私「……そろそろ、奴らが確認された空域だ」

ガリア中部、ポイントB-34――

空を翔ぶ私の眼下には、うっそうとガリアの美しい森が茂っている
この景色が怪異共に穢されていると思うと、なんとも腹立たしい気分になる

私「各員、警戒を強化!索敵に当たれ!」

「「「了解!」」」

……
…………
………………

ジェニファー「……!!敵補足!」

ジェニファー「数は大型1.小型25です!!」

成る程。確かに我々の進行方向、視界の遥か先に黒い異形の怪物が浮かんでいる

それに、報告通りその中の大型は見たことの無いタイプ……やはり、新型機か!

私「……指令部、目標を視認。これより戦闘行動に入る」

私「ノーブルウィッチーズ!フォーメーションAでネウロイに攻撃を開始する!ダイブ・アンド・ズーム!」

「「「了解!!」」」

急上昇、そしてすぐさま大型爆撃タイプに向け、急降下を開始する

太陽を背にした一撃離脱戦法だ!

ゴオオオオッ!!!

大型爆撃機型怪異「――――!!!!」

ドッ!!

怪異へと突っ込む私に向かって、大型が熱線を繰り出す

私「ふっ!」

――が、その程度の攻撃、避ける事など容易い!!

流石は新型機、光線の威力、照準、発射速度、どれを取っても従来のタイプより遥かに上……だが怪異共よ!扶桑の格言を教えてやろう!

私「当たらなければどうと言う事は無いッ!!」

ガガガガガガガッ!!!

すれ違いざまに、機銃掃射を叩き込み、怪異の黒い装甲が砕ける

だが――――手応えが無い!

私「くッ!!」


装甲硬度も上昇しているとは……な
しかしそれでこそ我が宿敵!
倒し甲斐があると言うもの!

私「むッ!?」

左方向からのプレッシャーを確認!

ドォッ!ドオッ!

私「ちィッ!」

掃射後すぐさま天へと急上昇する私に、周囲を飛んでいた小型怪異がその熱線を放って来る

体を捻らせ紙一重で回避、勢いをそのままに機銃を持ち上げ――引き金を引く!!

ガガガガッ!!

小型怪異「…………!!!」

パキィンッ!

硝子が砕け散るかの様な音と共に、小型怪異の一体が白片と化す

……空を浮かんでいた小型怪異達も、三人によりその数を半分へと減らしていた

残り12機!

私「むっ!?」

小型怪異X6「――――――!!!!」

私の元へと、6機の小型がV字編隊を組み突っ込んで来る

!!!……この小型タイプもやはり機動性が上がっているか!

マリアン「た、大尉っ!」

私「心配無用!!」

私にとってこの程度の状況、欠伸が出るぐらいだ!

小型怪異達「――――!!!!」

ゴォッ!!

……敵との距離は目前まで迫って来ている

奴らめ、こちらに体当たりを仕掛けるつもりか!!!

よろしい、ならば……『飛んで火に入る夏の虫 』 と言う言葉を教えてやろう!!

チャッ!!

懐から折りたたみ式のフォールディングナイフを取り出し、右手に構える……小型機程度に我が魂を抜く必要などあってたまるものか!

私「ふッ!!」

魔力集中!

我が肉体を駆け回る血流が全て……右腕に凝縮するイメージ!

そして……その溜まり切った魔力は――――

――――放出されるッ!!!!!

ヴォォォォンッ!!!

ナイフの刀身から、碧色の激流が噴き出す
それは正に――――1振りの刀!!!

ごれぞ我が固有魔法にして秘技!

その名を――――『魔力刀』ッッッ!!!!!!

私「ぜ……えりゃあっっっ!!」

正面――――目と鼻の先まで飛び込んできた一体を……

袈裟斬りに一閃!

ズッ……バァッ!!!

小型怪異「…………!!!」

パキィンッ!!

振り抜いた腕をそのまま跳ねらせ、我が右方を飛ぶ一体に向けて……

投げるッ!!

小型怪異「…………!!!!」

私のしなる筋肉から放たれた蒼色の槍は、まるでダーツの様に――目標を貫いた!

そして、右手で投擲動作を行っている間すでにッ!
私の左手はもう一本のナイフを掴んでいる!!!

ヴォォンッ!

腰だめに構え――――勇往邁進!!

バォォオン!!

私「ふッッ!!」

ゴシュゥ!

小型怪異「…………!!」

……パァンッ!

私の放った刺突が、怪異に風穴を開ける――――コアを正確に射抜いたその一撃により、華々しくもその一体は雪片と化す

そして、突きを繰り出した勢いをそのままに……私はインメルマン・ターンを行う!

私「ふッ!!」

ヒュッヒュッヒュツ……パシィッ!

数瞬前に投擲したナイフが、砕け散った怪異の爆風で、私の元へと跳ね返って来た――――そして当然!鮮やかにそれをキャッチする!

私「二・刀・流ッ!!!」

私が見据える先は、漂う雪片のその向こう――――哀れな黒き異形ッ!!!

バババババババッ!!!

空を駆け抜け、猛接近!

――途中、怪異は苦し紛れの光線連射を行ってきたが、この私に当たる訳が無い!!―――

私「ずぇりゃああああああっ!!!!!!」

両腕を上段に構え――――次の瞬間には、怪異の体躯にXの亀裂が走った

私「むっ!」

無残にも砕け散った四体目を尻目に、私は左右からのプレッシャーを感知した

編隊の両端の小型二機が、私に向けて突っ込んできたのだ

私「……ほう、この私を挟み撃ちにするつもりか!」

奴らの姿はうまいこと先程破壊した怪異達の成れの果てに隠れ、視認する事ができない――――が!たかが見えない程度だ!

私「しッ!!!」

ヒュッ!!!

交差された両腕をしならせ――――二本の槍を、左右に放つ!

ガ……キィンッ!!

……目標の末路は、ガラスが砕け散るかの様な音が教えてくれた

私「…………」

ヒュッヒュッヒュッ……

爆風の中から、怪異にピリオドを打ち込んだ私の相棒達が戻ってくる

パシィンッ!!

私の両手は――飛んで来るそれらを我が瞳に映す事なく――しっかりと掴んだ

……只今の戦闘で諸君らは「それっておかしくねぇ?」などと感じているだろうが、ノリでカバーして頂きたい!

私「……ふぅ」

マリアン「お、お見事です大尉殿!!」

一息を付いた私の元に、マリアンが駆け寄ってきた

……どうやら小型機は我々の手で全て落とされた様だ

私「お見事?マリアン、それは違うな」

マリアン「……え?」

私「私は攻撃を続けただけであり、彼らはただ落ち続けただけなのだよ」

……それはさておき

私「……さて、皆の衆!残るはあのデカブツだけだ!!」

私「さっさと終わらせて、ひとっ風呂浴びるとしようではないか!!」

「「「了解ッッ!!!!!!!」」」

いい声だ!よし……全機!突撃ッ!!!!

バォォォォンッ!!!!!!!

四の流星が、もはや袋の鼠と化した彼奴に向けて突き進んでゆく――――

ガガガガガガッ!!

四機の鮮やかな一撃離脱戦法により、大型の装甲が砕ける

確かにその再生能力、見事なものだが――――再生するよりも早く叩き込めばいいだけのこと!

大型爆撃機型怪異「――――!!!!!!」

ズドッ!!!

私・マリアン「!!」

私達に向けて、極太い光線が放たれる

フォォォンッ!!

マリアン「……っ!!!」

マリアンがシールドでそれを防ぎ、私は――――

私「しッ!!」

――――シールドと拮抗している光線に向けて、魔力刀を出現させたナイフをぶん投げる

バチチチッ!!

それにより光線の勢いが弱まる――よし!今だ!!

私「散開ッ!!」

マリアンは一瞬でシールドを解除し、私達は左右に散開する
その直後、今まで私達が存在して居たポイントを赤い光線が通過した

ガガガガガガッ!!!

左右から同時に機銃を叩き込む。そしてそのまま空へ上昇!

すれ違うかの様にカーラとジェニファーが急降下を行い、大型に向けて突っ込んでゆく――――その、前に!

私「土産だッ!」

二本の槍をヤツにお見舞いする

ズドッ!!

装甲に青い柱が突き立ち、表甲が砕け散った

二人はそこに的確な射撃を送り、ゴリゴリと怪異を削ってゆく――そして

怪異の体躯から、黒い煙が噴き出し始めた

……そろそろフィナーレの時間とさせて頂こう

マリアン「大尉ッ!」

カーラ「止め、任せましたぞ!」

私「百も承知!!」

腰に携える我が魂、会津兼定を――――抜刀する!

大型爆撃型「――――!!!!!」

大型の装甲に針の様に生える機銃から、雨の様な銃弾が放たれる――――が、当たると思うなよ!

この私!自慢では無いが被弾数は零!そうそう当たってたまるかと言うものだ!

私「――――――」

扶桑刀を上段に構え――――我が魂を送り込む

ヴヴヴヴヴヴヴヴゥヴ…………ッ!

兼定の刀身から、魔力が噴き出す
それはまるで――――全てを焼き尽くす、業炎!

私「おおおおおおっ!!!!!!!!」

得と見よ!怪異ッ!!これが我が必殺の奥義!!!

私「蒼・炎・斬ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

――――オッ!

すれ違い様に、一閃


私「………………」

――チンッ!

そして、鍔鳴りの音と共に――――

大型爆撃機型「………………a」

――――大型怪異の体躯は両断された

ヴァチッ……ヴァチッ……ヴァチッ!

切断面から、魔力が電流の様に怪異に流れる

私「………………」

……よき戦いだった!

パキ……ィンッ!

ガリアの森に、季節外れの雪が降りそそぐ
それは美しく――何処か儚げだ

怪異よ、もし貴様にも輪廻転生の概念があるのなら……

次は、素晴らしき人間に、生まれ変わるのだな……

私「――――指令部、目標の撃破を確認。これより帰投する」

「た、大尉ーっ!!」

私「むっ!?」

なんと、マリアンがこちらに向けて飛び込んできた
はっはっはっ、そうはしゃぐでない

マリアン「大尉殿!先程の一撃!すごくすごかったですっ!!!」

私「そうか!すごくすごいのか!はっはっはっ!嬉しい限りだ!」

マリアン「今の技、もしかして雲耀と言われたあの……」

私「ああ、似た様なものだ。刀身に魔力を纏わせ、そのまま叩き切る」

私「それが我が必殺!蒼炎斬!!!!!!」

かの最強の刀剣技術を持つ黒江綾香大尉より学びし我が奥義なのだ!
……今度、扶桑に行った際はまた手合わせをしたいものだ

マリアン「そ、そうえんざん……はい!すごくカッコいいです!」

はっはっはっ!そうだろうそうだろう!

ジェニファー「まったく……マリアンもあんなにはしゃいで……」

カーラ「くっくっくっ……お前も本当は飛び込んで行きたいんじゃないのか?」

ジェニファー「なっ!?ち、違いますよッ!!」

私「……?」

ジェニファーとカーラがぎゃあぎゃあと騒いでいるが、いささか距離が離れているためその話は聞き取れない

だが、どちらが多くの小型を倒したか?などと言う会話であることは想像に難しくない

まったく、スコアなど如何でもいいではないか!

私「……む?」

ザ……ザザ……ザ……

耳に付けている小型通信機から、ノイズが走る

マリアン「……大尉?」

私「如何やら通信の様だ」

私「……指令、何があった?」

通信機からジーナ中佐の声が響いてくる

私「…………………………」

私は時折相槌を打ち、その通信に耳を傾けた

私「了解した、今から直ぐに向かう」

……ブツン!

通信が切れる
マリアンは何があったのか心配そうに私を見ていた

私「諸君!指令部より伝令だ!」

「「「……??」」」

私「ポイントA-17より魔女の救援サインを確認、救援に向かえとのこと!」

ジェニファー「救援?……まさかまた怪異ですか!?!?」

私「安心しろ、怪異では無い」

マリアン「それならば一体……?」

私「機体不調による救援要請だ!幸い距離はそう遠く無い、直ぐに向かうぞ!」

「「「……了解!!」」」

こうして私達は、雪片の舞う森を後にした――――

……

…………

………………

私「…………居たっ!」

私の視線のその先には、一人の少女がふらふらと飛んでいた
今にも落ちそうな危険な状態であると言うのは一目でわか――――ッ!!!

「…………」

ヒュゥゥゥウッ

マリアン「なっ!?」

――――まずいッ!落ちているッ!!

私「……ッ!!!」

エンジン全開ッ!駆け抜けろ!我が相棒ッ!!!

私「間に合ええええええええっ!!!!!」


………………ガシィッ!!!


私「…………ふぅ」

……なんとか、抱きとめることが出来た

私「君、無事か?」

私は胸の中にうずくまり、瞳をぎゅっと閉じる少女に声をかけた
扶桑人と思われる可憐な黒髪が私の鼻をくすぐる

「……え?……あっ!……うぇっと……!」

私「まぁ落ち着け」

「は、はい」

私は彼女を抱きかかえ―所謂お姫様抱っこと言うヤツだ―地面に垂直着陸する
ゴトン、と彼女の足から抜け落ちたユニットが重苦しい音を立てて土の上に転がった

「あ、あのっ!」

地へと足を踏みしめた少女が、私に向けて尋ねる

私「何かな?」

「貴方はもしかして、魔女の方ですか?」

私「見ればわかるだろう?……ああ、成る程。男の魔女は珍しいのだったな」

「ふ、ふわぁ……」

目をぱちくりさせ驚いている少女

……そして私の背後からはバラバラとプロペラの音が響いてくる

如何やら彼女達も降りてきたらしい

「ひょっとしてあの、ノーブルウィッチーズの方達ですか?」

私「ああ、その通りだ」

「!!」

私「それで、私から聞くが……君の名は?」

「はい!私の名前は――――――」

にぱっ、と彼女は笑い……大きく息を吸い込んで、答えた

「――――黒田那佳です!!!」

これが私とこの元気溌剌な少女・黒田那佳との、ファーストコンタクトであった
最終更新:2013年03月30日 01:28