―ハンガー フェンリル整備区画―

俺「ダメだぁ、こいつはどうあがいても動かせそうにない」ドサッ

工具を放り投げて、ハンガーの床に仰向けになる

ウルスラさんの研究所から返してもらったフェンリル初号機、修理して飛ばそうとしたんだが

友「エンジンが完璧にイカれてる。こりゃダメだな」

パイロット「そんなぁ…」

俺「幸い、各駆動部分は生きてる。陸戦型に改造してやるから我慢しろ」

友「ウルスラさんがおまけしてくれた50mmカノン砲もあるし、基地防衛の要ぐらいにはなるんじゃないか?」

パイロット「…不公平だ」

友「そう言われてもなぁ…」

俺「50mmカノン砲であれ作ればいいじゃん、あれ」

パイロット「ガルムライフル?」

ガルムライフルとは、フェンリル専用の武装が開発真っ只中だったとき、パイロットが提案した大口径ライフルのこと

簡単に言うと、戦車の砲をフェンリルで持って撃てるようにしたチートライフル

蹴られた理由は、「おもい、おっきい、ものすっごい、でもおたかい」それだけ

俺「そうそれ。作れるだろう?」

パイロット「俺を誰だと思ってる?…フハッ、フハハハハ」

俺「…あいつはしばらく放って置こう」

友「そうだな…じゃあ、俺もう寝るわ」ファア

俺「おやすみ、俺はもうちょっと仕事するよ」

友「わかった…おやすみ」

ちょっとおぼつかない足取りで、ハンガーを後にする

俺はそれを見送った後、隣の部屋で電話をかける

プルルルルルルル、ガチャ

俺「あ、もしもし?」
  …はい私です。その件はどうも」
  …いえ、そうではなく、実は…」
  …少し聞きかじっただけですよ…ええ、2セット」
  …調整も改造もこちらで行います、今できているものを、なるべく速く送ってください」
  …倉庫?わかりました、確認します」
  …なぁに、ただの気まぐれですよ。はい、では」ガチャ

俺「倉庫か…今からでも漁ってみよう」


―翌日、ハンガー―

エイラ「どりゃぁぁぁぁぁっ!!」ゴォォォ

シャーリー「いいぞエイラ!そのままあがれ!」

エイラ「Урааа!!」ゴォォォォ

俺「…何やってんだ?」

倉庫から発掘した『もの』の改造をしている最中、外から轟音が聞こえてきた

シャーリー「お!俺か。フェンリルの改造は進んでるか?」

俺「ええ、対真空加工を終えて、後はエンジンをいじくるだけです。それより何をしてるんです?」

シャーリー「エイラが成層圏まで行きたいって言うからストライカーを改造してやった」

俺「で、エイラはそいつで上昇テスト中、と?」

シャーリー「そゆこと」

エイラも強情だなぁ…

俺「…それがどれだけ危険なことがわかってやってるんですよね?」

シャーリー「もとはと言えば誰のせいだ?」

俺「…仕方ないでしょう」

俺だってバカじゃない。エイラが今どんな気持ちか位わかる。わかってるつもりだ

シャーリー「でも、なんか策はあるんだろう?」チラッ

そういって、ハンガー奥の作業台の上に置かれた『もの』を見る

俺「ハァ…あなたには隠し事できそうにない」

シャーリー「なぁなぁ、教えてくれよ。どういう計画なんだ?」

俺「誰にも言いませんか?」

シャーリー「この胸にかけて誓う」ポヨンポヨン

俺「少しは恥らい持ってください(17歳のバストじゃねぇ)…実は…」


―お昼過ぎ、基地宿舎廊下―

エイラ「…ハァ」

結局、13000m位までしかあがれなかった。シャーリーいわく、性能の限界らしい

途中まで誰かに運んでもらったとしても、成層圏には届かない

エイラ「このままじゃサーニャをあいつに取られル…」

それだけは避けたい。でも何もできないのカ…?

気づいたら、自分の部屋まで来ていた

部屋の椅子には冬物のコートが掛けられていた。サーニャのコートだと匂…色でわかった

エイラ「サーニャ、これって…」

サーニャ「今度の作戦で使おうと思って。成層圏は、寒いから」

エイラ「…ソッカ」

サーニャ「…上昇の練習、してたんだって?」

エイラ「ウェ!なんでそれを」

サーニャ「シャーリーさんから聞いたの」

エイラ「大尉めぇ…」

話さないでくれって言ったのに

サーニャ「…エイラ、あのね」


俺「シャーリーさんにはああ言ったけど、どうなるかなぁ」

例の『もの』は設計段階と比べて約2倍の出力を得ることに成功した。通常のジェット燃料の補助も受けてるから、燃費もいいはずだ

『もの』を使ったプランBの成功率は大体50%。事前に話しておけば成功率は上がるのだが

俺「言っちゃったら意味無いと言うか…負けたというか」

サーニャには一応話しておくか。そう思って彼女の部屋に向かったら、

<エイラノバカ!!

<サーニャノワカラズヤ!!

2人の声が聞こえた。喧嘩でもしているのだろうか、かなりの大声だ

サーニャ「キャッ!」ドンッ

俺「フニャッ!?」

部屋からサーニャが飛び出してきて俺とぶつかる。突然のことで素っ頓狂な声を上げてしまった

サーニャ「俺、さん…?」グスッ

俺「サーニャ、どうしたの?」

サーニャの目にはうっすら涙が浮かんでいた

サーニャ「わ、私…エイラを…グスッ…」

俺「わ、わかった、と、とりあえず、俺の部屋に行こう。ここじゃ、あれだ」

サーニャ「はい…」

…大丈夫かな今度の作戦


―夜―

エイラ「…」

サーニャを怒らせちゃった…

自分が無茶を言ってるのはわかる。でも…どうすればいいんだヨ

友「おれだ、友だ。入っていいか?」ドンドン

エイラ「…開いてるゾー」

友「失礼する」

夜間哨戒のない日や、サーニャだけで哨戒するときはたいていこの部屋に皆集まる

…今日はサーニャも俺もいないけど

友「…」ドサッ

エイラ「…」ムクッ

2人してベッドに腰掛ける

しばしの沈黙を破ったのは友のほうだった

友「…エイラ、あんなことしてたら死ぬぞ」

上昇訓練のことか…この基地で隠し事はできないのか?

エイラ「…じゃあどうしろって言うんだヨ」

今まで抑えていた何かがこぼれ始める

エイラ「ただ…黙って見てろって言うのカ…?」

声に嗚咽が混じり始める

友「エイラ」

エイラ「サーニャをあいつに取られるのを…ただ…ただ黙って…!」

友「エイラ!」ギュッ

エイラ「!」

友に抱きしめられた。すっごく驚いたけど、なぜか、安心した

友「エイラの気持ちはよくわかる。でもあんた1人の力じゃどうにもできん」

エイラ「…だったら…」グズッ

我慢していた涙がついにこぼれる。見られたくなくて友の胸に顔をうずめる

友「信用しろ。あいつとおれを。それに、サーニャのことも」

エイラ「!…ウグッ…ヒック…ウェェェン」

…私は、大事何かを見失っていたみたいだ…

エイラ「グズッ…ウワァァン…」

友は、私が泣き止むまで、ただ黙って抱きしめてくれた


友「…落ち着いたか」

エイラ「うん…アンガト」

ちょっと名残惜しいけど、友から離れる

友「じゃあ、俺は戻るよ」

エイラ「あ…待って!」

友「ん?」

エイラ「その…一緒に寝てくれないカ?」モジモジ

友「は?…えっと、それって…///」

自分でもなんでこんなこと言っちゃったのかわからない。と、とにかく、何か言い訳を…

エイラ「わ、私だって…人肌が恋しい夜くらい、あるん…ダナ///」

友「…そ、そうだよな、うん…たまにあるよな、そういうの///」

エイラ「ハハハ…//」

友「ハハハ…ほ、ほら、そっちよれ//」ドキドキ

エイラ「う、うん///」ドキドキ

背中合わせでベッドに横になる。お互い、自分の心音が相手に聞こえてないか気が気じゃなかった

エイラ(…よし)

意を決して寝返りを打ち、友の背中に抱きつく

友「ピッ!?///」

ビクゥ!と肩を震わせる。ちょっとかわいい

エイラ「友、私…がんばるヨ」

友「…そうか」

何をがんばるとか、そんな質問はしてこない。それ以上の言葉は要らなかった

友の背中にくっつくエイラは、さながら甘えん坊な妹だった


友「…ところでエイラさん?いつまでこの体勢なの?」

エイラ「朝まで♪」

友「エー」


―朝―

――…!……!

――!!…!?……!

――…!?……俺!

俺「うわぁぁっ」ガバッ

…中東でのあの任務の夢を見た

俺「何で…」

寝巻きだけでなく、シーツまでぐっしょり汗でぬれていた

俺「…ん?」

ふと横を見ると

サーニャ「スゥ…スゥ…」

俺「!?」ビクゥッ!?

サーニャ(下着ではなくツーピースタイプの寝巻き)が寝てました

俺(あ、そっか。昨日の夜、エイラと一緒だと気まずくて寝れないって言ってここに来たんだっけか)

サウナ帰りのちょっと熱を持った肌と濡れた髪、さらに上目遣いで頼まれて断れるかってんだ

俺は床で寝ると言ったんだが、サーニャが拒否、何がどうなって、結局一緒に寝ることに…

俺(朝から心臓に悪い…シャワー浴びよう)

早朝なら誰も使ってないだろう…

サーニャを起こさないように気をつけながら部屋をあとに…

サーニャ「…ン」ギュ

服のすそをつかまれた

俺「ちょ、離して…って、固い」

眠ってるのにこの握力…魔女ってこえぇ

サーニャ「…お父様…お母様…」

俺「え?」

そういえば、ウィッチたちに家族の話を聞いたことがなかった

軍人とはいえ、中身はまだ幼い少女。甘えたい時もある…か

サーニャの手をそっと握り返す。少しだけ、表情が和らいだ気がする

…ただサーニャ、寝巻きに着替えるくらいはしてください
最終更新:2013年02月07日 15:33