器用貧乏な俺
【501基地 正面ゲート】
坂本「じゃあ行って来る。遅くても明日の朝までには戻ってくるつもりだ」
ミーナ「久々の休暇なんだから、しっかり疲れを取ってきてくださいね坂本少佐」
坂本「あぁ、無論そのつもりだ。しかし休みを取るのは本当にひさしぶりだ、確かどれくらいぶりだったかな……?」
車<ブロロロ……キキィ!
土方「少佐、準備の方は完了しました」
坂本「ん、わかった。ミーナ、後の事はよろしく頼む」
ミーナ「いってらっしゃい、美緒」
ガチャ
ブロロロロロロ……
ミーナ「……無理しちゃって、もう」
ミーナ「俺さんったら、見送りもせずに何をしているのかしら?」ハァ
□
【射撃場】
バンバンバンッ!バンッッッ!!
俺「…………」バンッ!
的< ○
俺「……くそっ」チャキン!
スッ
俺(手? 誰が俺の手に重ねて)
ゲルト「喋るな。目を逸らさず目標に当たるその瞬間まで視線はそのまま」
俺「い、いきなり何を」
ゲルト「二度は言わん」
俺「ッ………」
ゲルト「そうだ、集中しろ」
俺「―――――――」
バンッッッ!!
的< ◎シュウウ・・・
俺「当たった……」
ゲルト「お前は撃つ直前の照準は出来てるが、発砲の瞬間になって目を瞑る癖がある。それでは当たるものも当たらん
だから反復練習の際にそれを意識して繰り返せ、そうすれば少しはマシになる」
俺「は、はい」
ゲルト「――人との付き合い方も同じだ。相手の事をしっかり見てやれ」
俺「ッ!……それは俺じゃなく!!」
ゲルト「誰の事だ?言ってみろ、もし坂本少佐のことのつもりだったら前歯全部へし折るぞ」
俺「……」
ゲルト「お前はな、ひとつ誤解をしている」
ゲルト「坂本少佐は別に情けないお前に同情して、このストライクウィッチーズに入れたわけじゃない
あくまで、お前が必要だから勧誘したに過ぎん」
俺「信じられません、俺より優秀なウィッチなんてもっと他にもいるはずです。何で俺なんですか?」
ゲルト「知りたかったら本人に聞け。私はその具体的な理由までは知らん、知っているのはお前が昨日少佐に癇癪をぶつけたくらいだ」
俺「あれは……その」
ゲルト「自分の立ち位置が分からずにその困惑をあんな言葉にするくらいなら、もっと周りの人を、身近な人の事を知ろうとしろ
そうしなければ、また同じ事を繰り返すぞ」
ゲルト「……まぁ、私も人の事は言えんがな」
俺「大尉も、ですか?」
ゲルト「昔、私も大切な者をまっすぐ見てやれなかった時期があった。ただその時、そんな愚かな私を助けてくれた人たちが居た。そういうありふれた話だ」フッ
……さて、その時の私と同じ様になっているお前にまっさきに声をかけて気にしたのは誰だったかな」
俺「――それは」
ゲルト「更に重ねるが、お前は坂本少佐にスカウトされたその時、本当はどう思ったんだ?」
ゲルト「その上でお前は、何を想う?」
俺「………………」
ゲルト「ふぅ……するべき事が分かったなら行って来い、少佐は今はローマの街に居る。なんなら私が車を出しても」
俺「……ありがとうございます!」ダッ!
ゲルト「って! 人の話は最後まで!!……まったく、やる気になった途端にこれか、世話の焼ける奴だ」
ミーナ「男の人ってみんなこんなものよ、トゥルーデ。体は大きくなっても中身は子供のままなんだから」
ゲルト「そういえばクルトの時も――――ってミーナ!?いつからそこに!!」
ミーナ「うふふ、カッコよかったわよ」
ゲルト「い、いや、その///……ぐぬぬ」
ミーナ「あらあら」
□
【ローマ市内】
坂本「ふぅ……必需品もこれで買い済ませたか、荷は車に積んで、と」ドサッ
坂本「土方、そろそろ宿泊先に連絡を……ん?」
土方「―――――」スピー
坂本「土方?」ポンポン
土方「ん……む」
坂本「寝てるのか……起こすのも悪い、少し時間を潰してくるか」
タッタッタ…
土方「うーん……うー…少佐とのフラグが……あぁ……」ブツブツ
――――――
――――
――
―
坂本(とはいったものの)
坂本「普段は補給品を買うくらいしか寄らんものだから、どこで時間を潰したら良いか分からんな
えーと、あの噴水のあるところがロトンダ広場で……」
坂本(こうして見知らぬ街を歩いていると昔を思い出す。確か醇子や若と一緒に浦塩を歩いたな)
坂本(あの時のことは何故かあまり憶えていないが、ただ楽しかった気が……)ハッ!
坂本「――――憶えていない、か」
『どうです! 驚いたでしょう俺の固有魔法!! 何でも出来るんですよ!?
よし!これで皆も俺を認めてくれるぞー、楽しみだなー……少佐も協力してくれてありがとうございました!』
『嘘だ』
『――――の全てを無かったことに』
坂本(………俺)
坂本(お前があの時、魔法で何を願ったか今でも分からない)
坂本(事実としてあったのは、軍や部隊にあったお前に関する資料、そして記憶が私を除く皆から消えていた事だった……)
坂本(それから私は探した、探し探して――――――ようやく、お前に会えた)
坂本("以前"と違い、あの魔法をお前は使えなくなっていたが、もうそれは私には関係のないことだった
気が付けばお前を501に誘い、近くに置いていた……そう行動した理由は感謝の気持ちや、調べて知ったお前の過去に対する憐憫
などといったハッキリした事かは自分でも判別は付かない、いや出来ないのかもしれない)
『少佐ァーーー!』
坂本(ただ、あの日々を思い出すと、残された魔法力が尽きるその瞬間まで)
坂本(また一緒に空へ飛びたい、そう思ってしまった)
坂本「私は……」
坂本(帰ったらもっとしっかり話してみよう、この理由は上手く説明する事が出来ないかもしれないが
あいつの苛立ちを受け止めるくらいの事は私でも―――――)
「よぉ、ネェちゃん泣いてるけど男にでも泣かされたのかい?へへへ」
坂本「ん?」
坂本(これは……)
モヒカンA「ていうか今暇?俺達と遊ぼうぜぇ。あんた扶桑の人だろ?俺達ここは地元だし詳しいんだよな~」ニヤニヤ
モヒカンB「迷子なの?迷子なの??どこにイケばいいのか分からないのー?あぁっす!」
全裸C「そうか」
モヒカンA「お前は服を着ろって何度言ったら分かるんだよ馬鹿!!」
モヒカンC「はっ!?……ひゃっはー!」
坂本(
物思いにふけってる内に路地裏に迷い込んでいたか……私も未熟だな)ハァ
坂本「あー……怪我をしない内に離れたほうが良いと思うぞ、うん」
モヒカンA「あぁ~~~~?」
モヒカンB「痛いの?」
坂本「ごちゃごちゃ言うのもあれだから単刀直入にいうと、手加減は慣れていないから骨の一本や二本はやってしまうかもしれん
――――――だからさっさと失せろ」
モヒカンA「ッ!? ひ、人が親切にしてれば舐めやが(ry」
モヒカンB「イッポンやニホン!?あぁっす大胆だなぁ~~そんなに同時に相手しちゃうんだぁ~~~」
モヒカンC「服を脱ぎたい……でも怒られたし…いやしかしお尻が…・・」
モヒカンA「お前らもう喋んな」
坂本(面倒だな……今のうちに退散してしまうか)
ダダダダダダダダ!!
「少佐に、何してんだお前らぁぁぁ―――――!!」ブンッ
モヒカンB「ぐぇぇぇーーー!?」ガッ!
坂本「俺!?」
俺「その人から、離れろぉ―――!!」
モヒカンA「てめぇいきなり何しやがる!!あぁ!?」ドスッ!
俺「ガッ!?」
モヒカンC「俺を受け止めてくれー!いや突っ込め!!」ブン!
俺「こ、のぉ!!」
坂本「俺!……くっ」ダッ
スッ
俺「………」パクパク
坂本「!?」
てを ださないでください
モヒカンA「オラァ!!立てや!!!」ツカミ
俺「うるせぇ馬鹿野郎!!」ガッ!
モヒカンA「あ"~~~~!?」
―――――――
―――――
―――
モヒカンA「なんだこいつ、弱い癖にしゃしゃり出やがって」
俺「」ヒュー…ヒュー……
モヒカンB「あんなにビンビンだったのにもうヘタれちゃったあぁっ!たの?」
モヒカンA「まったく!観光を手伝いたかっただけなのによ……」ブツブツ
□
坂本「俺、起きろ。終わったぞ」ペシペシ
俺「……少佐?」
坂本「俺?……何でここに、というかさっきはどうしてあんな無茶を?あの程度の連中なら仮に襲いかかっても私なら問題なく対処出来たんだぞ」
俺「い、いえ……男として女性があんな大の男に囲まれていたら考える前に飛び出しますよ、ハハッ」
坂本「まったく……ここには宮藤もいないのだから治癒は使えないのだぞ。どれ、見せてみろ」
俺「たっ!あたたたた……」
坂本「我慢しろ、男の子だろ……ふむ、頑丈なものだな。これくらいなら唾でも付けていけば良いか」ジッ
俺「えっ!?」
坂本「どうした? 何かあったか?」
俺「い、いえ」カァァァ…
トボトボ……
坂本「トラブルに巻き込まれたせいで日も暮れてしまったな……早く今日の宿に行かなければ
お前はどうする?休暇で、来たんだろう?」
俺「………」
坂本「む……」
俺「………」
坂本「その、だんまりは困るというかだな」
俺「……――――――少佐」
坂本「」ビクッ
俺「俺は少佐に言いたい事があって来ました」
坂本「……そうか」
坂本「聞こう」
俺「俺がウィッチとして優れていないのは話しましたよね?あ、その否定はやめて下さいね。慰めは嫌いです」
坂本「……」
俺「昨日はあれだけその事で喚き散らしましてすいませんでした、いろいろ溜まっていたのが爆発してしまって……その」
坂本「いや、あれは私が変に触れてしまったから……すまん」
俺「元々、俺が拗ねていたのが原因ですから」
坂本「拗ねる?」キョトン
俺「だってそうでしょ? 誘われてやって来て浮かれて、自分の実力さえも忘れて満足に戦えないのにイラついて……役に立てないのは今更なのに、とんだ餓鬼ですよ」
坂本「………」
俺「本当に、すいませんでした」
坂本「……部隊にスカウトした私が悪いと思ってたんじゃないのか?」
俺「あの時は、思ってました」
俺「でも、教わったんです。そんな上っ面だけの気持ちに誤魔化されない本当のあなたへの言葉があった、て」
坂本「……?」
俺「せーーのっ」スゥゥゥ
――――――ありがとうございましたッ!!
坂本「―――――――――」
俺「俺は501、ストライクウィッチーズに入って確かに辛くて苦しかったです。でも、それよりも」
あなたに部隊に誘われたその瞬間の、誰かに必要とされたその嬉しさは本当なんですから」
俺「これからもまだ頑張っていこうと思うんです。その最初の気持ちさえ思い出していけるなら、俺みたいな奴でもやってみようと思えます」
これが俺の言いたかった事です」
俺「……すんません、恥ずかしいことを」
坂本「―――いや」
坂本「かっこいい、と思うぞ、うん」
俺「あ"―――――」ポリポリ
坂本「なんだ?照れるのか、そんなことないのに」
俺「…男としちゃこれ以上とない辱めっすよ、理由が手を差し伸べてくれたのが嬉しかったって……」
坂本「ふむ、それなら私も――――――――お前に一緒にいて欲しかった!!」
俺「……は?ぇ、ちょ、え?えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」
俺「いいいいいいいいきなりなんでしょしょしょうか!?」
坂本「……これが理由だぞ?部隊にスカウトした理由は。どうだ恥ずかしいだろう!? ははは、はーーーーはっはっはっは!!!」
俺「…………」
坂本「はっはっはっはっはっはっはっは笑えぇ!!笑うんだ俺!!」ガシィ!
俺「えーっと、いや、その」
坂本「笑ってくれ!頼むから……こんな職権乱用な、人に言えない理由だったんだぞ、クッ」
俺「……馬鹿ですねぇ、俺達」
坂本「まったくだな、軍を何だと思っている」
俺「ははははは……」
坂本「―――――正直ここまで遠回りするとは、誘った時は思わなかったぞ、うん」
俺「俺、女性とかウィッチ云々で苦手だったんでそういうの察するとか期待しないで下さいよ。ちなみに、何で俺なんですか? あの時は初対面でしたよね」
坂本「やっぱり知りたいか?」
俺「えぇ、少佐の口からはっきりと」ニッコリ
坂本「ふふふ、まったく、さっきから恥も何も吹き飛んでしまいそうだ……少し長くなるぞ近くに来い、ベンチに座わろう」
俺「……なぜ膝をポンポン叩いてるんですか?」
坂本「長くなるといっただろ?だから楽な姿勢で聞くといい、さっ」ウェルカム
俺「……えいや」ボスッ
坂本「ひゃん!?……揺れただろう、馬鹿もの」
俺「えへへへ、良い感触でしたよー」ニヤニヤ
坂本「こいつめ……まぁ、言ったのはこっち側だから弱みもあるが……それにしても子供っぽいのは前からというか」ブツブツ
俺「?どうしました」
坂本「なんでもない!とにかく話すぞ!! あれは……その前にちょっと顔を上げろ」
俺「ん、どうしまし――――――」ムグ
坂本「ふふふ……改めて、終わった筈の夢を続けてくれてありがとうな、俺」
―――さっ、ではどこから話そうかな? そうだな……まずは何でも叶える
魔法使いのお伽噺を―――――
Fin.
最終更新:2013年02月15日 13:18