~談話室~

俺「よいしょ……よいしょ……っと」

ラル「俺。一体それはなんだ?」

俺「よっこらせ! ふぅ……これはな。扶桑の人を堕落させる魔の暖房器具だ」

ラル「魔の……暖房器具?」

俺「そうだ。一度でも足を踏み入れたら最後、そいつから”動く”という思考を奪い取る」

ラル「そうなのか……?」

俺「あぁ。こんな冬場は特に、な」

俺「よしっ。いい具合に温まってきたな……それじゃ」

ラル「待てっ!」

俺「うゎ! びっくりした……いきなりどうした?」

ラル「今の話を聞く限りこれは危険な代物みたいじゃないか。そんなものにお前を入れさせるわけにはいかない!!」

俺「(……もしかして、グンドュラ。大げさに解釈したな)」

おそらく彼女はこの物体が呪われた人食い器具か何かと勘違いしているのだろう。
だから、そんな危険なものに自分を入れさせないと、こうして腕を掴んでいるのだ。

ラル「駄目だぞ! 絶対に入らせないからな!!」

俺「ははっ! 大丈夫だって!」

ラル「お前の大丈夫は信用できないんだ!」

俺「えぇ!? なんでだよ!?」

ラル「胸に手を当てて今までのことを思い出してみろ!!」

俺「え……あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ラル「思い出したか?」

俺「……その、すいませんでした」

ラル「だから……もう」

俺「でも。俺はグンドュラと入りたいな……この中に」

ラル「私もかっ!?」

俺「あぁ。絶対に気持ちいいぞぉ。俺が保障するよ」

ラル「だけどっ」

俺「二人一緒なら怖くないだろう?」

ラル「何かあったら……守ってくれるか?」

俺「当たり前だろう? 自分の女を守らない男がどこにいるよ?」

ラル「……そうだな。お前はそういう男だったな」

俺「じゃあ……よっこらせっと」

ラル「……こ、これは!?」

俺「どうだ? 落ち着くだろう?」

ラル「あぁ。暖炉とはまた違った温もりが味わえるな……なんというか、優しく包まれている感覚というか」

俺「だろ? 扶桑にいたときは冬によくお世話になってたんだ」

ラル「お前もこれを使っていたのか?」

俺「そりゃ、使ってなきゃ色々と準備できないだろ?」

ラル「そう、だな……(私が知らない頃の俺も……こうして、この中に入っていたんだな。ふふっ)」

俺「どうした? 急に嬉しそうに笑い出して」

ラル「いや……何でもないさ」

俺「何だか静かだな……ラジオでも流すか」 ンンー

ラル「何をしているんだ? 横着しないで出て、取りに行けば良いじゃないか」

俺「言っただろう? 一度入ったら”動く”という思考を奪い去ると」

ラル「たしかに……一度入ると出たくなくなるな」

俺「あぁ。届かないや……しょうがない」 ヨッコラセ

ラル「……ふぅ」 ヌクヌク

俺「あぁ……さむい」 モゾモゾ

ラル「ラジオは取れたか?」

俺「もちろん……」

ラジオから流れ出る、どこか錯乱状態にある若い男の声。
小説でも朗読しているのだろうか。
狂気に満ちた笑い声にはやたら迫力が詰まっており

ラル「いきなり騒がしいのが出たな……」 <オレハ、ニンゲンデモテンシデモナイ! ニチョウケンジュウダァ!!

俺「消すか」 <ハレルヤ!ハレ カチッ <……

ラル「俺……」

俺「どうした?」

ラル「たしかに……このコタツは温かいには温かいんだが」

俺「だが?」

ラル「上半身は寒いんだ。特に下が暖かいだけに温度差があって、辛いんだ」

俺「む。言われてみれば……じゃあ、コタツで寝ると風邪を引くという話は温度差が原因なのか……」

ラル「風邪を引いては大変だ。けどコタツの中には入っていたい。そんな訳で少し邪魔するぞ」 ボフッ

俺「な!? どうして俺の上に座るんだよ!? ///」

ラル「こうすれば……上も下も温かいだろ? ///」

俺「だけど……!!」

ラル「何か問題でもあるのか?」 ニヤニヤ モゾモゾ

俺「(まずい。グンドュラの肉感的かつ弾力のあるヒップの感触がダイレクトに伝わってくる! おまけに髪から漂う匂いとかが!!)」

ラル「ふふっ。どうした?」

俺「おまえ……狙って、やってるだろ……!!」

ラル「さぁな? ふふふっ」

俺「こいつ!」

ラル「……ッ!?」

俺「あぁ……いい匂い」

ラル「こ、こら! 髪に顔を埋めるな! 匂いを嗅ぐなぁ!」

俺「グンドュラは……こうされるのは嫌いか?」

ラル「……」

俺「…………グンドュラ?」

ラル「お前のそういうところは……ずるいよ」

俺「ずるい?」

ラル「惚れた男から触られて、嫌なわけ……ないだろ?」

俺「……」

ラル「あのとき、お前が追いかけて来てくれたとき。正直に言うと……嬉しかった」

俺「グンドュラ……」

ラル「魔法力も残っていなくて。殆ど歩兵と変わらないお前が、それでも……私やみんなのために追いかけて来てくれたとき、私は嬉しいと思ってしまったんだ」

ラル「本来なら送り返さなければならなかったのに。地上から私たちを見上げるとき……私はどうしようもなく嬉しくなった。同時に……やっぱり、私は」

ラル「お前のことが好きなんだな、と自覚したよ」

俺「そ、そうか……」

ラル「だけど! あのあとはいただけないな!!」

俺「え、あ、いや……そのっ」

ラル「もう二度と! 勝手に突っ走らないと約束できるか?」

俺「……はい。約束します」

ラル「……よろしい。なら誓ってもらおうか」

俺「誓い?」

ラル「……んっ」

俺「……ん」

ラル「……やっぱり、これはいいな」

俺「グンドュラ……もっと、いいよな?」

ラル「あぁ……きて」



~その後~

ロスマン「それで? それから、そのままコタツで寝てしまって。どういうわけだか俺さんが風邪を引いてしまったと?」

俺「いやぁ……面目ない」

管野「馬鹿は風邪引かないっていうのは嘘だったんだな」

俺「おい、やめろ。まるで俺が馬鹿みたいじゃないか」

管野「違うのかよ? 火燵で寝ちまって風邪引いてるじゃねぇか」

俺「ちくしょう」

ロスマン「とりあえず俺さんは自室療養を続けてください。観測班からネウロイの活動報告はまだ来ていませんから早い内に治してくださいね?」

俺「あぁ……すまないね」

管野「じゃ、オレたちはもう行くからな」

ロスマン「お大事に」

俺「あぁ……行っちゃった。それにしても、おかしいなぁ……身体は丈夫な方なんだけどなぁ……」

コンコンッ!

俺「はい?」

ラル「私だ。いま、大丈夫か?」

俺「あぁ。平気だけど」

ラル「失礼する」

俺「よぉ……こんな風になっちゃったよ」

ラル「いつぞやとは立場が逆になったな」

俺「まったくな……って、まさかとは思うけど……」

ラル「そのまさかだ。今日一日、私が付きっ切りで看病してやろう!」

俺「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


おしまい

    看病編に続く……のか……?
最終更新:2013年03月09日 23:17