警報をBGMにウィッチ達はそれぞれの格納庫へ走る。
途中で陸戦ウィッチと空戦ウィッチで道が分かれ、私はハンガーに飛び込んだ。

私「イル(Il-2の愛称)、出せる?」

整備員A「いけますよ。昨日のうちの準備しておいた甲斐がありました」

射出機に駆け上がって、オラーシャから共にやってきた整備員に声をかけると、心強い台詞が返ってきた。

私「37mmは?」

整備員B「そっちもばっちりですよぉ。問題なくいつも通りネウロイをぶっ飛ばせます」

私「うん。上出来」

武装について尋ねれば、また別の整備員が、NS-37(オラーシャの開発した37mm機関砲)をぽんぽんと叩いて答える。
昨日到着したばかりだが、問題なく準備はなされていた。

私「…………んっ」

戦闘機型のものに比べて遥かに巨大なストライカーユニットに足を差し込むと、エンジンに魔力を流し込みアイドリングを開始する。
同時に、小さく息と声が漏れ、整備員達が一瞬だけ目を逸らした気もした。

整備員A「あの……中尉」

私「うん?」

整備員A「そのような恰好でいいのでしょうか?」

指摘された私の恰好は、ズボンと、普段軍服の上着の下に着ていた青色のワイシャツ一枚。
スクランブル発進とはいえ、マルセイユも上着だけは引っ掛けている中、目立つと言えば目立った。

私「カールスラントの冬服になりそうなオラーシャの夏服を、バカ正直に着てられない」

整備員A「は、すみませんでした」

言われると、整備員は軽く礼をして退く。
特に私は気にした様子もなく、淡々と装備のチェックを続けた。

私「うん、いける」

頷き、呟くとすぐ横に用意された、NS-37を手に持ち、暖気の済んだエンジンを本格的に回転させる。
私を中心に、青色の魔法陣が広がる。

私「……ふぅ」

今まで何度何回と、時には一日に三回も行った出撃。
だけど、アフリカへ転属になって初めての出撃。目を閉じ、一度深く息を吸って、吐く。

私「……出撃する!」

目を見開くと同時に、ストライカーを発進させる。
整備が十分とはとても言えない滑走路から、砂塵を巻き上げながら、私とIl-2が飛び立った。





ケイ『状況を確認するわよ?』

地上部隊に先行して目的地へ向かうストームウィッチーズ。
部隊長であるケイの声がインカム越しに流れてくる。

ケイ『要請があったのはソルム近郊の前線防衛基地。戦車型も飛行型も揃ってるわ』

マルセイユ『そいつは豪勢だ』

ケイ『正直遠慮したいものだけれどね』

マルセイユ『マナーの初歩の初歩すら知らないネウロイには無茶な注文だな』

ケイ『わかってる。だからこそ、私たちもそれに合わせた歓迎をしなくちゃならないのよ』

余裕の現れか、部隊の緊張を解そうとしているのか、マルセイユは軽口を飛ばした。
やれやれと肩をすくめてみせてから、ケイは声に一定の緊張を持たせる。

ケイ『作戦を伝えるわよ。マルセイユとライーサ、あと真美は先行して飛行型をできる限り潰して』

マルセイユ『任せろ』

ライーサ『了解』

真美『わかりました!』

三人からの返答を確認し、続ける。

ケイ『三人は大至急向かって。こっちは私のIl-2の足の速さに合わせるから、相手の航空戦力をだいぶ潰した頃につくはずよ』

マルセイユ『なるほど、そういうことか』

なにをケイが考えているか、理解したらしきマルセイユはふっと笑って、エンジンを唸らせる。

マルセイユ『そうとわかればさっさと行くぞ! ついてこい!』

ライーサ『おーけー、ティナ!』

真美『あ、はいっ!』

編隊の先頭に出たと思ったら、一気に速度をあげるマルセイユ。
ライーサは危なげなく、真美はちょっと慌ててその背を追いかけていく。瞬く間に三人は飛んでいった。

ケイ『まったくせっかちなんだから……』

ため息をつくケイだが、その表情には笑みがあった。

私「のびのびと、やってるね。アフリカの星は」

すっと、私はケイのすぐ側へ身を寄せた。

ケイ「のびのび、って言うより自由気ままにって感じかしらね」

二人は、仁王立ちし大笑いするマルセイユを脳裏に思い浮かべ、くすりと笑った。

ケイ「逃げられないとこまできてからであれだけど、いける?」

私「問題ない」

身長の二倍はあろうかというNS-37を掲げて、にやりと笑って見せる。

ケイ「マルセイユ達がおぜん立てしてくれてるけど、油断しちゃだめよ?」

私「大戦初期の、護衛機なしでの出撃に比べたら、先払いがいるなんて贅沢なもの。平気」

付き合いは長くないが、比較的表情変化に乏しい私が口元に不敵な笑みを浮かべているのを見て、ケイもにやりと笑った。

ケイ「優先撃破目標は、基地の全面に来てるネウロイを片っ端に」

私「了解」

ケイ「期待してるわよ。Il-2の……ううん、対地攻撃エースの腕前を、ね」

私「……」

表情は自信に満ちた笑みのまま、ぐっと親指を立てて答えた。
言葉はなくとも、雄弁に語っている。

ケイ「おっ、絵になるわねー。いただきっ!」

私「なっ!?」

さっと構えられたカメラがぱしゃり、と音を立てる。
驚きの声を私が上げるよりも早く、その姿はフレームに収められていた。

私「い、いきなりなにを!?」

ケイ「なにって、写真でしょ?」

私「聞いてない!」

普段の様子はどこへやら、必死に抗議する私だが、ケイはにたにたと意地の悪い笑みを顔に張り付けて、まるで見せつけるようにぷらぷらとカメラを揺らす。

ケイ「だって、言ったらあんないい絵を撮らせてくれないでしょ?」

私「だからっていきなりはない!」

ケイ「ふふーん、もう撮っちゃったもの勝ちよ。私はこれでも報道写真家なのよ?」

愉快そうに笑いながら、ケイは華麗にローリングして私から離れて高度を取ってしまった。

私「むぅ……納得いかない」

ケイ「あ、その表情もいただき」

私「なっ!?」

ちょっとケイが自分から離れたので気を抜いたか、正面に回り込んできた彼女に、また写真を撮られてしまった。

ケイ「いやー、今回のはさっきのとのギャップがいいわー」

私「くっ……ゆ、許さない!」

ケイを追いかける私だが、襲撃脚のIl-2では戦闘脚の三式に追いつけるわけもなく、いいように逃げられてしまう。

ケイ「ふふっ、まぁまぁ。私の写真って、北アフリカ連合軍の士気高揚にも役立ってるわけだし、いいじゃない?」

私「そんなことに使わせるか! ネガを渡せっ!」

ケイ「そんなことするわけないでしょ。それより、そろそろ戦場よ準備しなさい」

二枚目の写真に収められたのは、ぼそりと呟いた瞬間のちょっと俯き気味の表情。
北欧出身であるがゆえの白い肌と銀色の髪のおかげで、恥ずかしさからほんのりと刺している頬の赤みがとてもよく引き立っていた。

ケイ「ごめん、無理。怒りはネウロイにぶつけちゃってちょうだい」

私「……っ!」

今は、怒りと羞恥でそれ以上に赤いが。





マルセイユ「はっ!」

撃ちだされた銃弾が……いや、銃弾に真っ直ぐとネウロイが突っ込んだ。
見事コアを破壊され、白き破片へと変わって消える。
空ではストームウィッチーズの参戦により一気に有利な状況が生み出されていたが、地上では苦しい戦いが繰り広げられていた。

兵士A「くっそ、撃てぇ!」

兵士B「死ねえええ!」

兵士C「ウィッチの前で情けない姿を見せられるかぁ!」

砲が火を噴き、少しでもネウロイを近づけまいと男たちも奮戦する。
ウィッチの登場で士気は上がり、頭上の心配もほとんどなくなった。しかし、押し寄せる地上のネウロイはなかなか減らない。

コッホ「ええい、いまいましい。なんたって俺さんとこに来やがるんだネウロイどもめ!」

副官「なんと言おうと敵は来てしまったんです中佐。どうにかしないことには私たち全員あの世行きですよ」

コッホ「んなこたぁわかってんだよ!」

イライラした様子で机をこぶしで叩くのは、この前線基地守備隊の指揮官コッホ中佐だ。
怒ったかと思うと、今度はすぐに頭を掻きはじめる。

コッホ「ロマーニャの対戦車砲は女にしかきかねぇし、天下のカールスラントの対戦車砲もドアノッカーよかましだがおぼっちゃんなPak38……
陸軍どもめ、俺さんの降下猟兵連隊が空軍所属だからか? こちとら最前線で命張ってんだ、配備が追いつかねぇとか言ってねぇで88の一個中隊分くらいさっさと用意しとけってんだ!」

副官「落ち着いてください中佐。兵は奮闘しています。中佐の判断で早めにブロークンアローを発したおかげで、航空ウィッチも着きました。もうすぐ陸戦ウィッチも……」

コッホ「おまえさん、バカ言ってんじゃねぇよ。楽天的観測で戦う軍隊の運命なんざ、敗北以外にねぇんだよ!」

副官「なら、諦めると言うのですか!」

逆に、コッホへ副官が鋭い視線で睨んだ。今にも腰の拳銃を抜きそうな勢いだ。
だが、そんな視線を受けても、コッホは全く同時ないばかりか、余裕の表情でたばこを銜え、ゆったりと火をつける。
深く煙を吸い吐き出すと、ようやく副官をまっすぐ見返す。

コッホ「俺さんがいつ諦めるって言った?」

にやり、と悪そうな表情を浮かべる。

コッホ「おまえさんも知ってるだろ。俺さんの生への執着を、よ。まあ、大丈夫だろ」

副官「……楽観的観測で戦うのは、敗北を招くのではなかったのですか?」

コッホ「ん? 何言ってんだ?」

たばこを落とし軍靴で踏みつけ火を消すと、指揮所から外へつながる扉へと足を進める。

コッホ「こいつぁな、俺さんの『勘』だ。観測なんかと一緒にすんじゃねぇよ」

そのまま扉を開き、外へ出……ようとして、振り返る。

コッホ「おい、なにやってんだ?」

副官「はっ?」

予想外の返答に毒気を抜かれていた副官が、はっとして聞き返す。

コッホ「さっさと行くぞ、くそったれな戦場によ」





兵士C「うわあっ!」

兵士A「くそっ、また砲がやられた!」

基地の防衛陣地は徐々に、蝕まれるように削られ、人も装備も失われていく。
必死で応戦するものの、88に比して貫通力に劣る口径の小さい対戦車砲では、正面の固い装甲を貫けず中々倒せないのだ。

兵士B「もう最終防衛陣地だぞ……」

コッホ「そうだな。もう後はねぇ」

兵士B「ちゅ、中佐!?」

コッホ「おう、俺さんだ」

兵士Bが独り言に返事があったことに驚き声をあげる。隣に立っていたのは指揮官のコッホで双眼鏡をのぞいて戦場を見渡していた。

双眼鏡を下すと、コッホは兵士Bに尋ねる。

コッホ「被害状況はどうだ?」

兵士B「はっ、ウィッチーズの到着でロマーニャ軍を中心に士気が上がっていますが、砲の過半が既に失われています」

コッホ「はっ、そいつは面倒だ」

絶望的とも言える言葉だったはずなのに、コッホは軽く肩を竦めるだけ。

兵士B「なにか、策があるのですか?」

コッホ「いや、特には」

兵士B「そう……ですか」

コッホ「なぁに、心配すんな!」

あまりにも動じない姿に逆転の手を指揮官が持っていると思ったのだが、そうでないと知り、肩を落とした。
それをわかっているのだが、兵士Bの背中をばんばんと叩き、コッホは余裕の様子を崩さない。

コッホ「なんとかなるさ。なんとか、な」

同時に、彼らを突風が襲った。
これを境に、戦場の風向きが変わることになる。





私「嫌なにおいがぷんぷんする……」

基地を確認すると、私は一気に高度を下げ、地を這うような低空へ移動した。

私「ターゲットは……無数」

その低さは、基地の上空すぐ。

私「掃討を……開始する!」

基地を飛び越えた瞬間、37mm機関砲が火を噴いた。
装甲が薄目の上部を貫かれた戦車型ネウロイが、爆散する。

私「Убитый(撃破)……」

そのままネウロイ上空を通過しながら、次々と弾丸を撃ち込んでいく。
時々脅威に気づいたネウロイが私へ向かって攻撃をしてくるが、鈍重とは言え時速数百kmの彼女を捉えることは容易ではない。
例え、捉えたとしても、

私「そんなんじゃ、私は止まらない!」

固いシールドが容易にビームを防ぎ、進路を変えることすらしない。
重装甲を誇り、シールド出力が高いIl-2であるがゆえの芸当であった。

私「まずは一回目……」

ネウロイの上を通りすぎると、そのまま再び襲い掛からんと旋回を行う。
その姿は、まさに襲撃機――シュトルモヴィク――と呼ぶにふさわしいものだった。





コッホ「やれやれ……」

突然の強風に頭から飛んでしまった軍帽をのんびりと拾い上げてほこりを払う。

コッホ「上品さにかけるお嬢さんだ」

帽子をしっかりとかぶり直す。

兵士A「対地攻撃ウィッチだ!」

兵士C「いつの間に配属されてたんだ!?」

もうかなり遠くまで行ってしまったが、先ほどの風を引き起こしたウィッチの、ちらりと見えた銀色の髪と深い青色のシャツをよく覚えていた。

コッホ「だが、タイミングは素晴らしい。……さて、俺さんもやるか。おいっ!」

副官「はっ!」

コッホ「全軍に通達しろ、ウィッチの嬢ちゃんを一人だけで戦わせるな、ってな!」

副官「了解いたしました!」

聞くやいなや副官は走りだし、コッホも声を張り上げた。

コッホ「さーって気張れ野郎ども! ここが正念場だ! 普段ゆるーくやってた分ため込んだパワーを全力で使え!
戦えないとかほざく女々しい奴がいたら、そいつの玉ぁ砲に詰めてネウロイにぶち込んでやれ! そんな奴はどうせ使うこたぁねぇんだからよ!!」

兵士達「Jawohl Oberstleutnant(了解中佐殿)!」

男たちも奮い立ち、残った砲でより一層激しい砲撃を加える。





マルセイユ『ようやく来たな!』

ライーサ『ナイスショット!』

真美『すごいです!』

インカム越しに、先行して航空型ネウロイを叩いていた三人から称賛の言葉がかかる。

マルセイユ『やるじゃないか、基地では中々の歓声だったぞ?』

私『みんなが、空の敵を潰しておいてくれたおかげ。難しいことじゃない』

マルセイユ『そういう余裕な台詞も出るとはな、まだ戦闘中だぞ?』

私『それは、そっちも同じ』

マルセイユ『いいんだよ、私は。アフリカの星だからな』

私『へんな理屈』

言いつつも、私の声には笑いが乗っていた。

ケイ『はいはいどっちも戦闘に集中する。飛行型はまだ残ってるわよ。絶対に私の方へは行かせないで』

マルセイユ『任せろ』

ケイ『私はそのまま地上を叩いて。陸戦ウィッチ隊の取り分は気にしなくていいから』

私『わかった』

ケイ『ここが踏ん張りどころよ、踏ん張りなさい!』

全員『了解』

そこで通信を切り上げ、それぞれの戦場に戻る。
見せつけるように地上付近を飛び、空から37mmで目についたものから潰していく私に、ネウロイ達は基地へと向かう突進力を削ぐ。
さらにその上空ではマルセイユ、ライーサ、真美の三人が飛行型をあっという間に破壊する。増援も飛んでくるが、三人の前には焼け石に水だ。

私「さて、二往復目だ」

再び基地の上空までネウロイを潰しながら飛んできて、また旋回。
徹底的にネウロイを潰しにかかろうと再度の突入を図ろうとしていた私だったが、なにやら基地全面でネウロイが撃破される数が急激に増加し始めた。

私(ん?)

不思議に思い、においにいつも以上に注意を傾けった。
すんすんと鼻で息を吸う。

私「あれは……マイルズ達のにおい」

もう既に覚えたマイルズら陸戦ウィッチ隊のにおいだった。
それと同時に、通信が入る。

マイルズ『ブリタニア王国陸軍第4戦車旅団C中隊マイルズ少佐以下12両! ただいま到着しました!!』

マリリン『忘れちゃいけない!』

アビゲイル『パットンガールズもただいま参上!』

基地では、歓声があがる。

私『ようやく登場?』

マイルズ『これでも急いだんですけどね』

パトリシア『アフリカで初陣のウィッチへのサービス……かな?』

私『ふふっ』

マイルズ『さて、もう終わりにしましょう!』

パトリシア『おーけー!』

私『了解』

陸と空のウィッチが地上の敵を掃除しにかかる。
私の登場で頭を押さえられる形になったネウロイは、陸戦ウィッチ隊の登場により完全に跳ね返され、押し返され始めていく。

兵士C「ネウロイが退いてくぞ!」

兵士A「いよっしゃああああ!!」

兵士B「遠慮することない、届く範囲のケツにぶちこんでやれ!」

さすがのネウロイもたまらず撤退に移った。

マイルズ「深追いは無用!」

陸戦ウィッチ隊も足を止める。

ケイ『よし、敵の残存兵力がないか確認を――』

私『その必要はない』

ケイ『えっ?』

撤退と見せかけて、伏兵を残していることを考え、視界のいい砂漠であるがゆえに上空から確認するよう促そうとしたケイだったが、私の言葉に気の抜けた声を漏らしてしまった。

私『周囲から、ネウロイのにおいはもうしない』

風に混じったにおいを嗅ぎ分けた私が自信満々に言い切る。

ケイ『なるほど……ね。いいわ、信じる』

ケイは私の持つ固有魔法。絶対嗅覚のことに思い立った。
他のみなは、インカム越しの声の調子だけでも、ケイが笑みを浮かべているだろうことがわかる。

ケイ『問題なし。ストームウィッチーズ任務完了。帰投する!』

真美『了解です』

ライーサ『了解』

私『了解した』

マルセイユ『ああわかった……っとそうだ、私』

ケイの宣言に次々と返事をしていく返のだが、マルセイユが私に語りかける。

私『うん? 何?』

マルセイユ『別に降りなくていいから、お前はちょっと基地の方に顔出してやれ』

私『……なんで?』

マルセイユ『だってなぁ、多分あちらさんはお前に会いたがってるぞ? いいから、サービスだと思って行ってこい』

私『柄じゃない』

ケイ『いいんじゃない。ちょっと行ってきたら』

私『ケイまで……』

真美『顔だすだけだから、いいんじゃないでしょうか?』

ライーサ『減るものじゃないし、行っちゃえば?』

私『…………本当に、行くだけなら』

さらに真美やライーサにも言われ、私は仕方なく帰還へ向かう編隊を離れ、基地へと降下していく。

兵士A「おい、あれを見ろ!」

兵士B「あれは、さっきの地上攻撃ウィッチじゃないか!」

兵士C「ありがとよ、助かったぜー!」

高度を下げ、ゆっくりと基地上空を飛ぶ私に、基地の兵士達から歓声が飛ぶ。
帽子を手に振ったり、指笛を吹いたりと大騒ぎだ。

兵士A「あのストライカーの赤い星……オラーシャのウィッチか!!」

兵士C「なんだって! オラーシャからアフリカに来たのか?」

兵士B「ヒュー、まさに救いの女神様ってやつじゃないか!」

兵士A「そうだ、オラーシャからシュトルモヴィクが俺たちを助けに来てくれたんだ!」

兵士C「Sturmovik!」

兵士A「Sturmovik!」

兵士B「Sturmovik!」

いつしか兵士達の間から、シュトルモヴィクコールが湧き上がっていた。

私「あ……」

あんまりに突然なので、どうすればわからず小さく手を私が振ると、ますます歓声は大きくなった。





コッホ「シュトルモヴィク……ねぇ」

大騒ぎの兵達から少し離れた場所、崩れた瓦礫の上に腰かけたコッホは一戦後のたばこを楽しんでいた。

コッホ「まあ、なかなかやるようだし、帽子のクリーニング代はチャラにしてやるか」

言いつつも、口元には満足そうな笑みが浮かべられていて、その視線はじっと私を見つめていた。
青いワイシャツはとても目立つが、それ以上にオラーシャ出身なのだろう雪国出身の白さ、頭の上を通り過ぎていく時に見えたのと同じ、陽光を反射し輝いている銀髪が際立った。

コッホ「しっかし、あの黒のリボンはここじゃ熱くならねぇのか……?」

銀髪を首の後ろあたりで一つにまとめているリボンに、どうでもいい感想を漏らし、ぎゅっとたばこをそこらへんに押し付けて火を消す。

コッホ「まったく、あんな嬢ちゃんみたいな女の子に頼らなきゃならんとは、人類も悲しいもんだ」

ふぅ、と一息つき、よっこらせと立ち上がる。

コッホ「それでも戦場は区別をしない。ある意味平等の極致か」

ふと私のストライカーに描かれたパーソナルマークが見えた。
赤い星を背景にして、ナイフを銜えたボルゾイの絵。

コッホ「ま、アフリカに来た以上は一蓮托生だ。よろしく頼むぜ、砂漠のボルゾイさんよ……」

騒ぐ兵達にも、向けた相手にも、誰にも気づかれることなく、一人敬礼をしていた。




最終更新:2013年02月07日 14:06