キ84 第三・五話「あらためまして」
~東京、三宅坂、扶桑皇国陸軍参謀本部~
ここは扶桑陸軍の一切の行動を決定する最高機関の一つである参謀本部。
そのなかでも扶桑陸軍作戦課の第2課長である大佐が執務机に腰掛け、欧州からの最新報告を部下の航空班長少佐から受け取っていた。
大佐「―――それは本当なのか?」
少佐「ええ、間違いありません。
我が皇国陸軍航空機によるXナンバーネウロイとの交戦、そして撃墜」
大佐「大した快挙ではないか!
しかし何故そんな所に陸軍機がいたのだ?」
少佐「どうも1課と6課が試験的に統合戦闘航空団へ送り込んだ研修生が交戦に至った模様です」
大佐「あー、アレか、機械化航空歩兵連携試験飛行隊とかいう・・・」
少佐「それですな」
大佐「しかしこれは使えそうだぞ・・・
1課と6課のネズミ共から掻払ってやろうじゃないか。
おい、電信の準備だ」
少佐「はっ」
◇ ◇ ◇
~ロマーニャ、501JFW基地食堂~
ガチャ
俺「おはようございま―――」
ドアを開けて朝の挨拶を仕掛けて、思わず言葉が途切れた。
食卓に坂本とミーナを除く全員が集合して、しかもその18の瞳が全てこちらを注視しているという異様な光景に出会したせいだ。
俺「どうかしました・・・か?」
ゲルト「ほ、本当なのか?」
俺「はい?」
エーリカ「昨日のネウロイは俺が落としたんだって?」
俺「いや、自分はクロステルマン中尉達を援護しただけで―――」
エイラ「でもミヤフジ達と一緒に戦ったのはホントナンダロ?」
俺「ま、まぁ・・・自分は足を引っ張ってただけですけ―――」
俺「そんな事は・・・
むしろ自分が中尉達に助けてもらったくらいです。
自分のせいでビショップ曹長にも被害が・・・」
リーネ「私は大丈夫でしたし気にしないでください、俺さん」
宮藤「そうですよ、俺さんが来てくれたからあのネウロイを倒せたんです!」
ペリーヌ「確かに、あのままだったら厳しかったかもしれませんわね」
俺「そうですか?
中尉達なら問題なく撃墜出来たと思いますが」
ペリーヌ「ず、随分と断定しますわね・・・」
俺「いえ、なんとなく・・・
なんか『合体!』とかして撃墜できそうじゃないですか」
ペリーヌ「が、合体・・・?」
ゲルト「まあともかくだ、通常の航空機でXナンバーネウロイと交戦して無事に帰還してくるとは・・・
大した腕前だな」
シャーリー「あるぇ~、実戦経験がどうの新人がどうの言ってたのはどこの誰だったけなぁ~?」
ゲルト「あ、あれはちゃんと謝っただろう!
というかお前が謝らせに行かせたんだろうが!!」
シャーリー「さて、そんなこと言ったっけ?」
ゲルト「リ~ベ~リ~ア~ン~!」
シャーリー「ハッハッハ、ちょっとしたジョークだって」
俺「あのお二方いつもあんな感じなんですか、中尉?」ボソッ
エーリカ「んー、大体ねー」ボソッ
エイラ「またハジマッタ・・・」
ルッキ「でももうすぐ俺帰っちゃうんでしょ?」
俺「・・・そうですね、後一週間と数日で研修期間も終了です」
エイラ「長いようでミジカカッタナ」
サーニャ「私たちはあんまり俺さんとお話する機会が無かったから・・・」
俺「そういえば中尉たちとは殆どお会いしてませんでしたね」
エイラ「まぁ、夜間専従班だからシカタネーダロー」
俺「いや、そうなんですけど・・・」
ルッキ「ねーねー、だったら最後にお別れパーティーしようよ!」
シャーリー「お、いいんじゃない?」
エーリカ「パーティー!お菓子!?」
ガチャ
坂本「俺、ここにいたか」
俺「坂本少佐?」
坂本「少し話がある、付いてこい」
俺「はっ」
芳佳「どうしたんですか、坂本さん?」
坂本「・・・いや、少しな。
行くぞ」
シャーリー「んじゃ、あたし達でパーティーの事考えとくからなぁー」
坂本と食堂を出る俺の出際に背後からシャーリーが声を掛けた。
坂本「パーティー?」
廊下をどこかへと向かいながら、坂本が尋ねた。
俺「あー、もうすぐ自分の研修期間も終わるんで、最後に送別会を開いてくれるそうです」
坂本「言いだしっぺはルッキーニかハルトマン辺りか?」
俺「ルッキーニ少尉ですね」
坂本「やはりな。
まぁ普段なら構わないのだが、今回ばかりはどうか・・・」
俺「今回?」
坂本「ああ。
俺の研修終了のことなんだがな―――っと。
此処から先は直接聞いてもらったほうがいいな」
気がつくと坂本の足が執務室の前で止まった。
分厚いオーク材の戸を通して僅かに話し声が聞こえる。
一つは女の声―――おそらくミーナだろう。
だがもう一方は男の声だ。
この基地で執務室に通されるような男とは珍しいな、と思っていると坂本がドアをノックした。
コンコン
坂本「失礼します」
ガチャ
室内の人影を見て、俺は思わず声を上げた。
俺「―――中佐殿?!」
中佐、とは言ってもミーナの事ではない。
「いよぉ~、久しぶりだね俺くん~」
妙な抑揚を付けた声で返答したのは先程の男声。
声の持ち主は初老の扶桑人で、ミーナや坂本と大差ない背丈に深緑の扶桑皇国陸軍将校士官用制服を纏っている。
その右胸にはM字型の淡い紺青の兵科胸章が縫い付けられ、彼が航空兵科の将校であることを物語っていた。
襟元には黄色に赤が三本線と星が二つ描かれた中佐の階級章が見て取れる。
本来その禿頭に鎮座するはずの軍帽は今は机の上に投げ出されていた。
丸眼鏡の奥の柔和そうな小さめの瞳はさも嬉しそうに俺の事を見やっている。
要するに上の無駄な六行を纏めると、チビでハゲで
メガネのオッサンがいた、ということになる。
バッ!
俺「お久しぶりでありますっ、中佐殿!」
直立不動の気を付けの姿勢で敬礼する。
「あー、久しぶりだねぇ、俺くん
うんうん、元気だったかな?」
俺の敬礼など意に介さずにフランクに挨拶をしてくるオッサン。
何を隠そうこの男は俺の所属する扶桑皇国陸軍機械化航空歩兵連携試験飛行隊の隊長、上野中佐であった。
俺「はっ!不肖ながら息災であります!」
上野「相変わらず堅いねぇ・・・はい、ご苦労さん」
ひょいと上野中佐が敬礼を返したので、姿勢は直立不動のままで俺も敬礼を解く。
俺「はっ!ありがとうございます!
本日はその・・・どういったご用件で・・・?」
上野「ちょいとね。
とりあえずミーナさんと坂本さんには話しといたんだけど・・・
まぁお掛けなさいな」
俺「はっ、失礼します」
俺は手近な椅子に腰掛けて、上野の話を聞くことにした。
上野「まずは、初撃墜おめでとうさね。
しかもXナンバーネウロイと交戦までしたらしいじゃないの」
俺「はっ、その通りであります」
上野「そりゃすごいねぇ・・・っと。
さて、ミーナ中佐。さっきの件だけども・・・」
ミーナ「はい?」
上野「も一回説明すンのめんどくさいから俺くんに説明してくれません?」
ミーナ(め、めんどくさいからって・・・)
「は、はい、分かりました、上野中佐。
さて俺さん、まずは先日の撃破おめでとう」
俺「はっ、ありがとうございます」
ミーナ「知っての通りあの大きさのネウロイは滅多に現れることは無いわ。
さらに未確認形式が多く、分類されている『ラロス級』や『ケファラス級』と違い個体ごとに通しの番号で呼ばれる『X-ナンバー』のネウロイね。
それだけに変則的な能力も多く、基礎戦力も高いわ。
そのせいで、基本的には私たちウィッチーズがその相手をすることになっているわね。
でも俺さんはこのXナンバーネウロイを通常航空機を使用して交戦、撃破に成功したことになるわね」
俺「いえ、やはり自分は航空歩兵の援護に回っただけであります」
ミーナ「そうは言ってもこれは人類側の戦術にとって大きな進歩だわ。
そこで扶桑陸軍参謀本部は本研修プログラムの恒久化を決定したそうよ」
俺「恒久化、ですか・・・?」
ミーナ「ええ、つまり一時的なものではなく長期に渡って各機械化航空歩兵隊に同様の航空兵を配置。
さらなる協調戦術の研究を推進する・・・ということらしいわ」
俺「・・・失礼ですが、自分には話が見えません」
上野「あー、めんどくさい奴だね、君は。
要するに今日から原隊の独立11飛から離れて、501に恒久的に配属ってこと」
俺「・・・了解しました。
しかしなぜ自分が?」
上野「それがね、なんか上の偉い人がこの話気に入っちゃったらしくてさぁ。
新聞とかでデデーンと記事出しちゃったりしてさ、『これはいい戦意高揚になる』とか言ってたんだよね。
よーするに宣伝だよ」
俺「宣伝、ですか」
上野「まー、悪いことばっかりじゃないさ。
今日からは連合軍に出向する形なるわけだから給料も上がるし、それに扶桑だとちょっとしたヒーローだよ、俺くん。
つー訳で頑張ってちょうだいな。
俺はそろそろ行かないといけないからね、っと」
そう言うと、上野が立ち上がりミーナに会釈する。
無論俺も直ぐに席を立った。
上野「それでは、ミーナ中佐。
俺少尉をよろしくおねがいします」
ミーナ「了解しましたわ、上野中佐」
二人の中佐が敬礼を交わして、指揮権を引き継ぐ。
それが終わると、上野は机の軍帽を手にして部屋を後にしようとした。
が、ふと戸口で止まり懐を探ると敬礼の姿勢で直立不動になっている俺に何かを投げてよこした。
パシッ
上野「いやぁ、こいつを忘れるところだった、いかんいかん。
それじゃぁまぁ頑張ってちょーだい、んじゃ」
バタン
俺(・・・なんだ?)
受け取った茶封筒を開封して中を覗く。
黄色い平行四辺形に赤のストライプが二本、その上に輝く銀星が二つ。
扶桑皇国陸軍中尉の階級章。
ミーナ「面白い方ね、上野中佐って。
さて、行きましょう、俺さん」
俺「は?どこへですか?」
ミーナ「決まってるじゃない。
今日から正式にあなたの仲間になる皆の所よ」
◇ ◇ ◇
~同時刻食堂~
シャーリー「よーし、それじゃぁ料理は宮藤とリーネが用意してくれるな?」
宮藤・リーネ「はい!」
ゲルト「他には何かあるか?」
エイラ「ソウダナー・・・なんか出し物でもやったら面白いんじゃナイカ?
ホラ、ブリタニアでやった親睦会の時ミタイニ」
ルッキーニ「いいね、おもしろそー!」
ガチャ
坂本「なんだ、何を盛り上がっているんだ?」
ルッキーニ「今ね、俺のお別れパーティの話してたんだよ。
坂本少佐も一緒にやろうよ!」
坂本「ふむ、お別れパーティか・・・
残念だがそれは出来そうにないな」
ルッキーニ「えー、どうしてー・・・」
坂本「いや・・・そのことについてなんだがな・・・」
サーニャ「俺さんがどうかしたんですか・・・?」
坂本「うむ、その件でミーナから話がある。
取り敢えず5分後に全員ブリーフィングルームに集合してくれ」
全員「了解!」
◇ ◇ ◇
~数分後、ブリーフィングルーム~
ザワザワガヤガヤ
ブリーフィングルームに第501統合戦闘航空団のメンバーが揃っている。
それぞれ思い思いに会話を交わしていて、一体何の話なのかと邪推が飛び交う。
エーリカ「何なんだろうね、話って?」
ゲルト「さぁな。だがミーナがこうして皆を集めるんだ。
重要なことなんだろう」
ガチャ
ドアが開いてミーナ、坂本に続いて俺が入ってくる。
坂本と俺が演壇の後ろに待機しミーナが演壇に立った。
ミーナがファイルを立てて皆の注意を集める。
ミーナ「静粛に!
今日は大事な話があってみなさんに集まってもらいました。
・・・知っての通り、俺少尉は今まで期間限定の研修任務でこの部隊に派遣されていました。
そしてまもなく研修期間も終わりを迎えます。
俺少尉は研修期間終了と同時に原隊である扶桑皇国陸軍独立第11飛行中隊に復帰する予定でしたが、扶桑陸運側の要請で変更になりました。
今後、俺少尉は中尉に昇進と共に正式に第501統合戦闘航空団に配属されることとなりました」
ゲルト「・・・待ってくれ、ミーナ。
つまり俺がこの501に加わるということなのか?」
ミーナ「そうよ、確かにウィッチ部隊である統合戦闘航空団に通常の航空兵が配属されるのは前例をみない事例だわ。
しかし上層部は俺少尉の活躍に一定の成果を認めて、ウィッチとの連携を推進する鍵になると考えているようね。
各地のウィッチ部隊に同様の航空兵を配置することも考えているみたいね」
ゲルト「なるほど・・・理由は分かったが本当にいいのか?」
ミーナ「これは連合軍司令部からの命令でもあるわ。
もし納得できいないようなら上に掛け合うこともできるけど・・・」
シャーリー「いいじゃないか、面白そうだし!」
ペリーヌ「確かに、これからの戦場の在り方を考えればウィッチだけに任せるというわけにも行かないでしょうし・・・
でもやはり不安ですわ」
リーネ「でもこの間は俺さんに助けてもらいましたし、私は賛成です!」
珍しくリーネがはっきりと意見を述べた。
宮藤「私も俺さんなら大丈夫だと思います」
ペリーヌ「・・・そうですわね。
わたくしもかまいませんわ」
坂本「異論のある者はいるか?」
しん、と静まり返る室内。
坂本「無いようだな・・・」
ミーナ「それでは俺さん、どうぞ」
俺「はっ!
扶桑皇国陸軍独立第11飛行中隊、俺中尉。
本日より連合軍第501統合戦闘航空団所属となりました。
よろしくお願いします!」
バッ
そう言って、俺はミーナに敬礼した。
それを受けたミーナも答礼する。
ミーナ「我々第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』は貴官を歓迎します。
よろしくお願いします、俺中尉」
◇ ◇ ◇
―――1945年初夏某日、扶桑皇国より一名の航空兵が連合軍第501統合戦闘航空団に配属された。
戦史上初の通常航空兵・機械化航空歩兵混成部隊の誕生である。
その後各地で同様の混成化部隊が組織され、後の機械化航空歩兵運用に多大な影響を残したと言われる。
出典「機械化航空歩兵運用小史」(民明書房)
◇ ◇ ◇
そのころ、第501統合戦闘航空団基地にとある装備が搬入されていた。
ひとつは真っ赤な機体のストライカーユニット。
そしてもう一つは―――。
◇ ◇ ◇
ゲルト「ふふふ、見ろリベリアン、我がカールスラントの最終兵器を!
これでネウロイもイチコロだ!」
シャーリー「ちょっとバラしていいか?!」
ゲルト「やめろぉ!!」
俺「あ、俺にも新兵器ありますよ」
ゲルト「ほう、新しい武装か?」
シャーリー「いやー、新型エンジンだろ」
ゲルト「ふん、圧倒的火力の前にスピードなど無意味だ」
シャーリー「いいや、速ささえあれば万能だよ。
これだからカールスラントの脳筋は・・・」
ゲルト「なんだと!」
シャーリー「なんだよ!」
シャーゲル「で、どっちなんだ!!」
俺「いや、もう行数が・・・ 次回、
キ84第四話『かたい、はやい、ものすご~い』お楽しみに!」
最終更新:2013年01月28日 12:54