――エイラとサーニャが帰還した、その日の夜――
私「……うん、9時に…。基地裏に来て、と。ええ。……まあね。あの様子じゃ、まだまだヘタレのまんまみたいだし。
……ええ、エイラちゃんに。…そう、サーニャちゃんのことは秘密にね。頼んだわよ、エーリカちゃん。
……あ、そうだ、せっかくだし…ええ、アレを……」
私「……ええ。うん、お疲れ様。ところで……ええ。夜に…基地裏に。うん、9時ぐらいかな。
……え? ああ、いや、何でもないのよ。ちょっと用があるだけ。…うん、9時にね。ええ、ありがとう、サーニャちゃん」
私「……これでよし、と……」
――廊下――
シャーリー「……ん? よう、エイラ。どうしたんだ?」
エイラ「あ、シャーリー。私を知らないか?」
シャーリー「私? さぁ……さっき研究室から出て、どっか行ったけど」
エイラ「そうか……」
シャーリー「なにか用か? 伝えておくぞ?」
エイラ「いや……これを、返そうと思ってナ……」スッ
シャーリー「? 何だこれ、時計?」
エイラ「…それが無かったら、私はサーニャを守れなかった。…そ、その……
伝えてくれるか? ありがとう、って……」
シャーリー「? あ、ああ……」
エイラ「それから……私は、そんなものが無くてもサーニャを守れるように……頑張るつもりだ、って」
シャーリー「え?」
エイラ「じゃ、頼んだゾ!」
シャーリー「お、おい! どこ行くんだ?」
エイラ「よく分かんないけど……ハルトマンに呼ばれてるんだ。9時になったら、基地の裏に来いって。
じゃあな、シャーリー。私によろしく」タッタッタッ
シャーリー「……? なんなんだ、一体……?」
シャーリー「…時計、にしては作りが簡素だな……なんかの機械か?」カチッ
シーン……
シャーリー「? ただのボタンか。……開くかな、これ」パカッ
シャーリー「…………! え、こ、これって……!」
――基地裏――
サーニャ(……私さん、どうしたのかな……? ここで待ってて、って……)
サーニャ「…………」ブルッ
サーニャ(……気のせいかな、ちょっと寒く……)
…サァァァァッ……
サーニャ「きゃっ!」
サーニャ「……冷たい…通り雨かしら……?」
エイラ「! あ、あれ? サーニャ?」
サーニャ「! え、エイラ…? どうしたの? こんな所で……」
エイラ「サーニャこそどうしたんだ? 私はハルトマンに呼ばれて来たんだけど……」
サーニャ「え? ハルトマンさん?」
エイラ「ああ。9時に基地裏に…って」
サーニャ「…私も、私さんに呼ばれたの」
エイラ「私が?」
サーニャ「うん。……でも、まだ来ないね」
エイラ「ああ。……どうしたのかナ、あの2人」
サーニャ「…………」
エイラ「…………」(あれ? これってよく考えたら……サーニャと2人きり!?
ちゃ、チャンスなんダナ! 今こそ…今こそサーニャに私の思いを……!)
エイラ「あ、ああのそそその、ささささサーニャ……!」
サーニャ「……ねえ、エイラ……」
エイラ「!!!? ど、どーしたんダ、サーニャ!」
サーニャ「あ、あの……あのね……」
エイラ「う、うん……」ドキドキ
サーニャ「その……エイラが、宇宙で私を守ってくれたとき……私、すごく嬉しかった」
エイラ「!!」
サーニャ「ずっと…ずっと、謝らなきゃって思ってたの。……ひどい事言って、ごめんね。
……エイラ、すっごくかっこよかったよ」
エイラ「さ……サーニャぁ……」
サーニャ「…! あ、エイラ、見て……流れ星」
エイラ「え? ……あ、ほんとだ……」
サーニャ「……きれいね、エイラ……」
エイラ「……うん」(…? カーブした? なんダ、あの流れ星……?)
チラ…
チラ…
エイラ「……? あれ、何か降って……」
サーニャ「! え、エイラ…! これ…雪よ!」
エイラ「えっ! …! ほ、ほんとダ……雪だ…!
でも、どうして…? 今は夏なのに……」
サーニャ「……ねえ、エイラ……」
エイラ「? どうした、サーニャ?」
サーニャ「…この雪……なんだか、オラーシャを思い出すな……」
エイラ「……ああ。オラーシャの雪も、こんなに綺麗だったナ」
サーニャ「…
ガリアが解放されてから…ふたりでいろんな所に行ったよね」
エイラ「オラーシャとスオムスを行ったり来たり……楽しかったナ」
サーニャ「……また、行こうね」
エイラ「! う、うん……!」
(い、言わなきゃ…勇気を! 勇気をだせエイラ・イルマタル・ユーティライネン! 宇宙じゃあんなに言えたじゃないカ!)
エイラ「さ、サーニャ!」
サーニャ「! ど、どうしたの…エイラ?」
エイラ「い、今まで…ゆ、勇気がなくって言えなかったけど……い、今! 言おうと思う……!」
サーニャ「…………」
エイラ「わ、私は、さ、さ、サーニャが……だ、だい……だい……!!」
ギュッ……
エイラ「!?」
サーニャ「……ばか。そんなの……言わなくたって、ずっと分かってたよ」
エイラ「え、え?」ドキドキ
サーニャ「…だって、私も……エイラとおんなじ気持ちだから……」
エイラ「!! さ、サーニャ…それじゃあ……!」
サーニャ「……大好き、エイラ。これからも……ずっと、ずーっと側にいてね……」
エイラ「さ……サーニャ……サーニャぁぁ……!! 」
チラ…
チラ…
サーニャ「……寒いね、エイラ……」
エイラ「えっ! た、大変だ、待ってろ、すぐに私の上着を……!」
ギュッ……!!
エイラ「……!」
サーニャ「……もう。エイラの、ばか。
……もう少し……こうしていよう、ね……?」
エイラ「!!! うん……うん!」
チラ…
チラ…
――近くの木陰――
私「…………」(お幸せに、ね)
私「……さて、これでようやく……」
タタタタッ…
エーリカ「私ー、やってきたよー」
私「シーッ!」
エーリカ「あ、そうだった……で、どうだった? 降ってた? 雪」
私「ええ。バッチリよ。…ありがとう。悪いわね、こんなことお願いしちゃって……」
エーリカ「ううん。でも……小憎い事考えるよねー。天候操作で雪を降らせるなんて。けっこうロマンチストなんだ?」
私「……なーに、ほんの気まぐれよ、気まぐれ」
シャーリー「ほーお、それにしちゃ、随分と手が込んでたみたいだけど」
私「! あら、シャーリー。どしたの?」
シャーリー「エイラがこれを返しに来た。よろしく、ってさ」スッ
私「……!!」
シャーリー「かなり感謝してるみたいだったぞ。……大方、シールドを張る機械だとか何とか言って、持たせたんだろ?」
私「…ええ。“命と引き換えにシールドを張る機械”ってね」
シャーリー「…はは、なるほどな。そりゃあ本気になるわけだ……」
ポイッ…カシャァン!
シャーリー「機械なんて何にも入ってない。外側だけのオモチャだ。当然、シールドを張る機能なんて、あるわけがない。
……エイラは最初から、自分の力でシールドを張れていたんだ」
私「……あーあ。バレちゃった……」
シャーリー「普通に言ったって本気は出せない。だから、わざと焚きつけるように……だろ?」
私「……覚悟が見たかった、それだけよ」
シャーリー「……くくっ」
エーリカ「……へーえ、気まぐれ、ねえ……」ニヤニヤ
私「な、何よ?」
エーリカ「…ふふ、やっぱり優しいんだ、って思ってさ」
私「……エイラちゃん、他には何て?」
シャーリー「『機械無しでも、サーニャを守る』ってさ」
私「……そう。……よかった。もう、心配いらないわね」
シャーリー「ほら、やっぱり心配だったんじゃないか」
私「……ふふ、誰かさんのおせっかいがうつったのかも、ね」
シャーリー「へえ? そりゃあ……大変だな?」
私「……ええ、本当……」
サーニャ「……すぅ……すぅ……」
エイラ「? ふふ、寝ちゃったのか……サーニャ」
私「……さ、戻りましょうか。寒いうちに、ね」
第5話、おわり
最終更新:2013年02月07日 14:24