俺「ん?」
自然と俺は目が覚めていた。念の為時計を見る。
俺「まだ2時、か」
もちろん二度寝したっていいのだが、なんだか気が進まない。
俺「とりあえず、泳ぐかな」
ストライカーを履きに、格納庫まで行く事にした。
途中誰にも会わなかったのは今の状況を説明する手間が省けて有難かった。
俺「ストライカーをはいてっと」
服をストライカーに突っ込み、海パン一丁になる。普段から俺はズボンの代わりに海パンを履いている。
俺の尻のあたりに、尾びれがはえる。耳は生えないが、耳自体はよくなる。
外には、静かに光る月に照らされて、ひっそりと輝く海。そしてかすかに聞こえる優しい波音。
- このヴェネツィアの海を見るため、そして守るため。この二つの事のためだけに、俺はここへの転属を快諾した。
たとえ単独で守れと言われたとしても俺はここへと喜んで来ただろう。
そんなことを思いながら、俺は対物ライフルを持ち、ストライカーを発進させた。
高く飛ぶことこそできはしないが、一応少し浮遊と滞空はできるので、それを利用して滑るように滑走路を出る。
滑走路が途切れたところから少しずつ高度を下げて行き、ゆっくりと着水をする。
ちゃぷん。と言う音と共に俺は着水し、そのまま遊泳を開始する。
本来シャチはエラ呼吸は出来ないのだが、そこは俺の固有魔法でなんとかなっている。
しばらく泳いでいると、上空に2人の人影が見えた。目を凝らすと、リトヴャク中尉とユーティライネン中尉に見えたので、もし下を見た時に驚かないよう、とりあえず通信をすることにした。
俺「あー、俺准尉です。リトヴャク中尉とユーティライネン中尉ですよ・・・ね?」
エイラ「そうだけど・・・なんでお前だここにイルンダ?」
俺「たまたま目が覚めてしまいまして。いつも海の上で寝ていたからでしょうかね。
だからとりあえず海に行くことにしたんです。落ち着きますし」
エイラ「むぅー・・・」
どうやら何かが腑に落ちないようだが、何か悪いことは言っていないはずなので、あまり気にしないことにした。
しかし、今日はネウロイが来たのだから、来る可能性は低いのに大変だな、と思っていると、リトヴャク中尉が話しかけて来た。
サーニャ「あの、なんで俺さんは海にいても大丈夫なんですか?」
俺「と、言うと?」
サーニャ「あの、海には危険な動物もいるから・・・」
俺「ああ、そういうことですか。簡単なことですよ。俺の使い魔のおかげです。
シャチのシーイングというんですけどね。なにせシャチは海洋の食物連鎖の頂点に君臨する、海の王ですから。
わざわざ勝てる見込みのないない相手に戦いをしかけるような奴はいませんよ」
サーニャ「そ、そうですか」
少しまくし立て過ぎたかもしれないと少し俺は反省する。
ちなみにこのシーイングと言う名前は天体用語ではなく、俺の造語である。
海(sea)の王(king)なので、合わせてシーイング(seaing)である。
俺「ところで、お二人は何を?
まさか、デートですか?」
エイラ「っ!?ソンナハスガナイダロ!ダイタイオマエ・・・エット、ソノ、」
サーニャ「エイラ、別にそこまで否定しなくても」
エイラ「アアゴメンサーニャソンナツモリジャ」
サーニャ「別に私はエイラとなら・・・いいよ」
エイラ「サ、サーニャ・・・ゴメンナ」
あれ、俺はふざけて言ったはずなのに、何でこの二人は頬を染めて、
いい雰囲気になってるんですか?もしかしてこの二人できちゃってますか?
だって女の子同士ですよ?確かにウィッチは周りに男がいないからそんなふうになる可能性があるって聞くけど。
俺「えっと、えっと、し、失礼します!」
なんだか二人だけの世界にはいってしまっているようなので、通信を切って海に潜ることにした。
俺「ぶくぶく、あの空気甘すぎやけん」
海の中は外の甘い空気に全く影響されず、すごしやすかった。
俺「海の中は素晴らしい。
俺が見つけたのは、海中を泳いでいる巨大な影。目測2.7mのタイセイヨウクロマグロであった。
対象物との距離はおそらく10mほどであろう。
このチャンスを逃すわけにはいかん!と思った俺は、魔法力を発動する。
俺「行くぞ!シーイング!」
魔法力を発動させ、尻にシャチの尾びれが現れる。固有魔法とシーイングの助力、
ストライカーの補助を得て、一瞬にして時速60km、秒速にして16mに加速する。
- その時のことを、俺の真上にいた二人のウィッチはこう語った。
エイラ「いきなり海から何かが爆発したような音がしたんだナ。
まったく、俺のせいでサーニャとの甘い時間が台無しナンダナ」
サーニャ「私がエイラと話していたら、急に海が割れたんです。
せっかくエイラと話してたのに、酷い人だと思います」
壮絶な音が鳴り響き、一瞬の後、海から何かがトビウオのように飛んだ。
- 飛んだのは、左手で頭を抑え、右手に巨大なマグロの尾びれの少し手前の部分を持った俺だった。
俺「っしゃああああああああ!
久しぶりの大物だああああああ!
いやっふうううううううううう!」
エイラ「うおっ!?ナンダナンダ、うるさいゾ俺!」
俺「すいません。こんな大物を丸かじりするのは久し振りなので」
エイラ「エ、そのまま食べるのカ?」
俺「え、どういうことですか?」
エイラ「エ、ツナにしたりしないのカ?」
俺「もしかしてユーティライネン中尉、刺身食べたことないですか?」
エイラ「刺身ってナンダ?サーニャ、知ってるか?」
サーニャ「ううん、知らない・・・」
俺「魚を生のまま切って作るんですが、知りませんか?」
エイラ「エエー・・・まずそうだナ」
この一言で、俺の闘争本能、もとい愛国心に火がついた。誇り高き扶桑皇国の伝統料理をバカにされたのだ。
俺は激怒した。必ず、かの食わず嫌いを除かなければならぬと決意した。俺には他の国の人の事がわからぬ。俺は、扶桑人である。海を泳ぎ、魚を食べて暮して来た。だからこそ魚料理に対する悪評に対しては、人一倍に敏感であった。
前言撤回させなければならぬ。俺はその時心の奥底でそう思ったのだ。
決まったのならば即行動。今日はネウロイが来る可能性も低いので、安心して行動に移せる。
そう思いながら、ストライカーの収納スペースから網を取り出す。
5秒後、海面にはタコを素手で持っている俺がいた。
15秒後、俺の網にはイカが二匹入っていた。
20秒後、カニが2匹、網の中に追加されていた。
30秒後、もう1匹マグロが俺の網の中にあった。
40秒後、ウニが3個入っていた。
1分後、ホタテが2個、ミルガイが2個入っていた。
それからも俺は夜明けまで飽きることなく魚を取り続けていた。
- その時のことを、俺の真上にいた二人のウィッチはこう語った。
エイラ「うるさかったんダナ。時々叫んでて。
でもそれもはじめの頃だけで、少しずつ静かになってったんダナ」
サーニャ「時々網が見えたんですが、沢山海産物が入ってました。
怖いくらいでした」
最終更新:2013年03月30日 02:07