【朝、ワイト島分遣隊基地にて】
チュン チュン
俺「ふわぁぁぁ~…あー節々が痛いわぁ」ズーン コキッコキッ
昨晩、隊長と二人で任務に訪れたワイト島。
しかし到着して早々深夜まで作業を行うことになり、睡眠時間も三時間といったところだ。
更に隊長から「制裁」と言う名のジェラシー体罰を受け、首の辺りがまだ赤い。
今は身体の鈍りを解すために散歩している。
俺「(とりあえず朝飯食べに行かないとな。)えーっと男性兵士用の食堂は…」キョロキョロ
ラウラ「んぅー」ノビー
俺「え?」
ラウラ「…ん?」
俺「……」
ラウラ「……」ジー
俺「あー……あの…」
ラウラ「あなたは誰?」
俺「ふっ風呂の修繕任務のために昨晩派遣されてきました、扶桑海軍設営隊の俺一等兵です」
ラウラ「……ラウラ・トート」
俺「よ…よろしくおねがいします。(ラウラ…昨日角丸中尉がおっしゃってた少尉のウィッチ?)そ…それよりですね…」
ラウラ「?」
俺「せめて…上着をっ、しっかり着て頂きたいのであります!!」
ラウラの着ているYシャツの胸元が豪快に肌蹴ているのだ。
ラウラ「…こっちのほうが涼しい」
俺「お願いですので胸元を閉じてください!!(って言いながら俺、目を伏せていない!?いや伏せられない!胸!おっぱい!へへっ)」
ラウラ「普段はここ、朝は誰もいないから」
俺「そうなんですか!?と申しますとつまり…(え、何、ここに来ちゃった俺の方が悪いの?)」
ラウラ「…あ」
俺「(見続ける?いやバカか!とにかく謝んなきゃ)大変っ申し訳ありませ」
フラン「ちょっと何してんのよあんたぁー!!」ダッダッダッ!!
俺「ってフランシー少尉いぃ!!?」ビクッ
フラン「ラウラっ、あんたコイツに何かされて無い!?」
ラウラ「別に…何も」
俺「(最悪だ!なんでこのタイミングで来た小娘!?)そう!誤解です!俺は偶然こちらを散歩していましたら」
フラン「あんたの話は聞いてないの!」
俺「いやいやしかしっ」
フラン「昨日のコトと言い、今日のコトと言いぃ…いいかげんにしなさいよドへんたい!」
俺「ごがっ…!!」グザッ
フラン「もぉーうどうなっても知らないんだから!ラウラ、早く朝ご飯食べに行くわよ!」
ラウラ「ん…」
テクテクテクテク…
俺「まっ待ってふださ」
フラン「待つワケないでしょ!」ベェー スタコラ
シーン…
俺「(上に報告される…完全に終わった)…………ひたも噛んじった、ひくひょう…ちくしょう…」ガクッ
【ウィッチ達の食堂にて】
隊長「私が同席しても本当によろしいのですか?」
角丸「到着して早々勤務時間外でも作業を行ってくれたんですもの、私達からのせめてものお礼です」
隊長「そうですか…ウィッチの皆様とご一緒に、しかも同じお食事を頂けるなんて光栄であります」
アメリー「それにしてもフランさんとラウラさん、おそいですぅ…」
ウィルマ「うーん昨日の仲直りも含めて俺を連れてきてって言ったのはもしかして失敗だったかなぁ?」
アメリー「えー!?そんなこと言ったんですか?」
ウィルマ「フランの朝の様子からして上手くいくんじゃないかと思ったけど…」
バンッ!
フラン「ふんっ」プンスカ
ラウラ「ふぁぁ…」
アメリー「あっ!フランさんラウラさん!もう待ってたんですよ……ってあれれ?俺…さんは?」
フラン「あんなヤツ呼ぶべきじゃないの!」
ウィルマ「あー…(また何かあっちゃったみたい…)」
フラン「隊長、言わなきゃならないことがあるわ!」ズンズンズン
角丸「な…なにかしら?」
フラン「昨日からここに来た俺ってやつがラウラに手をだそーとしてたのよ!!」
角丸「えっ!?」
アメリー「ふぇえ!?」
ウィルマ「あら」
隊長「……」ピキィ
ラウラ「?」
【男性兵士用の食堂にて】
俺「すみません…おばちゃん。何か食べ物はございませんかね?」
食堂のおばちゃん「今日は整備兵や管制士達の仕事が早いから朝食の分は無くなっちゃったよ、昼まで待ちな」
俺「……少しもございませんか?」グー
食堂のおばちゃん「………分かったよ。今から芋でも茹でてやろう」
グツグツ
食堂のおばちゃん「はいよ」コトッ
俺「はぁ…いただきます」
【ウィッチ達の食堂にて】
角丸「そっそれは本当なの!?」
フラン「本当よ、この目でみたもの!」
アメリー「はわわわ何されたんですかっ、ラウラさんっ!!」
ラウラ「何もされて無いけど」
フラン「あいつ…ラウラに上着をどーだの胸元がどーなの言ってとにかく脱がそうとしてたわ」
ウィルマ「へぇー見かけによらず大胆なんだぁ」
隊長「責任をとって殺しましょう」ガタッ
角丸「ちょっと皆待って!ラウラ、本当にあなた…その……俺さんに服を……?」
ラウラ「えぇ」
角丸「じゃあ本当に…(分遣隊結成後初の男女間の不祥事!?)」
ラウラ「…でも注意されていただけ」
角丸「え、注意?」
ラウラ「初めに脱いでたのはどちらかと言うと私の方だから」
アメリー「??なんだか…良く分からなくなってきました…」
この後、ラウラの曖昧な発言により誤解は揺れ動いたものの、どうにか解かれる結末となった。
隊長の顔は次第に穏やかになり、談笑を踏まえながらのウィッチ達との食事をさぞ楽めたそうな。
だが「誰かさんの勘違い」と結論し事を終えたと皆が思っている中、一人だけ納得できない女の子がいた。
当然、フランシー少尉である。
フラン「ふんっ…何よあいつ……鼻の下のばしちゃってたくせに」
【日中、風呂場(修繕中)にて】
隊長「やっと来たな、免罪符が下りて良かったじゃないか」
俺「ですね…」ゲソー
隊長「よーし、これより修繕作業の為の事前調査を再開する!我々の任務は破損原因の解明、損害状況の把握、そして修繕時における必要最低限の搬入資材等の数量を特定することである!」
俺「…はぁっ」
隊長「二人しかいないので別にこんな事言わなくても良いのだがな!はははっ!」
俺「はぁ…」
隊長「元気が無いナァ俺一等兵!噛まずに素早く任務内容を言い切った私を尊敬したまえ!そしてウィッチ殿達とのお食事に同席した私を崇拝したまえ!」
俺「(あんたがうるせぇことしか評価できないよ…)素晴らしいと思います…」
隊長「はっはっはぁ!!」
俺「はははぁ…(うぜぇ…)」
隊長「さて、昨日の深夜の内に被害状況と資材の必要量数は各々把握できた。後は原因の解明だ」
俺「…と言うと、フランシー少尉がおっしゃっていた『穴』のことですか?」
隊長「そうだな。何故、岩が割れるような衝撃が加わった痕跡があるか大変疑問である」
俺「解明しないと対策も立てられませんし今回のような件が再発する可能性もありますからね…」
隊長「割れた岩とその周辺をもう一度入念に調査してみよう。何か発見できるかもしれん」
俺「了解」
空腹に耐えながらも俺は隊長の指示通り作業に取り掛かった。
破損した岩の周辺を様々な角度から見て気になる点を紙にメモする。
そして特に原因が分からないまま昼食も食べずに夕方になった頃、俺はある一つのモノを発見する。
俺「(疲れんなぁ…それにしても何もわからん)えぇと、この岩が壊れて…それであっち側に湯が漏れて…」
隊長「やはり建設時から問題があったのだろうか」
俺「そうですかね。じゃあこれ以上の調査はもう……?……あれ?…あれはぁ…」
隊長「ん、どうした?」
俺「いえ、湯が漏れ出た方向に何かが…」
風呂の外に敷き詰められている砂利の隙間に何かが埋もれている。
周辺を歩いているうちに砂利が除けて次第に姿を現したようだ。
俺「これは…鳥の羽?」
隊長「羽?温泉に水浴びをしにくる鳥とは珍しいな。ちょっと貸してみろ」
俺「はい」スッ
隊長「一体何の鳥……?…この感じは!?でかしたぞ俺、原因が分かったかも知れん」
俺「え?本当ですか!?」
隊長「あぁ。推測するに…この基地にいらっしゃる、白鳥さんが犯人のようだ」
俺「……はぁ?」
【夕方、滑走路にて】
ヴォォォォン
角丸「これで今日の訓練は終了ね」
アメリー「ふぃぃ…やっと基地に着きましたぁ」
ウィルマ「それにしてもフラン、結構腕が上がってきたんじゃない?今日の
模擬戦は中々のものだったわよ」
フラン「とっ当然よ!あたしを誰だと思っているの」エッヘン
ラウラ「嘘、まだ全然」
フラン「なっ!?ちょっとラウラ、あんたねぇー!」
角丸「あら、隊長さんと俺さんが出迎えてくれてるわよ」
アメリー「手を振ってます!お~い」
フラン「あいつぅぅ…またノコノコと…」
ヴォォォォン… ガシャ
隊長「お帰りなさいませ」
角丸「お出迎え感謝します。それで…なぜここに?」
隊長「自主的な意味もありますが、報告したい事もございますので」
ウィルマ「報告したいことって?」
俺「はい。言いづらいのですが……率直に申しますと風呂が壊れた原因が分かりました」
角丸「えっ!?」
アメリー「はわわ…ってゆうことは、やっぱりフランさんが…」
フラン「だからそんなわけないでしょ!」
俺「それが…あの……これが原因でして…」スッ
ウィルマ「え?…それは」
ラウラ「鳥の羽…」
俺「はい…風呂場に落ちていまして。角丸中尉…この羽に見覚えはありませんか?」
角丸「えっ私?鳥の羽ねぇ、うーん……!そうねぇ、たしかあの時――」
~回想、一週間前、風呂場にて~
チャポーン…
角丸「ふぅ…今日も疲れたわね…んぅー」
角丸が背筋を伸ばした後、湯船に浮かぶ何かに気が付いた。
手にとって確認してみる。
角丸「あら、これは…鳥の羽かしら?ふふっ鳥さんも温泉に来てるのかも…」
チャポーン…
角丸(何だか…眠くなってきちゃった…――)
フラン『だいたいあんたはいちいち細かいのよ!』
アメリー『フランさんだって、ちょっと不器用すぎるんじゃないかと思います!』
ポカスカポカスカ
ぐぐぅ…
ドンッ!!
しゅぅぅぅ
角丸『二人とも…』
フランとアメリー『……』ガクガク
角丸『食事は仲良く食べましょう…ね?』
角丸「――はっ!」バシャッ!
角丸(いけない…また眠っちゃってたわ…)
角丸「……でも、あの時のパーティーの良い夢を見れた」
角丸(そうね…私はここに来て正解だったのかも)
角丸「ふふっ…またできると良いなぁ」ザパァッ
角丸(あれ?ちょっと身体が重い…まだ疲れが溜まってるのかな?)
岩「」ピキッ ピキィッ
【夜、ウィッチ達の食堂にて】
角丸「本っ当に申し訳ありませんでした!!」
隊長「いえいえ、中尉が朝話しておりました固有魔法『金剛力』の話を思い出しまして」
ウィルマ「あははっ!まさか隊長さんが原因だったなんてね」
角丸「笑い事じゃないわよぉ…」
隊長「それで羽を調べてみた結果、予想通り魔法力が検出されましたのでこれはもしやと思いましてな」
アメリー「でもケガしなくて良かったです~眠っている隊長の金剛力が隊長自身に当たってたら大変でしたし…」
ラウラ「良かったといえば良かったのかも」
角丸「それはそうかもしれないけど……ごめんねフラン。あなたのせいにしたりして…」シュン
フラン「べっ別に良いわよ!隊長も悪気があったわけじゃないし、後はお風呂が早く直ってくれればいいだけだから」
隊長「はい、早急に完成させましょう。そして以前よりも豪華に、此処を世界一の風呂にしてみましょうぞ」
角丸「か…改装はちょっと…」
ワイワイ ガヤガヤ
フラン「ねっ…ねぇ…そういえば…あいつは?」
隊長「俺のことですか?あぁ、あいつならまだ風呂場で鍛錬しているところです」
アメリー「たんれん?ですか?」
隊長「えぇ、まだ見習いなので。しかし普段なら真っ先に食事にありつこうとするのですが」
ウィルマ「そういえば…食堂の人が言ってたけど俺はまだ朝に芋しか食べてないみたいな…」
フラン「…えっ」ビクッ
隊長「どんな風の吹き回しか今日は『鍛えたい』なんて言い出しましてな!いやぁ良いことですよ」
角丸「そうですか…あまり働きすぎて身体を壊さなければいいですが」
フラン「……」
ウィルマ(フラン……)
【夜、風呂場にて】
俺「っ…くっ…!」キンッ キンッ
俺は隊長に割れたから使ってよいと言われた岩に石彫用のハンマーとノミを使って正確な球体を彫りだしていた。
ノミを打っては間を置いて、形を良く見てから修正用の赤いチョークで再度線を引く。
俺(鳥の羽…魔法力か…くそっ…)
俺「ふぅっ…ちょっとズレてんな…修正しなくちゃ」
俺(飛べない男……本当なら男の俺が戦わなくちゃならないのに…あんな小さい子達を戦わせてしまっている…)
俺「忘れんな…何のために設営隊に入ったと思ってんだよ俺…」キンキンッ
俺(戦えない俺にできることはこれしかないんだ。だから…)
俺「絶対に墓石職人にならなくちゃ駄目なんだ…俺は…」キンキンッ
フラン「あいつ…――」
ウィルマ『俺のところに、食事持っていってあげたら?』
フラン『なっ!?なんであたしが…あいつの為なんかに…』
角丸『でも、きっとお腹空いていると思うわよ?』
フラン『……』
ウィルマ『フラン?』
フラン『……………ね…ねぇ…隊長?』
角丸『なにかしら?』
フラン『男が食べやすい、ふそーのご飯…教えてくれる?』
フラン(せっかく私がおにぎりってやつを作ってやったのに…あんなに頑張ってるなら渡しづらいじゃない…)
俺「…っ…くっ…!」キンッ キンッ
フラン(ああっもうっ!!)
フラン「ちょっとあんたぁー!!」
俺「えっ!?ふぇ!?」
フラン「ここにご飯置いとくから食べなさいよっ!」
俺「…フランシー少尉…なんでここに?」
フラン「いいから!ちゃんと食べるのっ!」
俺「は…はぁ」
フラン「そっそれじゃぁあたしはもう行くから」ダッ!
俺「あっ…フランシー少尉!」
フラン「えっ」
俺「ありがとうございます。大事に頂きます」
フラン「!!…ふ…ふんっ///………お…おやすみ…」ボソッ
俺「…え?…すみません今なんて」
フラン「うっうるさい!なんでもないわよ!」ダーッ!
俺「あ…行っちゃった…」
魔力がこめられた鳥の羽、銃を持ち空から帰ってきた彼女達。
自らの過去と、何故自分が軍に、設営隊に入ったか、それを再度確認するような一日になったと思う。
俺「……腹も限界だし、ありがたく飯でも食うか」
しかしその日の最後を飾ったのは、
パクッ
俺「…なんで甘いんだよ………このおにぎりは…」
塩と砂糖を間違えたフランシー少尉特製のおにぎりであった。
つづく
最終更新:2013年02月15日 13:12