エイラ「と、飛んダ!?」

坂本「俺、なぜ飛べている!?書類が嘘をついていた、とでもいうのか!?」

俺「うーん、これはどっちかというとflyの[飛ぶ]ではなくてjumpの[跳ぶ]なんですけどね」

ゲルト「ど、どう言う・・・?」

バルクホルンが言葉を途中で止めた理由は簡単なものだった。俺が飛んだ跡に残っているものが見えたからだ。それは、

サーニャ「水・・・?」

俺「そ、水です。さっきの渦潮はただ水をストライカーに吸わせていた事の副作用ですね。
飛んでる方法は至って簡単な作用と反作用の利用ですよ。先ほどストライカーに入れた水を一気に放出する。
      • 種を聞けば簡単でしょう?ちなみに入れた水は宮藤理論で出来る空間に入れています。
他の陸戦ウィッチにも使わせられたら良かったんですけどね。流石に魔法力の供給のない状態で水を入れ続けるのは無理ですから諦めましたが」

ゲルト「待て、俺。先程のflyとjumpの部分の説明がないぞ」

俺「おっと、忘れてましたね。すいません。説明としては簡単なものになるんですけどね。
俺の固有魔法の内の1つ。固有と言えるほどのものでもないものですがね。その中に浮遊があるんですよ。
まあ、空間に物体をとどめる事しかできない飛行魔法の下位互換ですがね。
それを利用しているんです。普段は空中で浮遊して、動く時にだけ水を噴射する。だからイメージ的にflyよりjumpの方が近いんですよ」

ゲルト「・・・なるほどな」

ミーナ「ところで俺准尉、どの位の時間飛べるの?」

俺「5分間入れてたから15分くらいですかね。少なくともこの戦闘中は大丈夫ですよ」

ミーナ「では、援護を頼みたいけど・・・」

そう言って周りを見渡す。当然、いるのは戦っているウィッチである。

ミーナ「・・・なるべく、ウィッチに水がかからないようにお願いね」

俺「了解です」

そう言ってネウロイに近づく俺。勿論、俺は潜水ウィッチなので空戦機動などはやったことがない。
ならばどうするか。それはいたって簡単である。俺は他のウィッチ達を追い抜き、ネウロイと向き合う。
そして、そのまま抜けた。

坂本「なっ・・・」

ゲルト「おい、ただ邪魔なだけではないか!」

俺「おや、バルクホルン大尉、気付きませんか?」

ゲルト「一体何を・・・俺!ネウロイが狙ってきているぞ!」

俺「そう。それですよ・・・っと!」

シールドを張って攻撃を防ぐ俺。

ゲルト「・・・は?どういう事だ?」

エーリカ「・・・囮になってるの?」

俺「正解です。バルクホルン大尉、ハルトマン中尉。ネウロイが水を嫌っているのは知っていますよね?」

ゲルト「当たり前だ。・・・っと、硬いな、こいつは」

俺「なら話は簡単です。相手の嫌いな水を当てて、敵の注意を引きつけているんですよ。
バルクホルン大尉だって俺に納豆を投げつけられたら怒って攻撃するでしょう?
ネウロイだって同じですよ。あいつらだって意思があるんですから」

坂本「しかし、それではお前一人にネウロイの攻撃の多くを任せる事になってしまう!」

俺「大丈夫ですよ、今まであまり魔法力を使っていませんし。より余力のある兵が前線に行くのは当然でしょう?
さらに言えば、まだ俺はこの戦闘であまり戦っていませんしね。普通に考えれば俺が行くべきです」

坂本「・・・そうか。では頼んだぞ」

俺「ええ、任せてください・・・さて、行くか」

そう言って、対空ソナーを発する俺。ソナーの反射具合で分かるネウロイの中に存在する違和感、つまりコアの位置を調べ、射撃する。
魔法弾がネウロイに当たるが、奥まで届かなかったのか、ネウロイは倒れていない。しかし今回の射撃は倒すためではなく、

俺「・・・さあ、こっちだ!来い!」

ミーナ「俺さんが敵の注意を引きつけている間に攻撃を!」

宮藤「えっ、俺さんが囮に!?」

坂本「ああ、俺の判断を無駄にしないよう、全力を出せよ!」

宮藤「了解っ!」

そう。囮になるための一撃である。そして、撃った後すぐに魔法弾に魔法力を込める。
込めながらネウロイに向かって跳び、すれ違い際に先程のソナーで位置を見つけた位置に魔法弾を叩き込む。だが

俺「コアに当たってない・・・!?」

坂本「恐らくコアが移動するタイプだろう。前にも交戦した」

俺「そんなのがいたとは・・・ありがとうございます」

言いつつ反転をする俺。コアが移動するのでは連続して撃てない俺は余り戦えないと思い、対物ライフルを囮として使う事にする。
少し遠くから水で加速、すれ違い際に射撃をして、去り際に水を当ててネウロイの注意を引く。そんな事を繰り返す。
何度か繰り返した後、ネウロイを見ると、流石にずっと攻撃をされているからか、回復が追いつかないようで、所々が白い再生中であった。
俺はそこに重点的に水を当て、邪魔をしつつ、こちらも攻撃をする。そんな事をしているうちに気付けばもうタイムリミットまで5分。
ウィッチ達の間に焦りが生まれた頃、通信が入った。

坂本「皆、よく聞いてくれ。恐らくこのまま戦っていてはネウロイをヴェネツィアに着くまでには倒せない」

ミーナ「美緒?どうするつもり?」

坂本「私が烈風斬で奴を切る。だから皆には私を援護して欲しい」

ミーナ「美緒・・・。分かったわ。総員、坂本少佐の援護に周って!」

「了解!」

2人以外のウィッチ達、10人が異口同音に言う。
俺は坂本少佐に随行して行こうとすると、宮藤軍曹が同じ動きをしていた。壁になるつもりだろう。坂本少佐は一度頷き、こちらも頷き返す。直後、3人はネウロイに向かって速度を上げた。
時々飛来するビームから坂本少佐を守りつつ、速度を緩めず進む3人。もう少しでネウロイと接触する。という時だった。
ネウロイが今まで全方位に向かって放っていたビームを一点に収束し始めたのだ。集まった赤い光の大きさから見て、
例え強力なシールドを持っていても、すでに体力を消耗している宮藤軍曹に防ぎ切れるか微妙なレベルの光の玉が出来ている。
それに加え、更にネウロイは光の玉を大きくしているようだった。このままでは3人とも倒れる可能性がある、と思った俺は加速した。

坂本「俺っ!?何をする気だ!」

俺「あのレベルのビームを防ぎ切るのは恐らく消耗している今では至難の技です。下手をすれば3人全員が倒れる可能性があります!
なので、俺が先行して奴の気を引きます。その間に坂本少佐は奴を倒してください!」

坂本「・・・くっ、分かった。頼んだぞ、俺!」

宮藤「俺さんっ!気をつけてくださいね!」

俺「任せてください!」

言いつつ、さらに加速をする俺。同時に魔法弾に魔法力を込めながら、ネウロイとの距離を詰める。
対空ソナーで相手の現在のコアの位置を一応調べ、すれ違い際にコアショットを狙う。
チャンスは一回。接触するまで後10秒、流石に手が震えている。9.8.7.6秒手が汗で滲んできた。5.4.3秒。あと少しでタイミングが合う。今では一人で戦っていた時には無かった類の緊張という感覚が襲ってきた。
今まで安全地帯で戦ってきた、という事を思い知らされる。
2秒、1秒。ついにタイミングが来る。ネウロイの少し上、激突しないギリギリの位置を跳ぶ。そして、ついにその時が来た。

俺「今だっ!」

叫び声と共に対物ライフルから打ち出される魔法弾。それは俺が狙っていた位置に寸分の狂いも無く吸い込まれて行き、
ガリィッ!という音と共にネウロイのコアがあった位置を通り、ネウロイを貫通した。しかし既にコアが移動した後だったのか、ネウロイは倒れていない。
しかしそれに構わず俺は跳び続け、次は先程穴を穿った位置を重点的に、ネウロイに水を浴びせかける。
体に穴を穿たれた上に、更にそこに水を流し込まれる。流石に耐えかねたのか、ネウロイは叫び声を上げる。そして、

ネウロイ「ギュピイイイイッ!」

俺「来たっ!」

咆哮と共に、まるで世界が赤く満たされたかのように感じてしまうほどの赤い光の光芒を放った。囮に成功したのだ。
対物ライフルを肩に掛け、両手でシールドを張る俺。俺に赤い光の光芒が襲いかかるのと、

坂本「はああああっ、烈・風・斬っ!」

坂本少佐がネウロイに烈風斬を叩きつけるのはほぼ同時だった。


ネウロイの断末魔の叫びが戦闘空域に響き渡る。その時、既に俺は赤い光の光芒を受け止め切れず、空を落下して行っていた。
やった、やよっしゃ、などの声が聞こえ、一足遅れて、

「俺っ!」

「俺さんっ!?」

「俺准尉っ!」

などの俺を呼ぶ声が聞こえた。どうやらストライカーの音から察するように少しずつこっちに向かって来ているようだが、
慣性によりネウロイがいた位置から離れて行っており、魔法力を消耗したウィッチ達では速さが足りなかった。
俺はウィッチ達と慣性の力で離され、重力によって海へと引かれがら、俺は通信機に手をのばす。一言を述べるために。

「俺准尉っ、諦めるな!」

「俺さんっ、後少しです!」

「俺ぇっ!待ってろ!」

聞きながら、俺は気付いていた。背中に確かに迫って来る海に。恐らく間に合わない事に。
ウィッチ達も分かっているだろう。しかし、分かった上でまだ諦めていない。
これが仲間か、と思いつつ、通信機に手をのばす。最後の言葉となるであろう、一言を言うために。

俺「ありがとう」

言って、安堵する。次の瞬間、俺の体は海面に叩きつけられ、意識は闇へと沈んで行った。


翌日、俺の捜索が行われた。だが俺は発見されず、ネウロイの警戒の為に捜索は1日で終わった。
更にその2日後、俺を501に推薦した扶桑海軍の少将が到着。ウィッチ達は捜索の再開を訴えた。
しかし、その少将はウィッチ達に俺が海に落ちたかだけを聞き、ウィッチ達が肯定すると扶桑へと帰って行った。
最終的に俺はMIA、つまり戦闘中行方不明とみなされた。


      • それから2週間が経つ。しかし、遺体も発見されず、俺准尉の扱いはMIAのままであった。
最終更新:2013年03月30日 02:09