前回までのあらすじ!
激戦の末、AI停止システムを発動し、マキナを打ち破った501。
だが、最期の悪あがきに、マキナはコアの自爆装置を発動させた――
娘≪――――どうして、マキナなんて作ったの――?≫
娘≪こんなに苦しんで――死んじゃうぐらいなら――――マキナ――――最初――から――≫



――巨大コア内部――

シャーリー「っつつ……」

シャーリー「……よし、コアには入れたみたいだな……」

――ストライカーから足を抜き、両手で持ち抱える。
   焼け焦げてしまった排気孔から、プスプスと黒い煙が上がっていた。

シャーリー「驚いた……結構、中は広いんだな……」

シャーリー「……! そうだ、私を……!」

シャーリー「おーい! 私、私ぃーっ!」

タッタッタッタッタ…


私「…………」

チッチッチッチッチ…

私(P.O.P、『PANTS Of the Peroriot』――あの停止システムの影響が及ばない部分で、自爆命令を下すとはね……)

私(あと、9分……くそっ……なんとかして、あのAIポッドを止めなくちゃ……)

私「……せめて、少しでも動けたら……」グッ

私(……駄目か。ったく……念入りに繋いでくれたわね……)

私「…………くそっ……このままじゃ……みんなが……」

   「――たしー、私ぃーっ!」

私「!」

タッタッタッタッタ…

シャーリー「わ……私!」

私「し……シャーリー……!? なん――」

シャーリー「よ、よかった……私……私ぃ……」

私「なんで――なんで……?」

シャーリー「……決まってるだろ。みんな、お前を助けるために、すっごく頑張ってくれたんだぞ?」

私「みんなが……?」

シャーリー「ああ。ほら、立てるか? 掴ま―― !!」

――そこで、改めて気が付いた。
   根元から千切れた片腕。体中に痛々しく突き刺さったコード。枯れ草みたいに乱れた金髪。
   ボロボロの白衣。凹んだ掌。ありえない方向に曲がった脚。そして――無数の傷から飛び出した、機械線と歯車。

シャーリー「あ……ぁ……」

私「……運ばれる時に、ちょっとね。……ったく、もう少し丁重にエスコートしろってのよ……」

シャーリー「……わ……わた……」

私「……わざわざ突っ込んでくるなんて、あいっかわらず単純よね、アンタ」

シャーリー「なっ……! あ、あのな……あたしたちは……!!」

私「……ホント、分かんないなぁ。アンタも、みんなも……いったい何が気に入ったのよ? 
  こんな……出来そこないの『人形』の――」

シャーリー「…………」

私「……? シャーリー……?」

シャーリー「……」グスッ

私「! な……ちょ、ちょっと! なんでいきなり泣くのよ!? あ、な、なんかヤなこと言っちゃった――?」

シャーリー「……ごめん……」

私「……へ?」

シャーリー「ずっと……ずっと、謝りたかった……お前のこと、何にも知らないで……。
      人の形の機械が、哀しいだけだなんて……あんな、あんな酷い事……!」

私「……シャーリー……」

シャーリー「許してもらおうなんて思ってない。でも……せめて、お前に――!」

チッチッチッチッチッチ…

シャーリー「……? この、音は……」

私「……あと、7分か」

シャーリー「え……」

私「……単刀直入に言うわ、シャーリー。……このコアは、あと7分で自爆する」

シャーリー「――!? な――」

私「……マキナの奴、人格部分が封じられる前に、システム部分に細工を加えたらしいわ。
  あのポッド――AIのシステム中枢を止めなきゃ、半径数キロを巻きこんで爆発する。
  私達2人と……外のみんなを巻き添えにしてね」

シャーリー「た……大変だ……速く知らせなきゃ! 私、掴まれ! 一緒に――」

私「無理よ」

シャーリー「……え――?」

私「……見えるでしょ、このコード。色々手は尽くしたけど……もう、ここから動けそうにないのよ。AIレベルで繋がれちゃってね。
  それに……みんなに知らせて、逃げた所で……爆発は避けられない。
  自爆自体を止められなきゃ……ヴェネツィアは地図から消えることになる――」

シャーリー「そんな……じゃ、どうすりゃ……!」

私「……言ったでしょ。AIを止めればいい。内部エネルギーに点火するのもAIなんだから、AIさえ壊せば……爆発は起こらないわ」

シャーリー「! そ、そうか……それじゃあ……」

――『AIを壊す』……あの、基地でも見た黒いドラム缶を、壊して無力化させる。
   そうすれば、爆発はしない。そうだ。これが最善の方法だ。何一つ、犠牲にならずに……。
   ……いや。

シャーリー(…………あれ……?)

私「…………」

――何かが、心に引っ掛かる。本当に……それでいいのか?
  それが、最善の方法なのか?
  それが、本当に"何一つ犠牲の無い"方法なのか?

シャーリー(待てよ…………『AIを』……『壊す』……?)

私「…………」

シャーリー「……なあ、私……お前、さっき……何て言った……?
      『AIレベルで』……『繋がって』――!?」

私「…………ええ」

シャーリー「……そんな……」

――そんな。
  そんな……そんな。それじゃあ……!

シャーリー「あれを壊したら…………『お前も』――!?」

私「…………」

――そんな。そんな、そんな……イヤだ……! 
  せっかく……せっかく、また会えたのに。
  せっかく……謝れたのに。
  せっかく……助けられると思ったのに……!

シャーリー「わ――わた――」

私「……ねえ、シャーリー。……言ったわよね、さっき。『許してもらおうなんて、思ってない』って……」

シャーリー「え――?」

私「……『罰』、なーんて言うには……ちょっと、おこがましいか。
  ……だからね。こう言うわ……」


――いつものように、どこか哀しい微笑みを浮かべて。
  いつものように、少し低めの、落ち着いた声で。


私「――『お願い』、シャーリー。
  ……私の最後の頼み……聞いてくれない……?」



――同時刻、航空母艦・天城、甲板――

父「ぐっ……ううん……」ムクッ

アレッシア「! お、お父さん!」

父「アレッシアさん…… ! そうだ、奴は……マキナは!?」

宮藤「大丈夫です! もう、ネウロイは出てきません!」

坂本「ああ。どうやら、例のシステムも作動したようだ。……あとは……」

ミーナ「ええ……」

ゲルト「……頼んだぞ、シャーリー……」



――巨大コア内部――

ジュウウウッ……カパッ

シャーリー「……開いたぞ」

私「オッケー。……手際良いわね。2分も掛かってないわよ」

シャーリー「ああ。……どっかの誰かに、散々こき使われたおかげさ」

私「……フフッ、そう……」

――私から手渡された刀身加熱式ナイフ……ヒートカッターで、AIポッド表面の装甲を剥がすこと2分。
  円柱状のポッドは、まるで皮を落としたニンジンのように、その内部全てが剥き出しになっていた。

シャーリー「……頑強な作りなのはいいけどさ、もっと簡単に開けられる仕組みとか無かったのかよ?」

私「弱点が簡単に開けられちゃ世話ないじゃない」

シャーリー「……それもそうか」

――装甲を剥がした中には、びっしりと並べられた棒型のスイッチ。
  1つ1つの下に、何か文字が書かれているが……ったく、小さすぎて読めたもんじゃない。

私「……いい、シャーリー。そのスイッチは1つ1つが、AI内の基盤、回路を司ってる。
  そのスイッチ全部をオフにすれば、このAIは完全に機能を停止するわ」

シャーリー「これが……」

――スイッチの1つを軽くつまみ、『OFF』の方向へ倒してみる。
  カチッ、と、乾いた音が鳴った。

私「――!」ガクンッ

シャーリー「! わ、私! 大丈夫か!?」

私「――いい……大丈夫……人間で言うところの……『めまい』――みたいなモンよ。
  すぐに慣れるから……ほら、早く次……」

シャーリー「…………っ……」

――震える手で、スイッチを3、4つ……また、続けて切る。

私「――っ……」ピクッ

私「……ね、ほら……慣れてきた。全然ヘーキよ、こんなのじゃ、まだまだ……」

シャーリー「……私…………」

私「……あと、5分。ほら、とっとと切らなくちゃ。501あの世ツアーに行きたいってんなら、別だけどね」

シャーリー「……っ……!」 カチッ…

私「――ルッキーニちゃん、お母さんに会いたがってたわ。ズッパが絶品なんだって。……きっと、優しいお母さんよ……」

シャーリー「…………」 カチッ…

私「――バルクホルンの妹さん……クリスちゃん、だっけ。……お姉ちゃんがいなくなっちゃったら、悲しいでしょうね」

シャーリー「…………」 カチッ、カチッ…

私「――『生きてる限り、いつか絶対に会える』。……そう言ってたわ、サーニャちゃん。
  ……会わせたげたいなぁ……お父さんとお母さんに……」

シャーリー「………………」 カチッ、カチッ、カチッ…

私「――いろんな人がいたなぁ……可愛い人も……綺麗な人も……それに……とっても、優しい人も……。
  誰も……死のうとなんてしてなくて……みんな、生きるのに……一生懸命で……」

シャーリー「…………っ……」

私「……何、手ぇ止めてんのよ……? 遠慮なんて、しなくていいから……」

シャーリー「……違う……そうじゃ……」

私「……みんな死ぬのよ。それでもいいの?
  ――スイッチを切って。アンタにしかできないのよ。アンタしか……みんなを救えない」

シャーリー「…………」

私「スイッチを全部切った所で……いなくなるのは、このポンコツだけ。
  『本物の人間』と……『ニセモノの人形』……どっちが大事かなんて、分かりきってるじゃない……」

シャーリー「……分かってるよ……」

――分かってる。分かりたくないぐらいに分かっている。
  こうしなきゃ、みんなを助けられない。自爆を回避することはできない。
  ……だから……。

シャーリー「…………」 カチッ…

私「……そう。……それでいい。それしか……ない」

私「……心配しなくていいわ。まだまだ、意識はハッキリしてる……。ほら、こんな風に……。
  ――私は私。1935年1月12日、ブリタニアのチューリング研究所で作動された――」

シャーリー「……っ……」 カチッ、カチッ…

私「足の速い茶色の狐が、のろまな犬を飛び越える。ヒスパニアの雨は主に平地に降る――」

シャーリー「…………」 カチッカチッカチッ…

私「嘘つきカメレオンは、優しいウサギの夢を見る――シャーリー、知ってる? 10の平方根は3.162277660168379……。
  eを底とする10の対数は……あれ、違った、10を底とするeの対数は……えーっと……」

シャーリー「………………」 カチッ…

――何でだよ。

私「円周率は……円周率は……3、ぐらいで――2かける2は……約4.101010101010101010――
  あれ――? おかしいな……」

――何で。

シャーリー「……なんでだよ」

私「ゴメン――なんか……ちょっと、ボーっと……」

シャーリー「……何でなんだ?」

私「……手、止まってる……」

シャーリー「何で……殺さなきゃいけないんだよ? お前を……よりにもよって……このあたしが……っ……」

私「…………シャーリー」

シャーリー「…………」

私「……この前の夜……私に訊いたでしょ? お前の願いは何だ、って。……こんな時に何だけど……教えてあげる……」

シャーリー「…………いいよ……そんな……」

私「……私ね、ずっと……人間になりたかった。こんな安っぽい合金じゃない、本物の血と肉を持った、本当の人間……。
  舌だけじゃない、全身の神経で……肌と肌で大事な人と触れ合って……ぬくもりを感じて……『生きたかった』……」

シャーリー「……いいんだ。もう……」

私「……でも、この体はしょせんただの機械。……だから、せめて心だけでも。
  女の子を上っ面だけで愛して……一方的に触れ合っていれば。心『だけ』は……人間のフリができた。
  ――笑っちゃうでしょ? ずーっと、単なる自己満足……あの子と……マキナと、何も変わらない……」

シャーリー「……やめろ! なんで……なんで! 今になって、そんな話……!!」

私「……分かる? 私はね……『死ぬ』ことなんて、永遠に無い。だって、『生きてもいないから』。
  『生きてるフリ』を、してきただけ……。ヒトのフリした、ただのロボット……」

私「……アンタの言う通りよ、シャーリー。こんな、危険で、愚かな機械……存在していいはずが無い。
  ……だから、だからね。……アンタが気に病むことなんて、なぁんにも……」





ギュッ…






私「――? シャー……リー?」

シャーリー「……何だよ……黙って聞いてりゃ……勝手な事ばっかり……!」

私「……抱きしめながら、言うセリフ?」

シャーリー「始めて会ったときから、ずーっとそうだ」

私「もう……3ヶ月も経ったのね……」

シャーリー「中佐に内緒で、アイスとか売りやがって」

私「売り子……今度は、アンタに頼もうかな……」

シャーリー「……一緒に……映画だって見たじゃないか! 買物だって……夕陽だって……!」

私「……楽しかったなぁ……」

シャーリー「前に言っただろ……一緒にリべリオンに行こうって……! それだけじゃない、花屋にも、服屋にも、レコード屋にも……!
      お前と一緒に行きたい所……まだまだたくさんあったんだぞ!! それなのに……それなのに……!」

私「…………ごめんね……シャーリー……」

シャーリー「『生きてもいない』なんて言うなよ……そんな、哀しいこと……言わないでくれよぉ……!」

――ふと、脳裏に私の顔が浮かぶ。
  私を助手にしたときの、ぶっきらぼうな顔。
  新発明を前にして、自信満々に説明を行う、ふてぶてしい顔。

シャーリー「お前がどう思ってたかなんて、知ったこっちゃないけどなあ……!」

――悪だくみがバレた時の焦り顔。
  ぽつぽつと過去を語る時の、感情を押し殺したような横顔。
  大聖堂で見せた、今にも夕陽に溶け込んでしまいそうな、儚い笑顔。

シャーリー「人間だろうが、ロボットだろうが、構うもんか……! お前は――ずっと……!」

――そして……どこか子供っぽくて寂しそうな、あの淡い微笑み。



シャーリー「……ずっと、『生きてた』んだ……! あたしと一緒に……!
      一緒に出かけて、一緒に怒られて、一緒に笑った……あたしの大好きな『私』は……っ!」




私「……………………」


私(…………そっか……)



私(そっかぁ………)





ペロッ…



シャーリー「……え……?」

私「……フフッ……初めて――かな……アンタに、こうやるの……」

シャーリー「……わ……わた――」

私「あったかいな……なんで、分かるんだろ……? とっくに……感覚――無くなってるのに…………」

シャーリー「……ああ……」

私「……さ。残りのスイッチを……あと、少しだから……。『お願い』……。もう……2分しか……」

シャーリー「…………ああ……ああ……」

――溢れ出る感情を抑えながら……震える指を、スイッチに伸ばす。
  もう……迷っている時間は無い。あいつの、私の……最期の願いなんだ。
  なら……。

シャーリー「…………」 カチッ、カチッ、カチッ…

私「……私を作ったのは――エレン・チューリング博士――私の……お母さん…………」

シャーリー「…………」カチッカチッ、カチッ、カチッ…

私「……お母さんは――よく……歌を……歌ってくれた…………」

シャーリー「…………」 カチッ…カチッ…

私「…………Dai…sy……Daisy……Give…me……your… an…swer……do……」



――同時刻、航空母艦・天城、甲板――

ゲルト「……? おい、何だ、この音は……?」

ミーナ「これは……歌……?」

  ≪I'm……ha…lf……cra……zy……
      All…for……the……lo…ve…of……yo…u…≫

ルッキーニ「! この声……もしかして……!」

  ≪It…won't…be…a sty…lish……marriage……
      I…ca…n't…afford…a…carri…age…………≫

ペリーヌ「私……さん……?」



――巨大コア内部――

私「……But…you'll…look…sweet……on…the…seat……
  Of a……bicy…cle……built……for……two……」

シャーリー「…………上手だな」

私「……実を言うと……?」

シャーリー「……じゃ、下手くそ」

私「…………フフッ……」

――もう、残りのスイッチも3つだけ。
  あと3回、あたしが指を動かせば……こいつの、私の魂は……永遠に消える。

私「……ねぇ……シャーリー……」

シャーリー「なんだ?」

私「この……ロケット……外して……」

シャーリー「……? これを? ああ……」

――上品な古い銀細工のロケットを、そっと私の首から外す。

私「……それ……あげる……」

シャーリー「……! え……」

私「……私が着けたままじゃ……何にもならない……アンタに……持ってて欲しいのよ……。
  まあ……形見……ってやつ?」

シャーリー「だ、だって……これ、すごく大事なもんなんだろ!? お前の、お母さんの写真が……。
      いいのか……? お前が持ってなくて……」

私「……ううん……いちばん大事な人の……写真……」

シャーリー「え…? い、いや、だから……そんな大事なもん……あたしが……」

私「……開けてみてよ……」

シャーリー「……? ――!!! あ――」

――ロケットの中に入っていた、一枚の写真。
  それを見るなり……あたしは……。


シャーリー「……っ……っぁああっ……!!」グスッ



――青い水着を着た、赤毛の女性。隣にいる白衣の女性の肩に手を掛け、満面の笑顔をこちらに向けている。


――他の誰でもない。
   ……あたしの写真だった。



私「……これしか……アンタの写ってるの…………無くって……」

シャーリー「…………よく……撮れてるな……」


カチッ…

――あと、2つ。


私「…………アンタは……最高の助手で……最高の友達だった……。
  ……ありがとう……シャーリー……。……私も……大好き…………」

シャーリー「……ああ……ああ……!!」


カチッ…

――あと、1つ。


私「――…………――……」

私「――おやすみ……なさい……お母――さん…………。
  ――……私……ね…………きょ……う……」

私「――とも――だち……が――――」


――カチッ――



私「―――――――――――――」




シャーリー「……………………」

私「―――――――――」

シャーリー「……っ……ううっ……」

私「―――――――――」

シャーリー「うぁっ……あああっ……!」

シャーリー「うぁぁぁぁぁ……っ……!!」


シャーリー「う゛あああぁぁあああぁぁああぁぁあああぁぁあああぁぁあああああぁああ……っ…!!!!!!!」




――アドリア海上空――

宮藤「……! 見て下さい、あれ!」

パキッ…パキッ…

坂本「コアが……消えていく……」

ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ルッキーニ「……!! シャーリー!?」

ゲルト「なっ……!?」

キィィィィィ――――――ン!!!
ガシッ!

ルッキーニ「シャーリー! シャーリーっ!!」

シャーリー「…………ルッキーニ……」

ゲルト「どうした、大丈夫か!? ……! そうだ、私の奴は――」

ルッキーニ「ねえ、私は助けられたの!? シャーリー!」

シャーリー「…………」

ゲルト「……おい……冗談だろう……?」

ルッキーニ「嘘……嘘だよね、シャーリー!?」

シャーリー「…………っ……」

ゲルト「……そん……な――」

ルッキーニ「嘘って……嘘って言ってよぉ!! シャーリーぃっ!!」



――航空母艦・天城、甲板――

ブゥ―――ン……

ミーナ「シャーリーさん!」

宮藤「私さんは……!?」

ゲルト「…………」

ルッキーニ「……ぐすっ……ひっぐ……」

エーリカ「…………まさか……」

父「大尉……」

シャーリー「……お父さん…………みんな……。  
      ……ごめん……助け出すなんて言ったのに……絶対に助けるって……誓ったのに…………!!!」

父「…………そう…………か…………」

宮藤「……うそ……」

リーネ「そんな……私さん…………」

坂本「…………」ギリッ…

サーニャ「……っ……!」ヒシッ

エイラ「…………」ギュッ…

エーリカ「…………」グスッ

ペリーヌ「なんで……なんで…………?」

父「…………」

シャーリー「……なあ、お父さん……」

父「……うん…?」

シャーリー「あいつが…私が、いわゆるロボットなら……その体を、もう一度作りあげる、なんてことは……」

ゲルト「……!!」

ミーナ「そ、それって……」

父「……あいつを、甦らせられるかと?」

シャーリー「…………」コクッ

父「……可能さ。……ただし、『体だけ』はな。ボディは、いくらでも生産できる。
  だが、あいつの記憶、経験、それに基づく性格は……決して、もう二度と再現できない」

シャーリー「…………」

父「……あいつの記憶中枢が、そっくりそのままあるなら別だが……」

シャーリー「……そう、か……」

――あたし達と暮らした、あの『私』は……もう、二度と帰っては来ない。
  つまりは、そういうことなのか――。

シャーリー「…………私……」

――形見のロケットを握りしめ、空を仰ぎ見る。  
  7月の空は……まるで目に突き刺さりそうなほどに、青く青く広がっていた。


   『科学って言うのは……私を幸せにするためにあるのよ』


シャーリー(…………お前は……)

シャーリー「……お前は……幸せになれたのか…………?」


――なぁ…………。


――…………私……?
最終更新:2013年02月07日 14:33