前回までのあらすじ!
ペロペロ大好き変態教授・私の、501でのバイオレンスな日々は続いていく……。
少佐の強化服暴走事件もなんやかんやで無事解決。私は罰として基地内の清掃活動を命じられたのだった。
ミーナ「ちょっと私さん? 手が止まっているわよ?」
私「……どっちくしょー、サボれなかった……」(あっ! ハイ中佐! 申し訳ございませんッ!)
――501基地、私自室・サロン――
プルルルルルルル、プルルルルルルル…ガチャッ
私「もしもし。……ええ、私。……ええ、ちょっと言いたいことがあって」
私「そう……そう。……ええ、参加するわよ。例の計画」
私「……そうね。自分でも本当、なんでだろって思うわ。……まあ、単なる気まぐれって事にしておいてくれない?」
私「……ええ。そうよ。そりゃ……戦わずに済むなら、そっちの方が絶対にいいもの。……無茶しすぎる人もいることだしね」
私「……変わったって? ……さあね、どうかしら……気のせいよ、きっと」
私「……分かってる。ええ、大体構想は……ええ。そっちは? ……そう、分かった」
私「それじゃあ、近いうちに……ええ。お願い……それじゃ」
ガチャン…
私「……いよいよ、か……」
――数日後、食堂――
私「はーい、目を閉じてゆっくり息を吸ってー」
ミーナ「すぅぅ……」
私「じゃ、そのまま固有魔法を」
ミーナ「……」ピョコン キュイイイイ…
シャーリー「はいよ」バラバラバラーッ
ミーナ「……! こ、これは……!」
私「どこに、何個あります?」
ミーナ「半径1m以内、右に12個、後ろに7個、左には11個……」
私「……よし、あとは……」
≪ピピッ! ビュビュッビューン……ブブゥゥゥ――ン……≫
≪ザザッ、ザザザザ――――ッ……≫
ミーナ「あ、あら? 私教授? 急に何も見えなく……」
シャーリー「あっちゃー……このAIでも駄目か」
私「……やはり、負荷が大きすぎる。もっと処理能力の高いAIじゃないと……。
あ、ごめんなさい中佐。ありがとうございました。もう大丈夫ですよ、外しても」
ミーナ「はい。ふぅ……」カチャッ
シャーリー「で、どうするんだ?」
私「あれ以上能力の高いAIとなると……そうね……やっぱりアレか、もしくは……」
ミーナ「……凄いのね、このチョーカーみたいな機械……信じられないぐらいの精度で空間把握ができたわ。
頭の中にレーダーがあるみたいに……」
私「そう、まさしくレーダーですよ。"超感覚デバイス"……AIと接続して、空間把握魔法の精度を何十倍にも高めるチョーカー。
でも、肝心のAI部分が……」
ミーナ「これを処理できるだけの、レベルの高いAIが必要なのね?」
シャーリー「そうそう。かなり高度な技術らしいんだ。だから、それだけ高度なAIが要るんだけど……」
私「……アレにしようかな……元々そういう目的で作って――」ブツブツ
ミーナ「……でも、私教授。どうして急にこれを?」
私「え? ……ああ、そりゃ……やっぱり、普段迷惑掛けてばっかりだし……たまには、こういうのも……って」
ミーナ「……そう」
ミーナ(……本当に、それだけなのかしら……?)
――昨日、連合軍地中海方面総司令部――
将軍『今回のマルタ島奪還作戦、ご苦労だった』
ミーナ『申し訳ございません。作戦後のハルトマン・マルセイユ両名の命令違反については……』
将軍『いいのだよ、若気の至りという奴だ。彼女――マルセイユにも、いい経験になっただろうよ。
……ところで、ヴィルケ中佐』
ミーナ『はい』
将軍『今回君を呼んだのは……勿論、君達501の働きをねぎらう意味もあるが、それだけではない』
ミーナ『はい。それだけならば電報でお済ましになられるでしょうから』
将軍『ハハハ……手厳しいな。……それで、本題だが』
ミーナ『はい』
将軍『……君の所に、"私"という女性の科学者がいるだろう?』
ミーナ『? え、ええ……』(私教授――?)
将軍『彼女の、ここ最近の挙動について、知っている限り教えてもらえないかね?』
ミーナ(……?)『は、はい。私教授はここ最近……基地内清掃の時間以外は、ほとんど自室に籠りきりでした。マルセイユ大尉が来た時もその様子でしたから、彼女とはほとんど顔を合わせていないと思われます』
将軍『ふむ……』
ミーナ『……そう言えば、清掃中に聞いたのですが、ノートがどうとか、人格がどうとか……』
将軍『……人格?』
ミーナ『ええ、確かに、そう言っていました。意味は分かりかねますが……』
将軍『……そうか。順調なようだな……何よりだ』
ミーナ『……? あ、あの……私教授が、何か?』
将軍『ああ、彼女には今……とある兵器の開発に当たってもらっている』
ミーナ『兵器? それはどのような……』
将軍『済まないが、それには答えられない。――私教授に口止めされていてね。501の皆には、言わないでくれと』
ミーナ(私教授が……?)
将軍『……釈然としない、という顔だな。……悪いが、どうしても知りたいなら、私教授に直接聞いてくれ』
ミーナ『…………』
将軍『……しかし、彼女も変わったな』
ミーナ『……? お知り合いなのですか?』
将軍『ああ、彼女の母親――チューリング博士とは古い付き合いでね。養子をとったという話は聞いていたが、実際に私に会ったのは、チ
ューリング博士の葬式が最初だった。……そのころは、まだ大学に入る前だったと思うが』
ミーナ『将軍、変わった、とはどういう……?』
将軍『……彼女はね、なんというのか……どこか人と距離を置くところがあったんだよ。表面上は馴れ馴れしいが、本当の意味で、誰かと親しく付き合うようなことをしない人間だった。……少なくとも、私にはそう見えた』
ミーナ『…………』
将軍『常に、何かを知られるのを恐れているような……どことなく、そんな影のある人物だったよ。……でも今は、随分と安らいでいる気がした。電話で少し話しただけだから、確証は無いがね』
ミーナ『そう、ですか……』
将軍『……君の基地は、随分と過ごしやすい所のようだ。これも、君の指揮の賜物かな?』
ミーナ『……ありがとうございます』
将軍『話はそれだけだ。済まないな、わざわざ出向いてもらって。
基地に帰ったら、私教授によろしく伝えてくれ』
ミーナ『……了解しました』
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ミーナ(……将軍は『本人に聞け』と言っていたけど……)
私「……さて、と。データは大体取ったし……あ、ミーナ中佐。ご協力ありがとうございました」
ミーナ「えっ? あ、ええ……あの、私教授?」
私「?」
ミーナ「その……ええと……」
私「あ、もしかして夜伽のお願いとか!? ハッ! 僭越ながらこの私、上も下も誠心誠意お手伝いを――」
シャーリー「……」ガツン!
私「あぐっ」
ミーナ「……あ、ご、ごめんなさい。何でもないわ。やっぱり」
私「え……あ、そうですか」
シャーリー「……?」
ミーナ(……考えてみたら、わざわざ口止めまでするような事を……本人が教えてくれるわけがない)
ミーナ(……やっぱり、自分で調べるしかなさそうね……)
――夜、私自室・サロン――
私「…………」パサッ スッ
私(……結局、一緒に写ったのはこの一枚か。……もっと写ってもよかったかな……。
……よし、これを……)
コンコン
私「開いてるわよ」
ガチャッ…
シャーリー「よっ」
私「あ、もうご飯終わったの?」
シャーリー「ああ。今日は宮藤が海軍式のカレーを作ってくれたんだ。美味かったぞ~」
私「へえ……よかったわね」
シャーリー「……? なんだそれ、写真?」
私「この前海で撮った奴。……整理でもしようと思って」
シャーリー「海かぁ……行ったなあ。あの時は大変だったよな」
私「そうそう、ワニが……」
シャーリー「…………」
私「……? どしたの?」
シャーリー「いや……いろんなことがあったなぁ、って思ってさ」
私「?」
シャーリー「501が再結成して、お前が基地に来てから……ほんとにいろんなことがあった。
バルクホルンが無茶したり、ローマに行ったり……」
私「時計作ったりもしたっけ」
シャーリー「あと、お前が部屋から出てこなくなったり。……大変だったなあ、あの時は。結局どうなったんだ? あのノート」
私「……大体の暗号は解けたけど、一番肝心な部分が、まだ……」
シャーリー「へぇ……」
私「あるページから、途端に空白だらけになるのよ。それまではビッシリ書いてあるのに」
シャーリー「書き忘れた、とかじゃないのか?」
私「あのお母さんが、そんな意味の無いことをやるとは思えない。余白の角度とか、個数とかも色々検討してみたけど……何にも分からないのよ。
……
おまけに、最後のページには『焚き火用』なんて書いてあるし」
シャーリー「……た、焚き火? 何の事だ?」
私「それが分かんないから苦労してんじゃない……まあ、肝心な所は自分で考えろ、ってことなのかしらね。やっぱり」
シャーリー「ふぅん……」
私「……ホントに焚き火でもしようかしら。水ならあるから、何かあってもすぐに消せるし……」
シャーリー「水って……どこに?」
私「ほら、あの花瓶」
シャーリー「あ……へえ、あのヒナギク、まだ枯れてないんだな。けっこう持つんだな、花って」
私「毎日水換えてるしね。……でも、そろそろ限界かしら。最近どうも色がくすんできたのよ」
シャーリー「まあ、生き物だしな」
私「……ドライフラワーにしようかしら。そうすれば、枯れずにずっと綺麗なままで……」
シャーリー「……ドライフラワー、か」
私「……?」
シャーリー「……いや、なんか苦手でさ」
私「ドライフラワーが?」
シャーリー「なんだかなあ。上手く言えないけど……。生きてるからこその美しさ、みたいなものも、あるんじゃないかな」
私「…………」
シャーリー「やっぱりあたしは、たとえ枯れる事になってても、生きたままの花のほうが好きだな。……作り物みたいなもんだろ、ドライフラワーって」
私「……やっぱり、作り物は本物には勝てないのかしら」
シャーリー「……? まあ、勝ち負けがあるかは分からないけど……あたしは、生きてる方が好きかな、って」
私「……そう」
シャーリー「? ……そう言えばさ。ヒナギク以外には飾らないのか?」
私「え?」
シャーリー「いや、なんとなく、そう思って。……そうだな、例えば……薔薇とか」
私「薔薇? へえ、好きなの?」
シャーリー「え、まあ、ただパッと思いついただけだけど……でも、なんか良さそうじゃないか? 華やかで」
私「……そうね。考えとくわ」
シャーリー「今度、また一緒に街に行こうぜ。買いに行こう」
私「まーたあの爆走スクーター?」
シャーリー「なんだよー、そんなでもなかったろ? それにあれ、あんまりスピード出ないんだよなぁ……」
私「結局かっ飛ばしたいんじゃないの」
シャーリー「……ま、否定はしない」
私「フフッ、ったく……昔っからそうやってぶっ飛んで生きてきたの?」
シャーリー「え? ああ、まあな。……走るのが好きだったし、ウィッチになったのだって、元はそんな理由だし」
私「へぇ……」
シャーリー「いいぞー、スピードは。バイクに乗って、だんだんスピードを上げていくと……ふっと、ある瞬間からなんにも聞こえなくなるんだ。
感じるのは、向かってくる風だけ。そのうち、その風すらも感じなくなってくる。まるで、風といっしょになったみたいに……あの感覚が、すっごく好きなんだ」
私「詩人の才能があるわよ、アンタ」
シャーリー「……その口振りも、相変わらずだな」フフッ
ヒュゥゥゥゥ…
シャーリー「……? 何の音だろ」
私「隙間風よ。最近窓にガタがきててね。……そろそろ直さなきゃ」
シャーリー「ふーん……」ガチャッ
ヒュゥゥゥゥ…
シャーリー「……綺麗だな」
私「え?」
シャーリー「星だよ、星。……今日は晴れてて、星がよく見える」
私「へえ……あ、本当……」
シャーリー「……懐かしいなあ。リべリオンの夜空も、こんな感じだった」
私「故郷?」
シャーリー「それもあるし、ツーリングで野宿をしたときも。……懐かしいなあ」
私「……いい所なの?」
シャーリー「ん?」
私「アンタの故郷」
シャーリー「このあたしが生まれた所だぞ? いい所じゃないわけないだろ?」
私「……ま、そりゃそーよね。そうだわ、うん」
シャーリー「なんだよー、その反応」
私「別に」
シャーリー「ふーん……」
私「…………」
ヒュゥゥゥゥ…
シャーリー「……いつか、2人で行こう」
私「え?」
シャーリー「あたしの故郷。ついでに、リべリオン全土をバイクで横断しながらさ」
私「……あら、まずは花屋じゃなかった?」
シャーリー「……あ、そういやそっか」
私「……フフッ」
シャーリー「…………」
私「……? 何?」
シャーリー「いや、何て言うかさ、笑う回数、多くなったなって」
私「……そう?」
シャーリー「ああ。前は、なんだか……どこか、寂しそうな感じだったしさ」
私「……寂しそう? 私が?」
シャーリー「あ……ゴメン。気を悪くしたなら……」
私「いや……ホント、どうなのかしらね。私は……」
シャーリー「……?」
私「…………星に願いを、か」
シャーリー「え?」
私「そんな歌あったでしょ? ほら、『ピノキオ』でも流れてた……」
シャーリー「ああ、あの歌か……。いい歌だよな。……でも、何で?」
私「……シャーリー、もし願いが1つだけ叶うとしたら、どんな願いにする?」
シャーリー「え……? うーん、そうだなぁ……やっぱり、『みんなが平和に暮らせるように』かな。……あたしたちはそのために戦ってるんだし」
私「……そうよね。やっぱり……。優しいわね、シャーリーは……」
シャーリー「じゃあ、お前はどんな願いなんだ?」
私「私? ……私は……」
私「……私は――」
トッタッタッタッタ…!
ルッキーニ「シャーリー! お風呂はやく入ろうよー!」
シャーリー「あ、ルッキーニ! ああー、すぐ行くよー!」
ルッキーニ「はーい! じゃあ待ってるからねー!」
タッタッタッタッタ…
私「なんだ、お風呂まだだったの?」
シャーリー「うん。……あ、お前も入るか、一緒に。ルッキーニも喜ぶぞ」
私「ああ、いいわよ私は。……風呂は苦手で」
シャーリー「あ……」(……そうか、体に傷跡があるんだっけ。だから……)
シャーリー「ご、ゴメン。傷のこと、すっかり忘れてて……」
私「へ? 傷?」
シャーリー「へ?」
私「……! あ、ああ……うん、そうなのよ。だから風呂は遠慮しとく。入ってきたら? ルッキーニちゃん待ちくたびれてるわよ」
シャーリー「え……あ、ああ。分かった。じゃあ入ってくるよ」
私「そうだ、できたら風呂上がりのルッキーニちゃんをここに連れて――」ジュペロ
シャーリー「断じて断る」
私「……冗談よ冗談。……それじゃ、いってらっしゃい」
シャーリー「ああ。……あ、私」
私「ん?」
シャーリー「願い事は……またいつか教えてくれよ」
私「……ええ。……また、いつかね」
ガチャッ…
私(……何を言おうとしてるのよ、私は)
私(……言ったって、傷付くだけじゃない……)
――翌朝、私自室・サロン――
コン、コン
私「はい」
ミーナ「あ、私教授? その、司令部の方が……」
私「ああ、はい……今行きます」
ガチャッ…
兵士「お迎えにあがりました、私教授」
私「女の子じゃないのか……」
兵士「は?」
ミーナ「あ、どうぞお気になさらず……」
兵士「は、はぁ……」
シャーリー「あれ? 私?」
私「あ、シャーリー」
シャーリー「中佐も……どうしたんだ? こんな朝早くに」
私「ちょっとした用事よ。今から連合軍の地中海総司令部に行ってくる」
シャーリー「へ? な、なんで……?」
私「それは――」
兵士「私教授、申し訳ありませんが……」
私「……だってさ。ま、大した用事じゃないわよ。すぐ帰ってくるから、心配しないで」
シャーリー「あ、ああ……」
私「……じゃあね、シャーリー」
シャーリー(――『じゃあね』。単なる別れの挨拶のはずなのに、そのときのあたしには、すごく不吉な言葉に聞こえた。
――もし、運命ってやつが巨大な機械だとしたら、間違いなく、この時から……。
その小さな歯車は、かすかに動き始めていたんだ)
第12話、おわり
最終更新:2013年02月07日 14:29