ナレーション:諏訪天姫

あー、あー、ゴホン、んんっ、てすてす

今日は2回目です、もうこの間みたいなミスはしませんよ

今日こそはしっかりナレーションを……ってまた始まってるー!


………………
…………
……


ここはとある空間、とある場所にある秘密の隠れ家
どこから行くのかも、どこからたどり着くのかも、誰も知らない気まぐれに現れる謎の扉

一度開かれたこの扉にはもう鍵はかかっていないようです
今日もまた「Open for business」の札を掲げ、中からは微かに仕込みの音が聞こえてきます

おや、今まで無かった小さい看板が足元にありますね
申し訳程度のメニューが記されているようです。ここからは何が書いてあるのかちょっと見えませんね

さて前置きはこの辺にして、今日も中の様子を伺ってみることにしましょう

……よし、今日はちゃんとできました

あれ?でもあの札……あれ、見間違いかな……?


………………
…………
……


――――KKI空間「ORE's Bar」

俺「……」カチャカチャ

ヘルマ「ふふふふ、ふ~んふ、ふ~ふふふふ、ふ~んふ、ふふふふふ~ふふん♪」フキフキ

俺「……」チラッ

ヘルマ「ふんふふ~んふ~ん♪ふっふっふ、ふっふふふっふ~ん♪」フキフキ

俺「あの、ヘルマさん。年頃の女性が鼻歌にIn the navyはどうかと思うのですが?」

ヘルマ「えっ、なにかおかしいですか?いい曲ですよね?」

俺「いえ……まあ、構いませんけどね」カチャカチャ

ヘルマ「??」フキフキ

俺「それより、そろそろ本日のお客様がいらっしゃるお時間です」

ヘルマ「はい、というか……」チラッ

俺「もう5分ほど回っていますね、道にでも迷っていらっしゃるのでしょうか」

ヘルマ「5分くらいなら誤差でありますよ、しっかりおもてなしできるように今のうちに十分準備してしまいましょう!」

俺「はっはっは、言いますねえ。そうですね、今のうちに出来ることを完璧に仕上げておきましょうか」

ヘルマ「えへへ、じゃあ私はカウンターをもっともっと綺麗にするであります!」フキフキ



――――10分後

俺「……いらっしゃいませんね」

ヘルマ「おかしいですねぇ」

俺「ちゃんと連絡しましたか?」

ヘルマ「わ、私を疑っているでありますか!?ちゃんと連絡しましたよ!?」



――――更に10分後

俺「うーん、これはちょっと遅すぎますね……なにかあったのかもしれません」ガタッ

ヘルマ「私ちょっと外見てきます!」タッタッタ

ガチャッ カランカラン

ヘルマ「あれ?」

ペリーヌ「……」

ヘルマ「あれ?あれ?」

ペリーヌ「……」クイックイッ

ヘルマ「ふえ?」チラッ

[Under preparation] -準備中-

ヘルマ「あ……あああああああああああああああああああああああ!!」

俺「はぁ、ヘルマさん……あれだけ看板はちゃんと確認しなさいと申し上げたでしょう」

ペリーヌ「ううううう、まったく!どれだけ待たせれば気が済むんですの!?
     準備中になってるからずっっっっっと、待ってたというのに!どういうことなんですの!?」

ヘルマ「うわあああああああん、ごめんなさああああああああああああああい!!」ペコペコ

ペリーヌ「レディを屋外で待たせるなんて!非常識にも程がありますわ!!」プンプン

俺「申し訳ございませんフロイライン、この度はこちらの不手際にて大変ご迷惑をおかけ致しました」スッ

ペリーヌ「まったく、失礼してしまいますわ!一体従業員にどういった教育をされていっしゃるのかしら」ツン

ヘルマ「あうう、ごめんなさい……」

俺「では、お詫びと申し上げるにはいささか手前味噌ではございますが
  今宵も精一杯、お客様にご満足いただけるようおもてなしをさせていただければと存じます」

ペリーヌ「ふ、ふん、そこまで仰るなら期待せずにもてなされて差し上げますわ」

俺「結構、どうぞこちらへ」ニコ

ペリーヌ「……ふん」///

ヘルマ「あ、あの……お水とおしぼりです」オズオズ

ペリーヌ「どうも」ツン

ヘルマ「へう」シュン

俺「えー、さて、ご紹介が遅れましたが。本日のお客様はこちらの方
  ガリア空軍602飛行隊、そして連合軍第501統合戦闘航空団所属。ペリーヌ・クロステルマン中尉でございます」

ヘルマ「わ、わー」パチパチパチ

ペリーヌ「ふふん」ファサッ

俺「さて、ではまず先程のご無礼のお詫びに俺から一杯、ご馳走させていただいてもよろしいでしょうか」

ペリーヌ「あら、何をご用意してくれるのかしら?」

俺「それはご覧いただいてからのお楽しみ」カチャカチャ

ヘルマ(あれは……なんて名前でしたか緑色のリキュールと、レモンジュースと、グレープフルーツジュース
     あ、卵の卵白だけ取ってるですね……全部シェーカーに入れてるであります)

ペリーヌ「あら、なかなか様になっていらっしゃること」クスッ

俺「ありがとうございます」シャカシャカ

ヘルマ(いけないいけない、見てないで手伝わなきゃであります!)タッタッ

俺「お待たせ致しました。こちらは『サンジェルマン』、リキュールベースのカクテルにございます」スッ

ペリーヌ「あら、薄緑色が上品で……中々よろしいのでなくて?」

俺「どうぞ、お召し上がりください」

ペリーヌ「……」クイッ

俺「如何ですか?」

ペリーヌ「美味し……ま、まあまあですわ!わ、悪くはありませんですわね!」

ヘルマ(今美味しいって言った)カチャカチャ

俺「ありがとうございます」

ペリーヌ「でも……この香り、いえ、でも……どこかで……」

俺「やはりお気づきになられましたか」

ペリーヌ「どういうことですの?」

俺「そちらの『サンジェルマン』に使ったベースのリキュールなのですが、香草、つまりハーブを原材料としておりまして
  ブランデーを元に130種類の様々なハーブをブレンドしたものなのです
  きっとその中にどこかで出会った事のある香りが記憶の奥で再会されたのでしょう」

ペリーヌ「へえ……これが」

俺「そして、そのリキュールの名前が『シャルトリューズ・ヴェール』」

ペリーヌ「シャルトリュー……あっ」

ヘルマ「中尉の使い魔さんでありますね」

俺「ええ、このシャルトリューズ。クロステルマン中尉の使い魔であるシャルトリューと同じくガリアの『シャルトリュー修道院』が語源となっております
  そして『サンジェルマン』においては他の追随を許さない程のエレガントさを備えたカクテルとしてよく知られております」

俺「エレガント、シャルトリューズ、この二つの言葉。貴女にピッタリだとは思いませんか」

ペリーヌ「……ふふ、貴方。静かな顔の割にはなかなか洒落が利いていますわね」

俺「光栄の極み」ズパッ

ヘルマ(よかったぁ、機嫌直ったみたいであります……)

俺「では改めて、本日ご用意させていただいておりました一本に移りたいと思います。ヘルマさん」

ヘルマ「了解であります、あれでありますね!取ってくるであります!」タッタッタ

俺「さて、ヘルマさんが頼んだ物を持ってくるまで、少々お話しを伺ってもよろしいでしょうか?」

ペリーヌ「な、なんですの?」

俺「何かお悩みを抱えておいでではございませんか?胸に支えているものがあるように見受けられますが」

ペリーヌ「そんな事……」

俺「ここはKKI空間のただの酒場です、誰にも漏らす事もなければ知られることもありません
  いえ、そもそも本当に何もないのであればそれに越したことはございませんが……」

ペリーヌ「その、本当に誰にも漏らしませんこと?」

俺「勿論、この店に誓って」

ペリーヌ「……でしたら」

俺「どうぞ」

ペリーヌ「わたくし……本当に今のままでよろしいのかと」

俺「それはまたどういった?」

ペリーヌ「わたくしは、軍に入ってからずっとガリア復興の為に従事して参りました
     その為にガリアの復興財団にも出来るだけの寄付をして、自身で民間人の皆様と一緒に首都の建て直しにも心血を注いで参りました」

俺「ええ、よく存じ上げております」

ペリーヌ「そんなわたくし達の為に、ガリアとブリタニアのウィッチの方々も駆けつけてくれて、上層部からも支援体制は整いつつあるように見えます」

俺「新聞で読みましたよ、クロステルマン中尉とビショップ曹長の記事ですね」

ペリーヌ「ですが……それでも現実のガリアはまだ目に見えて何も変わってはおりません
      人も、物資も、時間も、何もかも不足していて、復興なんてお世辞にも言えた状況ではありませんわ」

俺「……左様ですか」

ペリーヌ「本当にわたくし達が……国の復興なんて、そんな大層な事を掲げて……本当にガリアを……」ウルッ

ヘルマ(あの……俺さん、持って来ましたけど……タイミングまずかったですか)コソコソ

俺(いいえグッドですよ、待っておりました。では早速)ペリペリ キュルッ

ヘルマ(グラスはどうしますか?フルートですか?)

俺(そうですね、ロブマイヤーのフルートにしましょう)

ヘルマ(了解であります)キュッキュッ

ペリーヌ「……っく、わたくしとした事が無様な顔を」ゴシゴシ

俺「では、そんなクロステルマン中尉にはこちらを贈らせていただきます」スッ

ペリーヌ「これは……?」


ヘルマ(青いワインなんて始めて見たであります、こんなのこの店にあったんですね)

俺「リベリオン西部で生まれた、世界唯一の青いスパークリングワインにございます」

ペリーヌ「綺麗……」

俺「まずは召し上がってください」

ペリーヌ「え、ええ、では遠慮なく」クイッ

俺「お飲みいただきながらで結構ですので、今度は俺の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

ペリーヌ「……?」コクコク

俺「今お出ししたそのスパークリングワイン、いい色だと思いませんか?」

ペリーヌ「ええ、透き通るような綺麗な青……まるで青空みたいですわ」

俺「実はその青、現実には不可能と言われていた青なのです
  ただ青くするだけなら簡単です、無色に近い白ワインに添加物を放り込めばそれなりの青いワインは出来るでしょう」

ヘルマ「でも誰もやらなかった、なんでですか?」

俺「先ほど申し上げた通り、現実に不可能に近かったからです
  下手に添加物を入れればワインの風味を損なってしまいます、それに白ワインといえど無色ではありません
  限界まで無色を目指しても薄く黄色味がかってしまう上に、そんなことをすればそれこそワインとしての風味が犠牲になります」

俺「ですがそれでもリベリオンの醸造家は諦めず、長年の研究を重ねた結果
  風味を損なわず、それどころか上級の味わいを備えながら、これだけ美しい青を魅せる事に成功したのです」

ペリーヌ「諦めず……」

俺「そうです、つまりこれは不可能を可能にしたワイン
  ただそれは『奇跡』などではありません。弛まぬ人の努力と、意地と、不屈の心が生み出した、生まれるべくして生まれたワインなのです」

俺「クロステルマン中尉、貴女は先程こう仰いました『今のままでいいのか』と」

ペリーヌ「はい……」

俺「いいんです、今のままの貴女で……ただ必要なのは、諦めないこと」

ペリーヌ「諦めないこと……」

俺「負けない事、投げ出さない事、逃げ出さない事、信じぬく事、駄目になりそうな時、それが一番大事」

ヘルマ「俺さんの好きな扶桑のことわざですね」

俺「この世に奇跡なんてありません、人が奇跡と呼ぶもの。それはただの結果です
  負けずに投げ出さずに逃げ出さずに信じ抜いて諦めなかった結果がそうなっただけの事です」

ペリーヌ「……」

俺「もうひとつお話をしましょう。青といえば、何を思い浮かべますか?」

ペリーヌ「青……空?海?」

俺「いいえ、愛です」

ペリーヌ「愛?」

俺「はい、古代ロマーニャのお話ですが、青は愛を表す象徴として重んじられておりました
  このワインは不可能を可能にしました、そしてこの青は愛を表すものとしての意味も持ち合わせております」

ペリーヌ「どういう事ですの?」

俺「つまり、貴女が祖国への愛を失わない限り、ガリア復興への道は決して閉ざされはしないでしょう
  いえ、それどころか不可能を信じて可能にした結果が貴女の目の前にあるではないですか
  前例のあることなら出来ない道理はございません。貴女は貴女の信じる道を、ただまっすぐに進んで下さい」

ペリーヌ「わたくしの……信じる……」

俺「何も悩む事は無いではありませんか。市民も、軍上層部も、ウィッチも皆がガリアの復興に手を尽くしています」

俺「その切欠を、先陣を切ったのは他でもない、貴女自身です
  あの新聞の記事を俺はよく覚えていますよ。貴女方を見て国が動いたのです
  その貴女が、貴族である貴女が弱気になっておられては他の者に示しがつきませんでしょう?」ニコッ

ヘルマ(……そこまで言って大丈夫なのかな)チラチラ

ペリーヌ「そう、ですわ……ふふ、そうでしたわね。わたくしったら、何を弱気になっていたのでしょう
     ガリア貴族たるわたくしがこのような事でなにを立ち止まっていたのでしょう、貴族故の義務を忘れるところでしたわ」

俺「ノーブレス・オブリージュ」

ペリーヌ「ええ、貴族が貴族たる責任を負わなくて何が貴族ですの!まったくわたくしとしたことが!」ガシッ

ゴクゴク

ヘルマ「ああっ、そんな一気に」

ペリーヌ「ぷはぁっ」///

俺「おやおや、これはまた随分と豪気な」

ペリーヌ「マスター!もう一杯下さらない!?」ドン

俺「ふふ、お元気になられたようで結構です。お客様にご満足いただけるお酒を用意する
  ……これもカウンターを預る者としてのノーブレス・オブリージュでもありますからね」トクトク

ペリーヌ「ふん……まあ、今日のお話はありがたく頂戴しておきますわ」ゴクゴク

俺「最後にもう一つだけ……このワイン、世界で始めての青いスパークリングワインです」

ペリーヌ「ぷふぅ、それはさっきも伺いましたわ……もう一杯」ドン

俺「ええ、ですからつまりこの子も言ってみれば『青の一番』ということです」トクトク

ヘルマ「おお、なるほど!」ポン

ペリーヌ「っぷはぁ……あ~?なんれすってぇ~?」

俺「おっと、これはいけない。ヘルマさん、中尉に濃~いコーヒーを淹れてあげてください」

ヘルマ「は、はいっ!」アセアセ

ペリーヌ「ちょっとぉ!貴女どほに行くんですのろ!わたくひの話ひを聞いてくださらなひの!?」ガシッ

ヘルマ「ふぇぇぇぇ」

俺「やれやれ、これは困りましたねぇ」フゥ



………………
…………
……



ナレーション:諏訪天姫

ここはとある空間、とある場所にある秘密の隠れ家
どこから行くのかも、どこからたどり着くのかも、誰も知らない気まぐれに現れる謎の扉

今宵は少々騒がしい声が中から聞こえてきています

大変なことにならなければよいのですが……それはまた別の機会にでも

おっと、そろそろお時間のようです

今宵の営業はここまで、次回があればまた是非ご来店をお待ちしております

では、ナレーションは私、諏訪天姫がお送り致しました。おやすみなさい
最終更新:2013年03月30日 01:12