扶桑艦大和 船内 俺の部屋
俺「…」ボスッ…
部屋に戻った俺はジャケットから金属で出来た葉巻のハードケースをベットへ投げた
俺「皆に心配かけさせちまったな…」
そのまま俺はベットへと横になる
投げ捨てたハードケースは形を変え、球体に、そして手のひらサイズの『黒い人型のネウロイ』へと変わる
その黒い人型は申し訳無さそうに俺の顔を覗き込む
俺「お前のせいじゃないよ、利害の一致だろ」
そう言われ黒い人型は器用に飛び、体を一回点させてベットの下に潜り込み、落ちていた葉巻を持って俺の前に差し出す
俺「落ちてたのか、ありがとうよ」
指の腹でそれの頭の部分を撫でてやる
こいつとは
ガリア解放前からの付き合いだ
俺は半年ちょっと前ガリアの空で夜間哨戒中にネウロイと交戦、敵を倒したが同時に撃墜もされた
実際、数日も漂流されれば生還は絶望的だったろう
けど俺はブリタニアに流れ着いて、生存していた
その間に夢を見た気がした
この人型のネウロイの破片が俺に取り付き、体の中に入って行くのを
ひび割れたネウロイのコアが俺の体の中にあるイメージを見たんだ
その夢から覚めたら、俺はノイエ・カールスラントにいて顔を涙でぐしゃぐしゃにしたウーシュが
俺のいた部屋に飛び込んできたんだっけか…
ネウロイが体の中に入ってるって不思議と自覚はあっても、根拠も無かったし体も変化もないし特に気にしてなかった
だが、ヴェネツィア上空のネウロイの巨大な巣の夢を見るようになってから、こいつは俺の周りの金属を変形させ姿を現した
何かを必死に訴え、かろうじで分かったのは『ミヤフジヨシカ』を守って欲しいという事だけだった
もちろん敵だったネウロイが訴える事は簡単には信用は出来ない、だがこいつは俺と多分同化してるはずなのに何の影響も無かったから
俺もこいつを誰にも話さず、隠し続けて付き合ってきた
俺「実際、ロータリーストライカーのテストで行った基地に居るとは思わなかったが、お前のせいか?」
小さなネウロイはベットの手すりにもたれ掛って首をフルフルと横に振っている
俺「そっか、そこまでお前も都合よくは行かないよな けどお前のおかげでトゥルーデと再会出来た
多分お前に助けられてなかったら俺はこうしている事も出来なかっただろうからな ありがとうよ」
少しだけ小さなネウロイは首を上げる
俺「助けられた恩ってのもあるけど、守りたいのは同じなんだ お前の言う『ミヤフジヨシカ』も
トゥルーデもなそのためにチョットだけでも力を貸してくれよな」
その言葉を聞いてか聞かずか、小さな人型ネウロイは元の葉巻のハードケースに戻る
俺「…ったく、ちゃっかりしてやがるぜ 『ミヤフジヨシカ』を守るため意外では力を貸さないみたいだからな…」
先のロケット型ネウロイとの戦いだって、多分こいつが力を貸してくれたのだろう
俺の魔法力を使ったロータリーストライカーでは音速は超えられないからな…
でもそれで良いかもしれない、こいつにとっては同胞を撃つ事にもなるのだから
俺「明日…いや明後日の俺はどうなっているかな…」
ベットから天井を眺め、少しだけ思い 夜を明かした
◆
『オペレーションマルス』作戦決行日 早朝 バルクホルン&エーリカの部屋
エーリカ「ぅ~…おかし~…」スースー…
バルクホルン「…」
今日、あいつはネウロイの巣へと飛び立つ
パ・ド・カレーの時と同じくほぼ単独で
バルクホルン「手遅れなのか…」
俺が帰ってきた事自体が奇跡なのだ…本来はあいつは居なかったんだ
バルクホルン「指輪…」
あいつのくれた指輪を見る、少しだけサイズの大きい指輪
エーリカ「黄昏てるトゥルーデなんて珍しいね」
バルクホルン「…起きていたのか」
エーリカ「何となく起きちゃったよ、調子が狂うっていうかさ、安心出来ないっていうか…」
ベットの上、エーリカはバルクホルンの隣に座る
エーリカ「ねぇトゥルーデ、俺って大和に乗ってるんでしょ?」
バルクホルン「お前まで分かっていたのか?」
エーリカ「トゥルーデの態度を見たら分かるよ、俺が大和に乗ってパ・ド・カレーの時みたいに居なくなっちゃうんじゃないかーってね」
バルクホルン「…」
エーリカ「トゥルーデがそんなんだと本当に帰ってこないかもよ?」
エーリカ「俺は多分自分に出来る事をする為に行ったんだよ、トゥルーデを守りたい、結婚したいって為にね」
バルクホルン「結婚…」
その言葉を聞いて、左の手のひらに載せていたシルバーリングに目を落とす
エーリカ「トゥルーデはどうしたいの?俺はいっつもトゥルーデを迎える準備は万端なんだよ、
あとは決めるだけなんじゃないかな」
バルクホルン「だが私は…一緒に行かせてくれと言ったのに…断られたんだ」
エーリカ「そっか~…これで
俺の気持ちも少し分かったんじゃないかな?」
バルクホルン「…どういうことだ?」
エーリカ「俺との結婚の事、トゥルーデが断り続けたの知ってるよ」
バルクホルン「ああ、私はあいつの気持ちも知らないで断り続けていた」
エーリカ「気持ちはさ、流石に分からないかもだけど、俺はそれでもずっとトゥルーデにアタックしたんじゃない?」
バルクホルン(最初に出会った日以降でも何度か言われた気がする…数えた事はないが…)
エーリカ「諦めが悪かったんだね、でもおかげでトゥルーデに指輪を渡せたんだよ」
バルクホルン「…」
エーリカ「心のどこかで嫌われて無ければ、今度はトゥルーデからアタックすれば良いじゃん
俺がトゥルーデにしてくれたようにさ」
指輪に視線が注がれているままのバルクホルンにエーリカは笑いかける
エーリカ「私達に出来る事はまだある様にさ…トゥルーデにしか出来ない事もまだあるんだよ きっとね」
エーリカ「あとはトゥルーデ次第だね、ま、頑張ってね~」
そういうとエーリカは部屋から駆けて出て行った
◆
501統合戦闘航空団 早朝 食堂
バルクホルン「宮藤、宮藤はいないか?」
宮藤「は~い、何ですかバルクホルンさん」
朝食の準備をしていたリーネと宮藤の所に、申し訳無さそうにバルクホルンは声をかける
バルクホルン「宮藤、頼みがあるんだ」
宮藤「なんでしょう?」
リーネ(最近バルクホルン大尉の元気が無いみたいだけど、今日は普通…)
バルクホルン「私に治癒魔法をかけてくれ」
宮藤「え?でも何処も怪我はして…」
どこも悪くなくいたって健康そうな肢体をバルクホルンは正して息を吸い込む
バルクホルン「すぅ~…宮藤!リーネ!戦場では常に冷静な判断力が生死を左右する!」
宮藤・リーネ「は、はい!」
突然上げられた大きな声によって二人はびくっと肩をあげ、気をつけの姿勢になる
バルクホルン「そういう場合はまず」ガシッ
そのままバルクホルンは壁のあたりに手をついた
バルクホルン「こうだああああああああああ!」ガンガンガンガンガン
宮藤「バルクホルンさんーーーーーー!?壁に頭を打ち付けるのはやめてくださいーーーーー!」
リーネ「今日も普通じゃないよ~~~!?」
バルクホルン(私は何をやっているんだ、一度振られたくらいで…俺は何度も振られている)ガンガンガン
バルクホルン(なら奴が私を嫌うまで突っ込んでやろうじゃないか…あいつがそうしてくれたように)フラフラ…ドサ
頭から血を流し倒れたバルクホルンに宮藤の治癒魔法の光が患部に当てられる
宮藤「もう…私の治癒魔法は怪我をするためにあるんじゃないんですよ?」
バルクホルン「すまない、荒療治だったが別の怪我が治った気がするよ」
宮藤「…?どこか怪我でも」
それ以上言おうとする宮藤にリーネは服を引っ張り、首を振る
宮藤「…治ったのなら良いですが、良いですか?今度はこんな事しちゃダメですよ?」
バルクホルン「ふふふ…ありがとう宮藤、リーネ、すまないな」
◆
501統合戦闘航空団 早朝 ガレージ
早朝とあって人気が全く無いガレージの中、
シャーリーは俺の置いていったロータリーストライカーを右手で撫でていた
シャーリー「…なんの用だい?」
バルクホルン「頼みがある、そのストライカーを私に履かせてくれないか?」
左手薬指に指輪をはめたバルクホルンの言葉に、シャーリーは少し残念そうに明るく振舞う
シャーリー「…あんまり遅いから私が履こうかと思ったよ」
バルクホルン「すまない」
シャーリー「もう大丈夫なんだな?」
バルクホルン「ああ、心配かけてすまなかった」
頭を下げるバルクホルンにシャーリーは手を振る
シャーリー「いいっていいって、それにさ…そんな指輪されてちゃ私が履くのが野暮なものじゃないか」
バルクホルン「こ…これは!?」
シャーリー「俺から貰ったものなんだろう?」
バルクホルンは静かに首を縦に振って肯定する
シャーリー「そっか~…っとそれサイズ合ってないんじゃないか?」
バルクホルン「ちょっと大きいな、サイズは分かってなかったらしい」
シャーリー「しっかたないな~、よっと」
シャーリーは首からドックタグを取り出し、チェーンを取り除いてバルクホルンに差し出す
シャーリー「こいつに通して首にかけておきな」
バルクホルン「良いのか?」
シャーリー「変えのチェーンはあるしな、それに戦闘中にそれ落としたら俺泣くぜきっとw」
笑いながら差し出されたチェーンをバルクホルンは受け取り、指輪を通して首にかける
シャーリー「…似合ってるぜ、堅物には勿体無いくらいだ」
それだけ言って、シャーリーは工具一式を取り出してロータリーストライカーの前に座る
バルクホルン「何をしてるんだ?」
シャーリー「使ってないといってもメンテはしてなかったからね、俺の整備は見てたから簡単なメンテ位なら出来るからしてやるよ」
バルクホルン「…ありがとうシャーリー」
バルクホルンの言葉に少しだけ驚いたシャーリーだったが、構わず整備を続けた
シャーリー「あいよ、作戦までに終わらせるから休んでなって」
バルクホルン「だが私も手伝う事が…」
食い下がるバルクホルンにシャーリーは彼女に対して手を広げて静止する
シャーリー「これは私にやらせてくれ…これが私に出来る事なんだ」
バルクホルン「…そうか、よろしく頼む、大尉」
そう言われ、残されたシャーリーはロータリーストライカーの整備を続けた
◆
501統合戦闘航空団 『オペレーションマルス』作戦発動 基地ガレージ
ミーナ「時刻です、これより『オペレーションマルス』発動 501メンバーは扶桑艦大和護衛のため全機出撃してください」
一同「了解!」
ミーナに続いて次々とガレージから出撃して空へと上がっていく
バルクホルン「頼むぞ」
バルクホルンはロータリーストライカーに足を入れ、使い魔の象徴である耳と尻尾が出る
『ストライカーオペレーションシステム起動、認証コードと名前を発言してください』
ストライカーからアナウンスの音声が耳に直接聞こえる
バルクホルン「これは確か…認証コードモノクル、名はゲルトルート・バルクホルン」
『認証コード確認 新規名称確認…名称登録完了 魔法力測定…測定完了…最適消費効率計算…完了』
バルクホルン(俺、お前が一人で行くと決めていてもだ 私はお前の所に行き戦おう 1体でも大和に近づく敵を多く打ち落としてみせる)
『魔力蓄積炉充填率100% エラーチェック…完了 起動問題無し 起動準備完了』
バルクホルン「お前を飛ばせてくれたこのストライカーで一分一秒でも長く、飛び続けて守って見せよう
そして俺に思い伝えるために…頼んだぞロータリーストライカー」
『エンジン始動』フォオオオオオオオオン…
高く吹き抜けるような回転音がバルクホルンの声に答える様に鳴り響き、彼女は少しだけ驚く
バルクホルン「…ふふふ、そうかお前も俺が作ってくれた物だからな 変に律儀なのかもしれないな」
笑いながら、首に掛けられチェーンで通された指輪を眺め、服の中に入れる
バルクホルン「ゲルトルート・バルクホルン、出撃するぞ!」
最後尾で出撃した彼女は心なしか力強くなったロータリーサウンドを奏でながら、
501メンバーの隊列に追いつき ヴェネツィア上空のネウロイの巣を目指す
◆
扶桑艦大和船内 魔道ダイナモ機関室
俺「こんな日に曇り空なんて幸先が悪いねぇ…っとそろそろ作戦区域だ、乗務員は全員『赤城』に退避したな」
禍々しい巨大なネウロイのコアを鎮座させた機関室の窓から顔を覗かせ、乗員が全員大和からの離艦確認の合図の旗を振る
その隣にはウルスラが立っていたが表情は伺えない
その旗の合図に俺は軽い敬礼で答え、乗員は敬礼で返してくれウルスラを天城の甲板に残したまま天城内部へと走って消えた
俺「しかし、こんなに魔法力貯蓄路を置いていくなんてな…」
備え付けられた俺専用に改造されたウルスラのストライカーFw190A0にいくつものケーブルが刺さっており
そのケーブルの先には魔道ダイナモを囲むように配置されたいくつもの長方形の箱につながっている
俺「コレだけ貯めるのだって相当時間と魔法力を消費しただろうに…ありがとうなウーシュ」
大量に配置されている魔力蓄積炉の鉄製の箱を眺め、ウルスラの少し疲れた顔を、
そして先日の甲板の出来事を思い出して心から感謝した
艦長<聞こえるかね?こちらは扶桑帝国連合艦隊 大和の艦長を務める杉田淳三郎だ>
俺<良好です艦長殿、こちら第600統合戦闘航空特務隊の俺中尉です>
俺はお偉いさん相手にただ一人しかない部隊名を告げる
艦長<作戦領域までの遠隔操作はこちらで行うが作戦領域内でも大丈夫かね?>
俺<作戦領域内では私の固有魔法によって大和は隠されますが通信などはちゃんと通すようにしますので大丈夫です>
艦長<そうか、大和をよろしく頼む>
俺<了解、俺中尉 扶桑最強の艦大和を持って ネウロイの巣迎撃いたします>
艦長<そろそろ領域に入る、これより『オペレーションマルス』を開始する!>
俺「さてと…それじゃあ行きますか」
機関室に固定するための装置に収まっているストライカーに足を入れる
俺「ストライカーオペレーションシステム起動確認、巨大は『大嘘』をつかせてもらうぜ!ウンヴァーハイト!」
艦長の作戦開始の合図と共に曇り空の中、扶桑最強の戦艦大和は海からその巨体が波も生まずに消えた
最終更新:2013年01月28日 14:45