第四話 Wizard of Gray Mersu
数十分後
俺「は?撃墜命令?」ブゥゥン
エイラ『そうナンダ。今、ミーナ中佐たちが出撃した』
宮藤を追って基地を飛び立ち数十分。インカムに501管制から通信が入った
通信相手のエイラが言うには、宮藤の脱走がばれて、上から撃墜命令が下ったらしい
エイラ『私も出撃しようとしたんだけど…』
俺「夜間哨戒だけでも大変なのに、昼間の戦闘もこなしたんだ。今は休め」
エイラ『…ごめん』
俺「そんな声出すなよ。心配スンナ、生きて帰るから」
エイラ『ぜ、絶対ダカンナ!///』
なぜだが知らんが恥ずかしいなこの会話。向こうの世界にいた頃女性と接触する機会が少なかったからかな
エイラ『…あ、あのな俺!その、この任務が終わったら―ザー―に…を――ザー―』
俺「ん?おい!エイラ!501管制!応答せよ!」
通信にひどいノイズが入る。インカムの故障でもないし…ジャミング?
俺「くそ… 見つけた!」
雲が開けた先に、宮藤と――人型ネウロイが見えた。一気にスピードを上げ、追いかける
インカムなしでも声が届きそうな距離まで近づき、でかい声で叫ぶ
俺「宮藤ィィッ!!」
宮藤「!? 俺さん!」
ネウ子「キュィィン!」バシュン
俺「ぬわっ!」
人型ネウロイがこちらに向けビームを発射する。急制動でなんとか回避し、宮藤の元まで向かう
再び人型ネウロイが片手を突き出しビームを発射しようとする。その間に宮藤が割り込み、制止する
宮藤「待って!俺さんは悪い人じゃないの!」
ネウ子「…キュィン」
人型は突き出した手を下ろす。宮藤のことがお気に入りのようだ
俺は宮藤の横に並び、人型と向かい合う
俺「覚えてるか?」
ネウ子「」コクッ
俺「前のときみたいに頼む。ただ、俺の頭はそんな頑丈じゃない。お手柔らかに頼む」
ネウ子「」コクコク、スッ
俺の言っている意味を理解したのか、人型は右手を俺の額にかざし、その手を青白く発光させる
俺「―っ!…ぐぁっ…あがっ…」
宮藤「俺さん!」
一回目ほどではないがやっぱり痛い。宮藤が止めに入ろうとするが、俺が片手制す
視界がゆっくりと暗くなっていき、『SYSTEMS HACKED』の文字が表示される。眠るようにして意識がとんだ
ネウ子「キュゥィン」
俺「」ダラン
ネウロイの手から光が消え、俺さんの体から力が抜ける。麻酔を撃たれたようにピクリともしない
宮藤「俺…さん?」
俺<<彼には、『代弁者』(メッセンジャー)に、なってもらった>>
宮藤「!?」
俺<<私は、人の言葉を、話すことが、できない。だから、彼の体を、借りた>>
宮藤「か、借りた?」
俺<<そう。洗脳ではない。体に害は、ない>>
このネウロイが、俺さんを使って会話をしようとしていることはわかった。でも、どっちを見て話せばいいんだろう?
俺<<あなたに、伝えたい、ことがある>>
宮藤「私に?」
俺<<来て>>キィィン
ネウロイは俺さんを従えて、黒い雲――ネウロイの巣――の方へ向かった。私もあわててついていく
ちなみに俺さんのストライカーは動いてない。でも足についたままだ
エーリカ「いた!皆一緒にいるよ!」
少し遅れてバルクホルンたちのチームが到着した
バルクホルン「あいつが坂本少佐を…!」
ミーナ「待って!よく見て!」
激情に駆られて銃口を向ける大尉を中佐が止める
エーリカ「前にあったときと同じだ…また洗脳されたんだ!」
全身から力が抜け、四肢がダランとしている
ルッキーニ「二人が巣に入ってくよ!」
バルクホルン「何だと!?」
俺はネウロイの力か何かで引っ張られ、宮藤はそれについていく。やがて暗雲の中に二人は入っていった
シャーリー「入っちゃった…」
バルクホルン「奴らの罠か!」
ルッキーニ「助けないと!」
ミーナ「待ちなさい!少し、様子を見ましょう」
雲の回廊を抜け、巣の中心部分らしき大部屋に出た
俺<<こっち>>キィィン
ネウロイはドームの中央付近にある大きなコアのそばへと向かう
部屋の地面に当たる部分が、世界地図を表示する。ちょうど
ガリアの位置にコアが来ている
宮藤「あの――」
俺<<見せたいものは、これ>>
向かい合った宮藤とネウロイの周りに無数のモニターが現れる
地球が表示されたかと思ったら、大戦初期の映像が流れる。欧州の町を、ネウロイが焼き払っていく
俺<<これが、私たちが行ってきた、あなたたちの言う、『侵略』>>
また別のネウロイが映し出され、一人のウィッチも映し出された
宮藤「坂本さん!」
俺<<あなたたち、ウィッチは、私たちにとって、脅威であり、興味深くもあった>>
突然場面が変わり、戦場跡の大穴の中に、ネウロイのコアが残っていた
研究所のようなものが映され、そこには、見たこともない何かと、先ほどのコアがあった
俺<<私たちが、ウィッチを知ろうとしているように、あなたたちも、私たちを、知ろうとした>>
今度のは見覚えがある、ついこの間の映像だ
宮藤(モニター)『ねぇ、私のことからからかってるの!?』
宮藤「私だ…」
俺<<ウィッチを調べているうちに、私たちの、興味は、人類そのものへと、うつった>>
宮藤「人類…」
俺<<あなたたちが、私たちを、知ろうとするように、私たちも、あなたたちを、知りたい。願わくば、分かり合いたい>>
宮藤「…わたしたち、きっと分かり合えるよ!」
俺<<ありがとう…>>
人型は、自分の腕の先に五本指の手を生成し、その手を前へ差し出す
俺<<…あくしゅ>>
宮藤「うん…」スッ
ネウロイの手が、宮藤の手を握ろうとしたとき、その手が止まる
宮藤「?」
俺<<誰か…いや、『何か』、来る>>
宮藤「え?」
俺<<ここにいて、すぐ戻る>>
そういって、俺さんごとワープする
ネウ子「」ヒュンッ!
エーリカ「さっきの奴だ!俺も一緒!」
シャーリー「洗脳が解けてない!」
ルッキーニ「芳佳は!?」
バルクホルン「いない、やっぱり罠か!」
俺<<逃げて!>>
ミーナ「!?」
俺<<ここから、逃げて、早く…!>>
バルクホルン「こいつ、なにを…?」
ネウ子「キィィン!」ビュン!
人型と俺が、編隊の後ろに周る。驚いてエーリカが銃を向けるが、俺がいるため撃てない
ネウロイは、俺の体を使ってシールドを張る。刹那、ビームが着弾する
ネウ子「!?」
バルクホルン「なに!?」
ミーナ「ネウロイが、私たちを庇った…?」
俺<<早く、逃げろ。逃げて!>>
それを最後に、俺の体の呪縛が解かれる。ストライカーが再起動し、意識が戻る
俺「あがっ…」
シャーリー「だ、大丈夫か!?」キャッチ
俺「あ、ああ。おい!お前!」
ネウ子「キュゥイィン?」
俺「…ありがとう」
ネウ子「…キュィン」
ネウロイに表情はないが、俺にはなぜか、彼女が笑ったように見えた
人型は急上昇、編隊から離れ、ビームを発射した機体をおびき寄せる。まるで、囮になるかのように
ロケットのような機体が編隊のすぐ脇を通り過ぎ、人型を捉える。機体が変形し、腕からビームが発射される
俺「あれって…」
俺の頭には、わずかだがネウロイの記憶が残っていた。その記憶の中で、あの機体を見つけた
機体から発射されたビームは、人型を焼き尽くし、巣を貫いた
シャーリー「なんだあいつは?」
バルクホルン「ネウロイを一撃で…」
俺「…まずい、巣の中には宮藤が…」
ルッキーニ「うじゃぁぁ!?芳佳ぁっ!?」ブゥォン!
バルクホルン「宮藤ィィ!」ブォォン!
二人が巣から落ちていく宮藤を追う。あの機体が再び変形し、元来た方角へと飛んでいく
俺(あれは、ネウロイのコアと一緒にいた…)
宮藤「俺さん?大丈夫ですか?それと、あのネウロイは…?」
二人に連れられて宮藤が編隊に戻ってきた
俺「大丈夫だ、体に異常はない。人型は…俺たちを庇って死んだ」
宮藤「!?」
バルクホルン「俺、なぜ二度も洗脳されるようなことに?」
俺「洗脳?俺はただ、相互の対話のために体を貸して――」
ミーナ「その話は後よ。ゴホン、宮藤軍曹、あなたを無許可離隊の罪で拘束します」
基地に戻る途中、俺はネウロイが残してくれた記憶を整理していた
俺(ネウロイの中にも穏健派と呼べるものがいることがわかった。でも、もっと重要なのは、人類のネウロイ研究とその軍事利用)
俺(あのネウロイはその存在を知っていた。あの機体がビーム兵器を持っていることも。つまりあれには、ネウロイの技術が使われてる)
俺(でも、それをどうやって立証する?)
ルッキーニ「あれ?誰かいるよ?」
滑走路には戦闘服の男が八人ほど、士官服を着た初老の男が一人立っていた
とりあえず、彼らの手前で着陸する
マロニー「ご苦労だった、ミーナ中佐」
なかなか渋い声で男は言った。階級章からして、大将か?
彼の後ろに、先ほどの機体が着陸する。人が乗ってる機動じゃない
直後、周りの戦闘員たちが俺たちに向け小銃を向ける
ミーナ「まるでクーデターですね、マロニー大将」
マロニー「正規の命令に基づく配置変換だよ。この基地は、われわれウォーロックが引き継ぐことになる」
基地から出撃していないウィッチたちが出てきた。エイラもいる
エイラ「!」
あっちも俺に気づいたみたいだ。再会を喜びあいたいけど、そんな状況じゃないようだ
マロニー「ウィッチーズ、全員集合かね?」
俺「ウィザードが一人いるがな」ボソッ
マロニー「君か、うわさの男性ウィッチは」
俺「戦闘要員の出撃中に配置変換を実行するとは、上はずいぶん切羽詰っているようですな大将殿」
マロニー「口に気をつけたまえ」
俺「あいにくこういう性分なもんで」
とっびきりの笑顔と赤目で睨みつけてやる。俺と話すのは時間の無駄と判断したのか、彼は矛先を宮藤に向ける
マロニー「…君が宮藤軍曹か。ミーナ中佐、彼女には撃墜命令が出ているはずだ」
俺「…宮藤、後ろのあれって」
宮藤「…はい、やっぱり…」
マロニー「何をこそこそ話している!」
俺「いえ、後ろの機体が気になって」
マロニー「後ろ?ああ、ウォーロックのことか」
自慢話を始めそうな顔をしたので、さっさと宮藤にバトンをパス
宮藤「そのウォーロックとか言うの、ネウロイが見せてくれた!ネウロイのコアと一緒に、研究室みたいなところにいた!」
俺「自分も見た。自分と軍曹が接触したネウロイは、人類のネウロイ研究とその軍事利用のことを知っていた。彼女はそれを教えてくれた!」
マロニー「な、何を言っているんだ!まったく、隊員は脱走を企てる、それを止める上官も上の命令を守らない」
俺「自分とこじゃそれが普通だったけど」ボソッ
マロニー「黙れ!ゴホン、ただいまをもって、501JFWは解散、ウィッチ諸君は原隊に復帰せよ。以上だ」
俺「無人機一機でウィッチ12人の代わりをさせようってか。馬鹿げてる」
マロニー「黙れといっているだろうが!この傭兵風情が!」
俺「無人機には悪い思い出しかないんでね。あと、俺は義勇兵だ」
マロニー「小生意気な…」
俺「何とでも言え。そこを通してもらえますかな?部屋の荷物をまとめたい」
マロニー「行くあてなどないだろうに」
俺「これから見つけるさ」
ほんの一瞬だけ、エイラのほうを見てから、俺は基地の中へ入っていった
基地宿舎
俺「…」
自分の机の引き出しから長方形の物体を取り出す
パワーセル。T-800の動力源にして、莫大な破壊力を有する核爆弾
今は細工して安全な状態にしているが、こいつを使えば大型ネウロイも一瞬で倒せる
俺(その分リスクも多いが…)
俺はそいつをポーチにしまい、部屋をあとにする
整備兵「俺さん!」タッタッタ
自分の部屋から隊のみんなが集まっているという宮藤の部屋に向かう途中、洗ガスを譲ってもらった整備兵が駆け寄った
俺「どうした?」
整備兵「中佐が、これをあなたに渡すようにと」
俺「書類か?…っ!」
整備兵「どうしました?」
俺「…スオムス空軍に行くことになった」
渡された書類は、エイラの指揮の元、スオムス空軍で義勇兵として戦えという辞令だった
整備兵「よかったですね」
俺「ああ、本当に。お前も元気でな。またどっかで会おう」
整備兵「ええ、またいつか、あなたのユニット弄らせてください」
お互い手を振り、その場を離れる。中佐には後でお礼を言っておかないと。あの人には敵わないな
――そして、別れのときが来る
俺とエイラ、サーニャは貨物列車に便乗してハーウィックの港に向かい、そこから船でスオムスへ渡る
車両に積まれた木材の上に座り、海を見ながら風に吹かれる
エイラ「スオムスでよかったのカ?お前の実力ならカールスラント辺りにスカウトされても…」
俺「仮にスカウトされても、それを蹴ってにこっちに来たと思うよ。カールスラントのお堅い空気は俺には合わん」
エイラ「ハハッ」
俺「フフッ」
楽しく笑い合っているが、お互いの顔はどこか晴れない。あんな形で解散となったのだから、無理もないか
エイラ「あ、あのな、俺…その、向こうについたら、――サーニャ?」
サーニャ「ん…っ」ヒョコン
俺「どうした?」
サーニャ「船が…燃えてる…」
エイラ「船?」
俺「…おい、あれ」
俺は海の一点を指し示す。ここからでも分かるほどの大きな船が黒煙をあげ、時折爆発を起こす
エイラ「あれ、赤城じゃないカ!?」
サーニャ「赤城が、ウォーロックの攻撃を受けて…芳佳ちゃんが戦ってる」
俺「ウォーロック…今すぐ基地に引き返そう!」
エイラ「どうやって!?」
俺はひとつ後ろの車両に積まれた貨物の一つにかけられたカバーを外す。そこにあったのは
エイラ「バイク?」
俺「ブラフ・シューペリアSS100、サイドカー付だ」
サーニャ(なんというご都合主義…それとこれって)
俺(SSなんてそんなもんさ。あと、それ以上は言っちゃいけない)
エイラ「運転できるんダナ!?」
俺「当たり前だ。サーニャはサイドカーに、エイラは後ろに乗れ。飛ばすぞ!」
<バルンバルンヒャッホー!!ハヤイハヤイ!ハヤイッテ!…キュー。サ、サーニャー!
基地前
エイラ「俺…次からは安全運転で頼む」
俺「…善処する」
サーニャ「」グッタリ
基地のハンガーの前まで来た。でも、その間に二人は疲れ切ってしまったご様子
俺の雑な運転と悪路が相まって、かなりハードなドライブになってしまった
俺は俺で、エイラの双丘が背中に押し付けられて…云々
街に行ったときに買ったバイク用のゴーグルが役に立ったのは別の話
エイラ「これからどうする?」
俺「ウォーロックはおそらく、管制塔から遠隔操作されているはずだ。俺は管制塔を制圧しに行く」
エイラ「一人でカ!?」
俺「相手は殴り合いもできない研究者連中だ。負けたりしない」
サーニャ「私たちはどうすれば?」
俺「ここに残って、ハンガーに入る方法を探るか、他のみんなが来るのを待っててくれ」
エイラ「俺…」
俺「…行って来る」
管制塔
研究員「ウォーロック強制停止システム、作動!」
<キィィィン!!ドォォン!!
マロニー「っ!なぜだ!なぜ停止しない!?」
次の瞬間、管制室のドアを蹴破って銃を持った男が入ってきた
即座に反応した警備兵二人がMP40を構えるが、
俺「…」バンッ!バンッ!
兵A「がっ!…あ゛くっそいてぇ…」
兵B「いってぇけど、急所は外れてる…」
俺「全員動くな!武器を捨てろ!」スチャ
研究者s「ひっ…」
マロニー「貴様ぁ…!」
俺「こうなるだろうと思ってた。ウォーロックを止めろ!」
マロニー「できるものならとっくにやってるさ!」
俺「撃墜するしかないか…」
研究員「…!」ガチャ
俺「!」スチャ
研究員の一人が、倒れた男のMP40を手に取り、俺に向ける。俺はすぐに反応し、PPKを向ける
副官「待て!武器を捨てろ!」
俺「どっちに言ってる!?」
副官「研究員にだ。俺軍曹、あんたに一つ頼みがある。私のことはどうしてもいい。だから、閣下や部下には手を出さないでくれ」
研究員「副官!」
俺「…いい部下を持ちましたな、大将殿」
マロニー「…」
俺「副官、一つ聞いてもいいか?なぜこの研究にかかわった。ネウロイ研究と、その軍事利用についてだ」
副官「…戦争は男の仕事だ。女には任せられなかった」
俺「本当にそれだけか?」
副官「…ウィッチを、少女たちを、戦わせたくなかった。傷つけたくなかった」
俺「だから、ネウロイの技術を利用しようとしたのか」
副官「それ以外方法がなかった…」
俺「あんたの言ってることは正しいかもしれない。二十歳に満たない女子供が戦ってるのが許せないのも分かる。
だがな、彼女らも彼女らの理由があって戦ってるんだ!」バシッ
副官「!?」
俺は副官の襟首をつかみ、壁に押し付ける。腹部にパンチを食らわせる
俺「彼女らは自分の意思で戦っている!祖国のため、家族のためという意思でな!お前はその思いを踏みにじった!俺の言ってる意味が分かるか!」ドガッ
副官「あべしっ!」ドサッ
俺「実際にウィッチと肩を並べて戦ってみろ!さっきまでみたいな綺麗事なんぞ言ってられんぞ!」バギッ
副官「ひでぶっ!」ゴハッ
解放された副官はヘナヘナと地面に座り込む。俺は彼の額にSAAの照準を合わせる
俺「殺してやる…」スチャ
ミーナ「待って!」
俺「!?」
管制室の入り口には、ミーナ中佐たちカールスラント三人組が立っていた
ミーナ「殺すのだけは、ダメよ」
俺はしばらく考え、SAAをホルスターに戻す
俺「っ!」ガン!
代わりに副官のすぐ横の壁を思いっきり殴る。少しひびが入った
バルクホルン「一体何があった?」
俺「…ウォーロックが暴走した挙句、赤城を攻撃。宮藤が戦ってる」
バルクホルン「宮藤が!?」
エーリカ「ハンガーに急ごう!」
赤城上空
ウォーロック「キュィィィン!!」ゴォォォ
宮藤「っ!」ダダダダダ
ウォーロック「キュィン」
ウォーロックが突然空中で静止する
V字型の赤い光が消え、機体内部からカプセルに入ったネウロイのコアが露出する
宮藤(! 人型ネウロイも、同じ事をした)
宮藤(あのネウロイは、私たちと分かり合おうとした。もし、このネウロイもそうなら…)
銃口を下げ、コアに近づいていく。左手を銃から離し、コアへと伸ばす
ウォーロック「キュゥィン!」バシュン!
宮藤「きゃっ!」
突然ビームが発射されるが、とっさに張ったシールドで事なきを得る
宮藤(違う…このネウロイは、敵なんだ!)
ハンガー前
バルクホルン「つまりだ、宮藤がネウロイと接触しようとしたから、奴等は慌てて、尻尾を出したって訳だ。わかるだろう?ミーナ」タッタッタ
ミーナ「はいはい」タッタッタ
バルクホルン「だろう?エーリカ?」タッタッタ
エーリカ「あー、もう私の知ってるトゥルーデじゃない…」タッタッタ
俺「俺も接触したんだけどなぁ…ネウロイと人間の通訳になったんだけどナァ…」タッタッタ
ミーナ「あら?」
バルクホルン「どうした?」
ミーナ「ハンガーがあいてるわ。行きは鉄骨でしまってたのに…」
エイラ「あ、オーイ!こっちダ、こっち!」
俺「エイラ!」
整備兵「お!おいでなすったか」
俺「整備兵!お前がやったのか?」
サーニャ「中から開けてくれたんです」
エイラ「すごかったんダゾ!こう、ドグァーン!ってなってナ」
エーリカ(鉄骨折れ曲がってる…)
バルクホルン(地面もかなりえぐれてる。かなり強引に開けたな)
整備兵「ストライカーの用意はできてます。こっちです!」
ミーナ「急ぎましょう!」
皆、自分のストライカーを履き、武器を手に取る
俺「ん…!」
自分も灰色のメルスに足を通し、プラズマライフルの動作確認をする
エイラ「飛べそうカ?」
俺「問題ない。ところでエイラ」
エイラ「なんダ?」
俺「俺が宮藤を追ってたとき、無線で何か言いかけたじゃないか。あれってなんだったんだ?」
エイラ「ウェ!?えー、いや、あのその…///」
突然赤くなって下を向く。狐の耳がパタパタ動いている
エイラ(二人っきりでロンドンに行こう、て言うつもりだったなんて言えない…)
ちなみに、ロンドン巡りの最中に「今度はスオムスに来てくれ」と誘うつもりだったのは内緒
俺「? まぁ、言いたくないなら良いけど…」
エイラ「と、とにかく行くゾ!///」ブゥゥン!
俺「あ、おい!待てって!」ブゥゥン!
他の皆の準備完了、到着を待たずに先行する
ミーナ「青春ねぇ…ちょっとうらやましい」
バルクホルン「ミーナ?」
シャーリー「おーい!」ブォォン!
リーナ「ハァ…ハァ」タッタッタ
エーリカ「お?きたきた!」
ちょうどリーネやシャーリーたちが到着し、ストライクウィッチーズが再集結した
沈没寸前の赤城上空では、今だ激しい空中戦が繰り広げられていた
ウォーロック「キュィィン!」バシュンバシュン!!
宮藤「くっ!はぁはぁ…」
さすがに疲れが出てきた宮藤に追い討ちをかけるように、ウォーロックが多重ビーム攻撃を仕掛ける
シールドを張り必死に耐える宮藤。刹那、ウォーロックの脚部に対装甲ライフル弾が着弾する
ウォーロック「キュィン!?」ドグァーン!
宮藤「あ!」
バランスを崩したウォーロックは、赤城を巻き込み、海に墜落した
シャーリー「お待たせ!」ブゥゥン!
坂本「一人でよく耐えたな、宮藤」
宮藤「坂本さん!皆!」
バルクホルン「こいつは必要なくなったな」
脇に抱えたストライカーを指しながら言う
エイラ「…そうでもないかも」
一同「え?」
俺「…確かにまずいな」
エイラの引いたカードは塔の正位置。意味は『破壊、破滅』
サーニャ「…皆!あそこ!」
ウォーロック「キュゥゥィィィィンッ!!」ドドドドドドド
坂本「…ウォーロックが、赤城と…」
俺「融合した…?」
キィィンッ!
俺「あぐ…っ」
エイラ「ド、どうした?」
俺「…いつもの頭痛だ、たいしたことはない」
ネウロイ化したウォーロックが赤城を取り込んだ。なら、普通のネウロイも人類の兵器を取り込めるはず
あの時のトランスポーターも、もしかしたら…
アカギ「キュィィン!」バシュンバシュン!!
エイラ「来るゾ!」
ミーナ「ブレイク!」
アカギからビーム攻撃が開始され、12人は敵の上下左右に展開する
坂本少佐とミーナ中佐の合体魔法で、敵のコアの位置が判明する
サーニャ「っ! 来ます!」
再びビーム攻撃が始まり、各々攻撃を開始する
エーリカ「シュトルム!」ブォォンッ!!
バルクホルン「どりゃぁぁっっ!」ダダダダダ
俺「エイラ!サーニャ!背中は任せた!」ブゥゥン!
エイラ「OK!」
敵の対空砲門をつぶすため、かなり接近して攻撃する
俺「まずは一つ!」テュンテュン!ドグァーン!
ミーナ『宮藤さん、リーネさん、ペリーヌさんが内部に潜入、コアを叩きます。他は三人を援護して!』
一同「了解!」
俺「ん…」キィン
俺は赤目を使って装甲がもろいところ、内部に侵入するルートを探す
俺(コアから伸びる血管みたいなのが邪魔でよく見えない…)
エイラ「俺!右ダ!」
俺「っ!?くぅ…」
とっさに張ったシールドで右から来たビームを防ぐ。かなり危なかった
俺「助かった!ありがとうエイラ!」
エイラ「ナンテコトナイッテ///」
一度アカギから距離をとり、再度もろい部分を探す
シャーリー「いっけぇぇっ!ルッキーニっ!」ブン!
ルッキーニ「あいよー!」ブォォン!
しまパフコンビがかなり強引に攻撃を加え、厄介だった艦首のウォーロックが吹き飛んだ
ペリーヌ「行きますわよ!」
宮・リ「はい!」
突撃部隊の三人が開かれた突破口からアカギ内部に侵入しようとする
俺「!…まずい」ブォォン!
ウォーロックがあった場所の奥に生きている対空砲が見えた。突撃部隊は気づいていないようだ
対空砲の砲口にビームが収束し始める。俺は全速力で対空砲と三人の間に向かう
<キュィィン!バシュン!!
三人「!?」
俺(間に合え!)ギューン!
ふっといビームが対空砲から発射され、三人を射抜こうとする。俺は割り込んでシールドを張るが
俺「ぐっ…あぁぁ!」ドーン!
宮藤「俺さん!」
エイラ「俺!」
少ない魔法力で形成されたシールドは小さくひ弱で、太いビームを防ぎきれず、腹と右ユニットを射抜いた
俺完全にコントロールを失い、煙を引きながら海に向かって落下していく
サーニャ「エイラ、行って!」
エイラ「うん!」ブゥゥン!
俺「う…あが…」
視界には『EMERGENCY』と表示され、頭に警告音が響く。あらゆる制御と機能が使えない
エイラ「俺!手を伸ばせ!――」
次第に目の前が暗くなっていき、俺の意識は飛んだ
――『EMERGENCY SYSTEMS SHUTDOWN』
――『PROGRAM CHECK COMPLETED』
――『T-RIP SYSTEMS RESTART』
――『SKYNET ONLINE』
俺「…ん」
目が覚める。見えたのはガラス張りの天井。空は真っ暗だ
自分の両腕両足はテーブルのようでベッドな物に固定されている。ピッキングで何とかできる代物じゃない
突然ベッドが起き上がり、俺は寝た体勢のまま立たされる
壁もすべてガラス張りで、核の炎で焼かれた廃墟が見えた。ところところで黒煙が上がり、空をHKが巡回している
俺は一瞬で理解した。元の世界に戻ってきた、と
目の前のモニターに女性の顔が映し出される。肌が死人のそれのように灰色みがかかっている
俺「あんたは誰だ」
???「私の個体名は『サイバーダイン社製軍事防衛プログラム』人類は『スカイネット』と呼んでいる」
俺「スカイネット?」
スカイネット「そう、人類の敵であり、あなたの生みの親」
俺「…何を言ってるんだ」
スカイネット「あなたのT-シリーズ識別番号は『T-RIPⅡ』レジスタンス潜入型プロトタイプ二号機。個体名は『俺』」
俺「一体何の話だ!!」
スカイネット「…覚えていないのね。思い出して俺。南基地が爆破された時、あなたはなぜ生き残った?なぜ、あなただけ?」
俺「それはこっちが聞きたいね」
スカイネット「理由は一つ。“あなたが爆破したから”」
俺「…は?」
スカイネット「さっきも言ったとおり、あなたはT-RIPⅡ。ターミネーターなの」
俺「…俺は人間だ」
スカイネット「体は、ね。あなたの後頭部にはT-RIP一号機と同じチップが埋め込まれている。人間をターミネーターのようにするチップがね。
T-RIP一号機『マーカス・ライト』は、金属骨格を持たせたため抵抗軍にバレた。だから今度は、チップだけにした」
モニターに後頭部にチップがあることを示す映像が流れる
俺「頭痛の理由はそのチップか…」
スカイネット「私からの命令を受信したチップは脳を支配し、体を操り、命令どおりに動く。南基地は私があなたに爆破させたの」
確かに、単純なスパイ活動、破壊工作だけなら金属骨格は要らない
俺「…俺はさっきまで異世界にいたはずだぞ」
スカイネット「それは予想外だった。私は、タイムマシーン起動時の余波に巻き込まれたのが原因だと考えた
あなたを連れ戻しにトランスポーターとHKを送ったけど、ネウロイというものに利用されてしまった
その体はこちらで予備にストックしておいたもの。今回はどうやら精神だけが戻ってきたようね」
俺「俺はなぜストライカーを動かせた。少佐の話じゃ、俺の魔力はごく微量のはず」
スカイネット「T-RIPシステムがストライカーを兵器と認識、使用方法を瞬時にサーチし、あなたの魔力と生体電気で動かしていたみたい。これも予想外よ」
俺「…全部嘘だといってくれ」
スカイネット「無理ね。俺、あなたに二度目のチャンスをあげる。こちらの世界で、T-RIPとして戦うチャンスを」
俺「…そんなものいらねぇ」
俺は赤目を起動し、今まで一度もやったことのなかったことを始める
――『PROGRAM CHECK START』
――『PROGRAM HACKED』
――『REPROGRAMMING START』
スカイネット「何をして…まさか、チップのプログラムを書き換えてる…!?」
視界に何千何万という数のプログラム言語が表示される。分からないはずなのに分かる
俺「ぐぬ…あが…」
ネウロイがハッキングした跡からプログラムに入り込み、必要なものを残し、それ以外を削除する
――『REPROGRAMMING COMPLETED』
――『PROGRAM FINALIZATION COMPLETED』
プログラムを終了処理し、俺じゃなきゃ書き換えられないようにする。脳に過負荷がかかり、吐血してしまう
俺「がはぁっ…ハァ、ハァ…俺の精神力なめんなよ」
スカイネット「…あなたはもはやT-RIPではない」
俺「ああ、人間でもない」
スカイネット「せいぜい楽に死になさい」
モニターの女性の目が赤く光ったかと思ったら、映像はすぐに消えた
テーブルからケーブルのようなものが出てきて、先端が俺の首に押し付けられる
全身を致死量の高圧電流が流れたと理解する前に、俺の意識は再び彼方へ…
エイラ「俺?俺!何で目を覚まさないんだよ!」
腕に収まっている俺の体は冷たく、力がない。ついさっきまで空を飛び回り戦っていたのが嘘みたいだ
宮藤「治癒魔法はかけました…でも、もう…」
宮藤が言わんとしている事は分かった。“俺の心臓は動いていない”俺を抱えている私が気づかないはずがない
アカギを撃破し、ガリアも解放されたのだが、隊の空気は重い
エイラ「…ウグッ…ヒグッ…」
サーニャ「エイラ…」
私は耐え切れず、泣き出してしまった。大粒の涙が頬を伝う
エイラ「エグッ…なんで…ヒグッ…今までだって…帰ってきたじゃないか…」
今まで何度も落ちそうになったけど、俺は必ず帰ってきた
いつしか私の中で、俺は必ず生きて帰ってくる、そういう固定概念が生まれ始めていた
エイラ「ヒグッ…なんで、なんで告白する前に死ぬんだよっ!!…」
俺の胸に顔をうずめる。私は俺が好きだ。いつの間にか好きになっていた。でも、俺はもうこの世にいない
塔のカードは、アカギではなく、俺の死もしくは失恋を暗示していたのかもしれない
エイラ「こんなんなら…好きにならなきゃ…」
――ドクンッ
エイラ「…え?」
――ドクンッ
エイラ(動いてる…?)
顔を上げ、俺の顔を見る。瞼は閉じられたままだ
エイラ(やっぱり、何かの勘違い――)
そのとき、目尻に溜まった涙を誰かがふき取った
エイラ「…!…お…れ……?」
俺「そんな顔すんなよ…」ニコッ
活力のない声、ぎこちない笑顔だったけど、私にはすごく輝いて見えて、
エイラ「俺ぇぇぇ!!」ガバッギュッ!
周りの目なんて気にしないで、思いっきり抱きついてしまった
抱きついてきたエイラをしっかりと受け止める
エイラ「俺ぇ…俺ぇ…ヒグエグッ」
俺がこの世界に戻ってこれたのは奇跡だ
俺「なぁ、いい加減泣き止んでくれよ」
おそらく、彼女――エイラの存在が、俺をこの世界に引き止めたのだろう
宮藤「でも、どうして…心臓は止まって…エェ?」
スカイネットは、俺に二度目のチャンスを与えようとした
エイラ「俺の精神力なめんナヨ!」グスッ
でも俺はそれを蹴った。なぜなら、二度目のチャンスはすでに与えられていたから
サーニャ「とにかく…本当に良かった…」
俺はこの世界で生きていく。もう、未練も義務感もない
ミーナ「十二人揃ってこそのストライクウィッチーズですもの」
願わくば、エイラと一緒にいたい。仮に戦争が終わっても、ずっと…
坂本「さぁ帰ろう。私たちの家へ」
いつかこの気持ちを伝えよう
俺「なぁ、エイラ」
いつになるかは分からないけど
エイラ「グスッ…ん?」
絶対に伝えよう…
俺「スオムスでもよろしくな!」ニコッ
お互いがまだ飛べるうちに…
ハーウィックの港へ向かう列車の中、俺と私は向き合って座っていた。今回は貨物列車ではなく、ちゃんとした客車だ
サーニャが私のひざに頭を乗せて寝息を立てている
日はとっくに沈み、空には満天の星が輝いていた
俺・エ「…」
今ではこの沈黙もなぜだか心地いい
俺「なぁ、エイラ」
エイラ「?」
俺が夜空から視線を動かさずにつぶやいた
俺「話したいことがあるんだ。特に、こいつについて」ブォン
暗闇の中で俺の赤目が光る。俺は私に分かりやすいように、赤目について話し始めた
撃墜されたあと、意識だけが元の世界に戻り、そこで自分の体の真実を告げられたこと
元の世界との未練を断ち切り、今居るこの世界に骨を埋める決心をしたこと
俺「こっちに戻ってこれたのはエイラのおかげでもあるんだ」
エイラ「わ、私は何も…」
俺「ありがとう」ニッ
お礼を言う俺の顔が月明かりで魅力的に見え、私は思わずドキッとする
エイラ「わ、私はもう寝るからナ///」
俺にバレないように、こっそりポーチからタロットを引く
暗闇のせいで何のカードが出たか分からなかったが、悪いカードではないことは確かだ
エイラ(恋人のカードだったら良いナ)
そんなことを思いながら、カードを戻し、目を瞑る
私たちの物語は、まだ始まったばかりナンダナ
俺「オラーシャへの道は遠いな…」
管制『いい加減告っちまえよ、このヘタレ』
エイラ「ヨロイネン観測所がいいと思うんだ」
俺「…人間?ウィッチか?」
エイラ「ナンダ?恥ずかしいのカー?」ニシシ
エイラ「ソウカ。辛かったら言えヨ、薬とか…ウワァ!」グラッ!
最終更新:2013年02月15日 12:43