――2029年 人類対機械の世界

 ――スカイネット地下基地

 ――抵抗軍ジョン・コナー直属特殊部隊


<ドグァーン!!ガン!カララン!

フレーム爆薬によって、格子ごとドアが吹き飛ばされる

指揮官「GO!GO!GO!」

敵地下基地の下層、スカイネットの作戦データ等々が保管されている場所に入る

スカイネットの施設に共通している赤い照明は、今にも消えそうにチラついている

兵士1「Right Clear!」

兵士2「Left Clear! 静かだな…」

指揮官「…司令部、ターゲットを発見した」

先頭の男がハンドシグナルを送り、部下を部屋の中に展開させる

部屋の中央のPCの周りを警備するように全員陣取る。その動きはまさにプロだ

エンジニア「データのハッキングを開始します」

指揮官「アルファよりブラボーへ。そちらの状況は?」

B指揮官『こちらブラボー。退路を確保した。だがなるべく早くしてくれよ。ここは寒すぎる』

指揮官「数分の辛抱だ。アルファ、アウト」

エンジニア「エントリー成功。案外楽だったな」

データベースをハックし、中にある情報を持ち帰る。これが今回の任務だ

エンジニア「この基地は数日前に放棄されています。だからこんなにザル警備だったのか」

モニターをスクロールし、画面に表示されたデータをコピーする準備にかかる

指揮官「…待て。戻れ、戻ってくれ」

スクロールする手を止め、カーソルを戻していく

指揮官「止まれ。そこだ。そいつを表示してくれ」

エンジニア「でかいモニターに出します」カタカタターンッ

兵士1「…………"Project C.T.N"…?」

兵士2「なんだそりゃ」

指揮官「スクロールしてくれ」

エンジニア「了解」

"Project C.T.N"ファイル内を下にスクロールする。そこには、"Project C.T.N"に関する詳しい情報が記されており…

兵士2「――っ!? これは…」

指揮官「…エンジニア、今すぐこれを司令部に送れ」

エンジニア「了解、アップロードを開始します」

兵士1「こんなこと…可能なんでしょうか」

指揮官「わからん…だが、スカイネットは神になろうとしているのかもしれん…」

<ドグァーン!!ウワァッ!テュンテュン!!

兵士2「な、なんだ!?」

指揮官「ブラボー!何があった!?」

B指揮官『敵の奇襲だ!畜生!今までどこに隠れて居やがった!(テュンテュン!!)ぐわぁ!』

兵士2「エンジニア!アップロード完了まで何分かかる!」

エンジニア「2分はかかります!」

<ドォォン!!

指揮官「…撤退だ。今は逃げるぞ」

エンジニア「でも、まだアップロードが…」

指揮官「生きて帰って口で伝えればいい!全員引き上げだ!――」

<ドガァァンッッ!!

兵士1「うわぁっ!?」

時すでに遅し。壁を突き破ってT-800の軍団が乗り込んできた

T-800「ギシャァァァ」

指揮官「ひっ…!」

一体が指揮官に銃口を向ける

敵はためらいなんて微塵も感じさせず、引き金を引いた…



 第二話 "Communication"



 504基地宿舎 食堂

俺「なるほど。人の姿のときは、瘴気を出さなくても平気、と?」

ネウ子「うん。ただ、定期的に、金属を、摂取する必要が、ある」

俺「金属?」

ネウ子「ネウロイの、体は、金属が、元。体の再生に、用いる」

俺「鉛や真鍮なら大量にあるぞ」

ネウ子「鉛は…嫌い…」

俺「……ですよね」

ネウ子「でも、真鍮は、好物」

俺「…空薬莢持ってくるよ」

エフィは、本物のエフィと同じように、俺に心を開いてくれた

話をしているうちに、いろいろ分かったことがある。箇条書き状にまとめておこう

  • 口があまり達者ではないが、語彙はかなりある

  • 足がちょっと弱く、走ったりはできない。階段の上り下りも苦手

  • 体の一部だけをネウロイ化させることも可能。足だけをネウロイユニットに変形させ、ウィッチのように飛ぶこともできる

  • 結構な人見知り

こんなもんかな

竹井「俺さん、エフィさん、ちょっといいかしら?」

ネウ子「キュ?」

俺「なんですか?」

食堂で俺はコーヒーを、エフィは空薬莢を口にしていたとき、竹井大尉が入ってきた

竹井「この記事を読んで欲しいの」パサッ

机の上に、新聞の一面を広げる

俺「なになに?…501再結成?」

見出しにはそう書いてあった

竹井「今、504はほとんど機能していないでしょう?だから、501再結成の話があがったの」

俺「一日で11人全員が揃うとは…」

新聞の写真には、こじゃれた基地をバックにして、横に並んだウィッチ11人が写っていた

その中には、

俺(エイラ…)

彼女もいた

ネウ子「宮藤、さん…」

エフィはそっちに目が行っている様だ

俺「会いたいか?」

ネウ子「」コクコク

俺「…大尉」

竹井「そういうと思ったわ。もう手筈は済んでるわ」

そういって、一枚の書類をヒラヒラさせる

俺「…俺の名前が書いてあるような」

竹井「あなたに、501への転属命令がでてるわ。エフィさんも501の保護下に入るように、と」

ネウ子「キュ?」

俺「…厄介払い、ですかね」

竹井「…おそらく」

501って昔から問題を押し付けられてる気がする…

ネウ子「どういう、こと…?」

俺「俺とお前は501に行くことになったんだ。よかったな、宮藤に会えるぞ」

ネウ子「!」パァァ

まさにパァァと効果音が付きそうな喜び方をする

ネウロイに感情があるかは知らないが、最初の頃に比べてかなり人間っぽくなってる

それと同時に…どんどん本物のエフィに似てきているが…

竹井「エフィさん、向こうでも、俺さんの指示に絶対従うこと。良いですね?」

ネウ子「はい」

大尉もだいぶエフィを信用するようになった。エフィの行動制限は最初に比べかなり緩い

竹井「このあと、501から補給部隊が来ることになってるの。彼らの車に便乗して、あちらの基地まで行きなさい」

俺「了解しました。それまでに準備をしておきます」

エイラの奴、元気にしてるかな…


 501基地 執務室

ミーナ「…」ハァ

バルクホルン「どうした、ミーナ。ため息なんかついて」

ミーナ「これを見て頂戴…」スッ

何枚か束になった書類のうちの一枚を差し出す

バルクホルン「ん?…おお、俺もここに転属になったのか。これで十二人揃うな」

ミーナ「見て欲しいのはその下…」

バルクホルン「下…?……!」

――俺少尉の転属と同時に、以下の者を保護下に入れること

――"X-11/Mk.2 人型ネウロイ"

――トラヤヌス作戦で504JFWに保護され、現在は俺少尉の監視・保護下にある

――非常に好意的で、攻撃性はないため…

バルクホルン「ネウロイを保護!?しかも基地に入れる!?何だこれは!?」

全部読みきる前に怒りの声をあげる

ミーナ「正規の命令だから、断るわけにいかなかったの…」

バルクホルン「上層部はまた厄介ごとを押し付けて……で、俺とこのネウロイはいつ来るんだ?」

ミーナ「今日よ」

バルクホルン「今日ッ!?」


 504基地

竹井「扶桑からの物資、助かったわ。ありがとう」

501から回されてきた、扶桑の救援物資の引渡しは無事に終わった

坂本「報告書は読んだ。あの内容は事実なのか?」

竹井「エフィ…人型ネウロイのことなら、実際にあったほうが早いわ」

坂本「?」

竹井はハンガーの一角、入り口付近に目をやる

俺「ほら、行くぞ!エフィ!」グイグイ

ネウ子「やっぱり、怖い…」フルフルビクビク

俺「少佐は良い人だから!刀持ってるけど良い人だから!ほら!」グイグイ

俺が、人見知りを炸裂させているエフィを引っ張っていた

しかし、エフィはその場を一歩も動こうとしない

坂本「あの黒いセーターの女の子が…」

竹井「人に化けてるネウロイよ」

俺「ハァ…すいません、エフィは動けそうにないので、自分だけ来ました」

一時エフィの連れ出しをあきらめ、俺が挨拶しに来た

坂本「エフィ?名前があるのか?」

竹井「ネウロイは、俺さんの知り合いをモデルにして、人に化けているの」

俺「その知り合いの名前からとりました」

坂本「混乱しないのか?」

俺「…本物のエフィには、もう会えないんで」

坂本「…すまん」

俺「いいんですよ」

混乱していないといえば嘘になる

現にエフィはどんどん本物に似てきている

最初は何を話しても無表情。笑ったり寂しそうにするなんてありえなかった

だが、人と触れ合ううちに感情が芽生えたのか、それが表に出るようになった

その表情やしぐさ、本当に、本物のエフィにそっくりだ

あまりに似すぎているせいで、まるで幻覚を見ているような感覚になる

俺(本物のあいつは、今何をしているんだろう…突然いなくなった俺を探してたり…)

そこまで考え、思考を振り払う。向こうへの未練は断ち切ったんだ

俺(その…はずなんだけどな…)

…エフィ………

坂本「転属の話は聞いている。またよろしく頼む」ビシッ

俺「こちらこそ」ビッ

敬礼に敬礼で返す

坂本「さて、そろそろ帰るか。宮藤!」

宮藤「あ、はい!」

荷物の運び込みを手伝っていた宮藤が、こちらに駆け寄ってくる

俺「久しぶりだな、宮藤」

宮藤「はい!俺さん、背、伸びました?」

俺「そうか?まぁいい。それで、お前に会わせたいやつがいるんだが…」

宮藤「会わせたい人?」

俺「ほら、出て来いよ」

ネウ子「キュー…」

エフィが周りを気にしながらこちらに近づく。足音を立てずに歩き、俺の後ろの隠れる

宮藤「その子ですか?」

俺「ああ…ホラ、会いたがってただろ?」

ネウ子「うん……宮藤さん」

宮藤「あ、はい」

ネウ子「…」スッ

エフィが右手を前に差し出す。肘がピンと伸びている

俺(握手のつもりか?何がしたいんだ?)

宮藤「え?…あ、まさか…」

俺が困惑していると、宮藤が驚きの声を上げる

宮藤「あの時のネウロイ!?」

ネウ子「!…覚えてて、くれた…」

また、パァァと効果音がつきそうな顔をする

俺「え゛わかるの?」

先ほどのエフィの行動にどんな意味が…

宮藤「はい、あのネウロイと巣の中でお話ししたときと同じしぐさなんです」

俺「それで、思い出したと?」

ホントにコピーなんだな…こいつ

ネウ子「お会い、したかった」ギュッ

エフィが半歩前に出て、宮藤の手を握る

宮藤「私もだよ。でも、あなたはあの時に…」

俺「そのあたりの話は、帰り道に話そう」

坂本「時間も時間だしな。トラックはあっちだ。行くぞ」

俺「では、大尉。また、いつか」ビシッ

竹井「ええ、また」ビシッ

お互い敬礼し、別れる

宮藤「さ、行こう!」タッタッタ

ネウ子「はわ、はわわ」タタタ

エフィが宮藤に手を引かれながら、小走りでトラックに向かう

だが、石畳に足を取られ、こけそうになる

俺(走る練習とかもさせようかな)

そんなことを考えつつ、自分もトラックに向かった


 501への帰路 トラック内部

宮藤「え~と、エフィさんは、ブリタニアの人型のコピーで、俺さんの知り合いを真似てる。ってこと?」

ネウ子「おおむね、あってる」

説明なう

坂本「一つ聞いても良いか?」

ネウ子「?」

坂本「なぜ、ネウロイがネウロイを攻撃したんだ?」

俺「俺も気になってた」

ネウ子「私たちの、中にも、穏健派と、急進派が、いるの」

俺「ブリタニアのときに話してたな」

ネウ子「私がいた巣は、穏健派が、集まった、巣だった」

坂本「何?なら、最初の攻撃は…」

ネウ子「…私たちの、上層部を、欺くための、形式的な侵略。できれば、やりたくなかった」

俺「でも、上にバレた…」

ネウ子「巣に、急進派の、スパイが、まぎれていた。私たちは、粛清、された」

宮藤「粛清…」

俺「…じゃあ、今、ヴェネチアにある巣は、」

ネウ子「急進派の、集まった巣。あらゆる、面において、以前の個体を、上回っている」

坂本「報告書にあった。攻撃、防御、戦術。すべてが、今までのネウロイより優れている、と」

ネウ子「急進派の、中でも、精鋭中の、精鋭。楽には、倒せない」

エフィが、表情を若干険しくして言った

ネウロイが言うんだ。相当やばいんだろう

坂本「俺、504は今、再編途中だったな?」

俺「はい。重症を負って、後送になったウィッチの代わりを集めていますが、いかんせん時間が…」

坂本「地上勢力の抵抗もいつまで持つか…」

ネウ子「今、急進派を、抑えられるのは、あなたたちだけ」

エフィが俺のほうを向く

ネウ子「お願い、彼らを、止めて…」

俺「……エフィ」

宮藤「…坂本さん、私、戦います!」

ネウ子「!」

宮藤「戦って、このロマーニャを守ります!」

坂本「よく言った、宮藤!早速帰って訓練だ!」

宮藤「はい!」

ネウ子「…ありがとう」

エフィ(穏健)と急進派

たとえ派閥は違えと、仮にも同じネウロイ

自分の同種が打ち倒されていくのを見るのは、どんな気分なのだろう…


 数時間後 501基地 執務室

俺「俺少尉、ただいま到着しました」

ミーナ「ご苦労様。それで、書類にあった、保護したネウロイって言うのは、」

俺「こいつです」

ネウ子「キュー…」ススッ

エフィはまたも人見知りを炸裂させ、俺の背中に隠れている

俺「すいません、こいつ、人見知りが激しくて…」

ミーナ「いいのよ。だんだん、時間をかけて、ここの雰囲気に慣れていけば良いわ。よろしくね」ニコッ

ネウ子「キュゥ」

ミーナ中佐の年齢以上の貫禄、母性あふれる笑顔

それを見て、エフィは人見知りを少し落ち着かせた

ネウ子「…エフィ」

ミーナ「え?」

ネウ子「私の、名前…」

ミーナ「…良い名前ね」

ネウ子「…ありがとう」

ミーナ中佐には案外早く懐きそうだな

バルクホルン「おい、お前」

ネウ子「キュッ!?」スササッ

突然声をかけられ、エフィが再び俺の背中に身を隠す

バルクホルン「はっきり言おう、私はお前を信用していない」

ネウ子「…」

バルクホルン「何かおかしな真似をしてみろ?分かっているだろうな?」

ネウ子「キュッ…」ビクビク

大尉に睨みつけられ、エフィがおびえる。背中越しでも分かるほど震えている

俺「やめてください、大尉。怖がってるじゃないですか」

エフィを庇うように手を広げる

バルクホルン「敵かもしれない奴を庇うのか?」

俺「エフィは敵じゃない」

バルクホルン「人の姿をしているとはいえ、ネウロイはネウロイだ。敵には違いない」

俺「すべてのネウロイが敵なわけじゃない」

バルクホルン「ネウロイの違いが分かるほど、戦場に立っていたのか?」

俺「これでもスオムスじゃ最前線にいた」

バルクホルン「ほぅ…面白い」

ネウ子「はわ…」

ミーナ「二人とも!」

喧嘩が始まりそうな空気を、中佐が制する

ミーナ「エフィさん、言われていると思うけど、基地内では俺さんの指示に従うように」

ネウ子「はい」

俺「…では中佐。自分は荷解きがあるので」

ミーナ「分かったわ。二人とも、戻って良いわ」

俺「失礼しました」

ネウ子「…あの」

ミーナ「?」

ネウ子「また、ここに来ても、いい…?」

ミーナ「…ええ、いつでもいらっしゃい」ニコッ

ネウ子「!」パァァ

エフィは、花が咲くような笑顔を見せた後、一礼し、部屋を後にした

バルクホルン「…人と見分けがつかん」

ミーナ「ホントにね。ネウロイといわれなきゃ分からない」

バルクホルン「ミーナ、あいつがネウロイのスパイだとは考えないのか?」

ミーナ「本物のスパイなら、ネウロイだということは隠すはず。それか、人を洗脳してスパイ代わりにするわ」

バルクホルン「確かにそうだが…」

ミーナ「やっぱり信用できない?」

バルクホルン「…どこかで疑っている」

ミーナ「俺さんもいることだし、きっと平気よ」

バルクホルン「だといいが…」

ミーナ「……そうだ、外で、宮藤さんたちが訓練を受けているはずよ。見に行ってみましょう」


 宿舎廊下

ネウ子「はわっ」グラッ

俺「おっと」ハシッ

階段でこけそうになったエフィを支える

俺「大丈夫か?」

ネウ子「なんとか」

俺「気をつけろよ。この基地は段差が多いみたいだし」

ネウ子「うん…」

石畳に階段、ドアの出っ張り…こいつがつまづきそうな所がいっぱいある

俺「ホラ」スッ

ネウ子「キュ?」

エフィに手を差し伸べる

俺「手、繋いでゆっくり歩こう」

ネウ子「…うん」ギュッ

エフィが俺の手を握り返してくる

力加減ができるようになったのか、初めての握手の時のような痛みはない

ネウ子「部屋は、どこ?」トテトテ

俺「宿舎の一番端だ。俺とお前の相部屋」

ネウ子「迷惑じゃ、ない?」トテトテ

俺「俺から頼んだんだ。目のつく場所においたほうが良いってな」

ネウ子「そう…」トテトテ


 宿舎廊下 逆サイド

エイラ「ふぁぁ……」

夜間哨戒があったので、この時間まで寝てました

エイラ(サーニャはまだ眠ってるけど…食堂からなんか持ってきて………ん?)

廊下の先に人影が見えた

黒っぽい緑のジャケット上下に、私のと色違いのポーチ。黒髪に黒瞳、中性的な顔立ち、私よりちょっと背が高い…

エイラ(俺だ!)

眠気が吹っ飛ぶ

エイラ「おーい!おr……ん?」

名前を呼びかけて寸で止まる。彼の横にもう一人、人がいる

彼とよく似た、黒髪黒瞳。扶桑人に見えたが、顔立ちは欧米のもの。ハーフだろうか?

夏なのに黒いセーターを着ている。暑そうダナ

…って、そうじゃなくて、重要なのは、

エイラ「…女の子……?」

俺と彼女が手を繋いでいることだ

エイラ「…」タッタッタ…スササ

こっそりあとをつけて行ってみる

<ここだな

<キィィ…

<結構、ひろい…

<二人部屋だからな

エイラ(二人…部屋……!?)

<うわぁぁ… トテトテ

<うれしいか?

<キュゥッ!

<クルクル回ってないで、荷解きするぞ

<手伝う…

それなりの大きさの扉が閉まる

エイラ「…」スササ…

ドアに耳を当て、中の音を聞こうとして、

エイラ「…」スタスタ

やめた

エイラ「…………俺」

トラヤヌス作戦の失敗が報じられてから、彼とは連絡が途絶えていた

『作戦中に負傷したのでは…』

嫌な考えが頭をよぎったが、彼に限ってそれは無いと、考えないようにしてきた

それでも、やっぱり不安だった

サーニャが励ましてくれたりしたけど、どこかで俺のことを気にしていた

作戦が失敗したことを伝える新聞記事を手に入れ、読み漁った

だが、どこにも俺のことは記されておらず、

一緒に載っていた写真の中には、俺の姿は写ってなかった

そして、やっと会えたと思ったら…

エイラ「誰ナンダ……あいつは…」

黒いセーターの女の子…

俺の奴、あの子に結構気を許していた

彼女に見せた、優しい…優しすぎる笑顔

あれは本来、私に向けられ…

エイラ(バカッ!私は何を…)

エイラ(…夕食のときに、あいつがどうしてここにいるか説明されるはずダ)

そのあとに、あの子が誰で、俺とはどういう関係なのか聞こう。それがいい

今まで感じたことのない、黒い感情を、無理やり閉じ込め、私は自分の部屋戻った


 夕方 ハンガーの一角 簡易の食堂

まだ基地の設営が完璧には終わっておらず、ハンガーの一角を食堂代わりにしている

風呂もサウナも完成していないとのことだったが……我慢だ我慢

まぁ、ドラム缶風呂があるらしいし、いいか

坂本「皆揃ってるな。今日は食事の前にちょっと話しがある」

リーネ「話?」

坂本「数人はもう知ってるが。おい!入って来い!」

俺「呼ばれた、行くぞ」

ネウ子「うん…」

また人見知りが出てる。ちょっと震えてる

俺「俺の背中に隠れてれば良いから」

ネウ子「わかった…」

エフィが俺の背中にすがるように隠れる

俺「皆さん、お久しぶりです」

<オヒサー、ヒサシブリダナ、ドコイッテタンダ

三者三様、っていうのか、そんな反応

リーネ「お久しぶりです。ところで、後ろのその子は…」

俺「ああ、こいつは始めましてかな。ホラ、エフィ、挨拶」

ネウ子「うん……始めまして。エフィ、です」

ぺこりと頭を下げる

リーネ「エフィさん、始めまして。あの、新人のウィッチさんですか?」

まぁ、普通はそう思うよな

ネウ子「…信じないと、思うけど、ネウロイ、です」

リーネ「はい?」

エイラ「へ?」

サーニャ「?」

ペリーヌ「ちょっと!俺軍曹!ネウロイを基地に連れ込むなんて――」

俺「エフィは確かにネウロイだが、仲間だ。それと、俺の今の階級は少尉だ」

ペリーヌ「階級はどうでもよろしい!ネウロイが仲間だなんて――」

エーリカ「はいはい落ち着こうねぇ」

坂本「トラヤヌス作戦のことは、皆知っているな。その作戦で保護されたネウロイだ」

俺「フォローありがとうございます。ネウロイの中で穏健派と呼ばれる個体で、我々人類に好意的です」

エーリカ「私たちと敵対していないネウロイ?」

俺「まぁ、そういうこと。仲間って表現はよろしくなかったな」

シャーリー「大体分かったけど、なんで人の姿をしてるんだ?」

俺「エフィ」

ネウ子「わかった…」

エフィが人の容姿の擬態を解き、ネウロイの姿に戻る

宮藤「あのときの…」

俺「エフィは人型ネウロイと呼ばれる個体で、人の容姿を真似ることができるんです」

ネウ子「人の、姿の方が、接しやすい」

シャーリー「確かに真っ黒だと、アレだな…」ハハ…

エーリカ「人の姿のモデルは誰なの?」

俺「…俺の、元の世界での知り合いだ。名前もそいつから取った」

エフィが再び人の姿を取る

ネウ子「キュッ?」

俺「…ホント、怖いくらいそっくりだよ」ナデナデ

ネウ子「キュー♪」

エイラ「ムムム……」

俺「…何うなってるんだ?」

エイラ「俺……いろいろ聞きたいんダケド、いいか?」

俺「答えられる範囲でなら、何でも聞いてくれ」

エイラ「…単刀直入に言う。俺とエフィは、どういう関係ナンダ…?」

俺「どういうって…」

答えに困るナァ…

エイラ「エフィのこと、好きなのカ…?」

俺「好きか嫌いかで言われれば好きだが……安心しろ、お前が思っているような色恋沙汰は、ない」

ネウロイに恋するほど変態じゃない

エイラ「なら、いいんダ…」

ネウ子「…………」

俺「…エフィ?」

坂本「積もる話もあるだろうが、とりあえず食べよう。飯が冷めてしまう」

シャーリー「エフィも食べるのか?」

ネウ子「栄養を、摂取することは、できないが、味覚はある」

俺「主食は鉄とか金属なんですけどね。食物から鉄分を摂取することもできるとか」

シャーリー「…さすがネウロイ」

全部それで説明がつきそうだから怖い


 談話室

夕食後、ハンガーから談話室にやってきた

中佐の許可を取り付け、質問・交流会となった

バルクホルンとペリーヌは反対したが、宮藤の説得により懐柔

質問とその回答をまとめておく

  • Q、他の人の姿を真似ることはできるのか?
  • A、できなくはないが、基本はこの姿
  • Q、人の姿でもビームは撃てる?
  • A、足をユニットに変形すれば飛べるのと同じで、手先をネウロイ化させれば撃てる
  • Q、その服はどういう構造?
  • A、この体は、人間で言う裸体と服の部分の二層構造になっており、服の部分は自由に変形・変色させることができる
  • Q、洗脳等はできる?
  • A、人の記憶を覗く力を応用し、いろいろすることはできる

シャーリー「いろいろってどんな?」

ネウ子「人の記憶を、映像にし、他者に、見せることが、できる」

エーリカ「見せるって、映画みたいに?」

ネウ子「こんな、感じ」

エフィが目を瞑る。彼女の胸元が開き、コアがあらわになる

コアが発光し、その光が部屋を包む。直後、部屋の様子が一変した

エイラ「ウェ!?」

サーニャ「これ…空の上?」

宮藤「すごい…」

バルクホルン「どうやったんだ?」

ネウ子「壁、床、天井に、同時に、映像を投影する。ブリタニアの、巣で、やったことの、応用」

ネウ子「試しに、誰かの記憶を、流して、みる?」

ミーナ「面白そうね。誰の記憶にしましょうか?」

エーリカ「はいはい!俺の記憶が見てみたい!」

シャーリー「お、いいなそれ!」

俺「ちょっと待って!何で俺!?」

エーリカ「だって、俺って向こうの世界の話しぜんぜんしてくれないし」

シャーリー「ちょっと興味あるんだよねぇ」ニヤニヤ

俺「……聞いてて面白い話じゃないぞ」

ネウ子「聞くんじゃ、ない。見るの」スッ

俺「は?」

エフィがいつものように俺の額に手をかざし…

<ビリリッ!!

俺「フギュウッ!?」バタッ

エイラ「お、おお、おい!大丈夫なのか!?」

ネウ子「気絶させた、だけ。相手の意識が、ないほうが、記憶を、覗きやすい」

シャーリー「じゃあ、見せてくれるんだな?」

ネウ子「彼の、言うとおり。あまり、良いものじゃない。それでも、見る?」

エーリカ「もちろん!」

ルッキーニ「あたしも見たーい!」

エイラ(こいつら…)

良いものじゃない、の意味を取り違えてると思う

面白くないって意味じゃなくて、残酷って意味なんじゃ…

ネウ子「では、まず、彼が、13歳のときの、記憶から…」キィィン!

部屋が再び光に包まれ、一度暗転

今度は薄暗い、洞窟のような場所――地下道――が投影される

エイラ「ここは?」

ネウ子「2026年、ロサンゼルス郊外地下。機械軍の、襲撃を受け、多くの人命が、失われた」

宮藤「機械軍……――ひッ!?」

バルクホルン「どうした!みやふ…――いッ!?」

二人の視線の先には、

ミーナ「…骸骨」

それもいくつも横たわっていた

ルッキーニ「うじゃぁ…」

シャーリー「ルッキーニ、私の後ろに隠れてろ」

サーニャ「…」ビクビク

エイラ「…」ギュッ

怖がるサーニャの手を握る

ネウ子「言ったでしょ?いいものじゃ、ないって」

俺は、エフィの力か何かに支えられ、空中に座っていた

<ガチャン!バタン

坂本「なんだ!?」

ネウ子「彼の、登場」

地下道の天井にポッカリ丸い穴が開く。マンホールのようだ。その穴から、一人の少年が降りてきた

エイラ「俺…」

身長は今より低く、顔もどこか幼いが、紛れもなく俺だった

ネウ子「彼は昔から、単独での、偵察任務を、得意としてきた」

サーニャ「一人で…」

俺(13)『司令部、目標に到達。もぬけの殻だ。壁のあちこちに弾痕を発見。襲撃されたようだ』

ネウ子「今回の任務は、連絡の途絶えた基地の、生存確認」

俺(13)が使い込まれたAKを構え、地下道を進んでいく。この頃はプラズマライフルがない

エイラ「なぁエフィ。お前は、俺のこの世界での知り合いを真似たんだよナ?その知り合いはどこに?」

ネウ子「これから、会える」

エイラ「?」

俺(13)が、一つの扉に手を掛け、勢い良く開け放ち、中へ突入する

中に居たのは、

俺(13)『子供…?』

エフィ『…?』

薄汚れた服を着た、黒髪黒瞳でハーフの少女――幼い頃のエフィ本人だった

エイラ「あいつが…」

ネウ子「私の、モデル。この時点で、彼女の、年齢は、11歳。彼の、二歳下」

俺(13)『君、お父さんやお母さん、一緒にいた人たちは?』

エフィ『…』フルフル

俺(13)『そうか…ここは危険だ、移動しないと。歩けるか?』

エフィ『…』コクコク

俺(13)『よし、行こう』

<ドォォン!!

坂本「爆発?」

エフィ『…』ビクビク

俺(13)『…安心しろ。お前は、俺が連れて帰る』

ネウ子「このあと、彼は彼女を、連れ帰った」

再び部屋が暗転し、今度は放棄された地下鉄車両基地が映し出される

エイラ「今度はどこだ?」

ネウ子「彼の、当時の、所属基地」

俺(13)『ところで、名前は?』

エフィ『なま、え…?』

俺(13)『そう。あるだろう?』

エフィ『ある…でも…思い、出せない』

エイラ「どういうことダ?」

ネウ子「彼女は、目の前で、両親をなくし、そのショックで、一部の記憶を、失った。言葉も、うまく話せない」

サーニャ「記憶なくすほど…」

ネウ子「それだけ、残忍な、殺され方だった」

俺(13)『よし、じゃあ、今日からお前の名前はエフィだ』

エフィ『エ、フィ…?』

俺(13)『E・F・F・Yでエフィ。どうだ?』

エフィ『…気に、入った』ニコッ

俺(13)『そいつは良かった』ニッ

ネウ子「二人は、家族のいない、孤児同士、意気投合した。
    彼は、彼女を、妹のように、大切にし、
    彼女は、彼を、兄のように、慕った」

二人の映像が次々映し出される

楽しそうに笑い合っているもの

身を寄せ合い、一つの毛布で睡眠をとっているもの

髪と目の色が同じなので、はたから見れば、本当の兄妹のようだった

ネウ子「二人は、基本、いつも一緒」

シャーリー「エイラとサーニャみたいだな」

サーニャ「///」

ネウ子「私も、彼と、似たような、関係を、築きたい」

エイラ「え?」

ネウ子「恋人・兄妹を越えた、理想の、信頼関係。それに、あこがれた」

サーニャ「じゃあ、エフィさんの姿を真似たのは、そのため…」

ネウ子「そう…ネウロイ同士では、あんな関係は、存在、しなかった」トテトテ

エフィがバルクホルンに近づく

ネウ子「理解して欲しい」

バルクホルン「?」

ネウ子「私は…敵じゃない」

バルクホルン「……安心しろ。今すぐお前を追い出すようなことはしない」

ネウ子「じゃあ…」

バルクホルン「だが、おかしな真似をしたら…分かってるよな?」

ネウ子「…何度も、言われた」

バルクホルン「なら良し。改めてよろしく」

ネウ子「よろしく……お姉ちゃん」ニコッ

バルクホルン「!?///」

ミーナ「あらあら、懐かれちゃったみたいね」

エーリカ「新しい妹だね」ニシシ

バルクホルン「う、うるさい!///」

<ワー!オコッター!コラマテー!ハハハッ!


===


 夢の世界 精神と時の部屋のような場所

俺「………………誰か起こしてくんねぇかな」





 ―次回予告

 俺「……」


 エイラ「ドーシタ?遠い目して」


 ネウ子「お姉ちゃん…!」キィィン!ビュォォン!!


 俺「え?、あ、おい!エフィ!?」


 バルクホルン「ふっ…魔力がないネウロイには、わからんだろうさ…」


 ネウ子「……あなたには、死んで欲しく、ない」
最終更新:2013年02月15日 12:45