俺達の機体は、501基地の管制圏に入った。
 しかし、TWRからの呼び出しがないので、俺達からTWRを呼び出すことにした。

 操縦俺「501TWR、ストライク21。14マイルズDME」
 応答、なし。
 操縦俺「アゲイン。501TWR、ストライク21。14マイルズDME」
 またしても、応答なし。
 何度か交信を試みたものの、TWRとコンタクトを取ることは不可能だった。

 基地を視認。
 戦時灯火管制中につき、照明は落とされたままだが、異状があるようには思えない。
 整備俺「電波状況は悪くないとは思うんだが…。今度は無線機がイカレやがったのか?」

 整備俺は、U/VHF無線機のコントローラーを斜め45度から叩いた。
 無線機のレシーバーが鳴ったのは、そのときだった。

 『ストライク21でして? こちら本部』
 ペリーヌの声だった。心なしか、声が震えている。
 操縦俺「21、コピー」
 整備俺「基地の状況は? 管制隊の連中は寝てるのか?」

 ペリーヌから伝えられた情報は、俺達の予想の遥か上を行っていた。
 ブリタニア軍の部隊が、501基地を制圧。療養中の坂本はそのまま捕縛され、自身は基地内で潜伏中とのこと。
 (恐らく、アラート格の付近)
 ペリーヌは、気丈に振る舞っているものの、いつ壊れてしまってもおかしくなさそうな感じだった。

 整備俺「基地に残ってるのは…、その他には? サーニャさん?」
 ペリーヌ『リーネさんも残っています。宮藤さんに代わって自室禁固中でした』
 整備俺「そうか…。その2人とは合流できそう?」
 ペリーヌ『サーニャさんとはすでに合流していますわ。リーネさんはわかりません』
 整備俺「了解。2人だけでも先に――」

 整備俺がそう言いかけたとき。
 マズル・フラッシュ。高角砲ではない。おそらく小銃のたぐい。

 操縦俺「ゴー・アラウンド!」
 操縦俺が舌打ちしつつスロットルを全開にし、機速を上げる。
 小口径の弾丸が数発、キャビンの床板に風穴を開けたが、飛行には影響ない。
 コックピットに被弾しなかったのは、不幸中の幸いとしか言いようがなかった。

 整備俺「すまん、ここで合流するのは不可能だ! 俺達は隊長と合流を試みる!」
 ペリーヌ『…わかりましたわ。わたくし達は、基地に残ってお待ちしております』
 整備俺「すまん!」

 再び回頭。
 俺達は、G23Eエリアへ全速で引き返した。
 ただし、先ほどの不明機を警戒して迂回経路を取ったため、少し時間はかかってしまったが。

 ミーナ『宮藤軍曹! 貴女を、無許可離隊の罪で拘束します!』
 芳佳『えっ…』
 俺達が現場に近づいた頃は、ちょうど、ミーナが芳佳に処分を下したときだった。

 ミーナ『貴男達…、なぜ戻って来たんですか!?』
 整備俺「オルタネートしてください。隊長。基地は、もはや我々にとって安全ではありません」
 ミーナ『どういう事?』

 俺達は、ミーナに、先ほど基地で発生した状況について説明した。

 ミーナ『美緒たちが残っているのよ…! オルタネートできる訳がないじゃない…!』

 その一言で、俺達は全員、501基地に全速で帰投することになった。
 基地に近づいても、管制塔は相変わらず沈黙している。

 操縦俺「くそ…、強行着陸するか?!」
 ミーナ『まずはシャーリーさんが先行してください。それから、魔力の少ない者から順に。
    フラウは輸送機を誘導してあげて。最後に私が降ります』
 シャーリー『シャーリー、ラジャー』
 エーリカ『カラヤ・アイン、ヤヴォールだよっ』

 エーリカとミーナを除くウィッチ達がスピードを上げ、俺達から遠ざかる。
 1944年時点で、航空ウィッチの最大速度は、同時代の通常戦闘機と同等以上。おおむね700~800km/h程度である。
 速度という点で置いて大きく劣るのは、200km/hそこそこしか出せない輸送機の悲しさだった。

 操縦俺「(C-130なら600km/h、C-1やT-400なら800km/hは出るんだけどな……)」 

 シャーリー「RWYインサイト! あれ、誰かいるぞ」
 しかし、そこには、普段目にしたことのない部隊がいた。
 そして、部隊の中心に立つのは…
 「ご苦労だった、ミーナ中佐」
 4ッ星の階級章をぶら下げた体格のいい壮年の男、マロニーだった。

 俺達は、エーリカに誘導されながら、暗闇のRWYにランディング。
 エンジンを全基カットし、機体から飛び降り、俺達はウィッチの元へダッシュした。
 機体の外周点検やフォーム記入? そんなのは後回しでいい。

 整備俺「芳佳さん…ッ!」
 芳佳「ふぇ?」
 整備俺「何があったかは知らんけど、戻ってきてくれて、良かった…!」
 操縦俺「まったく。心配かけるんじゃないよ…」

 マロニー「感動の対面かね。異世界からやってきた大尉と少尉」
 侮蔑を隠そうとしない口調で、マロニーは言った。
 そして、俺達の周りには、銃を構えた兵士が取り囲んでいた。

 整備俺「うへえ…」
 操縦俺「(こいつら…、素人か?)」
 銃を構えて周囲を取り囲む。
 それは、相手に対して威圧感は与えられるものの、
 実際はフレンドリーファイアの危険性が高く、効率のいいやり方ではない。
 という事は、マロニーの目的は示威であり、実際に危害を与えるつもりはないのだろう。
 銃口を突きつけられるのは気分の良い物ではないが、そう思ってしまえば怖くはない。
 操縦俺「(いわば、遊園地のアトラクションみたいなもんだ)」

 そのとき。
 一度聞いたら忘れられない、パルス・ジェットの特徴的な排気音が近づいてきた。
 その機体は、俺達の頭上を旋回し、人型に変形すると、マロニーの背後にゆっくりと降りた。

 整備俺「(Zガン○ム!?)」
 操縦俺「(いや、それ絶対違うから!!)」

 ミーナ「まるでクーデターですね、マロニー大将」
 マロニー「辞令に基づく正式な配置転換だよ、ミーナ中佐」
 そう言って、マロニーはミーナに書類の束を突きつける。

 マロニー「この基地は、これより私の配下である、第1特殊強襲部隊“ウォーロック”が引き継ぐことになる」 
 ミーナ「ウォーロック?」

 坂本、ペリーヌ、サーニャ、エイラ(あんたもかい!)、リーネも呼び出され、マロニーの前に並ばされた。
 マロニー「ウィッチーズ、全員集合かね?」

 そして、全員の前で、マロニーは芳佳の行為を責める。
 整備俺「(えげつねえ)」
 操縦俺「(まるで公開処刑だ)」

 マロニー「隊員は脱走を企てる。それを追うべき上官も、司令部からの命令を守らない。
     まったく残念だ。ミーナ中佐、ウィッチーズの諸君。
     ――そしてに、異世界からやってきた2人…」

 マロニー「本日、只今を以って、第501統合戦闘航空団“ストライクウィッチーズ”は解散する。
     各隊員は、可及的速やかに各国の原隊に復帰せよ。以上。
     わかったかね、ミーナ中佐」
 ミーナ「……了解しました」
 マロニー「君の独断専行が原因なのだよ。宮藤軍曹」
 芳佳「わたし…、でも、わたし……」

 力なく崩れ落ちる芳佳。
 整備俺も、バルクホルンも、皆が芳佳の小さな体を支えようとする。

 整備俺「(――ああ)」

 気絶したいのはこっちだよ。

 マロニー「安心したまえ。ネウロイはこのウォーロックが撃滅する。ブリタニアを守るのに、君達は必要ないのだ」

 ウォーロックのビームは、Ju52の燃料系統を正確に射抜き、機体は炎上した。
 爆発するかつての戦友を見つめ、俺達はただ、立ちつくすしかなかった。
最終更新:2013年03月30日 01:54