―― 基地、医務室前

エイラ「ミヤフジ! 俺は……?」

宮藤「大丈夫です。命に別状はありません。陽子さんが傷口に魔力で蓋をしてくれてて、おかげで何とか。ただ……」

エイラ「な、なんだよ……」

宮藤「意識が、戻らなくて……」

エイラ「そんな……! わ、私の、私のせいだ……」

エイラ「あいつに言われたんだ。予知に頼りすぎだって、もっと警戒シロって……なのに、私ハ……」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「……入っても、良いカ?」

宮藤「だ、駄目です!」

エイラ「な、何デ……!」

宮藤「今……坂本さんが陽子さんとお話してます。誰も入れるなって。それに……」

宮藤「それに、何だか陽子さん、少し怖いです。初めて会ったのにこんなこと言うのは失礼だとは思うんですけど……」

宮藤「何だか、何かに凄く怒ってるみたいな、感じがして……」








キィィ バタン

坂本「……」

宮藤「あ、坂本さん……」

坂本「……みんな、話がある。俺の……シールドについてだ」

エーリカ「俺の」

バルクホルン「シールド……?」

坂本「ネウロイのこともある。ブリーフィングルームに集まってくれ」

エイラ「あ、アノ、少佐……」

坂本「エイラ……お前はしばらく俺には近付くな」

エイラ「エ……」

坂本「これは命令だ。良いな?」

カツカツカツカツ

エイラ「な、ナンで……」ジワ

サーニャ「エイラ……」

エイラ「……やっ、ぱり、怒ってるの、かな……わ、私のせいで、俺が……怪我、したから……」ポロポロ






―― ブリーフィングルーム

エイラ「……」

サーニャ「すみません。遅くなりました」

坂本「……早く席につけ。これで揃ったな。では、ブリーフィングを始める」

坂本「まず俺のシールドについてだが……単刀直入に言うと、あいつはシールドを使えない」

エーリカ「え……?」

坂本「正確に言うと、ネウロイの光線の余波を防ぐだけの強度しかない」

シャーリー「そんなこと、俺は一度も……」

坂本「無駄な心配をかけたくなかったのだろう。武器の都合上、あいつは前衛だしな」

坂本「もちろん固有魔法を使えばそれを補うことはできただろう。だがあいつはそれをしなかった」

坂本「理由はわからんが、俺のことだ。防御にまわすなら、スピードを上げて斬りに行った方が良いとでも考えたのだろうな」

坂本「だからこそあいつは、被弾するわけにはいかなかった。事実、俺は今まで被弾数0で在り続けた」

坂本「だが、結局はこの結果だ。あの馬鹿者め……」ギリッ

宮藤「坂本さん……」







坂本「……今回の相手は、その俺が被弾した相手となる。強敵だ」

エイラ「っ……」

ミーナ「目標は海上を時速30kmの低速で進行しています。全長約300m、全幅は約200。最大の特徴はその砲撃能力にあります。全身が砲台であると言っても良いでしょう」

坂本「俺の使い魔によると、どうやらあのネウロイは遠距離なら巨大な光線、近距離なら拡散型の光線で包囲攻撃をしてくるようだ。だが、この包囲攻撃を抜けるのは極めて難しいと言わざるを得ない」

ミーナ「しかし、私達にはあのネウロイのような超長射程の武器はありません。リーネさんのような長射程のものでも、あの巨体ゆえに威力が足りないのが実情です」

坂本「だが、ここで倒せなければ、ロマーニャへの進行を許すことになる。そうなれば、被害は計り知れない」

ルッキーニ「そんな……」

シャーリー「大丈夫。私たちで倒せば良いんだから」

坂本「目標の対空能力は極めて高い。そこで、今回の作戦はエイラとリーネを中心に行う」

エイラ「え……」

リーネ「わ、私!?」

坂本「リーネは目標の直上でライフルを構えて固定。同時にエイラが目標に接近。外殻を削り、即座に離脱。コアが露出、もしくは薄くなった外殻ごとコアをリーネが撃ちぬく。他のものは2人の援護だ」

坂本「この作戦はリーネのボーイズライフルがなければ成り立たない。宮藤! お前はリーネに付き、敵の攻撃から絶対に守りきれ!」

宮藤「は、はい!」

坂本「リーネにエイラも、問題はないな?」





リーネ「だ、大丈夫です!」

宮藤「リーネちゃん、頑張って!」

エイラ「……だ」

坂本「何?」

エイラ「……無理だ」

サーニャ「エイラ……?」

エイラ「私には避けられない。あんな攻撃……」

ミーナ「エイラさん……でも、あなたしか――」

エイラ「私は避けられなかったんだ!怖かった。動けなかった。あんな思いをしたのは初めてだ! だから俺は、私の、せいでっ……!」

坂本「……」

バルクホルン「……怖いなら、動けないなら飛ぶな」

エイラ「っ」

バルクホルン「次は……死ぬことになる。俺が命懸けで救ってくれた命だ。無駄にすることもないだろう」

バルクホルン「ミーナ、少佐、作戦内容を訂正しよう。私も手伝う」

ペリーヌ「……」






サーニャ「エイラ……」

エイラ「ごめんサーニャ、少し1人にしてくれ……。宮藤、サーニャを頼む。サーニャは病人ナンダ」

宮藤「エイラさん、その……」

サーニャ「芳佳ちゃん、行こう? エイラ……私は部屋にいるから、あんまり1人で抱え込まないでね?」

エイラ「……うん。アリガトナ」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「エイラさん、ちょっとよろしいかしら……?」

エイラ「……何だよツンツン眼鏡」

ペリーヌ「つんっ……!?」

ペリーヌ「こ、こほん。良いですか、エイラさん。あなたがそんな状態では、今回の作戦は……」

エイラ「ウルサイナ。ちょっとほっといてクレヨ! オマエはあの攻撃を見てないからそんな簡単に言えるンダ!」

ペリーヌ「……確かに、そうかもしれませんわね。あなたがそのようなことを仰るのですもの、それは恐ろしい攻撃なのでしょう」

エイラ「……」

ペリーヌ「でも……あなた意外に誰がそんなことをできると言うんですの?」





エイラ「……でも、私は避けられなかったんだ。どう動けば避けられるのか、全くわからなかった」

ペリーヌ「避けられないのなら、受ければ良いのではなくて?」

エイラ「ハァ?」

ペリーヌ「確かに完全に避けるということが前提であれば、それをこなすのは難しいかもしれません……けれど、シールドがあれば、突破できるのでは?」

エイラ「……何だよソレ」

ペリーヌ「俺中尉は防御を捨てて回避に専念したそうですわね。だからこそ、あの方はその攻撃を捌ききれなかった。でも――」

ペリーヌ「もしも回避と防御を同時にこなすことができたなら……。あなたなら、それができるのではなくて?」

エイラ「私ハ今までシールドなんて一回も使ったことは無いンダゾ」

ペリーヌ「でしょうね。ですが、そんなこと関係ありませんわ。あなたがこれからどうするのか、というだけの話」

エイラ「……何が言いたいンダヨ」

ペリーヌ「使えないのなら、使えるように訓練すれば良いだけの話」

エイラ「……」

ペリーヌ「もう! 私がシールドを張る特訓をしてあげると言ってるんです! ほら、来なさい!」グイグイ

エイラ「……ナンナンダヨ」

エーリカ「……」






―― 基地上空

ペリーヌ「準備はよろしいかしら?」

エイラ「……オー」

ペリーヌ「この銃は模擬戦用ですが、避けずにシールドを張るようにすること! ペイント弾はしっかり入っていますし、当たるととても痛いですわよ。よろしいですね?」

エイラ「……ワカッタ」

ペリーヌ「行きますわよ……!」

――――

ペリーヌ「……」

エイラ「……」ベチャベチャ

ペリーヌ「もう! やる気はあるんですの!?」

エイラ「ゴメン……」

ペリーヌ「あ、謝らなくても良いですわ。受けようとした努力は見れますし?」

ペリーヌ「でも……どうして張れないのでしょう」

エーリカ「そんなの簡単なことだよ」

ペリーヌ「は、ハルトマン中尉!?」





エーリカ「私が思うにねー、エイラは"受け止める、防ぐ!"って気持ちが……危機感が足りないと思うんだよね」

エイラ「……」

エーリカ「だから、その気持ちを無理矢理にでも引き出してあげる」

ペリーヌ「えっ?」

エーリカ「エイラ、私と模擬戦しよう」

エイラ「エ……」

エーリカ「シールドを張らないといけない状況にもっていく。危機感でいっぱいにしてあげるよ」

エイラ「な、何を」

エーリカ「言っておくけど、私は本気。この銃も……実弾が入ってるからね」

ペリーヌ「な!? ハルトマン中尉! それはいくらなんでも」

エーリカ「ペリーヌは黙ってて! 行くよ、エイラ!」

エイラ「!?」

エーリカ「シュトゥルム!」





エイラ「ち、中尉!?」

エーリカ「ん~、流石だねエイラ。今の不意打ちのつもりだったんだけど……」

エイラ「……本気カヨ、黒い悪魔」

エーリカ「だからさっきからそう言ってるじゃん」

エイラ「アンタも私のこと怒ってるノカ、俺をあんな目に合わせたから……」

エーリカ「そんなことなかったよ。むしろ、2人とも生きてて良かったと思った。でも……」

エーリカ「でも、少しイライラしてきたよ。その被害妄想は何? 皆エイラのこと怒ってなんてないのに……悲劇のお姫様にでもなったつもり?」

エーリカ「それとも、自虐してれば俺の怪我が治るとでも思ってるの?」

エイラ「そ、そんなこと、思ってナイ……わ、私は」

エーリカ「もう良いよ。ともかく、私はこれからエイラのことを追い詰める。怪我させたくないから、ちゃんと防いでね」

エイラ「っ!?」






ペリーヌ「は、ハルトマン中尉!」ハラハラ

彼女の視線の先では、逃げまわるエイラとそれを執拗に追い続けるエーリカの姿があった。本来なら、予知のあるエイラに攻撃を当てるなど不可能に近い。しかし、彼女の動きは普段に比べて明らかに鈍かった。
見るからに彼女は劣勢で、エーリカの放つ銃弾は確実にエイラへと近づいていた。

エーリカ「ほら、今度はこっちだよ!」

エイラ「くッ……」

バルクホルン「何をやっているんだ、あいつは……!」

ペリーヌ「た、大尉!?」

バルクホルン「ハルトマン!」

――――

エーリカ「トゥルーデが来ちゃったか。でも、これで終わりだよエイラ!」

ズダダダダ

エイラ「っ」

ベチャベチャベチャ

エイラ「あ……」

エーリカ「……実弾ってのは嘘。でも……これでもシールドは使わないんだ」

エイラ「ヤッパリ、私には……」






エーリカ「もっと自分を信じなよ。ウィッチなんだよ、張れないわけない! 今までの自信はどこにいっちゃったのさ!」

エイラ「……」

エーリカ「私、1対1の模擬戦なら正直エイラに勝てる人はいないって思ってたよ。でも、今のエイラはシールドも使えないし、攻撃を避けきることもできてない。動きに全く切れがなくなっちゃてる……そんなに、怖いの?」

エイラ「……」

ペリーヌ「エイラさん!」

エイラ「ペリーヌ……」

バルクホルン「何をやっているハルトマン。次の作戦は私達が中心となるんだぞ」

エイラ「ぇ……」

エーリカ「……そうなんだ。まあ仕方ない、か。怖い目にあわせてごめんねエイラ」

バルクホルン「……お前達も、作戦の前に無駄に魔法力を使うことは控えろ。行くぞ、ハルトマン」

エーリカ「エイラ。トゥルーデの言うとおり、怖いなら、動けないなら、飛ばない方が良いと思う。でも、でもねエイラ……」

エーリカ「怖くない人なんていないんだよ。でも、だからこそ……みんな戦うの。大切な人にそんな思いをして欲しくないから。"守りたい"から。エイラは、どう思ってるの……?」

エイラ「私……私は…………」

エーリカ「……それじゃあね」

エイラ「ぁ……」







ペリーヌ「……行ってしまいましたわね」

エイラ「……」

ペリーヌ「それで、あなたはどうしますの?」

エイラ「……」

ペリーヌ「訓練をするなら、手伝ってあげても――」

エイラ「……モウイイヨ」

ペリーヌ「え……」

エイラ「私には無理ナンダ。できっこナイ」

ペリーヌ「あ、諦めますの!?」

エイラ「……」

ペリーヌ「……あなたは、それで良いんですのね」

エイラ「……」

ペリーヌ「そう……なら、もう知りませんわ! あなたはそこでうじうじしてなさい!」

エイラ「……」

ペリーヌ「っ! ……あなたには少し、失望しましたわ」

エイラ「……ゴメン」
最終更新:2013年02月15日 12:29