【私立フミカネ高校 部室棟3階 501特別課外活動部室】

俺「501特別課外活動部・・・?」

あまり要領を得ない答えを返され、俺は困惑する
そんな俺の様子を察してか、部長と言われた美しい赤毛の女性はそっと柔らかな微笑みを浮かべ、なお俺に説明を続ける

ミーナ「ええ、それが私達の所属する集団の名前よ、俺さん・・・私は部長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケよ」

俺「な!なんで俺の名前を!?」

驚くのも無理はない、だって俺はつい昨日この学園都市にやってきたばかりなのだから

ミーナ「名前自体は、そこにいる彼・・・副部長のアギト君から聞いたわ」

ああ、そうだったアギトさんには自己紹介したんだっけ・・・
あ!アギトさんと言えば!!

俺「あれなんなんですか!?あの!黒い化け物!!それと・・・それと戦ってた緑の戦士・・・あと銃撃も見たぞ!!それに・・・それにあの変な時間なんなんだよ!!」

俺がたてつづけにまくしたてる質問を聞き、ミーナと名乗った女性とアギトさんが困ったように目を合わせる
他の部員達も少し戸惑っているようだ


ミーナ「そうね、まずはどこから説明しようかしら・・・」

頬に手を当て、悩むミーナはどこか妖艶な美しさを放っていた、いるよね、苦労が似合う美女って

ミーナ「まず、この学園都市には零時間と言われるこの世の時間軸・常識から外れたある特殊な時間が存在するの・・・一日と一日の狭間、丁度0時に現れる怪異達の世界・・・あなたも実際に体験したわよね?」

俺「あ・・・はい・・・時計が0時で止まって・・・人がいなくなって・・・」

思いだす、世界で1人だけになったかのような孤独感、あの時は興奮していたが冷静に考えれば震えてくる

ミーナ「そう、あの時間は大多数の人間には認知できないものなの・・・あの時、通常の人達がどうなっているのか・・・私達にも解からないわ・・・」


アギト「だが、あの時間・・・零時間に確実に存在する化け物どもがいる」

坂本「奴らは、我々人間がその存在を認知していない事をいい事に零時間の中で破壊と殺戮の限りを尽くすんだ」

俺「それが・・・あの化け物・・・“ネウロイ”ですか?」

ミーナ「えぇ、理解が早くて助かるわ、零時間に起こった出来事は現実世界にも影響を及ぼすの・・・例えば、ネウロイにより住宅が破壊されれば、その家にトラックが突っ込んで事故が起きた・・・こんな感じに事象を変換されて一般の人達の記憶に残るの」

もさなじみ「たまに奴らは何故か人間を零時間の中に呼び寄せるんだ、そして・・・殺す」

俺「こ・・・今回の俺みたいに・・・ですか?」

ミーナ「少し、違うわね・・・ネウロイによって呼ばれた人間は意識を持っていないの・・・まるで操り人形のように行動するわ・・・その点あなたは意識があった、零時間の中で自我を持っていたわ」


そういえば、先程もそんな事言われて驚かれたっけ?
それが珍しい事なのか?

ミーナ「つまり、俺さんは私達と同類の可能性が高いの」

俺「俺が・・・みんなと同じ・・・ですか?」

辺りを見渡す、黙って話を聞いていた他の部員達の顔を見る
どいつもこいつも、一癖も二癖もありそうな顔してやがる

アギト「つまり、奴らと戦える資格がある者・・・と言う意味だ」

俺「あいつらと・・・戦う・・・」

ミーナ「えぇ、零時間の中で意識をはっきり保っていられる人間は少ないわ・・・魔力と呼ばれる特殊な才能が必要なの、この学園の長い歴史の中で創立当時からネウロイの脅威から一般生徒達を守ってきたのが・・・」


ミーナ「私達、特別課外活動部なのよ」


坂本「で、今は501代目と言うわけだ、どうだ!由緒正しいだろ?あっはっはっは!!」

眼帯侍女の高笑いが夜の校舎にこだまする



俺「は・・・はぁ・・・大雑把な所はなんとなく理解できました・・・」

ミーナ「実際体験した彼方でも、にわかには信じられない話だとは思うわ・・・」

アギト「だがこれが現実だ、奴らは確実に存在し、人々の平和で平穏な暮らしを破壊する」

ゲルト「そんな事を黙って見逃してなんていられないだろう?」

シャーリー「なんの因果か、私達にはその資格があるんだ」

試作「・・・力って奴もなぁ!」

もさなじみ「なら答えは簡単だろ?」

卿「できる事を・・・ね」

芳佳「そう!私達にできる事!!」



みんな、とてもいい顔をしている
きっとこれが自分にとって本当にしたい物をみつけた人の顔なのだろう
俺にも・・・こんな顔ができるのかな?

いや・・・してみたいって思った

俺「とりあえず・・・危ない所を助けていただき、ありがとうございました」


「!?」


部員全員が頭の上にこんなマークがついたような表情を浮かべる

エーリカ「うわぁ・・・なんかジーンときた」

卿「そういえば、お礼言われたの初めてだねぇ」

ゲルト「くっ!目から汗が!!」

シャーリー「おいおい!泣くなよ、バルクホルン!」

ゲルト「だからこれは汗だと言っている!!」

俺「え?なんか俺マズイ事言いました?」

試作「逆だよ逆ぅ、俺達基本嫌われ者だからさぁ面と向かってお礼言われたの初めてなんだよ」

それは驚きだ、一般生徒達のために戦っているこの人達が嫌われているだなんて

ミーナ「零時間については基本的に大多数の生徒が知らないのだから当然ね、後は・・・問題児が多いのよ・・・うち」


ミーナさんが先程まで格闘していた始末書の束を俺に見せながらジト目で部員達を眺める
すかさず目をそらす部員達
アギトさんまでもがバツが悪そうだ、少し上下関係が見えてきたようだ

わざとらしく大きなため息を吐いたミーナさんは時計を眺める


ミーナ「で、本題はこれからよ・・・私達は常に戦力を求めているの、だってネウロイと戦える戦力は貴重だもの」

もさなじみ「最近はただでさえ新人共が風紀委員執行部やアフリカの戦闘部隊に流れてて新入部員が少ないんだ」

風紀委員もネウロイと戦ってんのかよ・・・

試作「今年は新入部員4人だけだしなぁ、少ないよなぁ」

ミーナ「はいはい、また話がそれてるわよ」

パン パン と手を叩きながらミーナさんが話を本題へと戻す

ミーナ「こうして出会ったのも何かの縁よ・・・私達、501特別課外課外活動部に入部する気はないかしら?」

俺「え?俺が・・・ですか?」

そんなの答えは一つだ、憧れていた非日常
謎の敵、頼もしい仲間、美少女達・・・俺がいつも布団の中で妄想していた世界


俺「はい!ぜひ!!」




芳佳「いやったぁ――――!!!」

足を治してくれた少女が歓喜の雄たけびをあげる

芳佳「これからよろしくお願いします!一緒に頑張りましょうね、俺さん!!」

まるで子犬みたいな人懐っこい雰囲気を持つ少女は俺の手をとってブンブン振り回す

エイラ「ふふっ、はしゃぎすぎだゾー、宮藤」

ヘイヘ「お前だって嬉しそうじゃん」

エイラ「そういうお前も、頬緩んでんゾ」

サーニャ「これで1年生の仲間が5人になったね」

どうやらこの4人が1年生らしい、そして俺が歓迎されてる事も汲み取れる



だが全員が俺の加入を認めているようではないようで

アギト「水を差すようで悪いが、俺はまだお前の入部を認める気はない・・・そうだな・・・3日・・・3日考える猶予をお前にやる、よく考えて返事をくれ」

もっさなじみ「なんでだよ?本人も入部するって言ってんだから問題無いだろう?」

坂本「いや、アギトの言う通りだな・・・私達の仲間になるという事はデメリットも多い・・・風紀委員会や生徒会にも目をつけられるし、アフリカに絡まれる理由にもなる・・・安全な学園生活から程遠いだろうからな」

アギト「俺にはさっきのお前の言葉が状況に流されて発している言葉に聞こえた」

戸惑っている俺を真っ直ぐと見て、アギトさんが続ける

アギト「だから流されるのではなく、自分で決断しろ『この部で共に戦いたい』とお前の言葉で聞くまで、俺は入部を認めない・・・かまわないだろう?ミーナ?」

ミーナ「どうせ私が反対しても聞かないんでしょ?」

そう言って、ミーナさんはジト目でアギトさんを見る

ミーナ「はぁ」



再び、ミーナさんは大きなため息を吐いて、俺に告げる

ミーナ「では3日後の放課後、もう一度ここに来てもらえるかしら?その時に返事をお願いするわ?」

ミーナ「誘っておいてなんだけど、確かにアギト君の言う通りでもあるわ、私達の仲間になると言う事は必ずしもいい事ばかりでは無いの・・・それでも、私はあなたに入部して欲しいと思っているわ、いい返事を待っています」

そう言った後に、ミーナさんが『解散』と告げて真夜中の集会は終わりを迎えた





【帰り道】

もさなじみ「いやー!まさか期待の新人も“大和”だったとはねぇーはっはっは!」

人当たりのよさそうな、悪く言えば思慮が少したりなさそうな先輩が嬉しそうに語る

女子寮は反対方向らしく、校門で別れた
試作先輩は港方面から自宅通いらしく途中で別れた
エイラとヘイヘの2人は通りの途中にある一軒家に入っていった・・・同棲?


もさなじみ「実は部の男は試作とヘイヘ除いてみんな“大和”なんだぜ?凄いだろ?」

俺「あ、はい・・そうなんですか・・・」

卿「もさなじみちゃん、俺ちゃんがちょっと引いてるからもう少しトーン下げてねぇ~」

この人は2年生らしい、先輩の事をのきなみ「ちゃん」づけで呼んでるのに違和感が無いのは人徳のなせる技だろう
顔も悪くないし、いつも穏やかな菩薩のような表情をしている
しかし・・・俺はどこかでこの人の声を聞いた事ある気がするんだよね、初対面のはずなのにな


5月の、少しだけ生温かい夜の風が4人で並んで歩く俺達の体を通りすぎていく

学校通りを抜け、大通りに出る
自動販売機が大量に並び、まるで昼間のように明るい通り

卿「ここは自販機通りって言うんだよ~、古今東西世界中の缶ジュースがあるよ~」

俺「へー・・・さすが学園都市・・・あ!力水ある!!懐かし~!!」

もっさなじみ「よし!俺が新人君に奢ってやるよ!!」

俺「え!?本当ですか?」

さっき頭の中で思慮が足りなさそうとか言ってすいませんでした
この先輩はめっちゃいい人です

もさなじみ先輩が自販機の一つにコインを投入する
しかし自販機はうんともすんとも反応しない

もっさなじみ「ちくしょ!こいつぶっ壊れてやがる!!500円も投入したのに!!」


先輩は返却レバーを何回も捻るがお金は一向に返却されない
どうやら先輩のイライラも頂点に達したようだ
腰から大型のメリケンサックを取りだし、構える


もっさなじみ「知ってるか?機械ってこうすると直るらしいぜ?」

俺「いや!壊れますって!!」



『そこで何をしている』



突然、声がかかる
氷のように冷たい、その声を聞いた者の奥の奥まで確実に響く絶対的な存在感を放つ
そんな声

恐る恐る、その声の主の方を向く
そこには揃いの腕章をしたフミカネ高校の制服を着た一団がいた
『風紀委員・執行部』
その腕章に書かれた文字が彼等の存在を解かり易く証明してくれる

その先頭に立つのは、一際存在感を放つ男性だった
180cm程の長身に、まだ5月だというのに季節感を感じさせない長手袋をしている


魔人「なんだ、特別課外活動部か・・・」

もさなじみ「なんだとはご挨拶だな、風紀委員長さんよぉー」

少し、嫌そうな顔をして先輩は風紀委員会達の方を睨みつける

魔人「ふん、俺もずいぶんと嫌われたものだな・・・ところで、先刻の零時間内での戦闘はお前達か?」

アギト「そうだが?何か問題があるのか?魔人?」

魔人「やりすぎだ、アーケード街の花屋が一つ再建不能まで破壊されていた・・・このままではお前達も“俺の正義”のために犠牲になってもらう必要があるぞ?」



ゾクッ!



全身に鳥肌が立つ、この人はもしかしてとてつもなくヤバイ人なのではないだろうか?

アギト「待て、話が解からん、俺達が戦闘を行ったのは学生寮区だ、アーケード街には立ち行っていない」

アギトさんの話を聞いた風紀委員長は、少し考え込み

魔人「ほう・・・確かに学生寮区にもネウロイの反応があったのは俺が確認している・・・それを俺が間違うはずもない・・・ならば、アフリカ共か・・・」

魔人「そうか、すまなかった・・・しかしよかったよ、俺とて昔の仲間を傷つける事はしたくなかったのでな・・・なぁ槍?」


槍と呼ばれた男が、いつのまにか魔人の隣に立っている
手足が長く、どこか真面目な印象を他人に持たせるような顔つきをしている

槍「・・・」

聞こえていたのか、聞こえなかったのか、少しバツが悪そうに槍は目を伏せてしまった


もさなじみ「まだ警察ごっこ続ける気か?“お前の信じる正義”もいいけどよー、サーニャちゃんが心配してんぞ?」

魔人「義妹を守るためにはこれが一番なんだ、暴力には暴力、世の中には死んだ方がいい人間というものが必ず存在する」

アギト「だから・・・貴様が裁くのか?」

魔人「他に誰が裁く?この街には警察もいない!迫りくる悪意から!ネウロイから!大事な物を守るためには力が必要なのだ!!あの時の悲劇を忘れたか!?あの日!我等が友を失ったダイナモ事件を!!」


魔人が叫ぶ、その叫びは本心から来るものなのであろう、頭にではなく、心に響く

アギト「ッ!?」

もさなじみ「チッ!」

槍「・・・」

アギトさんと、先輩の顔が苦虫を噛み潰した様な表情に変わる
槍さんも、さらに視線を下に落とす


槍「魔人、これ以上の問答は無駄だ・・・こいつ達と俺達とでは目的が違う」

もっさなじみ「おい槍!お前帰ってこいよ!ミーナも、俺達もみんなお前の事待ってるんだぞ!!俺達まだ仲間だろ!!??」

槍さんはもさなじみ先輩の方を頑なに向こうとしない、負い目を感じているようにも見える

槍「今の俺に・・・彼女の『一番槍』たる資格は無い・・・そうあの日から・・・」

ダイナモ事件ってやつの事か?
互いに空気になってしまっている卿先輩のほうを見れば、卿先輩も「何がなんやら?」って顔をしている
どうやら3年生だけの問題みたいだ

槍「いこう、魔人」



そう言って彼等が立ち去ろうとした所で、響くバイクの排気音
強力なハイビームのライトで俺達が照らし出される

虎「はっはー!なんだよなんだよ!!風紀委員会の№1と№2、に501特別課外活動部のみなさんおそろいで!!野郎共だけでムサいパーティーか!!??」

パシリ「おい!!あんま煽んなよ!!このおバカ!ヤバイ奴ら勢ぞろいじゃねぇか!!」

マルセイユ「おいパシリ、喉渇いた、ジュース飲みたい」

パシリ「さっき買ってあげたばっかでしょーが!!あと!頼むからもうちょい緊張感持って!!」

俺「あ、大通りで見た人達だ・・・」

昨夜見たまま、彼等は3人でバイクに跨っていた・・・
3人乗りとか珍走団でもしないんじゃないか?
ていうか、この人達は夜通し遊んでたんだな



卿「あ、マルちゃんだ、相変わらず可愛いねぇ~・・・あのドSな目がいいね」

え?なんか卿先輩・・・今・・・キャラ変わらなかった?



魔人「これはこれは・・・アフリカの野蛮人共じゃないか?公園やアーケード街の花屋だけでは破壊衝動が満たされなかったのか?」

虎「ハッハー!言ってくれんじゃねぇか!『黒百合の騎士』様!!てめぇらが仕事サボってやがるから、俺達がネウロイをお掃除してやっただけだぜ!?」

虎「それに、公園の件はうちの整備士様に言ってくれよ!こいつが魔導カートリッジ弾の威力考えねぇからよぉ!!」

パシリ「テヘ♪」



まったく反省している様子が無いアフリカの2人に対し、呆れたような表情をして魔人が口を開く

魔人「その名で俺を呼ぶな・・・だからやり過ぎだと言っているんだ、自由も結構だがそれには責任が伴うという事を貴様等は理解できていない・・・ここで理解させてやろうか?」


一気に場の空気が変わる、バイクに跨っていた大柄のタンクトップを着た男が地面に降り立つ
その身長は190cmを余裕で超える大男、そしてその肉付きは筋肉質の一言
その首筋と左腕には大型の獣のものだと思われる爪痕と噛み傷が目立つ
はっきり言って・・・超強そう



虎「俺はな、本能に従って行動するのよ・・・やりたくない事は死んでもやらねぇ!てめぇのそのお勉強は・・・やりたくない事だなぁ!!」

彼のバックに普通の虎の2~3倍程はありそうな大型の虎が見えた気がした
ほら漫画とかでよくあるだろ?あれだよあれ

パシリ「おいおい!マジでやんのかよ!!マルセイユ!援護!」

マルセイユ「いらないさ、あいつは最高なんだぞ?私と一緒でな」

対峙する2人の男、間違いなくいえるのは互いにかなりの実力者である事
空気は依然張りつめたままだ

魔人「『誰よりも自由で誇り高いアフリカの王は、法に逆らい、それはそれは見事な虎の剥製となりましたとさ・・・』それが、今夜この学園都市に産まれる童話だ」

魔人が喋り終えると共に、彼の両手にどこから取り出したのか?2本の大きな扶桑刀が握られている

虎「はっはー!生憎、童話を読む趣味は無くてね!官能小説の方が好みかな!?『学園を守る騎士様がボコボコにされてゲイ共にケツ犯される』こんなシナリオなら読んでみてぇーなぁー!!」

グルル!!と虎の喉が鳴る、全身の筋肉が隆起し、臨戦態勢もバッチリと言った所か



アギト「そこまでにしておけ、お前達が本気で闘ったらこの区画が壊滅する」

槍「魔人、今日はサーニャちゃんと会う約束なんだろう?ここは鞘を納めてくれ」

パシリ「虎!!マルセイユがもう眠いってよぉー!!そこまでにしてもう帰ろうぜ!!」



3者3様の止め方で、一触即発の状態を止めにかかる
この彼等の呼びかけは効果は抜群のようで・・・

魔人「ふん・・・血の匂いを纏ったまま義妹に会うわけにはいかんな」

虎「チッ!ここからがいい所だったのによぉ!!ったく我がままなお姫様だぜ」


どちらも特定の女性に弱いようだ


虎が再びバイクに跨り、魔人に告げる

虎「うちのチームにもお前のファンが沢山いてよ!!そいつらのためにそのケツ大事にとっとけよ!!」

魔人「貴様こそ、いつか俺が剥製にするまで狩られるなよ」

さっきまでの張りつめた空気が嘘のように、2人はどこか楽しそうだった
そんな2人の間に割って入るのは先程まで非常に眠そうだった、少女

マルセイユ「なぁ、スタゲの奴・・・元気にしてるか?」

魔人「あぁ、彼なら息災だ・・・うちの№3として見事に手腕を発揮してくれている」

少し、寂しそうな顔をして少女はさらに告げる

マルセイユ「伝言を頼む『馬鹿野郎』とな」

魔人「ふっ、アフリカの星の頼みだ・・・必ず、彼に伝えておこう」

どうやらこの美少女と「スタゲ」と呼ばれた男にはかなり複雑な事情があるようだ
同じバイクに跨っている虎もパシリも黙って聞いている

虎「俺からも頼む『馬鹿野郎、恋敵がいねぇと張り合いが無ぇ』ってな!!」

魔人「それは自分で伝えろ」

虎「ケッ!」

パシリ「んじゃ!頼んだぜ!!あいつは離れてても俺達の仲間だからな!!」

彼等『アフリカ』と呼ばれる賑やかな人達は再びバイクで暗闇の中に消えていった

魔人「俺達も行くぞ、もう用は無い」

「「「「「「「はっ!!!!」」」」」」」

彼の一声に、整列した風紀委員達が答える、そして先導する彼の後ろを一糸乱れぬ動きでついていく



槍「アギト、ミーナはやはり・・・俺を恨んでいるのだろう?」

1人だけ残った槍が、アギトさんに神妙な顔で尋ねる
こちらもこちらで訳ありのようだ

アギト「そんな事は自分で訊ねろ」

質問をばっさりと一言で斬られた彼は、少し逡巡し

槍「・・・ミーナを・・・頼む・・・」

そう言い残し、彼もまた学園都市の闇の中にまぎれて行く

アギト「俺では・・・お前の代わりには・・・なれない」



もっさなじみ先輩も、卿先輩も、この2人の関係について聞く事はしなかった
いや・・・できなかったのだろうか?
他人が踏み込むべきではない領域・・・みたいな物を確かにこの2人の間に感じた




【男子学生寮『大和』】

あれから先、会話をする事も無く微妙に重い空気の中俺と先輩達は寮へ帰宅する

もっさなじみ「悪ぃな俺、変な空気になっちまって」

先輩が謝ってくれた、別にこの人のせいではないのに、本当に優しい人なのだろう

アギト「だが、解かっただろう?時には今日会った魔人や槍・虎のような猛者共とも争わなければいけない可能性もあるんだ・・・よく、考えるんだな」

もさなじみ「まぁ、アギトはああ言ってるけどさ、本心としてはお前に入部して欲しいって思ってるんだぜ?あいつ、ツンデレだからさ・・・もちろん、俺もそう思ってる」


3年生の2人が1階にある自分の部屋へと戻っていった
2階へ上がり、奥の方へと歩く
まだ卿先輩と一緒の方向だ・・・
そう言えば、俺の隣ってキチガイが住んでたんだっけ・・・はぁ・・・
そのキチガイについての情報、先輩に聞いておこうかな?

なんて思っている間に、奥にある俺の角部屋まであと残る部屋は2個・・・
あ、卿先輩もキチガイの隣なのか・・・
お互い苦労してるな・・・
あれ・・・
俺の部屋の2個隣も通りすぎて・・・

卿「あ、俺達ってお隣さんだったんだねぇ~」




俺「あんただったのかよ!!」




卿「?」

俺の魂の叫びも彼には意味が伝わっていないようだ・・・
まぁ当然か・・・

卿「まぁ俺ちゃん、今日は色んな事が沢山あって大変だったと思うけどさ・・・ここで会ったのも何かの縁だし、俺でよかったらなんでも相談にのるからさ、だから・・・これからよろしく!!」

とても頼もしい言葉を述べて、優しい先輩は自室のドアを開ける

栗の花の匂いがした・・・

俺「・・・なんとなくこの人がどんな人なのか解かってきたな・・・」





【男子寮『大和』 俺自室】

部屋に帰宅し、ベッドにドサリと倒れ込む
あまり感じてはいなかったがかなり疲れていたようだ
瞼が重い

俺「しっかし・・・」

俺「凄いな、学園都市は・・・」

時間の流れから外れた、異空間
そこに蔓延る、人を襲う異形の化け物
人知れず、その化け物と戦う不思議な力を持った少年少女達
そして、たくさんの人と人が交わる事で産まれるドラマ・・・
俺は、そんなすべてを目に焼き付けておこうと思う

そう、ただ一度しかない青春の謳歌ってやつのために



でもダメだ・・・もう限界・・・

眠気が・・・

こりゃ明日、転校そうそう・・・遅刻だな・・・
最終更新:2013年03月30日 23:30