翌日の夜 俺の部屋
…イルカ、オレ?
俺「はいよ、開いてるぞ~」
バルクホルン<空けてくれ、手が開いて無いんだ
ドア越しにバルクホルンの声を聞いた俺はドアを開けると
彼女は両手にお盆らしきもをを持ち、料理を乗せていた
俺「どうしたんだその料理?」
バルクホルン「ちょっとな、付き合ってくれないか?」
俺「トゥルーデからのお誘いなんて珍しいな、ちょっと汚い所だが入って」
バルクホルン「この辺に置いておくぞ」
電灯の光で優しい光に照らされている部屋の中で
備え付けられた机に簡単な料理が並べられる
俺「せっかく作ってくれたんだし飲もうかな、風呂上りだから丁度良いや トゥルーデの分はっと…」
バルクホルン「あ、俺…」
俺「ん?」
バルクホルン「私にも少しワインをくれないか?」
俺「良いけど…大丈夫?」
バルクホルン「ここはお前の部屋だ、介抱する必要も無いだろう」
俺「…それもそうかw」
俺は棚にしまっていたワインを取り出し、形の違うワイングラスにワインに開ける
バルクホルン「お前がワイングラスを持っているなんてイメージが付かんな」
俺「ほっとけw まあ壊れやすいから自分で飲む時はウィスキーグラスなんだけどねぇ」
バルクホルン「たしかに一人でワイングラスを持って飲んでいる俺はちょっと笑えるな」
俺「ちくしょう…なんか泣ける…」
若干へこみながら料理とワインを並べ終え、二人は向き合って座り乾杯した
◆
持ってきた料理は数こそ多いが量はそれほどでもなく
ワインを一本あける頃には全ての料理が食べ終わっていた
バルクホルン「かなり作ったと思ったが、食べるの早いな俺は…」
俺「酒も入ってたからなぁ、普通だったら遅いよw」
バルクホルンの顔にはほんのりと頬が赤く染まっている
俺「あとはトゥルーデが作ってくれた料理だからな、旨くて手が進んだのさ~」
バルクホルン「そうか…ありがとう」
俺「どういたしまして…ってありがとうを言うのは俺のほうだろw」
バルクホルン「む、そうだったか 少し酔ったのかもな 私も」
俺「酒が入ればな、っておいちょっと飲みすぎじゃ…」
バルクホルンは2本目のワインをあけて、飲み始める
バルクホルン「お前が言っていたのだろう?『過度な疲労には適度なアルコールを』とな
私も人間だ、疲れだってするさ たまには良いだろう?」
俺「まあな、ただそれで最後の一本だ」
バルクホルン「そうか、ゆっくり飲もうか」
料理が無くなり、二人はワインを注ぎあいならがゆっくりと時間が過ぎる
バルクホルン「月が綺麗だな…」
俺「もう遅い時間だからな」
既に時間は消灯を過ぎて深夜になっている
バルクホルン「なあ…」
俺「なんだ?」
バルクホルン「…今から結婚しないか?」
◆
部屋の電気が消され、蝋燭の火が部屋を優しく灯す部屋の中俺とバルクホルンは向かい合いながら立っている
バルクホルン「こ、これは要らないんじゃないか?」
俺「言い出したのはトゥルーデだろ?花嫁といったら白いドレスだ!本物じゃないのは残念だが…」
バルクホルンの体には白いシーツに包まれている
バルクホルン「むぅ…」
俺「綺麗だよトゥルーデ」
バルクホルン「う、うるさい!早くしろ!」
俺「そうだな、それじゃあ誓いのキスを…」
バルクホルン「行き成りそこか!?」
俺「冗談冗談w」
笑いながら俺はバルクホルンの左手を取る
俺「俺も良く分からないんだ、だから…」
ポケットから指輪を取り出して、彼女の左手薬指にはめる
バルクホルン「あ…これは…」
俺「昔約束したろ?一番良い指輪を用意するってさ」
一箇所だけらせん模様の入った指輪が蝋燭の火の光で優しく輝く
バルクホルン「…『一番』とは言ってなかったと思うが、それに良いと言いながらこれはサイズがあってないぞ?」
俺「あ、本当だ…」
バルクホルン「お前は本当に抜けているな…だが」
少しだけ薬指に隙間のある指輪を右手で握る
バルクホルン「ありがとう、俺」
少しだけ二人の間に蝋燭が燃える音だけが静かに響く
………
バルクホルン「…なあ俺」
俺「なんだ?今度は誓いのキスでも…」
バルクホルン「大和に行くそうだな」
両手を胸元に置いたままバルクホルンは俺と視線を合わせずに聞く
俺「…どうしてそれを?」
バルクホルン「お前を風呂に呼ぼうと思ったら偶然聞いてしまったんだ」
俺「…」
バルクホルン「悪いとは思ったんだがな…」
彼女は逸らした視線を俺の目線へと向ける
バルクホルン「任務とあれば止める事は出来ない、だが私を…」
そのままバルクホルンは俺の胸元へと寄りかかる
バルクホルン「私を共に連れて行ってくれないか?足りない魔法力を補うくらいは出来るだろう」
俺「それは無理だよ」
バルクホルン「どうしてだ…お前はもう魔法力が…」
俺「そうだな、とっくに魔法力のピークは終わってる」
バルクホルン「そんなお前をネウロイの巣に一人で行かせたくないんだ 頼む…」
俺「…」
バルクホルン「行かない…で…くれ…お…」
俺の胸の中でゆっくりと力が抜けて、バルクホルンはそのまま俺に重心をかけたまま崩れていった
バルクホルン「…」スースー…
俺「ごめんなトゥルーデ、ここからは俺一人の都合なんだ」
バルクホルンをベットに寝かせ、いつも厳しい表情とは別の、愛らしい表情で寝る彼女の頭を優しく撫で
ポケットに入っていた小さい茶瓶と共に食事の片付けをして 数少ない荷物をまとめ、彼女の眠る部屋を後にした
◆
501統合戦闘航空団 早朝 輸送機発着所
ミーナ「本当に良いの?トゥルーデを待たなくて」
俺「はい、後の事よろしく頼みますミーナ中佐」
ミーナ「…わかったわ」
ウルスラ「…」
離陸準備の終えた輸送機の前でミーナ中佐と
シャーリーが俺とウルスラの見送りに来ている
シャーリー「ロータリーストライカーは持っていかないのか?」
俺「あっちで別のストライカーを使うから、置いていくよ 使うなり部品にするなり好きにしてくれ」
シャーリー「分解するのはおしい気がするな~」
俺「まあなw 作戦が終わったら改良型のロータリーストライカーでも作って持っていくからその時は負けないぞシャーリー」
シャーリー「ふふん、次もしっかり負かせてあげるよ」
俺「いっておけ、それじゃあ行って来ます」
シャーリー「二人とも、無事で」
ウルスラ「…そちらも御武運を祈ります」
別れを告げて、輸送機に乗り込み、俺とウルスラは501統合戦闘航空団基地を後にした
◆
501統合戦闘航空団 昼過ぎ 俺の部屋
バルクホルン「んん…俺ぇ?」
覇気のかけらも無い声で部屋の主を呼びかける
バルクホルン「…俺ッ!?」
意識が急に覚醒し、ベットで寝ていた体を上半身だけ勢い良く飛び上がらせる
バルクホルン「私は確か…」
包まれていたシーツがベットに取り残され部屋を見渡すが
俺の姿は無く、荷物も少ない
バルクホルン「今は…正午か? いや俺は!?」
ベットから飛び上がり、部屋を出て、角を曲がった所でシャーリーと出くわした
シャーリー「なんだバルクホルン、急に出てきてビックリしたぞ」
バルクホルン「俺が何処にいったか知らないか!?」
シャーリー「あいつなら早朝に重要な作戦が出来たってノイエ・カールスラントに戻っ…っておい?」
最後まで聞かずにバルクホルンはガレージへと向かった
◆
ガレージ
バルクホルン「はぁ…はぁ…はぁ…」
バルクホルン(ストライカーで行けばまだ間に合うはずだ)
ガレージに入り、自分のストライカーを探すが、そのストライカーの前にはミーナ中佐が立っていた
ミーナ「何処に行くつもり?」
バルクホルン「どいてくれミーナ!俺が!」
ミーナ「…俺さんなら早朝、ノイエ・カールスラントに戻ったわ」
バルクホルン「あいつは一人でネウロイの巣に行くつもりなんだ!あいつは魔法力が…」
ミーナ「知っているわ、昨日彼に教えてもらったの」
ミーナはバルクホルンから目線を外し、少しだけ悲しそうな表情をする
バルクホルン「だったら何故行かせたんだ!? あいつを止める事は…」
ミーナ「止めなかったとでも思うの!?」
大きな声を上げられてバルクホルンは切らせていた息が止まる
ミーナ「彼の…意思なのよ…」
バルクホルン「そんな…」
ミーナ「最近のネウロイの活動が頻度に起こってるのは知っているでしょ?
補給も追いつかなくなって来て、この先どれだけ消耗戦を続けられるか分からないの
後どう頑張っても一ヶ月…彼の参加する作戦が失敗すれば501は解散
いえ、最悪ロマーニャを明け渡す事になるでしょう」
バルクホルン「だがあいつではなくても!」
ミーナ「上層部は一番成功率が高いのは彼だと判断したわ…志願した直後からもう彼前提の作戦が進んでいて
今彼を失ったら作戦は大きく変えられる、とても一ヶ月後には間に合わないそうよ…ウルスラさんがそう話してくれたわ」
バルクホルン「…俺」ドシャ…
バルクホルンはその場に膝を着いて崩れる
ミーナ「その作戦に望んで志願したの…もう止められないわ…」
バルクホルン「俺…どうして私も一緒に行かせてくれないんだ…」
シャーリー(まじかよ…)
上を向き、呟くバルクホルンの背後を 彼女を追ってガレージの入り口まで来ていたシャーリーは
話された事を聞き、それ以上ガレージに入ることは出来なかった
◆
最終作戦一週間前 501統合戦闘航空団 ブリーフィングルーム
501メンバーに最終作戦『オペレーションマルス』の内容が話される
ミーナ「持てる全ての戦力で、ネウロイの巣ごと殲滅し、一気にカタをつける、以上が最終決戦の内容よ」
バルクホルン「…」
エイラ「失敗したらどうなるンダ?」
ミーナ「もし失敗したらロマーニャ全土を明け渡し、501航空団も解散する事になります」
宮藤「そんな…」
ミーナ「この先消耗戦を続ける戦力は無い私達には、もうこの方法しかないのよ…」
ここ最近のネウロイの強襲はほぼ連日続き、501メンバーの疲労もピークに達していた
ルッキーニ「ヒック…ヒック…」
ルッキーニは反抗の声も上げずに静かに泣いている
シャーリー「大丈夫だよ、ルッキーニ 勝てば良いんだよ」ナデナデ
エーリカ「そーだよ…ロマーニャは明け渡さない、絶対にね!」
周りが勝とうという意気込みの中、バルクホルンはただ作戦図を見つめている
シャーリー(あいつ…)
501統合戦闘航空団 廊下
シャーリー「待てよ、バルクホルン」
ブリーフィングが終わり、バルクホルンは一人で廊下を歩いていた所を呼び止められる
バルクホルン「なんだ…」
シャーリー「お前、戦えるのか?」
バルクホルン「私はいつだって飛べる」
シャーリー「飛べる?あいつが居なくなってからフラフラと飛んでる様にしか見えないぞ」
バルクホルン「…」
バルクホルンはシャーリーと目線を合わせず、壁に視線が向けられている
シャーリー「こっちを見ろよ!今のお前が出て行ったら確実に落とされるぞ!」
シャーリーに肩を捕まれ、バルクホルンは揺すられるが何の反応もない
バルクホルン「…私には守れないんだ」
シャーリー「お前は守ってきたじゃないか、妹のクリスも宮藤も」
バルクホルン「だが…俺は守れなかった…パ・ド・カレーの時も、きっと次の作戦も」
シャーリー「あいつは大和に乗ってるんだろ?」
バルクホルン「知っていたのか…」
シャーリー「ああ…何のために乗ったのか考えた事あるのかよ…」
バルクホルン「…?」
シャーリー「あいつはお前を守る為に行ったんじゃないのかよ!」
バルクホルン「…だが、私は守られて命を落とすなんて望みはしていない!」
シャーリー「あいつは本当に命を捨てに行ったわけじゃないだろう?」
バルクホルン「同じだ…あいつの魔法力は…」
シャーリー「魔法力が無くなったのにお前の所に帰ってきたんだぞ…?」
バルクホルン「…」
宮藤「シャーリーさん?何をそんなに大声で…っ!やめてくださいシャーリーさん!」
大きな声で言い争ったのを聞いてやってきた宮藤の静止にも関わらずシャーリーは続ける
シャーリー「それに私達にはまだ出来る事がある、ネウロイの数を減らす事もあいつを守る為になるんだぞ?」
バルクホルン「私には…無理だ…」
シャーリー「この分らず屋!」
宮藤「喧嘩はだめですシャーリーさん!」
宮藤がシャーリーの体を引っ張り、掴んでいたバルクホルンの肩を離す
シャーリー「私は戦うよ…それで俺が帰ってくる可能性が高くなるなら、負担が減るならな…」
バルクホルン「く…」
全身の力が抜けたと思われ、宮藤に掴まれていた手が離されたシャーリーは
顔を伏せて涙を流すバルクホルンを残しその場を後にした
◆
『オペレーションマルス』 発動前夜 アドリア海上
扶桑艦大和甲板
俺「あ~あ…葉巻なくなったの忘れてたよ」
夜の暗闇が海に広がる中、甲板上で葉巻の入っていたハードケースを開けたり閉めたりしている
俺「季節はこれから暑くなる時期とはいえ、流石に海上は寒いな…整備用のジャケットを
軍服の上に着込んでもこれかよ…」
体を少し揺すりながら、これから向かう先であろう場所を延々と眺め続けると
少し疲れたような顔のウルスラが俺の後ろまでやってきた
ウルスラ「ここに居たんですか、この時期でも夜は寒いので体に障りますよ」
俺「そうだな、機体のほうは終わったのか?」
ウルスラ「はい、武器はフリーガーハマーの威力と射程を強化した改良型であるフリーガーシュレックを2機
ストライカーは『フラックウルフ FW190タイプA0』をベースに魔法力蓄積炉を可能な限り積み
ストライカーオペレーションシステムと飛行能力を限界まで削っていますので
飛行補助の為に簡易型の魔法力蓄積炉直結のロケットブースターを搭載してます」
俺「そっかぁ…ロータリーサウンドが聞けなくなるのはちょっと残念だねぇ…」
ウルスラ「ロータリーは回転数が高い分魔法力燃費が悪いですからね、我慢してください」
俺「まあ…な、ウルスラの機体だろ、フラックウルフのA0って」
ウルスラ「はい、急造で作った物ですので…魔力蓄積炉には私の魔法力で充填してあるので最初からフル稼働でも問題ないと思います」
俺「ノイエ・カールスラントの大エースの機体と魔法力か、勿体無い気もするが頼もしい限りだな」
ウルスラ「…私はもうほとんど空には上がりませんから」
俺「自意識過剰だったら悪いが、俺のせいか?」
ウルスラ「…そうですね、私が帰る場所を用意しないと戻って来なさそうですからね俺さんは」
俺「どっかの不良息子かよw もうそんな年でもないよ
まあ『幸運の女神』が待っててくれたら心強いがな~」
少しだけ暗闇の広がる海に沈黙が続く
ウルスラ「帰って…きますよね?」
俺「501の時も散々言われたなぁ…そんなに不安か?」
ウルスラ「…不安、ですね ウィッチとしての寿命を終えた人がネウロイの巣に行くんですから」
そう言ってウルスラは自分の服をぎゅっと掴んだ
俺は彼女に近づき、手を彼女の頭に当てて優しく撫でる
俺「大丈夫だウーシュ、俺は不可能(嘘)を可能(本当)にする男だからな さくっと終わらせて帰ってくる」
ウルスラ「…」
海をなぞる風の音が少しだけ響く中、撫でられているウルスラは顔を下に向けている
俺「501の皆やこんなに可愛い幸運の女神が待ってるんだ 戻らなきゃ死んでも死にきれねぇよw」
ウルスラの頭から手を離して彼女とすれ違う
ウルスラ「ぁ…」
俺「明日から作戦開始だ、ウーシュも機材移動とかあるんだろうし早めに寝ておけよ」
甲板を歩いて、ウルスラに背を向けて館内へ戻ろうとする俺に
背後から強烈な衝撃を背中に受けて、倒れる
俺「いってぇ…何g」
ウルスラ「んぅ…ふ…」
仰向けに受身を取るように倒れた俺の上に飛び込んできたウルスラを抱え
彼女は俺を倒し、彼の唇を奪った
ウルスラ「んん…ふぅ…あむ…んぅ…」
俺の上半身に少女は必死にしがみ付き、何度も、何度も自分の口を押し付けるように口付けをする
ウルスラ「ぷぁ…」
離した唇から二人の唾液が合わさった糸が俺の喉へと垂れる
少しだけあっけにとられた俺の顔を見た後、ウルスラはゆっくりと俺の胸へと顔をうずめる
ウルスラ「俺さんの言葉はどれも不安でしょうがありません…」
俺「…ウーシュ、俺は」
ウルスラ「知っています…バルクホルン大尉ですよね」
俺「ああ、ならどうして…」
ウルスラ「姉さまから聞いていました…ですからこれは」
俺の胸の中にうずめて顔を合わせず、少し震えながら彼女は続ける
ウルスラ「これは貴方の『幸運の女神』からの最初で最後のファーストキスなんです…」
そういうとウルスラは俺の胸の中にもっと入ろうと言わんばかりに力強く抱きしめて顔をうずめて震えている
ウルスラ「帰って来て下さいね、俺さんが何処に行こうと…構いませんから…生きて…」
俺「…心配ばかりかけさせてごめんなウーシュ ありがとう」
少し熱くなっている胸の中で震えている少女を優しく抱きしめて
震えが止まるまで二人は甲板で倒れていた
最終更新:2013年01月28日 14:45