前回までのあらすじ!
明らかになったAIウィッチ計画の全貌。それは、永久に死なない人造のウィッチを生み出すという
神をも恐れぬ試みであった。
所詮は機械、命なんて持っていないと滔々と語る私に、シャーリーは激しく反駁する。

シャーリー「人のフリした機械なんて……許されるはずないんだよ!!!」

私「……もう、助手なんてやらなくてもいい、って言ってんのよ」

すれ違う2人。そして――。

私「……ママン、って……呼んで……?」
娘≪――ママン――≫


――501基地、私自室・研究室――

私「はい、じゃあ次の問題よ。サバンナに生息する鼻の長い――」

娘≪ゾウさん!≫

私「ピンポーン! じゃあ次、アケメネス朝を滅ぼしたマケドニア王国の王は――」

娘≪アレクサンドロス!≫

私「ピンポン! 3問目、リべリオンの独立記念日は――」

娘≪7月4日!≫

私「またまたピンポン! じゃあ最後、夏目漱石の『こころ』の書き出しは――」

娘≪『私はその人を常に先生と呼んでいた』!≫

私「グゥレイトォ! 全問正解よ!」

娘≪ほんと!? やったぁ、ママン!≫

コン、コン

私「はーい」

父「俺だ」

娘≪あ、おじーちゃん!≫

ガチャ…

私「資料室の整理、やってくれた?」

父(……おじーちゃん……)
「全く……書類を段ボールに入れるのぐらい、自分でやれ! 口でテープを貼るのがどんなに難しいか、お前は……」

私「あー、ハイハイ。ま、やってくれたんならいいわ。ありがと」

父「……この研究室も、隣のサロンも……ずいぶんと小ざっぱりしたな。……どうしたんだ、あのミサイルとか、手袋とか」

私「……ちゃんと、あるべき所に置いてきた。……その他のジャンクパーツも一緒にね。
マキナが完成した今、もう秘密にしておかなきゃならないメカなんて無いもの」

父「……本当に良かったのか、黙ってて……」

私「……今までだって、ずっとそうしてきたじゃない」

父「……そうか。……どうだ、マキナは」

私「ええ、まだ3日しか経ってないのに、すっかり成長したわ。人間で言うなら、もう10歳ぐらいになるわね」

娘≪ね、ね、ママン! マキナ、もうおとな?≫

私「……フフ、大人になるにはもうちょっとかかるかも。だからそれまでに、しっかり勉強するのよ?」

娘≪うん! でも、もう"さくせん"もおぼえたよ! でっかいおふねにのって、ネウロイをやっつけるんだよね!≫

私「そうよ。今日は軍の人が来て、マキナを見てくれるから、ちゃんと礼儀正しく接するのよ?」

娘≪"けいご"だよね! マキナわかるよ!≫

私「そうそう。……それから、いい? マキナ――」

娘≪だいじょうぶ! "やくそく"まもるからね。マキナ、あのことはみんなに言わない≫

私「そう、それでいいの。偉いわ、マキナ」

娘≪えへへ!≫

父(……心を持ったAI、か)

私(……あ、そうだ。そろそろ"飴"を……)

私「……」パリッ レロレロレロ…

娘≪――? ママン、それなあに?≫

私「え……えと、まあ……薬みたいな物よ」

娘≪おくすり? どうしてママンが? だって、ママン――≫

父(……伝えなくては……いや、しかし……)

私「……? お父さん、どしたの?」

父「……! あ、ああ……いや。何でも……」

私「? そう」

娘≪おじーちゃん、へんなのー≫

父「……あのな、マキナよ。何度も言うが、俺をおじーちゃんと呼ぶのは……」

娘≪? どして? ママンのおとーさんは、おじーちゃんって言うんでしょ? ママンにならったよ≫

父「いや、しかしだな……俺だってそんな歳じゃ……」

娘≪とし? おじーちゃん、としあるの!? ロボットなのに?≫

父「え、あ、いや……そういうわけじゃ……うーん……」

娘≪ロボットはとしとらないから、ぜったいしなないんだよ。ね、ママン≫

私「……ええ。そうよ」

父「……それにしても、なんでわざわざこんな子供っぽい口調に設定したんだ? 最初は敬語だったのに」

私「いいじゃない、子供なんだし。かわいいでしょ?」

娘≪マキナかわいい?≫

私「ええ、とってもね。……そうだ、マキナ」

娘≪?≫

私「……軍の人が来るのは午後だし、せっかくだから、今日は基地のみんなとお話ししてみましょうか?」

娘≪! ウィッチのみんな!? いいの!?≫

私「ええ、みんなにもあなたを紹介しておきたいしね」

娘≪やったぁ! みんなとおはなし! 行く行く! ね、ママン! はやく行こ!≫

私「はいはい。ちょっと待ってて、マキナ。準備するから」

父「……いいのか?」

私「え?」

父「……いや、何でもない。……みんなと仲良くできるといいな、マキナ」

娘≪うん! ねぇママン、ウィッチの人たちって、どんな人なの?≫

私「…………いい人よ、みんな。きっと仲良しになれるわ」

娘≪そっかー……そっか! よかったぁ……≫

私「嬉しい?」

娘≪……? 『うれしい』って?≫

私「え、あ……えーっと、今みたいな気持ちのこと」

娘≪へぇー! わかった、おぼえたよ! マキナうれしい! とってもうれしい!≫

私「ふふ……さ、マキナ。行きましょうか。何か聞かれたら、ちゃんと答えるのよ? 包み隠さず、知ってる限り、ね」

娘≪うん、ママン!≫

父「…………」

私「……あ、お父さん」

父「……何だ」

私「次はサロンの整理、お願いね」

父「……ったく……」



――食堂――

シャーリー「……はぁぁぁ…………」

ルッキーニ「……? シャーリー、朝ごはん冷めちゃうよ?」

シャーリー「あ、うん…………はぁぁぁぁ…………」

ゲルト「……見てるこっちの気が滅入るな」

シャーリー「あ、そう……ふーん……」

ゲルト「……ミーナ」ヒソヒソ

ミーナ「え?」

ゲルト「シャーリーの奴、相変わらずあんな調子なのか? もう10日だぞ?」ヒソヒソ

ミーナ「……私教授と喧嘩したのを、よっぽど気にしてるみたいね。……私教授があれっきり10日も閉じこもってるんだから、余計に……」

宮藤「え、えーと……あ、あの! シャーリーさん! お味噌汁、今日はサツマイモが入ってるんですよ!」

シャーリー「へーえ……」ボーッ

坂本「? 何だ、シャーリー、イモは嫌いなのか?」

シャーリー「……嫌い……嫌いか……あーあ……嫌われちゃったなぁ……ああああ…………」シクシク

エイラ「……ありゃ重症だな」

エーリカ「そんなに悩んでるなら、とっとと謝ってくればいいじゃん」

ペリーヌ「恐らく、それができないから悩んでいるのではなくて?」

シャーリー「あぁぁああぁあぁ…………」ズズーン

ゲルト「……まあ、確かに、我々も少々――いや、かなり驚きはしたが」

エーリカ「『AIウィッチ計画』だっけ?」

ゲルト「ネウロイの技術を利用したロボウィッチ……それをネウロイ化させた大和に乗り込ませ、ネウロイの巣を叩く。
まったく……正気の沙汰じゃない。上層部は何を考えているんだ……」

エーリカ「でも、それが一番安全で確実な方法なんでしょ?」

ゲルト「まぁ、それは……そうだが」

ミーナ(……それでも、ショックだったんでしょうね。自分が誰より信頼していた人が、自分達の敵の技術を使っていたなんて……)

シャーリー「……………………」ハァァァァ…

サーニャ「……シャーリーさん、かわいそう……」

リーネ「仲直りできるといいのにね、私さんと……」

ミーナ「それが一番いいんだけれど……私教授が出てこないんじゃ、どうしようも……」

ガラガラガラガラ…

宮藤「……? なんだろ、この音」

……バタン!!

私「…………おはよう、みんな」

シャーリー「……!!!!!!」

ゲルト「! わ、私!」

ミーナ「ど……どうしたの、私教授!? ……? その、台車の上のドラム缶は……?」

娘≪わ、わー! ほんとにいっぱい人がいる!≫

ミーナ「!?」

リーネ「だ、誰!? 芳佳ちゃん!?」

宮藤「え? わ、私なんにも言ってないよ!?」

娘≪すごいねー、ママン! この人たちみーんな、ママンのおともだち?≫

エーリカ「ママン……?」

ルッキーニ「……! い、いまの声、そのでっかいのから聞こえたよ!」

シャーリー「え……!?」

ミーナ「……! ま、まさか……私教授、これは……!」

私「……紹介するわ。……娘の、マキナよ」

シャーリー「! む…………」


一同「むすめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」


ペリーヌ「む、む、むす……? え? ど、どこに……」

私「ここよ、ここ」

娘≪?≫

宮藤「えっ……じゃ、じゃあ……! もしかして、そのドラム缶……!」

娘≪むっ! マキナ、ドラムかんじゃないよーだ!≫

リーネ「!! し、しゃべったぁ!?」

エイラ「ど、どうなって……」

ミーナ「! ま、まさか……それが、例のAIなの!?」

私「はい。……ほら、マキナ。ご挨拶なさい」

娘≪うん! えーっと、はじめまして! マキナです! AIがしごとです! いつもママンがおせわしてます!≫

ミーナ「」ポカーン

エーリカ「す、すごい……ほんとに人間みたい……」

ゲルト「この声……録音じゃないのか!?」

私「ええ、100%リアルタイムで合成して発音してる。……要するに、人間と同じように『喋ってる』わけ」

シャーリー(……ほ、本当に……完成したのか……!)

ミーナ「ど、どうやって私達の姿や声が……?」

娘≪カメラとマイクがあるんだよ。ほら≫

宮藤「あ、ほんとだ。……あれ? これ……拳銃?」

私「特殊レーザー照射機。AI本体が壊れるかもしれない危害が加えられそうな時、これで威嚇射撃をする設定になってる」

エイラ「レーザー……」

娘≪でもね、ニンゲンうっちゃダメなんだよ。『人間に直接危害を加えてはならない』って、ママンが言ってるんだ≫

ペリーヌ「……躾はちゃんとされているようですわね」

ルッキーニ「ね、ね! なんで"マキナ"って名前なの?」

娘≪えっとね、それは……えーと……ほら、あのむつかしい……≫

私「……ラテン語」

娘≪! そう、ラテンご! ラテンごでね、『きかい』ってイミなんだって! ママンが付けてくれたんだー! いいなまえでしょ!≫

シャーリー(……『機械』……)

ルッキーニ「うん! あたしもね、フランチェスカってマーマに付けてもらったよ!」

娘≪へえ≫

ルッキーニ「……」

娘≪――≫

ルッキーニ「……私?」

私「あ、あはは……なにぶん、興味の対象が狭い子で……」

宮藤「ねえねえ、今何歳なの?」

娘≪? ロボットはとしないよ?≫

宮藤「あ、そっか……」

私「ああ、開発されてから、って意味なら……」

娘≪あ、それだったら、3日と14時間25分52秒! ――あ、54秒≫

宮藤「へ、へーえ……」

娘≪マキナがおきてからね、ママン、ずーっとおべんきょうおしえてくれたんだよ。あと、えほんもよんでくれたよ≫

ミーナ「……? ずっと……? マキナさん。私教授、もしかしたら、その間ずっと……」

娘≪え? ずっと?≫

ミーナ「え、ああ……私教授、もしかしてずっと寝てないのかしら? あなたが作られてから……」

娘≪? そうだよ?≫

ペリーヌ「! そ、それじゃあ……3日徹夜ってことですの!?」

シャーリー「!?」

私「……別に、大したことじゃないわよ」

ミーナ「ちょ、ちょっと……だ、大丈夫なの!? 前から気になってたんだけど……私教授! どうしてそんなに平気で徹夜を……!
マキナさん、何か知って――」

娘≪――――≫

ミーナ「……? マキナさん?」

私「……! あ、ああ……徹夜って言っても、完全に徹夜だったわけじゃないわよ。ときどき休んでたし……そうじゃなかったら、こんなピンピンしてないって。
ね、マキナ」

娘≪――うん≫

ミーナ「…………?」


シャーリー「…………」

ゲルト「……いいのか、何か聞かなくて」

シャーリー「えっ……!」

私「ん? …………!」

シャーリー「! あ……」

私「…………」

ゲルト(……ほら、チャンスだぞ、謝るんだシャーリー!)

ミーナ(今を逃したら、次がいつあるか分からないのよ? ほら早く!)

シャーリー「え、あ……えーっと……」

私「…………」

シャーリー「……そ、その……」

ゲルト(行けえええええええええ!!!)

ミーナ(謝るのよホラ早くシャーリーさん!!)

娘≪――ねえ、ママン。あそこのヒトも、ママンのおともだちなの?≫

私「え……」


『あたしだって……あたしだってな! 今のお前みたいなマッドサイエンティストの助手なんて……!!』

『分かったよ! お前が考えを変えない限り、絶対に戻ってやんないからな!』


私「……いいえ。……もう、何の関係もない……ただの他人よ」

シャーリー「ッ!!」

ゲルト「!!」
ミーナ「!!」

娘≪ふーん……≫

シャーリー「っ……ちょっと、外に出てくる……」

タッタッタ…
バダン!!

ルッキーニ「しゃ、シャーリー!!」

ゲルト「お……おい! 私! いくらなんでも、今のは……!!」

私「……別にいいじゃない。事実を言ったまでよ」

ミーナ(ああもう……! なんだって2人してこんなに素直じゃないのよ!)

私「…………」

私(良かったのよ、これで)

私(どうせ……もう……)
最終更新:2013年02月07日 14:30