前回までのあらすじ
僕「やべぇ、勝てる気がしねぇ」


ゲーム終了後


シャーリー「生きてるか~?」
僕「生きてるよ…」

非金属素材のシートで項垂れていると、シャーリーに生存確認をされた。
有り体に言えば、惨敗した。

シャーリー「そんなに落ち込むなって。どうせゲームなんだし」
僕「僕は球技に向いていないみたいだ…」

ストライクを連発するシャーリーに対し、僕はガータとファウルのオンパレードだった。
スコアなんてもう見たくもない。むしろ見なくとも結果がわかる。

シャーリー「…まさか、僕中尉って運動苦手?」
僕「これでも柔道の黒帯なんだけどな…」

挙句、運動音痴かと本気で心配された。やはりボウリングと柔道は勝手が違うのか?
首を捻って考えてみたが、結局分からなかった。

シャーリー「たまにはこういう事だってあるさ…でも約束は守ってもらうぞー」
僕「はい、私めに何なりとお申し付け下さい、大尉殿」
シャーリー「いや、そこまで謙らなくていいから」

今の気分なら、何を頼まれても文句も言わずに従える自信がある。
自慢気に言うことでもないか。

シャーリー「そうだな~、あたし達が基地に帰るまでのボディガードで良いか?」
僕「それっていつもの事じゃないの?」
シャーリー「…何か問題でも?」

賭けに勝ったのはシャーリーだ。慌てて口をつぐむ。

僕「いいえ、全く有りません大尉殿」
シャーリー「よっし、それじゃあしっかり頼むぜ」

何だかんだでいつもと変わらないお願いだ。
変なことを頼まれないで良かったと、ホッと胸を撫で下ろす。
手短に後片付けて、出入り口に向かった。 出入り口のやけに重いドアを押し開ける。

僕「どうぞ」
シャーリー「どうも」

先にシャーリーを通してドアを閉める。ドアが閉まるまで待っていてくれた。
駐車場までの階段を並んで降りていると、左隣のシャーリーがよろめいた。
咄嗟に腕を回して体を支える。

僕「おっと、大丈夫か?」
シャーリー「ゴメン。ちょっとボーリングで張り切りすぎた…」

支えた拍子にシャーリーの顔が正面に来て、息遣いが分かるぐらいに近づく。
街灯の灯りと夜の闇で、いつにも増して顔の陰影が強く浮き出ている。
吸い込まれてしまいそうな空色の目に見蕩れていると

シャーリー「…いつまでこうしているんだ?」

僕の腕の中で、もぞもぞと抗議するように動いた。慌てて腕を離す。
ウィッチは一般人よりも美女美男が多いと聞くが、改めて見てみると
シャーリーもご多分に漏れず美人なのだなとしみじみ思う。

僕「ああ、すまん…いや、どこの国もウィッチは美人だなって思ってさ」
シャーリー「ほ、褒めても何もでてこないぞっ!」

率直な感想を言うと、顔を赤らめてそっぽを向いた。
意外にも言われ慣れていないのだろうか。

シャーリー「本気にしちゃうじゃんか…」
僕「ん?」
シャーリー「えっ、あっ、今のは聞かなかったことにしてくれよ!」

聞き直したら、赤らめた顔がますます赤くなった。
本当は一字一句正確に聞き取ったが、少しからかってみる。

僕「…実は丸聞こえだったよ、うん」
シャーリー「じょ、冗談だ、冗談だってば!」

聞こえないはずの独り言だったのか、慌てているのが手に取るように分かった。
その様子が少し可笑しくて頬が緩みそうになる。
緩みそうになった顔の筋肉を引き締めて、更に追い打ちを掛ける事にした。

僕「え?聞いたらマズい事だったの?」
シャーリー「いや、だから、そういう訳じゃなくって!」
僕「ふぅん、だったら何でそんなに慌てているんだ?」
シャーリー「その本音がつい……あっ!」

自分で言った事に気付いたのか、僕の胸を叩いてきた。
からかうのもこの辺にしよう。橙がかった茶髪をクシャッと撫でる。

僕「冗談だよ、僕は何にも聞いちゃいない」
シャーリー「ホントに?」
僕「本当だって。専属の整備士を疑っていたら空も飛べないよ?」
シャーリー「…信じてるからな」

さっきの事もあってか、少し潤んだ目で僕を恨めしそうに見た。
普段は大人びた印象があっても、所々は歳相応だと思う。
懐中時計を見てみると、帰るにはちょうど良い時間だった。

僕「…さて。一騒ぎして落ち着いてきたから、そろそろ帰ろうか。帰りも僕の運転で良いかい?」
シャーリー「うん、任せたよ」

シャーリーからWLAの鍵を受け取り、鍵を差し込んでキックスタータを蹴り飛ばす。
一発でエンジンが掛かった。後部シートにシャーリーを乗せ、基地へ向けて夜の道を走りだした。

第3話『思考』へ続く
最終更新:2013年02月07日 13:35