俺とバルクホルンの一悶着があった日の夜。
坂本はミーナの部屋へ来ていた。
俺の飛行について報告するためである。
ミーナ「あまりうまくいっていないようね。飛行には十分すぎる魔力があると思うんだけど・・・。」
坂本「おそらく俺の中にある・・・常識、というものが邪魔をしているのではないかと思う。」
ミーナ「つまり、俺さんの世界の常識に縛られている、と?」
坂本「俺の話によるとあいつの世界にはネウロイもウィッチもいないらしいからな。」
ミーナ「人が生身で飛ぶということが理解できない・・・といったところかしらね。」
ミーナはため息をつく。
ミーナ「どうしたものかしらね・・・リーネさんの件もあるし・・・。」
坂本「どちらの問題も何かきっかけがあればいいんだがなぁ。」
ミ・坂「はぁ・・・。」
二人のため息がミーナの部屋にこだました・・・。
シャーリー「議題!『どうやったら俺はうまく飛べるのか』!!」
ルッキーニ「いぇーい!」
俺「お前らかなり暇だろ。」
シ・ル「いぇす」グッ
満面の笑みでサムズアップをする二人に若干のイラつきをおぼえる。
ちなみに参加者は俺、シャーリー、ルッキーニ、エーリカ、エイラ、サーニャである。
企画者は意外にも坂本少佐。
「意見を出してもらって何でもいいからヒントをつかめ!」だそうだ。
エーリカ「けど対策っていってもな~。」
エイラ「単に才能ガ無いだけじゃナイノカ?」
俺「うぐっ。」グサッ
エイラの言葉が胸に突き刺さるどころか貫通した。
俺「・・・・・・。」ズーン
シャーリー「おいおい!話が進まなくなるだろ!あんまいじめんな!」
エイラ「事実ダロー。」ベーッ
シャーリー「ったく、俺もいつまでも隅っこにいないで戻ってこいって!」
エーリカ「おー、よしよし。もどっておいで~」ナデナデ
俺「頭なでんな。」
サーニャ「・・・・・・。」
シャーリーに諭されてもう一度席に戻った。
あれ?サーニャがちょっとむくれてる気がする。
そしてなぜかエイラに睨まれてる。なぜ?
ルッキーニ「浮くことはできても飛べないんだよね?」
エーリカ「思い当たることとかは?」
俺「うーん・・・人が生身で飛ぶってことがいまいちイメージできないというか・・・。」
だって俺の世界では生身で飛ぶやつなんて居なかったし・・・。
エーリカ「えー?私たちが飛んでるところ何度も見てるでしょ?」
俺「なんというか・・・俺の中の常識が邪魔をして・・・。」
一同「?」
シャーリー「あぁ、よく考えたら男性ウィッチは珍しいもんな。」
エーリカ「あぁ、そういえばそうだったね。」
ちょっと誤解されているがいいだろう。
異世界から~なんて話信じてくれないだろうし。
エーリカ「いっそのこと背中に羽でもつけてみたら?」
シャーリー「ははっ!良いなソレ!!」
俺「羽・・・羽かぁ・・・。」
エーリカ「あ、あれ?」
エーリカは冗談のつもりだったようだが俺の中で何かしらのイメージがわいてきた。
シャーリー「なんか解決したっぽい?」
俺「わからん。けどなんか掴めたかも。」
ルッキーニ「じゃあ遊ぼうよ!俺!!」ダキッ
俺「うわっ!わかったから、抱きつくなよ!」
俺はルッキーニに引っ張られて外へ連れ出された。
サーニャ「むー・・・。」
エイラ「どうしたんダ、サーニャ?」
エーリカ「あー、ルッキーニにお兄ちゃん持ってかれちゃったしね~。」ニヤニヤ
シャーリー「そういえばエーリカが俺の頭なでてるときもむくれてたな!」ニヤニヤ
サーニャ「そ、そんなことない・・・です・・・。」
このあと、サーニャはしばらくからかわれることになるのだが・・・。
エイラ「・・・・・・。」
エイラだけは俺が去っていったドアをうらめしそうににらんでいた。
夜──。
俺は自室でひたすらイメージを
繰り返していた。
大空を自由に駆ける翼。
明確なイメージが出来上がっていくにつれて体の中の何か──魔力が疼く。
俺(そうだ・・・この感じ。このイメージにそのまま魔力を乗せて・・・。)
ふと、ストライカーユニットのエンジン音が聞こえた。
どうやら誰かが夜間哨戒に出発したようだ。
俺(今日は確か・・・サーニャだけだったっけ?)
今日は昼間の訓練にエイラも参加していたから坂本少佐に夜間哨戒の参加を止められていたはずだ。
俺「一人で大丈夫かな・・・。」
俺はサーニャの飛んでいるであろう夜空を眺めた。
俺「さて、これは明日の訓練で試すとするか。」
自分の中のイメージを忘れないうちにベッドに潜り込む。
俺「ふぁあ・・・寝よ。」
【サーニャSide】
サーニャ「~♪~♪♪~♪」
お父様の作った私とお兄様の曲を口ずさむ。
そういえば、お兄様はこの曲を覚えているだろうか。
もしも覚えていてくれたのなら・・・。
サーニャ「一緒に歌いたいな・・・。」
そんなことを考えながら空を飛んでいる時だった。
サーニャ「・・・・・・!!」ヴン
魔道針の色が緑から赤へと変わる。
これが示すのは・・・。
サーニャ「ネウロイ・・・!」
フリーガーハマーの安全装置をはずし、基地へ連絡を入れる。
サーニャ「ネウロイの反応を探知しました。交戦状態に入ります。」
ミーナ『わかったわ!すぐに増援を送るから持ちこたえて!』
サーニャ「了解・・・。」
基地に居る兄はまだうまく戦えない。
大丈夫だ、いつも通りやればいい。
サーニャ「お兄様の居る基地には・・・行かせない!」
そう叫んで、フリーガーハマーのトリガーを引いた。
【俺Side】
俺「・・・!?」ガバッ
俺はベッドから飛び起きた。
なぜかはわからない。
ただ、背筋に寒いものが走ったのだ。
俺「嫌な予感がする・・・。サーニャ!」
俺は手早く軍服に着替え、部屋を飛び出した。
向かう先は、ハンガーだ。
ハンガーにたどり着くと、ミーナ中佐たちが出撃の準備をしていた。
ミーナ「俺さん!?どうしてここに!」
俺「なんか嫌な予感がして・・・なにがあったんですか!?」
ミーナ「サーニャさんがネウロイを発見したの!これから迎撃のために出撃します!」
俺「・・・ミーナ中佐!俺も!!」
坂本「だめだ、お前は残っていろ。」
俺「なんで!」
坂本「はぁ・・・お前は一度もまともに飛べたためしがないだろう。出撃を許可できるはずが無い。」
俺「大丈夫です、飛べます!」
坂本「そういう台詞は訓練でまともに飛んでからにしろ!もう私たちは行くぞ!」
ミーナ「ごめんなさい俺さん。気持ちはわかるけどあなたにはまだ早すぎるの。」
そういうと、ミーナたちは出撃して行ってしまった。
俺「・・・くそっ!」ドンッ!
俺は拳を壁に叩きつけた。
無力な自分が憎くて・・・。
【サーニャSide】
サーニャ「・・・これでっ!」ドシュ
フリーガーハマーのトリガーを引く。
だが、ネウロイに命中することは無かった。
サーニャ「・・・速い。」
フリーガーハマーの残弾数は3発。
今まで撃ったものはどれも命中していなかった。
ミーナ「サーニャさん!」
サーニャ「ミーナ中佐・・・。」
坂本「一人でよくやった!後は私たちに任せて帰還しろ。」
サーニャ「・・・でも。」
ミーナ「大丈夫よ。それに、俺さんが心配してたから速く帰って安心させてあげて?」
サーニャ「お兄様が・・・。」
坂本「飛べないくせに出撃しようとしたのはあれだが・・・妹を守ろうとする気合は感じられたな!はっはっは!」
サーニャ「・・・わかりました、帰還します。あと、敵は速いので気をつけてください。」
ミーナ「わかったわ。それじゃあ行くわよ!バルクホルン大尉!ハルトマン中尉!」
バ・エ「了解!」
サーニャ(・・・早く戻ろう)
お兄様の待ってる、あの基地へ・・・。
【ミーナSide】
サーニャが離脱して10数分
ミーナ「サーニャさんは無事離脱できたみたいね。」
坂本「ああ、さっさとコイツも片付けて私たちも帰るとしよう!」
ミーナ「ええ!」
二人がネウロイに向かって行こうとしたその時だった。
ネウロイ(ギュイイイイイイイイイイイイイイイイ!)
ネウロイが一気に加速し始める。
バルクホルン「なにっ!!」
エーリカ「こらー!待てー!」
ミーナ「まずいわ!まだサーニャさんが基地に到着してない!」
坂本「くっ!すぐにシャーリーたちを出撃させるんだ!このままだと基地も危ない!」
ミーナ「ええ!」
【俺Side】
せめてみんなの帰りを待とうと、滑走路の近くで空を見上げていたときだった。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
俺「なんだ・・・?いまさら警報・・・?」
放送『現在ネウロイがこちらに急速接近中!ウィッチは出撃!非戦闘員は退避せよ!!』
俺「なんだって・・・!?サーニャはミーナ中佐たちは!?」
まさか・・・撃墜された・・・!?
いや、そんなわけがない!
俺「・・・命令違反?知るかよクソッ!」
俺はもう一度さっきまで居たハンガーに走る。
ついでに武器庫からMG42を拝借してきた。
俺「・・・あった!」
きれいに整備された俺のストライカーユニットを発見した。
ハンガーのハッチを開けるレバーを倒し、ラックへ走る。
ラックを駆け上がり、飛び込むようにしてストライカーユニットを装着した。
魔道エンジンに魔力を送り、起動させる。
シャーリー「おい、俺!!何やってるんだ!!」
俺「シャーリーか!?」
どうやら警報を聞いて一番に飛んできたようだ。
シャーリー「お前まだまともに飛べないだろ!どうする気だ!」
俺「大丈夫だ!みんなのおかげでイメージは掴めた!!」
シャーリー「マジでか!?・・・って!馬鹿なこと言ってないで戻れよ!」
俺「馬鹿かどうかよく見ててくれよ!」
頭の中で自室でのイメージをもう一度思い浮かべる。
翼
大空を駆けるための、俺の翼。
そうさ、飛んでみせる。
大切なものを守るために・・・!
ルッキーニ「お待たせシャーリー!って、俺!?」
ルッキーニが到着するとほぼ同時に、俺の背中から魔力が噴き出した。
それは青白く輝く粒子を撒き散らしながら、徐々に翼の形を成していく。
シャーリー「ほ、ホントに羽だ・・・。」
ルッキーニ「うわぁ・・・綺麗・・・」
俺(イメージ通りだ・・・これなら飛べる・・・守れる!)
幼いころ・・・サーニャの父に言われた言葉を思い出す。
父『キミも私たちの家族だよ。』
そうだ、家族を・・・サーニャを守る!
俺「俺!行きますっ!!」
魔力の翼を煌かせ、俺は夜空へと飛翔した。
最終更新:2013年03月30日 00:48