに訊いてきたが、いなけりゃどうしようもないな。
でも、いつものようにフラっとどこかへ行ってそのうち戻ってくるだろう。
頭の後ろの辺を掻きながら答える。

宮藤「まだ、後ろにいる中尉さんには訊いていませんでしたっけ?」
シャーリー「ああ、まだ訊いてなかったな」
宮藤「わかりました、ちょっと訊いてきます!」

と言って宮藤が荷台に回りこもうとすると

僕「どうしました?」

と僕中尉が顔を出した。おい、体調は大丈夫なのか?

僕「どうしましたか?」

誰かが話す声で目を覚まし、荷台から顔を出して尋ねる。
運転席の近くでなにやら真剣そうな表情のシャーリーと宮藤が話していた。

シャーリー「おい、体調は大丈夫なのか?」

こちらに向き直ったシャーリーが心配そうに訊いたが

僕「だいぶ楽になったよ。それで2人して困った顔してるけど、どうした?」
宮藤「ルッキーニちゃんを見ませんでしたか?」
シャーリー「店の中で待っていたはずのルッキーニがいないんだ。どこに行ったかわかるか?」

なるほど、そのことで話し込んでいたのか。
宮藤が切実な目で訊くが残念ながら

僕「うーん、ずっと寝てたから多分わからんなぁ」

眠っていた身としてはそう答えざるを得ない。
留守番中に居眠りとか、我ながら無用心だと思う。

宮藤「そうでしたか…でも、急いで探しましょう!」
シャーリー「そうだな。僕中尉には悪いけど、荷台から周りを見てくれないか?」
僕「あいよ、了ー解」

荷台に飛び乗って出口の近くに座る。ここなら探しやすいだろう。
トラックのドアを閉める音がしてしばらくすると
エンジンが震えだして動き始めた。


ローマ市内のどこか


しばらく市内を走った後、トラックが止まった。
荷台の出口から運転席側に顔を出すとシャーリーが歩いてくる。

シャーリー「一旦、このあたりを探そう。僕中尉は近くに警官がいたら
      ルッキーニみたいな子を見かけなかったか聞いてきてくれ。」
僕「了解」

荷台から降りてから、眼鏡を掛けて近くに警察がいないか探す。
ジェラートの屋台から少し離れたあたりに「POLIZIA」と書かれた車両と
軍服に近い制服を着込んだ警察官を見つけた。多分あれだろう。
近づいて語彙力の足らないロマーニャ語で話しかける。

僕「こんにちは」
警1「よう、どうした?」

ロマーニャらしいフランクな応対だ。ちょっと気がひけるな。

僕「ちょっと迷子を探しているんですが」
警1「迷子?どんな特徴だ?」
僕「えーと、年齢が12、13ぐらいで背丈は僕の胸の辺、髪は黒のツインテールで
  目の色が緑色の女の子です」

目の前にいる警官に記憶を探ってルッキーニ少尉の特徴を身振り手振りも交えて説明すると
最初の対応とは打って変わって真面目にメモを取り始めた。

警1「おっと、お1つ忘れてた。その子の名前は何だ?」
僕「フランチェスカ・ルッキーニ、です」
警1「OK、確認するぞ。年齢は12、13歳ぐらい、背丈はお前の胸の辺、髪は黒のツインテールで
  目の色が緑色の女の子で名前がフランチェスカ・ルッキーニだな?」
僕「はい」
警1「了解した。おいジュゼッペ、近くでこーゆー女の子を見なかったか聞いてくれ」

後ろにいるジュゼッペと呼ばれた警官にメモを渡す。
車両に乗り込んで無線機器を取り上げ、ロマーニャ語でしゃべり始めた。

警1「そういやお前、どこから来たんだ?」
僕「えっと、扶桑からですが」

突然、警官にブリタニア語で話しかけられて慌てて言語を切り替える。
最初からそっちで話しときゃよかったか。

警1「おお、ここらへんじゃ見ないような顔つきだったもんで気になったのさ。
   扶桑と言やぁ、ソードでネウロイをぶった斬るとんでも無いウィッチがいると聞いたが
   向こうはそれがスタンダードなのかい?」
僕「あー、普通に銃持って戦う人が大半ですよ。刀振り回してドンパチするのは少数です」

一撃必殺に限りなく近いとは言えど、その身を虚空に晒して斬りかかるわけだから
危険であることには間違いないか。

警1「なんだ、そうなのか。
   それでもすげえよなぁ、ソードだけで奴らに立ち向かうとか信じらんねぇよ」
僕「それに値する何かがあるんでしょう。ウィッチじゃない僕はわかりませんが」

警官が感心したように呟く。
その勇ましい姿に惚れてストライカーの技官になり
巡り巡ってローマで迷子探しとは、世の中変わったこともあるものだ。

シャーリー「お、僕中尉~ルッキーニは見つかったか?」

警官と話していると名前を呼ばれたので振り返ると、シャーリーがこちらに駆け寄ってきた。
少尉は見つかったのだろうか?こちらも手を振って答えた。


ちょっと離れたところ


シャーリー「あれ、僕中尉までどこに行ったんだ?」

近くに交番が無かったのかな。
そろそろ宮藤も疲れてきたようだし、休憩しようと思ったんだけど。
宮藤に僕中尉を見なかったか訊いてみる。

シャーリー「宮藤ー、僕中尉を見なかったか?」
宮藤「あ!向こう側の広場にある屋台から少し離れたところに
   それっぽい人が見えますよ!」

宮藤が屋台のある方を指差す。
なるほど、確かに丸眼鏡を掛けた僕中尉が警官らしい人影と何やら話し込んでいる姿が見えた。

シャーリー「そろそろ休憩したいから、僕中尉を呼んでくるよ」
宮藤「わかりました。私はここで待ってますね」

そう言ってから広場のある方向へ走り出す。多めの人混みをかき分けて僕中尉に近づいた。

シャーリー「お、僕中尉~ルッキーニは見つかったか?」

手を振って僕中尉に話しかける。少し難しい顔をして警官らしき人と話し込んでいた。

僕「今近くの警察に無線で確認しているところだってさ」
シャーリー「そうか…まだ時間は掛かりそうか?」
警2「巡査、『フランチェスカ・ルッキーニ』ちゃんの外観に該当する迷子はいないようです」

ルッキーニの行方を訊いてみると
僕中尉が答える前に無線を弄っていた警官が答えた。

警1「…だそうだ。力になれなくてすまない。
   こちらも情報があり次第そちらに伝える。取り敢えずデートを楽しんでくれ」

警官の一言で顔が瞬間的に熱くなる。

シャーリー「でででデートじゃないってば!」
僕「いやいや、ご冗談を」

必死に否定するあたしの横で、ヘタな誤解を生まないようする為か
僕中尉がやんわりと否定する。 それを聞いた警官は意外そうな顔をしたが

警1「そうか!お似合いだったんだけどなぁ。
   本官は迷子探しに勤しんできます。ほれ、ジュゼッペ行くぞ」

と快活に言い、パトロールカーに乗り込んで走り去っていった。
警官が走り去った後、僕中尉とあたしはその場で立ち尽くす。
少しだけ少なくなった人混みがだんだんと戻ってきた。

僕「他人から見たらデートに見えるのか…ふぅん」

警官が走り去った方向を見つめながら僕中尉が零した。

僕「シャーリー、そろそろもど…」
シャーリー「よっ!」

何故か1人で納得している僕中尉を困らせてやろうと思い
後ろから抱きついてみる。

僕「わわっ、何すんだよ…」
シャーリー「いーじゃん、いーじゃん。遠慮するなって」
鍛えてある背中に体重を預け、腕の力を強めて訊いてみる。

シャーリー「…なぁ、あたしたちってそんな風に見られるのかな…」

驚いたのか中尉の動きが止まった。言葉を選んでいるのかしばらく黙った後

僕「さぁ?でもそんなふうに見られても僕はいいと思うよ」
シャーリー「…なんで?」
僕「秘密だ。…で、いつまでこうしてるんだ?」

意外な答えが返ってきた。
更に自分でも意地の悪いと思う質問をしてみると、肝心なところではぐらかされる。

シャーリー「…よしっ、これで終わりっと」

名残惜しいけど、中尉に絡めた腕をほどく。
あたしに兄姉はいなかったけど、多分いたらこんな感じなんだろう。

シャーリー「そろそろ行こうか」
僕「そうだね」

あたしが右手を差し出すと中尉が左手で握り返した。
また顔が熱くなったような気がしたが、宮藤が待っている方へ並んで歩いた。


街角のレストラン


シャーリー「あ~、もうぜんぜん見つかんねー」

僕から見て右側に座るシャーリーが
椅子の前脚が浮くぐらい、背もたれに体重を掛けながら呻いた。
頼んだラズベリー味のジェラートを口に運ぶ。

宮藤「色んな人に聞いてみたけどさっぱりで、もうヘトヘトです」

同じようにここで頼んだカシスのチーズケーキをフォークに刺したまま、宮藤が残念そうに呟いた。
僕は先程から黙々とジェラートを口に運ぶ。美味い。
『こいつが黙って食べるときはそれが美味い証拠だ』って前にいた部隊で
言われたけど、誰が言ったんだっけ?左側に座る宮藤が落胆しながらケーキを食べたが

宮藤「おいしー!シャーリーさん、僕中尉さん、これすっごく美味しいですよ!」

目を輝かせて勧めてきた。2人の様子を見ながらジェラートを完食してメニュー表を取り寄せて選ぶ。
次はどれにしようか。
宮藤から差し出されたケーキをしぶしぶ食べたシャーリーの目が見開かれた。

シャーリー「おおー!?すっげー旨いなこれ!」
宮藤「でしょー?僕中尉さんも食べませんか?」

どうやら凄く高評価らしい。

僕「じゃあ、そいつを頼んでみるか」

メニュー表を机に置くと、ちょうど良くウエイターが来た。

シャーリー「あ、このケーキもう1つ、いや2つ!」
僕「僕も1つ」
宮藤「お願いします!」

3人で口々に頼んだが

「カシスのレアチーズケーキを3つですね。少々お待ちください」

飄々としながらも的確な注文を取って去った。
早めにくるといいなと思いつつ脚を組んで、背もたれに体重を預ける。

宮藤「そういえば、僕中尉って甘いもの好きなんですね」

宮藤がこちらを覗き込むようにして尋ねてきた。

僕「いや、特に気にしたことは無かったんだけどな…」
宮藤「『いつもポケットに飴の缶が入ってる』ってマリオ中尉さんが言ってましたよ」

またアイツか。頼むから変なこと言いふらすなよ…
ジェラートと一緒に頼んだレモネードを一口飲む。

宮藤「それに最近の僕中尉さんは、シャーリーさんとよく一緒にいるって…」
シャーリー「おいおいおい、誰が言ったよそんなこと!」

シャーリーが慌てたように宮藤の方へ身を乗り出した。予想通りかよ。
溜息を付いて組んだ脚を解き、レモネードの入ったカップを机に置く。

僕「そんなに頻繁に会って話してるわけじゃないよ。
  アイツは話を盛るから話半分で聞いたほうがいいよ」
シャーリー「そ、そうなんだよね…そんなに話せないんだよね…」
宮藤「そうでしたか…」

僕の説明に何故が隣でシャーリーが溜息をつく。…何故だ?

宮藤「あと、禁錮刑が終わる直前に…」
シャーリー「わーっ、もうそれ以上言うな!恥ずかしいから!あれは事故だから!」

シャーリーがさっきよりも身を乗り出して宮藤の口を塞ぐ。
マリオのやつどんだけ言いふらしてんだよ。

宮藤「僕中尉さん、事故って何があったんですか!?」
僕「事故も何にも、ただの面会だよ」

宮藤がこちらに矛先を向けてきたが、簡単に話せるようなことじゃない。
顔中の筋肉を総動員して表情を変えないように答える。中佐の耳に入ったらどうなることやら。
確実にクビが飛ぶだろうな。

宮藤「そうですか…でも、」
「カシスのレアチーズケーキをお持ちしました」
僕「あ、ありがとうございます」

宮藤が更に何かを言い出そうとするのと同じぐらいに
ウエイターが頼んでいたケーキを持ってきた。ウエイターさん、グッジョブ。
色んな感謝を込めてチップを多めに渡した。

一旦会話を中断して、配られたケーキを3人で食べる。
あ、ほんのり洋酒が効いてて美味いな。
さっきのジェラートも良かったけど、こちらもこちらで良い。
思わずケーキを食べる速度が上がる。

宮藤「…こちらに向かってきた2人を見てて思ったんですけど、
   シャーリーさんと僕中尉さんって兄妹みたいだなぁって」

宮藤の一言で僕とシャーリーのケーキを食べる手が止まった。
シャーリーが妹に見えたと?まぁ、わからんでもないような気はする。

宮藤「僕中尉さんって、兄弟とかいらっしゃるんですか?」
僕「ん?ああ、シャーリーみたいな妹と宮藤と同じ歳の弟が1人づついるな」

2人の顔を思い出して答えた。
もっとも、『事故』の一件で家から勘当されてから1度も会っていないから
多少変わっているかもしれないが。

シャーリー「なるほどなぁ、だからかぁ…」

1人納得したように呟いて、何を考えたのか1人で赤面する。
…今日は何か変だな。なんでだろう?
首をしばらく傾げて考えてみたがわからなかった。


『迎撃』へ続く
最終更新:2013年02月07日 13:28